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なつめっぐ 保管場所

倉庫です。

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セイちゃんが舞妓さんになっちゃっています。
妖怪系のネタになるのかなぁ・・・・
まぁ、穏やかに戦闘シーンあります(穏やかなのか?w

【魂】

さらさらと
散り行く花びら、今いずこ

逢うて、逢うせぬ雲隠れの華雪


春の風が屯所へと吹き込む中
一際小さな隊士が、花弁と戯れ事を楽しんでいた


「ぉぃ」
小さく呼ばれた声に、屯所の中からではないと察知した少年が
腰に在った刀に手を掛ける
「何奴・・・」
18歳・・・女ならば花盛りであろうこの少年は二つの性を持つ
否、女が本当の性なのだろうが、新選組と言う場所へと身を置く為に
男になったのだ。

「ここだ・・・」呼ばれるがまま、進むと
「っ!浮っ・・・ むぐっ」
手で、口を塞がれ、見事に身体の軽い少年は引きずり出された

「なにするんですかっっ!」
「厭だな~あんたに頼みがあってきたんだよ」
さわり・・・と尻を撫で上げられ、少年の身体に鳥肌がぶつぶつと走る
「貴方は、こここ・・・こんな場所に居てはダメですっ!」
「だったら、近藤に会わせろ」
「え・・・?」
「お前を借り出す許可を貰おう」
「ちょ!何で勝手に決めているんですかっ!」
「へぇ~逆らうんだ?」
言葉のやり取りがそこで切れる。この時代上下関係は絶対服従に近いものがあった
逆らう事など許されるはずも無い・・・・それに
この男は町人の姿をしては居るが、浮之助と言う名の他にもう一つ名前があった
「一橋慶喜」禁裏守衛総督兼摂海防禦指揮・・・手早く云えば次期将軍である。

しぶしぶではあるが、誰にも知られたくないと言う願いどおり
少年は、近藤の元へと向かった


「神谷です。」少年は、部屋の前で膝を付き、声をかける
「入りなさい。」優しい声にほっとするように少年は襖を開け
周りを一度見やってから部屋へと進んだ

近藤勇、新選組の局長
この男に話をする折には必ずと言って良いほど土方副長が付いているのだが
本日に限っては黒谷へと呼ばれ、それではなかった

神谷清三郎と言う名の少年隊士は、実は女
富永セイが本来の名前なのだが、亡くなった母方の姓を貰い、亡くなった兄が
よく自分を、清三郎とふざけて呼んでいた為に、その名を思いついた
仇討ちを目的に新選組へと入隊したが、いつしか沖田総司に惹かれ
彼を自分の命として守ると決意したのだ
沖田はセイの正体を知る協力者だった・・・。

そんな女が、男として生きる
そして、恋情を燃やしながら、命を掛ける
凛とした姿が、近藤の視界に入ると、ふぅと一息付き
先ほどの話をした。

「なっ!ひひ・・・一橋公がっ!?」
驚きのあまり、声を荒げた局長を抑えるべく両の手を差し出すセイ
「で・・・どうすればいいんだ?」近藤の心音がバクバクと音を立てているのを
セイも気が付くほどだった。

「なんだか、私を借りたいと申しておりました。 内容も何も告げずに島原の
花屋敷と言う場所へ二人で来てくれと言われまして・・・・」

セイの左肩をがしっと掴むと、近藤がウンウンと頭を上下に振り
用意を始めた・・・・が・・・

「局長・・・差し出がましいかもしれませんが・・・紋付袴は・・・・」
島原に行くというより、殿に会いに行くと言う気持ちの表れなのだろう
セイに窘められて、慌てて軽装をした。

「総司に文を託して出掛けるとするか・・・・」
手がぷるぷると震える近藤を見て、可愛い人だな~と、口には出さなかったが
心の中で微笑んだ

からんころん・・・・下駄の音が響き、心地よい夕暮れ
桜の花弁が風に踊り、セイの前を優しく通り過ぎると
髪の上に一枚だけ残された桜・・・・。

「神谷君はこう言う色も似合うな~」
と、微笑みながらセイの花弁を取り、手に乗せると再び風に攫われ飛んでいく
「そ、そ・・そうですか?」
ほんのりと赤くなったセイが返すと、うむ。とだけ返して来た

「所で神谷君は一体一橋公の何処までを知っているんだい?」
核心に触れられ、セイも困り果てる・・・・
だが、局長から聞かれた事、嘘など付ける筈は無い
深雪の事は避けて、下町で偶然知り合った事を伝えた

「ふむ・・・では、総司も知っているんだな?」
コクンと頭を下げた所で、目的地に到着した

「ここか・・・」緊張した面持ちで、近藤が暖簾を潜る

「いらっはい~」
新選組だと伝えると、遊里とは別に部屋へ通され、その中心で大笑いしている・・・ヤツが居た

「ぉ?清三郎、約束どおり近藤を連れて来たな!エライエライ」
セイに止められて居るために、近藤は頭を下げる事が出来ず
せめてもと、頭を下へと向け俯いていると、その視界に彼が飛び込んできた
「近藤、気にするな、話をしたいだけだ」下から覗き込んだ慶喜に驚き目を上に上げると
「はっ!」と、返答を返しその場に腰を下ろすと、セイもその横へと正座をし慶喜を見た

