忍者ブログ

なつめっぐ 保管場所

倉庫です。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

贖罪⑪

【贖罪】31 奪われた感覚
【贖罪】32 捨てられない想い

【贖罪】31 奪われた感覚

目が覚め、そこが何処かも分からず
ただ、手の感覚で布団らしきものの中に自分がいる事に気が付いた…
けれど、声を出そうとしても…

「――ぅ―――ぁ――」

自分の耳には、自分の発した言葉は届かず
声が出たかもわからない。

と、不意に肌に風を感じそちらへと目を向けるも、その人が誰なのかも
分からなくて、そっと触れてきた何かを慌てて振り払った。

「ナルト?おま…目が見えてねぇのか?」

いつまでたっても返事は無く、振り払われた手を宙に浮かせたまま
もう一度声を上げてみた。

「シカマルだぞ?おい、ナルト!」

ガシッと肩を掴んで声を掛けるが、青ざめたナルトが首を左右に振って逃げ出そうと
もがいている姿に、ギリッと奥歯を噛み締めた。

グッと抱きしめて、ナルトの鼻を自分の服に押し付ける。
恐らく、自分の名を言った時点でシカマルは視覚聴覚そして言葉も喋られないと理解した
その全てを遮断して自分を認識してもらえる可能性があるとしたら

『匂い』

だが、シカマルの思惑とは別にナルトの中で会話が紡がれた。

”ナルト…シカマルだ”

その言葉にピクッとナルトが反応を見せた。
クラマは弱ってはいるものの、外の声が聞こえる。
その御蔭で言葉の伝達だけはどうにか出来ると
クラマに人格交代をしようとしたが、それは失敗に終わった。

手のひらに、何かもぞもぞとした感覚。
良く感じてみると、シカマルが何か文字を書いているようだが…
どうにも理解できない。

逆にその手を、パシリと感覚で掴みナルトが文字を書き始めた。

な・ん・で・し・か・ま・る・が・い・る・?

「なんでって…俺の家の結界内でバタバタしてるからだろうが!」

と、口で言った後に、聞こえないのを思い出し、メンドクセーと呟きながら
手にその言葉を書こうとした時、再びナルトの手から返事が返ってきた。

く・ら・ま・は・き・こ・え・る

「九尾って事か?」

その言葉に、ナルトがコクンと首を上下させた。

「ったく…なんだってこんなメンドクセー事になってるんだよ!」

ご・め・ん・ば・ー・ち・ゃ・ん・の・と・こ・ろ・つ・れ・て・っ・て

「ったく、言われなくてもそうするっつーの!」

矢も負えなく、シカマルはナルトの手を引き、火影邸へと向かう。
が…

道行く人にその姿を見られるのはかなり恥ずかしい…。
が、ナルトの一大事に変わりはない…
ヒソヒソと変な噂が立ちそうな予感をしながらも
どうにか執務室へと到着し、使い慣れた扉を押し開けた。

「シカマルか?」

「はい…その…」

「何だお前等…仲良く手など繋ぎおって」

茶化す言葉に、シカマルがこれを見てもそれが言えますか?と
ナルトの体を押し出した。

何事かとナルトの周りを一回りすると、大分乱れたチャクラが気になった
そして、流石医療忍者と言う所か…初見だけで、ナルトの目が見えない事を見抜いた。

「すんません、コイツ…口も耳も…ダメっぽいです」

その言葉に綱手が慌ててナルトに話しかけるも
彼は一向に返事も返さなければ表情すら変える事が無く
苛立った綱手がナルトの肩を掴んで、おい!と、声をもう一度掛けると
ビクッと体を揺らし、シカマルと繋がった手をギュッと握り締めた。

「俺が説明します…ナルトは禁忌の森で見つけました…結界が揺れたので
それが気になり見に行けば、こいつが鹿に守られて寝転んでた…って訳です。
ま、最初は寝てるだけだと思ってたんで朝まで家で寝かせて
結界の揺れの話をしようとしたら…コイツ声が出ねぇみたいで…
慌てて、声を掛けたんすけど、その声も届かねぇ…って事で
掌に文字を書こうとしたら、九尾が俺の言葉をナルトに伝えてくれて
ここに連れて来てくれって…」

