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平常版
【恋蝶】=白銀の願い=Vo13
「あら…バレちゃったよ」
と、ニッコリと笑う男にカカシがクナイを投げつけ
ナルトの側に近寄ると体がヒクヒクと痙攣しているナルトを見て目を見開いた
残りのチャクラ残量が極端に少ない。
近くにある四角い箱のようなものの上に突き出た入口から無数に這い出ている糸が
ナルトの封印の上から中へと入り込んでいる異常な光景に
慌てて手を伸ばし、その糸を引き抜くと背後から水の玉が無数に飛んでくるのに気づき
カカシがナルトを抱き上げたまま、身を翻した。
「よく…解ったね?偽物のナルトだって」
「性格が違うからね…それに、ナルトは”九尾”って呼び方をオレの前では、しないんだよ」
「は?」
「お前にはわからないさ…さ、ナルトを返してもらうよ」
ボンと影分身を作り、カカシがナルトを抱き抱えるとその場から逃れるように
洞窟の外へと出ると、頚動脈に指を当てホッと息を付いたが、そう時間をかけれるものでもない
洞窟の前でパックンたちが集合しているのにナルトを頼みポンと姿を消した。
「さて…お前の目的は九尾ってことらしいね?それは封印の箱でしょう?」
まだ、蓋がされていないそこからは、まだ足りないと糸がナルトのいた場所を探っているのが見えた
そして、封印の封の字が表に書かれていて、入口に小さく幾重にも文字が書かれている。
そしてその入口から九尾らしき赤いチャクラが出ようと膨らんでは押し戻されるのが見て取れた。
「まだ全部吸いきってないんだよね~残念だけどあんたも死にな」
水の玉がまたカカシめがけて槍のように無数に飛んでくるのを避けながら印を結ぶと
コピー忍者の名に相応しい動きを始めると、同じ水槍を相手に向かって撃ち放った。
「っ…お前っ!」
「悪いけど、ナルトを拐かした罪は重いよ」
スッと指先が印を結んでいく。
それは素早く組まれ、その組み込まれる印の正体を知ったハルキが身震いを起こした。
「なぜその術を…っく」
「オレをなんだと思ってんの?コピー忍者って結構有名なんだケドなぁ?
お前のような水使いより、もっと強い奴と何度も戦ってるんだから
コレくらい普通に使えるケド?」
言葉が吐き終わる前に、水の廊がハルキを包んだ。
静かに、水の中に囚われたハルキが呼吸不全で体の力を抜き去り
最後の空気を口から吐き出すと、その術が解かれた。
「ゲホゲホゲホ…」
「殺さないよ…そんなに楽に死なれちゃ困る」
「っぐ…」
クナイがハルキの喉仏に宛てがわれ、スッと切り傷を残すと
カカシの目が薄く微笑んだように見えた。
「さて…ここから、この花の毒を注げばお前狂うよ?
なにせ、直接の摂取は死よりも辛いはずだからねぇ…
どうする?この傷口から、この花を喰らってみる?」
背中に足を滑り込まれ、背中を支えられているのに
首はカカシが髪の毛を掴んで仰け反らせているおかげで
ハルキは動きが全く取れなくなっていた。
指先は、カカシの足に踏みつけられて印すら結べない状況で
逃げ出すすべはないのだ。
「…木の葉の影は、ナルトを疎んでいる
それをナルトに教えてやった…きっと、その花より苦しい思いをしているよ
けれど、僕がそれを証言すれば…そいつを裁ける…
花に殺されるも然り、アンタ達の助けになるのも然り…だと思いません?」
苦しげな顔が一瞬ニヤリと笑うと、カカシがフッと布越しに微笑んだ。
「聡いね…嫌いじゃないよ、そう言うの。
けどねぇ、手を出した相手が悪かったね?
