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なつめっぐ 保管場所

倉庫です。

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刹那の幻2

続きです。

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【刹那の幻】3


火の国国境。

やっとその場に足を付けた七班のメンバーは噎せ返る火薬の香りと
血の香りの混じった微風を受けて眉間にシワを寄せた。

硝煙の香りと、鉄の匂い…死臭と呼ぶような香りまで漂っている
こんな中に本当に…あの、天真爛漫のようなうるさいナルトが居れるのだろうか?
まっさきに敵に見つかって、的になりそうだなぁと…サイが雰囲気を読まずに呟き
サクラに一発もらった後…

「カカシ先生!あそこに野営があります!」

数キロ先、サクラが指す指の方向に細く棚引く白煙。
夕刻も近いこの時間に夕食でも作っていると言う事だろう。

「よし、そこまで一気に行くぞ!」

少し小高い丘を蹴り上げ、追い付いてきたヤマトと合流も果たし
4人でその場所へ向かうと、ケガをした人間や気力さえ失った人間が
そこらじゅうに居た。

それを横目で見ながら門の前で立ち止まると、カカシが一歩前へと出て声を発した。

「我々は、火の国の忍です。ここにサジ小隊がお世話になってると思うのですが」

カカシの言葉に、門を守っていた一人の男が悲しげな目を向け
横にいたもう一人の男がズイッと前に出てきてこう…告げた。

「新しく派遣されたチームか?」

「…新しく?」

問われた事が解らないと首を傾げると
男は悪びれもせず続けた。

「お館様が、あの小隊は使い物にならんので、次の忍をよこすよう
伝令は行ったはずだが…?」

使い物にならない…そう言われた状況が瞬時に予測出来たのはヤマトとカカシ。
二人が視線を絡ませると早まる心臓をやり過ごし、カカシは平静を装い話を続ける。

「いえ、サジ班の補強と死亡者が出たらしいのでその回収に参りました」

その言葉に、ふむと一つ考えて男が告げる。

「あぁ…だったら、ホトキ」

横にいた門番が、スッと手を差し伸べ
案内された先は、小さなテント。
そこに辿り着く前に、サクラがフルフルと小さく震えていたのを
サイが肩を抱き、真っすぐにその場所へと向かった。

「荷物はナルトさんが運んでいますので…中にあります」

「ナルトが?」

「はい、サジさんの遺体の処理は全てナルトさんが済ませたと言っていました」

その言葉にカカシが目を見開いた。

「え?…サジ、隊長は…戦死したって事?」

「ええ…」

「ナルトが遺体処理を?」

カカシが声を掛けるとコクっと頭を縦に振り、そう本人から聞き
もし、誰かが来たらそれを伝えてくれと伝言を残していたと告げた。

「で…そのナルトは?」

「恐らく…今は敵陣の、ど真ん中です」

「「え?」」

一斉にサイとサクラが声を上げた。
本来なら指示を出さなければならないサジが死去し
残る2名…イヤ、ナルトが一人で敵陣のど真ん中って事は…
と、カカシが高回転で回る頭で弾き出した答えは…

「…失踪者の捜索って事か」

「はい」

「場所は?」

「三日月渓谷です。」

カカシが、それを聞いてヤマトと会話を交わし
サイとサクラにはこの場所に残ってとりあえずの怪我人の面倒と
この場所の護衛を、カカシは恐らく敵陣に乗り込むという事は、目立ってはいけないと単身で
ナルトの捜索にあたり、ヤマトは状況判断と
遺体処理を完璧に出来ているかの確認。
割り振りが決まり、カカシがその場を飛び出した。





三日月渓谷…深い谷になっていて、人が歩ける幅は
三人並ぶのがやっとの狭さ
そんな中で奇襲を受けて、よく生きてられたなと
ナルトがフッと笑った。

だが、歩けば歩くほど…守りきれなかった者達の屍を目にしなければならず
何度目かわからない吐き気に、素直に従った。

「うぐっ…うえっ…」

はぁはぁと、吐き出すにも胃の内容物は殆ど出てこず
ナルトは唾液だけを吐き出すと又、前へと進んだ。

「くそっ!アイジさんどこだー!?」

白い布が鼻と口を覆っていたが
体に付いた血痕がその口布を汚していく

「くそっ…」

ヒタヒタと歩いていると、ピン…と一瞬の張り詰めた空気に
ナルトが慌ててその場を飛び退くと
ドォン…と、一際大きな音を立てて後にドドドンと数回の爆発音。
ナルトも避けきれず、爆風に体を押しやられ
反り立った石柱に体が殴りつけられる

「ぐっ…っは…」

口内にこみ上げる、鉄臭いそれが
コプッ…と、吐き出されその場にズルズルと体を預けた。

「アイジ…さ…」

立ち上がろうと体を動かそうとしても、それが叶わず
止む終えなしに、少し休憩を取ろうと岩陰に身を潜め目を閉じた。

「あの起爆札…木の葉のだよな…
アイジさんが近くにいんのか?」

はぁ、と一息付いてナルトが重い体を動かし再びアイジを探した。


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【刹那の幻】4

(今の爆発音は…ナルトか?)