チラリとナルトを見ると、首を上下にコクコクと振り、言葉が通じてる事を
綱手も理解しホッとした…が

「どういう事だ?幻術や、忍術では掛かり方がおかしいぞ?
しかも禁域の森だったら木の葉の里の人間しか出入りできないし
結界を張っている以上…”揺れた”で、留まるような忍術を使う忍は暗部か
カカシくらいしか…ま、まさかカカシか?」

ナルトがギュッと唇を噛み締めたのを見逃さなかった。

「カカシがやったのか?」

詰め寄った綱手に首を左右に振り、綱手の手のひらに書かれた文字

う・ず・り

「まさか…ありえん!奴は忍術も使えない一般人だと報告を受けている!」

怒鳴り散らすようにナルトに告げたその言葉に首を左右に振り

う・ら・お・ん・み・ょ・う・じ

と、書くと綱手が表情を変えてシズネに強く言った。

「陰陽師の術の書かれている書物をありったけ持って来い!」

「あひぃ~っ!わっ、わかりましたぁ~っ!」

シズネは、シカマルにも手伝いをと承諾を得る前に手を引いて二人で
執務室を後にした。

「まずは座れ…」

手を引かれ、ナルトがコクンと頭を上下させると
引かれるがまま、椅子まで辿り着き、腰を落とした。
その横に綱手が座ると掌を広げた。

「ウズリが犯人で裏の陰陽師って事でいいんだな?」

コクリと頭だけで答えると、ふーっと綱手は長い息を吐き出した。

「お前がそう簡単にやられるタマじゃ無いだろう?何故逃げたり暴れたり
知らせる方法は幾らでもあったと言うのにしなかったんだ?」

ス・イ・が・ひ・と・じ・ち

「は?犯人がウズリだとしたら我が子だろうが?」

首を振るのを見て、綱手はフムと考えると
カカシを招集する事を伝えた。
無論、火影として捨てては置けない問題が目の前で起きてしまったのだから。

「ウズリの目的は?」

お・れ・の・そ・ん・ざ・い・け・す

「お前の存在?何故だ」

指が戸惑いがちに、先程とは全く違う指の動きを見せた

せ・ん・せ・い・の・じ・ゃ・ま・だ・か・ら

「カカシの邪魔をしてるのはあの女の方だろう?」

ち・が・う。
ほ・ん・き・で・せ・ん・せ・い・を・て・ば・な・さ・な・い・た・め

「お前の存在が…どう言う者かと知ったって訳か?」

コクっと首を降ると、綱手はうーんと考え込んだ。

「なぜ知ったかは分かるか?」

き・お・く・も・ど・っ・て・る・の・も・し・っ・て・る

綱手は言葉を失った。
全てはあの女の手の上で転がされていただけなのかと苦虫をかんだ。

「綱手様!お持ちしました」

シカマルとシズネで20冊近くあった書簡をナルトと綱手の座っていた
その席へと運ぶと、カカシを呼べと…声を掛けて書物をパラリと開き
そのページを読み出す。

ナルトにしてみれば暗闇の中、何もすることすらなく
忍術までも使えず、クラマも弱ってしまっている今どうにもする事が叶わなかった。

綱手の手をソット取って、文字を刻む。

ひ・に・ひ・に・よ・わ・り・し・ぬ・と・、・い・わ・れ・た

「何だって?…くそっ陰陽師なんてもう何十年も前に姿を消したってのに
今更出て来て何がしたいんだ!」

か・か・し・せ・ん・せ・い・と・し・あ・わ・せ・に・く・ら・し・た・い
そ・う・い・っ・て・い・た・ん・だ

綱手がギュッと手を握り、絶対にお前を助ける方法を見つけると
優しく伝えてくれた。

「カカシと幸せに暮らしたいと言ったらしいが…
ナルト、お前だってそうだろう?」

その答えは、ナルトが返す事はなかった。

その後、緊急招集の掛かったカカシが火影の執務室に姿を見せ
綱手が読んでいた本をパタリと閉めて
カカシの入ってきた入口前にある机に座った。

ナルトはする事も無く、黙ってそのまま眠ってしまったため
その場に体を横たえ、カカシの視界にはナルトは入らなかった。

「お呼びでしょうか?」

「カカシ…ウズリについてはお前に任せていたな…
どこまで調べ上げた?」

「…はい、この調べて頂いた文献…それと石あれがなんの術に作用しているのかは
まだ調査中です…それと、スイの身体能力がかなり高い事と…
ウズリが、何かの呪印の書かれた札を持ち歩いています…それもまだ何に作用するかは
解ってはいませんが、特殊な結界らしいものが張られている事があります。
ただ、ウズリはチャクラで忍術を使いませんので…それが忍術か他の術かが不鮮明です。
それと、彼女はその昔…あの里に入る前には、旅に出ていたらしく
同行者が…占い師だったらしいです。」