ナルトは皆に守られてるからねぇ…オレが許しても、ホラ
あの九尾が許してくれるかな?」
カカシの視線の先に、ハルキが視線だけで目をやると
動けるはずのないナルトが、しっかりと自分の足で歩いていた。
ナルトが歩くたびに、先程吸収してしまったチャクラが箱からにじみ出て
ふわふわとナルトに向かって流れ込んでいく。
その度にしっかりと足を地に付けて歩み寄ってくる。
体に纏った九尾の力は、ナルトが九尾化する力を目覚めていなかった昔の姿。
チャクラに焼かれないように、しっかりとガードはされているのだろうが
今ナルトを動かしているのは…
「あれが…九尾だと言いたいのか?」
「ん~…だって、ナルト自身はチャクラ切れで動けないデショ?
だったら、九尾だって言って間違いないでしょ?」
「ありえないだろう!九尾が意思を持って寄生体を動かすなんて!ありえない!」
「お前さ…書物だけ学んだってなぁ~んも、進めないの。
ナルトに起こっている事が事実なんだから受け入れるのがセオリーでしょ?」
「ば…け…もの…っぐ!」
カカシのクナイの先が、鋭利に首筋の脈を打つ場所にぷつりと差し込まれ
ヒュッと喉を鳴らした。
「お前が、捕まえたい相手に化物は失礼じゃない?
お前一度死んでみる?」
クスッと笑ったカカシの赤い目は妖艶に輝きを見せると、ハルキはそのまま気を失ってしまった。
”カカシ…ナルトが、危ない”
「解ってます、急いで戻ります」
影分身を使い、ハルキの身柄を拘束し、ソっと花をハルキの首筋へと置いた
「花は手向けるよ…ハルキ…そこから抜け出せるなら、お前は運がいいって事だ」
と、言葉をかけると
九尾のチャクラに身を纏ったナルトに手を伸ばした。
チリチリと、九尾のチャクラがカカシの手を焼いて行くのに
カカシは構う事なく、ナルトの体をふわりと抱き上げた。
と、カカシの体がその九尾のチャクラに包まれ
先ほどの焼けるような痛みが消えた。
”ナルトを頼む”
「はい」
洞窟を背にすると、奥からくぐもった叫び声が反響する。
”うっぐわぁああああああああああああああ!!!!”
その声を、全く何事もなかったように聞き逃し
瞬身でその場を離れた。
パックンに封印の箱を綱手の元へ持って行ってくれと頼み
カカシはナルトを抱いたまま、森の中を木の葉に向けて走り出した。
と、不意に身じろいだナルトの気配に足を止めると
ソっと、木陰にナルトの体を横たわらせ、腰のポーチから竹で作られた水筒を引き出した。
「ナルト…水飲めるか?」
返事のない状態だったが、チャクラが大幅に回復を見せているのが解った。
写輪眼の多用は避けたいが、一瞬のチャクラの見極め程では
そこまで、チャクラを使うことはない。
「カカ…シ…せん…」
「ん、ここに居るよ?」
「ごめ…んな…」
「いいから水…飲みなさいよ」
そっと、口へ水を持っていくとコクコクと二度喉を鳴らしたのを確認し
カカシはナルトを再び抱き上げようとして手を止められた。
「…ナルト?」
「先生…側に居たい」
「…居るじゃない?今だってほら、触れられる程そばにいるよ?」
「もっと…深く…先生と切れない物で縛り付けられたいんだってばよ」
切れないもの…なんて何もない。
お互いの思いも絆も…あっさりと切ってしまった人を知っているから。
「どうしたのよ?あんな幻術に参っちゃった?」
優しく頬を撫で、ナルトの体を後ろからそっと抱きしめると
ナルトが安心したようにその温もりに動きにくいであろうその体をすり寄せてきた。
「…先生を信じてた…だから、乗り切れた、でも
あれは本当の事だから…嫌われて蔑まれて…それでも、先生に好きだって
思って貰えたって事が、オレの中ではスッゲーおっきくて、カカシ先生…
オレってば、カカシ先生無しでもう生きていけないってばよ。」
言っている当の本人は、全くもって思うがままの言葉を吐き出したに過ぎなかったが