カカシが渓谷に辿り着く少し前に聞こえた音は
遥か西方より響いて来た。
その音の反響の仕方や、地形を思い浮かべ距離を図ると
スッと体を反転し、谷を見下ろしながら西方へと足を勧めた。

(かなりの犠牲者が出てるな…)

視界に広がる、犠牲者の骸にカカシがフーっと溜息を落とし
グッと額当てを上げ、晒された深紅の瞳で辺りを伺う。

少しでも…生存確認が出来れば、連れ帰る事も出来る…

だが、前に進んでいく間に感じたのは
たった一つ…。

今迎えに向かってる、ナルトのものだけだった。

(やっと見つけた…)

カカシがスッとナルトの歩いている後ろに付くと
ナルトは振り返る事無く、カカシが声を掛けようと肩に手を伸ばそうとした時だった。

「触るなってばよ…」

その言葉にピクリと、カカシの手が行き場をなくし止められた。

「オレに…気付いてたの?」

行き場を無くした手を、ポケットに押し込むと
カカシは深い溜息を吐き出した。

「うん…」

その声の弱さに、カカシはナルトの横にスッと自分の居場所を確保すると
一緒に前を見ながらも、チラリチラリとナルトを見やる。
すり傷や硝煙の香り、至る所にこびり付いた血痕が、今までの戦いの凄まじさを
視覚的に訴えかけるようなボロボロの姿なのに
左腕に輝いた2つの額あてが嫌に輝いていた。

「そう…今仙人モードなのか?」

「あぁ、アイジさんを探さなくちゃいけねぇんだ」

写輪眼を開いている自分には解る…それに
これ以上は…敵陣のど真ん中も良い所だ。
見張りにでも見つかれば一溜りもない

「…ナルト」

「全部言わなくていいってばよ、カカシ先生…
生命反応は全く感じてねぇから、解ってる
でもさ…でも、亡骸だけでも連れて帰りてぇんだ」

ナルトの強い視線は揺れる事はなくただ真っ直ぐ前を見据えていた。
だが…既にこの場所は…

「これ以上行けば、敵に見つかるよ?」

分かっていると言わんばかりに、首を縦に振るナルトが
スッとカカシを横目でみやって告げた。

「…先生は戻れってば」

だが、カカシの答えはナルトの言葉を一蹴した

「無理だね」

「なっ!」

「お前さ…死ぬ気はないとしても、見付かっても良いと思ってるでしょ?」

「……思ってねぇ」

「ハイ嘘ね」

ナルトがギュッと手を握った。

「仙人モードで入り込めばある程度は気配を読めねぇし
オレはアイジさんを連れて帰らなければ戻れねぇんだってばよ」

「残念ながら、オレはナルトを連れ帰らなくちゃならないんでね…
五代目の命令だから。アイジ捜索はもう一団体が到着してからになる」

「…でもっ!」

「ナルト…サジ隊長の言葉を思い出してごらん?」

「……。」

「もしオレが失踪者を捜索させるなら、
もっと安全を確保してから捜索させるけどね?」

ナルトがその言葉に深く息を吐いて、仙人モードを解いた。
足で纏にしかならない…そんな事はしちゃいけない。
自分の我を通したいなら、それだけの理由が必要だと
サジに何度も言われた。
勝手に暴走して、前に何度かサジを危険な目に合わせてしまっている
カカシはその回避が上手いから気が付かなかったが…
多大な迷惑を掛けている事もあるのだと知った。

そして、それを上手く躱すカカシは凄い忍なのだという事も。

「…分かったってばよ、勝手言ってごめん」

「…随分物分りが良くなったな、ま…アイジの捜索はしっかりやらせるから
一度戻ろうな?」

「おう…」

素直に言う事を聞くナルトに変な感覚が襲いかかるが
カカシは、他の班の影響力…それも成長だなと、思い至り
サクラとサイの待つ場所へと戻った。

ボロボロのナルトの姿に、サクラが駆け寄り
荷物置き場に、居て良いと言われたのでそこで
ナルトの服をひん剥く。

「うわっ!サクラちゃんのえっち!」

「うっさいわ!アンタね、治りが早いって言っても
怪我してるんだから大人しく治療を受けなさい!」

ベリッと、剥がした体の白さと
そこに浮かんでいる無数の傷にサクラが息を飲んだ。

「アンタ…どんだけ攻撃受けたのよ!バカッ!」

ミミズ腫れから治りかけの生傷から…至る所にある傷
サクラがチャクラを送りながら傷の治り具合を確かめる。

「ごめんってばよ」

「ったく…アンタの事だからこうなってる予想は付いたけど…
どうして仙人モードやチャクラモードで戦わなかったの?」

傷口に、薬を塗りこみながら問えば
イテテテと言いながら答える。

「…相手は生身の普通の人間だから、それにオレは護衛と保護で
この場所に来たから」

その続きを話そうとした口を、カカシの声が遮った。

「ナルト、治療が終わったら少し話がある」

「…解ったってば」

「外にいるから、治療が終わったらおいで」

そう言いながらドアを抜けていくカカシを目で追って
コクリと首を上下させた。

サクラもそれ以上はナルトを問い詰めなくて、すぐに治療を終わらせると
ナルトはジャージの上を羽織って外へと出た。

ヒュッと風が吹き抜け、柵の前で両手を腕くみし、
背中を預けてこちらを見据えるカカシと目が合うとナルトはそのカカシの前まで
足を進めてピタリと止まった。

「治療終わったの?」

「…終わったってばよ」

「そう、んじゃちょっと来なさいね」

グッと腕を掴まれ、引かれるとあっと言う間に
その護衛者の前まで連れて行かれた。

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