「そうか、占い師…ねぇ、裏陰陽師と聞いた事は?」

真剣な眼差しを受けて、カカシが眉間にしわを寄せた。

「陰陽師…それは数年前に血脈が絶えたと聞いておりますが…?」

「今は、表立ってその名を使わないが…陰陽師とは占いや家の厄を払ったり
星の観測や預言者と言われる者…妖魔相手に戦ったり封印したりする術者の事だ、そして
裏陰陽師とは、妖魔を専門に扱い殺したり封印したりする事に長けた者の職業
その旅に出た時の占い師が陰陽師だった可能性が高いな…」

「まさか?」

「カカシ…落ち着いて聞けよ?…ナルトが…術に掛かった」

その言葉に、目を見開き額に嫌な汗が流れる。
キーンと頭の中で聞こえる音は何の音なのか…
火影の机に両の手を叩き付け、ナルトの居場所を聞くと
指が刺された先は…大きなソファー
背もたれで隠れてはいるが…

慌ててカカシが駆け寄ると、そこには虚ろに目を開いたナルトがいた。

「ナ…ルト?」

「声は聞こえん、耳も口も、そして目も塞がれている」

後ろから聞こえた声に振り向くと、綱手が溜息を落とした

「そこに居てやれ…その間にナルトに何があったか、把握している分を話す」

掌で会話をすると聞き、カカシはナルトの体をグッと持ち上げ
座らせると、掌を差し出し、ナルトの手を重ねた。

その感覚にナルトの手がぴくっと揺れた。
手なのに…その手に装着されている手甲、自分を労わるように抱き上げてくれた腕が
誰のものなのか…すぐにでも確認したくて手を伸ばす。
腕を這い上がり、首筋に辿り着き、顔に手を伸ばすと口布に斜めに掛けられた
額あて、ナルトはその感覚が誰なのかを理解するとポロポロと涙を落とした。

せ・ん・せ・い・ご・め・ん・な

書かれた文字に、カカシの胸がチクリと傷んだ。

「ナルト…オレが調べるのに時間を掛けてしまったせいですまない」

ギュッと抱きしめてナルトの涙をカカシのベストが吸い上げていく。
その間も、綱手は一通りの説明を口にし、シズネによりドサッと置かれた
陰陽師についての書簡をカカシも一緒に探す事になった。

「これが禁術であれば、この巻物には何も載ってないかもしれない」

力を掛ければピリピリと破けてしまいそうな古い巻物を
慎重に扱いながら、カカシが次々に内容を読んでいく。

「カカシ…ウズリは犯罪者としての対応を取る」

言い切った綱手に、コクっと首を上下させるとカカシの手を引き寄せ
ナルトが文字を書き込む。

ス・イ・は・?

「綱手様、スイは…?」

「こちらで保護し、洗脳がないと解れば…カカシお前に返そう」

その言葉に安堵したのはナルトだった。
既に時は動き出してしまった…
ナルトの額にじんわりと汗が滲むと、体の中を何かが這い回っている感覚に
唇を噛み締める。

「ちょ、そんなに噛んだら…ナルト?」

口角から、噛まれた唇の血液がタラリと垂らされ
小刻みに手が震えだしている。

「ちっ、始まったって事か…カカシお前には酷かもしれんがウズリを」

「解ってます」

「ナルトは医療施設のある奥の部屋へと隔離する!」

その言葉にシズネが執務室を飛び出し、準備をする。

「綱手様!」

「ナルトは私に任せろ…手段がない訳でもない」

カカシは、いつの間にか執務室に現れた暗部2人と共に自宅へと急いだ。

=============================◎

【贖罪】32 捨てられない想い

カチャリ…開かれたドアを無気力な瞳が見つめていた。
視線を交わすと、彼女が口を開いた。

「今日は早いのね」

いつも何かに付けて、ウズリの事を調べたり石の作用に付いてを
見聞していたため、帰りは極めて遅かった…
それが今日に至っては、午後に入ると直ぐに帰って来たのだから
そう言われても、おかしな事ではない。