カカシにしてみれば、目を丸くするのは当然で…。
「…オマエ、なにげにすっごい告白してくれちゃって…大丈夫だよ
お前を手放す気はないし、お前が離れていかない限りはお前がオレの帰る場所だから」
その言葉に本当に安堵した顔をして、そして悲しげに笑った。
「ん…カカシ先生、オレが死んだら…先生も連れてっていいってば?」
「一緒に逝くよ。」
ふわりと、暖かい風が吹いた。
そんな事したいわけじゃないしする訳でもない…ただ、何を言っても
この人は受け入れてくれる優しさを持っていて
そして、それを…守る人でもある。
「嘘だってばよ」
「知ってるよ、ほらもうイイだろ?綱手様が待ってるよ」
「…うん」
まだ九尾のチャクラは、ナルトの体を包んだままで
この会話さえ、覚えてないかもしれない。
けれど、約束をした…ナルトは嘘だと言ったけどカカシは知ってると言ったけど
それは心の中の約束。
互いに残して行くことが、苦痛にしかならないなら
一緒に逝くのがいい。
カカシの今までの友、知り合い、親戚…亡くなった人々に置いていかれ
もう友など、もう仲間など要らないと思った時期もあった。
でも、心が癒え…今最愛の人を手に入れた。
だから…
「お前が死んだら、一緒に逝くから…安心して」
その言葉はナルトの耳には届くことはなかったが
ナルトもまた、心に強く願った
☆
【恋蝶】=白銀の願い=Vo14
静まり返った病室で、そっとナルトの手を優しく包んだ。
綱手の所へ運んでから10日、チャクラが安定をしたので
面会謝絶を開放してくれた。
あの日から、一日も目を覚まさないナルトに不安を感じながら
カカシは自分の傷も癒えたので自宅療養の許可が下りた。
あと、2・3日もしたら恐らく任務も来るだろうから
その間だけでもと、ナルトの看病に毎日足を運んでいると
12日目にしてやっと目覚めた。
青い瞳が空を虚ろに映し出し、ほぅ…と息を吐きだしたナルトの視界に
己を押し込んだ。
「よっ!」
「カカシ…せんせぇ…?」
「寝坊助ナルト、おはよう」
「オレってば、そんなに寝てた?」
「今日で12日目…流石にオレも焦っちゃったよ。」
(大きな空にまで…嫉妬するってどーなの?)
なんて苦笑いをするカカシが、そっと手をナルトの頬に伸ばして止めた。
「触れていい?」
「…せんせ」
そのカカシの手を、ゆるゆると掴むと頬に引き寄せ
スリッと頬でカカシの体温を感じると涙がこみ上げてきた。
色々な思いが、重なり合って
幸せが苦しいと思っている…好きだから
離れたくなくて、それでも…自分は…
「え?…なんで泣くの」
「…せんせぇ…」
苦しそうな、辛そうな表情を作ったまま、カカシの腕の中に収まったナルトが
ポロポロと涙をこぼす。
「なぁ~ると?どうしたのよ、お前らしくない」
ポンポンといつものように頭を撫でると、少しだけナルトの表情が和らいだ。
「オレってば…サスケの事を蔑ろにしたくない…
けど、先生…オレ…オレってば…」
スッと抱きしめてカカシがポツリと言った
解っていると。
「オレ、死ぬ気はねぇ…サスケを連れ戻して腹の中の尾獣もあって
オレってば…先生とは一緒に…」
あぁ…この子は、自分から離れようと…
そう思っているのではないだろうか?
カカシは漠然とその思いに気づいた。
「なに?寝てる間にそんな事考えてたの?
お前…心の中見たくせにオレの事なぁ~んも、解ってないね?」
「え?」
「いいか?ナルトは、ナルトであって、他の何でもない。
お前に尾獣が何体入ってようが、オレにはナルトにしか見えない。
そして…お前が、サスケに執着するように、オレもお前に執着してるんだ。
こんな想い、本来ならお前に告げる事なく墓まで持って行こうと思った
けど、お前に知られたからねぇ…
そして、お前もオレを受け入れてくれた…
それで十分じゃないか?