人払いを済ませると、慶喜はあぐらを掻き、そこへと座ると近藤に酒を勧める
「も・・・勿体のうございますっ。」そう言うなと、小さな御猪口へ酒が注がれ
近藤が一気に飲み干すと、にんまりと笑った


「その杯を交わしたからには、清三郎を貸してくれるって事で良いな?」

なんと云う策士。だがセイがその言葉に噛み付いた
「私は身売りされてるみたいで厭なんで、せめて事情をお話下さいっ!」
「まぁ、身請けしてもいいけど」などと冗談を交えながら
本題に入った。


慶喜の話ではこうだ・・・・

数ヶ月前から不穏な動きを見せる者が居る
屋敷内の人間は何処まで信じて良いか判らない為、忠誠心の強い新選組から
一人貸して貰おうと思った、だが、男では間違いなく疑われるであろうし
新選組の男達は有名でもある。名の知れた者を使えば目論見はすぐに明らかとなる
そこで、背の小さい女みたいな清三郎を思い出し、女装させてその男の通う遊里で
探りを入れてくれとの話だった

「背の小さいってのは、仕方ないにしても・・・女見たいって、いくら浮之助さんでも失礼ですよっ!」
セイが怒った猫のように背中を立てて怒る姿に、ニヤニヤと笑うだけの一橋
「で・・・貸してくれるかい?」
「え・・えぇ、神谷君・・・良いだろうか?」
逆らえる訳が無い・・・いくら女と言われても、逆らえば、近藤が新選組の名が・・・傷付く

「はい・・・」
沖田に心の奥で謝った。
前回の任務で、痛いほど沖田に心配を掛けたと自覚していたはずなのに

だが・・・・
(断れないいいぃぃ~)よよ落涙・・・・の気分である(どんな気分だ
「まぁ、遊里だからなぁ~男相手な事だから、清三郎には、ナニカト出来ないだろう?」
「なっ・・なっ・・・」真っ赤になったセイは、そのナニカと言うのが枕を取ると言う事だと
すぐに理解した。途端(お・・男で助かったぁ~・・・・)と、心から思えた

「だから、そいつが床に着くまでの間の手伝いだな・・・女将にはその旨伝えておく
早速明日から行って欲しいんだが、こいつも男が通わないときっと疑われるだろうから
すまんが、2日に一遍でも沖田辺りでも通わせてくれ」
「浮っ!!!!」セイの反論はウインクにより流されてしまった・・・。
(あぁ、あの時沖田先生が似合わないボケかますから・・・・・どーしよー・・・・)

「さて、物は試しだ、見れたモンじゃなければ今の話はナシだからな!」と
慶喜が手をパンパンと叩くと女が群がりセイを他の部屋へと引きずり込んでいった
「うわぁ~ぎゃ~」とりあえず、叫び声を肴に、二人は話を続けていた




「うわぁ・・・綺麗やなぁ・・・天神でも通るんちゃう?」
着物は流石に、自分である程度着たが自分がここまで変わるものだとは
思っても居なかった。

(うわぁ・・・綺麗・・・・)
だが、セイは男で無ければならない
(女の私は消さなければ・・・・・)
重たく飾られた頭をふうるふると横に振ると、簪が見事に飛んで行った
「うわぁ。すいません・・・」「慣れないと重いでっしゃろぉ?」
取りあえずは化粧も済み、重さゆえかしずしずと前へ進んだ
(女装するなんて、沖田先生に絶対怒られるだろうなぁ・・・)


しゅんとなったり、喜んで見たり、コロコロと表情を変えるセイに周りの女も薄く微笑んだ
「失礼しますっ!」パンと、開け放たれたまでは、清三郎そのものだが
「かっ・・・かか・・・神谷君か・・・?」
しこたま驚いている様子の近藤に苦笑いを向け、再び先程の場所へと腰を下ろした
「へぇ、綺麗に化けたな、馬子にも衣装ってやつだ。合格だな!」
(え・・いや、合格したくないんですけど・・・・)
なんて言えば、近藤が厭な思いをするだろうとその言葉は飲み込んだ
「では、明日から頼む賃金は弾むからなっ♪」と、ウキウキ気分で話す男に
セイは心底苛立っていた



闇が辺りを飲み込んでしまい。提灯を借りて帰営する。
近藤が苦笑いを向けてセイにそこら辺の女より、女らしかったと言われ
セイも嬉しさも少しはあるが、苦笑いするしかなかった

(さて・・どうしよ・・・・)沖田へ何と報告をして良いものやら
断れない頼みだとは解ってくれるだろうが、最近何かと問題を起こして
沖田に面倒を掛けている手前、自分からは言い出しにくかったのだ