「…ま、ちょっとね」

額当てを外し、何時ものように、スイを見るために寝室を開けると
すやすやと眠るスイを見てホッと胸を撫で下ろした。

「ねぇ、カワ…もう、私ここに居たくない」

安堵の溜息を落とすと同時に、ウズリが声を上げ
パタリ…と、水滴が机の上に落とされ潰れて行く。

「ん、そう…何故居たくないの?」

「だって…この世界は忍ばかりで…一般人の私には不釣り合いよ」

パタリ…再び滲む水滴が机の上に落とされ、寝室をパタリと閉じ
カカシはその対面側に置かれた椅子を引き腰を据えた。

「ねぇ…オレさ、今日スイをナルトに預けてたんだけど
何で家に帰ってるの?」

その話を何時までもしているつもりはないカカシは話題をすり替えた。
その言葉にビクッと肩を揺らし、何かを考えながら話すウズリをジッと観察する。

「え?…あ…ナルトクンに預けたんだ?
スイはスーパーで一人泣いてて、近所の奥さんがうちの子だって
教えてくれたのよ…迎えに行って連れ帰ってきたの。」

カカシは深い溜息を吐き出し、目を伏せた。
確実にバレる嘘まで吐いて、何がしたいのか…そう思いながら嘘を
剥がしていく。

「スイ…今覗いたら、髪に葉が付いてた…急いで寝かせたんじゃないの?」

「え?あ、スーパーの花売り場で…」

何故そこまで苦しい言い訳をしなければならないのか…苛立ったカカシは

「嘘はいいよ…ウズリ」

と、言葉を切り捨てた。

「……」

シンと静まった部屋の中静かにぶぅん…と動き出した冷蔵庫の音が耳に響く。
その沈黙を破ったのはウズリだった。

「貴方は知っている?」

「何を?」

「貴方を好きだった女がこの里にいた事」

「それってさ…伝えなければ解らない事だよね?」

ウズリはコーヒーを淹れると自分の前とカカシの前に、カップを置き
再びその場所へ座った。

「その女は、貴方に助けられたの…その時は占い師をしていて
インチキだって散々罵られて居た少女は、
その時助けてくれた狗の面をした人に惹かれた」

カカシはクンとカップの中のモノを確かめるように鼻をヒクつかせると
何も入っていないわ…と、苦笑いで言葉が紡がれた。

「その時は、その面をした人間が誰かなんて解らなくて
ただ、髪の色だけは凄く印象に残ってたの。」

「…ま、この色は”はたけ”の家系だしね…」

と、額あてのない髪が目の前に垂れ下がっていた前髪を
クッと指で摘み、カカシはその色を見やった。
父の色であり、己の色であるこの髪は、目立つと言う理由で
染める事も考えたが、三代目と四代目が何もおかしな事ではないと
それを制してくれた。
四代目は、その後にもう一度念を押すように…

「ん!カカシはその色だからこそカカシなんだよ?
俺がこの金色を纏うように、お前にはお前の色があるんだ」

と、言ってくれた。

忍としては目立ってしまう髪色、金と対を成す銀…
思考の淵に立っていたが、ウズリが話を続けだした。

「その子は、彼を調べ上げ、周りの環境や彼を想う人達とも接触をした
そして、占いで相性を占う人間のトップにアナタの名前があったの」

「……ま、そりゃ~悪い気はしないけど、一時的な物でしょ」

ははっと、苦笑いしながら答えると、目を伏せた彼女はそれに言葉を乗せる。

「そうね…当時貴方は神無毘橋で木の葉の英雄として名を馳せ写輪眼と言う
眼を持って、帰って来たんですものね」

冷えたコーヒーが、カカシの口へと流し込まれると
ウズリが悲しそうに微笑んだ。

「写輪眼はね…オレと同じ班だった君のお兄さんの弟に当たる奴の
眼を…上忍祝いだって貰い受けたんだ。
オレは戦闘で片目を失ってしまっていたからね…彼は微笑んで
オレにその目を譲ってくれた…彼はその時体の半分を潰され
既に息も絶え絶えながら、オレにこの先を見る目をくれたんだ…
ま、その後何の因果か生きていた彼と戦う事となったんだけどね…」