互のしがらみの合間で良いんだよ…オレはこれからもお前の言う
忍道を見続けたいと思うし、サスケともしやりあってお前が死ぬなら
オレはそれを受け入れるしかないと思ってる。
だからってそう簡単に死なせるつもりはないけどね?
どう?ナルト…こんな答えじゃお前には不服か?」
「いい…のか?…オレってばスッゲーわがまま言ってるってばよ?」
「それをワガママって言ってくれるなら…オレはそれを糧に出来るよ。
忍びって、命をいつ落とすかも解らない、それにな…
そんな忍びだからこそ、一瞬一瞬が大事だと思わないか?
その少しの間だけでいいんだ…戦いに出れば、忘れてもいい…
ただ、ほんの少しだけでいい…ナルトが欲しいんだよ」
グッと抱きしめる腕は暖かく、母とも父とも違う愛情。
今までそんな思いも、そんな感情も貰った事のないもので
求めて止まなかったもの。
それをカカシが与えてくれる喜びに変わった途端に
”怖くなった”失う事に恐れを抱いてしまった。
「離れないで…くれってばよ」
「あぁ…離れないよ」
「ごめんな?カカシ先生」
「謝らないのっ!オレはお前がそこに居るだけで生きていけるんだから」
「うん…」
大好きな人…木の葉の民であり、師匠であり、恋人であり…
この人に愛を囁く事が嬉しくて暖かくて…
「先生…大好きだってば」
「うん。オレもナルト…お前が大好きだ」
そっと重なった唇から、愛情が漏れ出てなお…溢れる想い。
カチャリ…と、開いたドアにベットに腰掛けたカカシが視線を走らせると
綱手が立っていた。
抱き合ったままだったが、離れる事をしないで
ただ、視線を合わせるだけのカカシに苦笑いしながら
綱手がソっと側に寄ってきて、二人の体をその上から抱きしめた
「綱手様?」
「今回の件…本当に申し訳なかった」
苦しげに押し出された言葉は、一連の騒動の謝罪。
火影の上の大名達がしでかした過ちは、木の葉の火影とて
やすやすと手を出せるようなものではない。
「あ…あの、痛いんですけど?」
カカシに言われて、あぁ…と開放してもらい
病室のベットの横の椅子に綱手を座らせ
カカシも逆側から椅子を持ってナルトを囲むように座った。
「今回の事件は、火の国の大名の家の者の仕業でな…
手を打ちたくても何も出来なかった…。
最初の事件で、職を追われその仕返しに九尾を抜くと言う計画を立てたんだと
大名達が言ってた…
今回は、多めに見るが次回同じことを繰り返せば、ナルト…お前を木の葉から出し
風の国にでも送ってやると脅したら、もう二度としないと誓ってくれた。
だから、安心しろ」
「…そっか、解ったってばよ!」
と、ナルトの笑顔が綱手に向けられると
それまで苦しそうな顔をしていた綱手も釣られるように微笑み
ホッとしたような表情をあからさまに見せてくれたもんだから
カカシも苦笑いしか出来なかった。
一番板挟みになったのは…綱手だろうから。
「それと、ナルト!
お前はもっとカカシに甘えていい私が許す。
だから、お前の思いも、辛さも、この男に受け止めてもらえ。
仮にも私の次の火影はカカシか、ナルト…お前だろうからな?