「あ~総司には私から伝えるから、歳にも伝えるし大丈夫だよ」と、
心を見透かされたかのように、ポンと頭を撫でられた


翌朝、近藤が朝から二人を呼び話をしていた。
「ええぇええ!?」土方と総司の声が輪唱する
うな垂れた総司が、あの人ならやりかねないと・・・心の奥底で思い
溜息を落とした。
無論土方も、自分抜きでこんな話が進んでるとは知らずに蚊帳の外状態
青筋を立てるのも無理はないが、何せ公のお願いなのだから
神谷に荷が重いだろうと伝えるが、覆す事など出来るとは思ってはいない
「あ、総司・・・お前神谷君を買うのに何度か通ってもらうからそのつもりで」
今頃落ち込んでいるであろうセイを見付けて、話をしようと思い
立ち上がった時に話しかけられたので、承知とだけ伝え
セイが泣いているかも知れない場所へと向かった


「ここでしたか・・・・」
「あ・・・すいません、考え事をしていたもので・・・・」
セイが、居た場所は総司の思った場所とは違った所で、思いっきり逆方向を探して居たんだと
苦笑いまで生まれてくるが、己が拭おうと思ったセイの目は濡れては居なかった。
「てっきり泣いてると思ったのに。」
総司の言葉ににっこりと笑って返した
「泣いてませんよ?先生に何も言わずに行く事に成らなくて良かったって思ったんです。」
「え?私にですか・・・?」
「はい。先生に言わずに出ると心苦しいんです、やましい事をしてる訳でもないのに」
クスと笑うセイの表情に胸が高鳴った
(うわぁ~なんでしょう、この子は・・・ホントに可愛い・・・)
頬を赤らめ、ぷぅと膨れた頬上目遣いな瞳に、慌てて視線を同じ高さまで下げた
「セイ太夫に入れあげて通うって話し・・・・本当に成ってしまいそうですね」
「あ・・・そそ・・そうですね」深雪がまだ居た時に総司と話した他愛も無い話だったが
二人とも、自分の言った言葉に真っ赤になった事があった
ふっと、それを思い出し言った言葉で更に追い討ちを掛けたのであろう
二人とも茹でタコの半歩手前状態、首まで真っ赤に染めてしまっていた


「遊里ですか・・・心配ですね」そうですよね・・と返すと、二人とも勢いよく溜息を付く
「でも、浮さんが枕は取らせないと・・・」「あ!当たり前ですっ!」総司がその言葉に
勢いを付けて吐き出した。

自分の願いでこの子を嫁にやるのは構わないが、遊里などで働かせる為に出す訳ではない
幸せに成って欲しい子が遊里に身を置いていると思うだけで胸が引き裂かれそうだった

「神谷さん・・・」「嫌ですよ」「まだ何も・・・・」
総司の思いは、隊を抜けろ・・・だろうと察知した
「先生、女子だから隊を抜けろと言うんでしょ?」
「え・・・」外れてはいない・・・・総司は自分が言い出す前に言われ罰の悪い顔をする

「先生は私に女を認めた上で、武士になれと申しました
それは、私にも嬉しかったです・・・でも、武士として戦ってきた今
身の危険が迫るからと、武士を投げ出せと仰るのでしょうか?
今まで必死に戦ってきた私は、それこそ意味をなくします

危険が迫り、身を女と明かし逃げると言うことは、女武士の私に
腹を切れと言われてるのと同じだと、先生は解ってらっしゃらない
女って身が、ほとほと嫌に成ります・・・・」

総司の目が見開かれ、あぁ、自分の今まで言って来た事はこんなにも
酷く、辛い言葉だったんだろうと、深く思うと
黙るしか出来なかった。

「女の武士とは、身の危険が来たら、逃げるのでしょうか?
男と同じ扱いをして下さいと申しました。
それなのに、武士としての私を認めては下さらないのですか?」

何時もなら、噛み付くように話してきて喧嘩になるものを
何処までも穏やかに話を進めるセイに、総司もどう返して良いか判らなかった
だが、思いは確かにある
「神谷さんを悲しませたくないんですよ・・・辛い思いを危険な思いをさせたくないんです
ただ、あなたには笑っていて欲しいのです。
それが私情と解っています。武士としてそれを止められる事は力を認めていないと
そう思うのも解ります・・・でもっ・・・神谷さんには生きて欲しい・・・・」


悲痛な表情の総司に、嬉しい思いもあったが、セイの胸がちくりと針刺した
「我侭で此処に居続ける私を許して下さい・・・・沖田先生の心配も嬉しいです
でも、今も裏切り続けてる新選組の礎に成りたく思っています
武士として死ねるのならば、これ以上幸せな事は無いと思っています。ですから
ですから、解って頂けないでしょうか?」

「そうですね・・・解りました、出来るだけ協力はします」
「我侭ばかりですみません、でも、頑張りますから、そして 生きて帰ります」

にっこりと笑うセイに、言葉を封じられ、反対する理由が見付けられなくなった
心配している己を認めた上で彼女は自ら行こうとするのだ
今までもそうだった、どんなに苦難に襲われても
ただ思いを走らせ彼女は強く成長していくのだ


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2009.10.10

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