悲しそうに笑うカカシに、ウズリがそうなの?と返して来たので
首を縦に振って答えを返した。

「でも、その目はうちはオビトから、奪った物だと聞いているわ?」

「そうだろうね…うちはの人間からしてみれば、面白い訳がない
オレはね…オビトにあの時、やっと…オレを認めて貰えたんだって
凄く、嬉しかった…そしてもっと早くあいつの言葉を聞いていれば
違った結末を迎えられたのにと、何度も後悔したんだ…」

ウズリが、空になったカップにコーヒーを足そうと立ち上がると、カカシのクナイが
スッと…彼女の目の前に出された。

「………」

「ごめんな、もう自由にはしてやれない」

眉尻を下げてカカシが冷えた声を発すると、ウズリはニッコリと微笑んで
カップをカカシに差し出した。

「おかわり…淹れてくれるかしら?」

「あぁ…いいよ」

指先を立てると影分身が生み出され、カップを持って台所へと向かった。

「そう…あの子生きてるの」

「辛うじて…だけどね」

「…アナタの心を奪い、スイの心を奪い…憎かった
アナタの傍に居たのは私だったのに」

再び、ポタポタと落とされる涙は本物か偽物かなど、カカシには興味のない事
それよりも、今はナルトの術を解かなければならない。

「そろそろ、教えてくれる?」

「いいわよ…アナタが私のモノになるなら」

「それは無理だ」

クスッと笑って、何もなかったように話が続けられていく

「その、狗の面に恋をした女は…近くの里でやっと
アナタの存在を知り、貴方を遠くから見続けてた…
そして、アナタが流れ着いた喜びは、きっと誰にも解らないわ…」

「………」

コトン…ウズリの横から影分身がカップを置き、ボフッと姿を消すと
それを両手で包み込み、揺らめくカップの中を覗き込んだ。

「兄が…アナタと出会ったのは偶然だった。一年に一度位しか顔を出さない兄が
弱っている貴方を見て私に言ったの…」

『コイツの目がなければ、おそらく忍としては中級だろう
だからこそ、この目を俺が貰い受け、瞳術で記憶を削ぎ落せば
この男はお前とずっと一緒に暮らせるんじゃないのか?』

「私には甘い誘いだった…」

「オレには最悪のシナリオにしか思えないけどね」

カカシが口を挟むと、涙をまだ目に貯めていたウズリが薄く微笑んだ。

「カワの時は、あんなに私を求めてくれたじゃない…
四六時中抱き合って、貴方を感じる度に私は、幸せになった…
いつか終わるかもしれないと…そう感じてはいたわ。
でも、貴方を縛れる存在が私の中に芽吹いた…」

ハーッ…深い溜息を吐き出し、だからあれ程に隠していたのかと
カカシが呟いた。

「ねぇ…ウズリ?オレの気持ちはどうなる訳?
それ程に恋焦がれて貰えるのは男として、嬉しく思う事もあるけど
オレはナルトしか見ていなかったのも…お前なら解ってたんじゃないの?」

カカシが瞳を真っすぐにウズリに向けると、彼女もそれを見返してきた。

「解ったわよ?だから、アナタの記憶を操作した…
あの子と付き合った時に、貴方を好きだった女たちは嘆き悲しんだ…
相手が男なら、幾らでも奪えるって…思ってた女たちは
あなたに何度も振られた、それでも、貴方を忘れられないと
彼女達は日々泣き暮れていたわ…
そして、思いついたのよ…あの子、うずまきナルトと言う存在が
邪魔だって事にね。

そしてその思いの矛先があの子に行ったの…知ってた?」

目を見開いたカカシが、息を呑むのを聞いてクスッと笑った。

「あの子ね…無抵抗だった…どんなに殴られても蹴られても…
私達じゃ手に負えないからって…ワザワザお金を出し合って
知り合いの中忍に、依頼したのよ…個人的にね?
そして闇討ちを成功させた男達は、今もまだこの、里で忍をやってる…
一人は第四次忍界大戦で亡くなったけど…

それでも、あの子は貴方とは別れなかった…
だから、痺れを切らした彼女達は直談判に行ったのよ…

そしてあの子は私達に言ったの…
自分を認め愛してくれる人が出来た、そしてそれがやっと出来た自分の
大事な繋がりだから、例え男同士でも先生が傍に居てくれる限り
自分からは離れないって…」

「…ナル…ト…」

カカシの手がギュッと握り締められた。

=============================

拍手[2回]

PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]