どんな形になっても、一生互を信じ合えるような関係をしていくといい」
「…うん!」
「はい」
「それと、ナルト…チャクラはほぼ回復してきているから2・3日中には退院だ、
あ~ついでに、カカシ…お前に任務があるから帰りに寄れ」
「その言葉にげんなりしたように、ハイと返事を返したカカシにナルトが
ニッシッシ、こき使われるってばよ!」
なんて言葉を交わした。
☆
【恋蝶】=白銀の願い=Vo15
ナルトが退院して、自宅で惰眠を貪っていた。
ただ眠い…と言うだけでダラダラと眠り、カカシに会いたいと思っては居たものの
任務で出掛けているのは、出かける前に言ってくれたから。
カカシ先生の家に行きたいと、願えば
すんなりと今度はちゃんと家までたどり着いてね?なんて言われた。
夕方になり流石にお腹が減ったので、久しぶりに愛しの一楽へと足を向け
そこでイルカと出会った。
今回の事は大事にしたくないという綱手の願いがあるため
言う事は出来ず、長期の任務に出たと言ってごまかしたのだが
イルカが何かを悟っているかのように
「お前が無事だったら、良いんだ」
と、ラーメンをご馳走してくれた。
いつも遠くで自分を見守ってくれている人
親代わりなようなもので、そこには師弟を超えた思いがちゃんとある。
「それにしても…カカシ先生はすごいな」
「え?」
「お前に術を作らせたり出来るのって…きっと、
あの人だからなんだろうなって思えるよ。」
「うん…カカシ先生はオレを解ってくれる人の一人だからな!
勿論イルカ先生だって解ってくれてるってばよ?」
「あはは…オレはお前の成長を黙って見てる位しか出来ないから…」
「なっ!そんな事無いってばよ!オレってば、カカシ先生も凄いと思うけど
イルカ先生のその…なんつーか…オレの事を解ってくれてるっつーの?
それだけでスッゲー安心するし力が湧いてくるんだってばよ!」
「そうか…心の支えにはまだ成れてるみたいだな?」
と、優しく微笑んでラーメンを食べ終わると明日もアカデミーだからと
その場で手を振り別れた。
自宅に着くなりベットに体を投げやって、ハーっと息を吐き出すと
思い出すのはカカシ先生の行ってきますの言葉。
心が温かくなって、それでいて…家に誰も居た事のないナルトには
その言葉が凄く暖かく、嬉しいものだって言うのはきっと、自分にしかわからない。
「カカシ先生に会いたい…ってば…よ」
ゴロン…と寝返りを打ったら、窓に頬を染めたカカシが居て驚いたナルトが
ベットから落ちるという忍びとしては失態をしでかした。
「あ、えっと…う…の、覗くなってば!」
「…あ、うん…早く会いたくて戻ってきたまんま来ちゃったんだけど
まさか、お前のそんな一言聞けるなんて思ってなくてちょっと…嬉しくて動揺した。」
よく見れば本当に任務帰りと言う格好。
泥だらけの体に、すす汚れた髪や顔。
それでも一番に会いに来てくれた喜びが勝って
そっと近寄ると、窓をくぐり切っていないカカシの袖を掴んだ。
「あ…あのっ…おかえりなさい…ってばよ」
「え?あ…うん、ただいま」
その言葉を交わせるだけで凄く心が温かくなって
ナルトはそっと抱きついた。
「ちょ、汚れるよ?」
「いい…先生の体温を感じたいんだってばよ」
「…そんな事言われたら、オレ自制利かす自信なくなるからやめようね?」
なんて苦笑いしてくるカカシにもう少しきつく抱きついた。
「したいの?」
「ナル…ト?え?な、なに…を?」
「…オレと、したい?」
甘えたように上を見上げてくるナルトの目は、夜に見ると深く青みがかって
凄く艷やかに見える。
ドキドキと脈を速めたカカシが、ソロソロと手を肩に添えて問う。
「えっと…ナルトさん?先生動揺してるんだけど…
”したい”って言うのは…性的な 意味 ?」
「…それ以外、あるのか?」
「…な、無いけど…」
(いやいや、据え膳だもの!これは喰っても問題ないでしょ?
それに恋人なんだし…でもここで?
ナルトのベットはオレには狭いし…うちに連れてく?
いやまて…まだナルトは未成年だ)
等と、ごちゃごちゃ考えた所で…今の状況は何も変わらない。
「ナ、ナルトは?…したいの?」
「…したいとかじゃねぇってば!でも、もっと…先生と深く繋がりたい
それが、したいって意味なのか?」
「…う」
可愛すぎる…と、口布をしている事も忘れて頬が緩むのを
手で隠してから、ハタと気づいた。
まだ、彼は性的な意味で”したい”と、告げている訳ではない。
ただもっと、体温を感じていたいだけなのかもしれない。
「…この前の約束、今果たす?」
「え?約束?」
「オレの家…くるか?」
「いいの!?」
太陽のような笑顔に、邪な気持ちが潔く流れていって
カカシはナルトの着替えを待って二人で歩いて
自宅へと向かった。
帰り道に任務中に見た変な景色やら、面白い人と出会った話を
ポツポツと澄ませると、あっと言う間にカカシの家へと到着し
そのままカカシは汚れを落としたいからとシャワーに入ることにした。
ナルトは既にお泊り道具としてパジャマを持参していたので
それに着替えると、カカシの家と言うだけでやけに落ち着かなく
グルグルと回ったり匂いを吸い込んだりとしているうちに
カカシがシャワーから出てきてドキリと脈を強めた。
口布も、額あてもない、頭からタオルをかぶった状態で
上半身裸…ドキドキしない方がおかしい。
「ん?」
「あ、いや…カカシ先生綺麗だなって」
「え?オレの何が綺麗だってーのよ?こんな傷だらけの体」
「…男のクンシヨーだってばよ!」
「ぷっ、またカタカナ読み」
「うっ!うっせぇ!」
なんて頬を膨らませるとギシッと座っていたソファーの横に
いい香りに包まれたカカシが腰を下ろし、バスタオルを肩に掛けた。
「さて…お泊り初めてだっけ?」
「…うん」
横に視線を投げれば、下を向いて頬を染め
ちょっと手を握り締めてるナルトが目に入り薄く微笑んだ。
「そんな硬くならなくて良いよ?しないから」
「え?」
「するためだけに一緒にいるのとは違うからね?
だから、オレにも感染するから緊張しないでちょーだいよ」
「あ…うん、解ったてば」
それから他愛もない話をいくつかして、ナルトがあくびを一つした所で
ベットに向かった。
(頑張れオレの自制心!)
なんて意気込んでから、ナルトと一緒に布団に入り込むと
思ったより体温の高いナルトの体がカカシの体に擦り寄ってきた。
「せんせ…」
「ん?」
「こうやって、人の体温感じながら寝るのって、スゲー安心する」
「…うん、そのまま寝ちゃいなさい?」
「うん…でもさでもさ?カカシ先生!オレってば一つ気になるんだけど」
「え?」
「オレって…入れる方?入れられる方?」
「ぶっ!な、何言ってるの?」
「…気になるってばよ」
ギュッとナルトの体を抱きしめて、フーっと一息深呼吸を終え
口を開いた。
「ナルトはどっちがいいの?」
「え?」
「する方とされる方…」
「ど、どっちでもいいってばよ?それに…良くわかんねぇし」
「良く解らないとは?する方の事?」
「…うん」
「ま…そっか、そうだよね…だったら、オレがする方でいいよ
馴染んだら…ナルトのしたい方をして良い」
「…う、ん」
「なに?今からそんな事考えて怖くなってたの?」
「…だって、前先生キスしただけで勃ってたし…」
「あ~…アレは忘れて…恥ずかしいから」
「だって!先生はしたいからそうなるんだろう?」
まくし立てられた言葉に、苦笑いをすると”まぁね…”と答え
ギュッとナルトを更に強く抱きしめて
今の紅潮した気持ちを逃そうとしていた。
けれど、温もりも、笑顔も、言葉も
夢や空想のそれとは違い生々しくカカシを追い詰めてしまう。
「したいから…何?」
あぁ、余裕のない返事をしてしまった…
なんて思って笑顔を貼り付けようとして
酷く悲しそうな顔になってしまった。
「しよ?…オレ、先生と繋がりたいってばよ」
「お前ねぇ…煽らないでよ」
「だって!も…先生苦しそうだし」
真っ赤になったナルトがごそりと動いてその言葉の意味が解った。
「え?…あ…」
抱きしめてて自分の体の状態を言われるまで気が付かなかった
十分抑えれてたと思ってたのに、意に反してソコは硬く膨らみを強めていた。
「だ、ダメだ…ナルト、これは収まるから…少し待って」
「ヤダ…」
「え?」
「先生ともっとくっつきてぇ」
「ちょ、収まらなくなるって!」
「良いんだって!オレが…する!」
「え?は?ちょ…何脱がそうとして…こら~!」
「先生がしてくれないならオレがする!このヘタレ上忍!」
「…ヘタレって、お前も大概ね…本当にいいの?抱くよ?」
カカシのスエットをグッと腕から引き抜き、脱がしきってから
ナルトがその体に付いた傷一つ一つに指を這わせた。
「…ナル…ト?」
「傷…一杯」
「…ん、そうだね」
「せんせ…しよ?」
「ん…解ったよ、ナルト」
トサリとベットに押し戻されて、ナルトの体が沈むと
カカシの長く綺麗な指が一つ一つナルトのパジャマのボタンを外し
指先がそっと直に肌の上に落とされてピクっと身じろいだ。
「怖くなったら、言うんだよ?」
「ん…」
そして唇が重なり舌が互を求めて這い回る中
体に来る刺激は、腰辺りからゆっくりと上に登ってきて
引き締まった体の上を何度も行き来するうちに体がジンと何かを訴えてくる。
前まで知らなかったこの感覚は下半身に血が行くのと同じ感覚。
「っ…」
と、抑えきれない声が漏れて、慌てて手で口を塞ぐと、カカシの手がやんわりと
ナルトの手を口から外した。
「大丈夫…声が出るのは気持い証拠だから、聞かせて?」
と、言い切った時、急に胸の上にあった突起がグッと指で押し込められ
「んっ あっ…」
と、声を漏らしてしまい真っ赤に染まった。
カカシに愛されて繋がる事の意味を知った、互いの温もりが愛おしく
更なる深みへと惹きこまれまどろんでいると
カカシが体を綺麗にすると言い出して、恥ずかしさから慌てて
自分でやると立ち上がった…が。
起き上がろうとして失敗した…。
打ち込まれたカカシの律動で間違いなく腰が立たなくなってしまっている
それに気づくのが遅かったせいで、処理はカカシにお願いするしかなさそうだと
内心で諦めるも、恥ずかしいものは恥ずかしい!なんて葛藤していると
「でしょ?いくら回復力早くても初めてしたんだから…
ほら、綺麗にしてあげるからこっち向けて?」
「う~…ここまで考えてなかったってばよ!」
ぐったりとして、横たわったナルトの処理を終えると
カカシがベットに戻ってきて、ナルトの体を優しく抱きしめた。
「痛かったでしょ?」
「…かなり」
「ごめんね?でも、今度は痛くないようにするからね?」
「え?今度?」
「え?お前一回でもうこの先やるつもり無かったの?」
「……そうじゃないけど」
「いや、もうね…その間が、そのつもりでしたと言ってる様なもんだ」
ハーと息を吐くカカシにクスッと笑って体をすり寄せた。
「先生のしたい時がオレのしたい時だってばよ」
なんて、甘えたことを言ってくれる御蔭で
頬が緩んで仕方がない。
愛しいと…本気で思ったのはいつだったか…
漠然と目をつぶって寝息を立てているナルトを見て考える。
恋は突然降ってきて、心をこれでもかと締め付ける。
深い闇も、淡い光も、この恋に全て委ねて行こう。
そう思えると、ナルトがとても儚い存在に思えてキスを落とした
「愛してる…ナルト…」
そう、告げて彼らの愛はこれからゆっくりと育っていく。
FIN
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