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なつめっぐ 保管場所

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風5

最終話

共に在りたい

共に逝きたい


風の最後の砦は、優しかった・・・・




★風-伍-★



総司も、セイも、吐血を繰り返し
その度にお互いを支えながら、3月が過ぎた

寒かった外気も、優しく撫で上げてくれる風に変わり
セイは、縁側へと足を進めた。


先生、私は先に逝くかも知れません
2・3日前に話した
それを聞いた総司が、異常なほどセイに執着し
側を離れようとせず、初めて共に夜を越えた
一つの布団でお互いの温もりを感じながら


「あ・・・神谷さん・・・起きてたんですか?」
薄く笑う総司に、セイが振り向き、えぇ・・と答えると
総司が布団をめくり、乱れた寝姿を整えると
セイの横に腰を下ろした


時折、隊から人が送られてきて、沖田の家は綺麗に雑草を
刈られている

自分では既に掃除も出来なくなったセイの代わりに
玄関先に3食届けられ、人が来て掃除をしてくれる

「なんだか、私達老夫婦みたいですね」
縁側で沖田が呟くと、確かに・・・とセイがゆっくりと笑った

そよぐ風が優しくて
総司の肩が温かくて・・・

セイは、その肩に身を委ねこんこんと眠った

気が付いた時には昼下がり
総司に運ばれたのだろうか?
布団の中に寝せられ、不意に総司を探した

薄く開かれている隙間に、風を切る音・・・・

セイは、その場所まで這い出し目を見張った


総司が竹刀を振っている・・・・。

ゆっくり・・・咳が出ないようにゆっくり

セイの目はその姿に釘付けになった
ぽろぽろと涙が出たのは、数ヶ月の間見れなかった
総司の一番かっこいい姿・・・・。


襖を開き、セイが思いを紡いだ・・・・


「命が尽きるまで・・・言わないで置こうと思っていました
先生には重荷になるから・・・・
だけど、気持ちを先生に伝えたいんです・・・聞いてもらえますか?」

体が嫌に軽い。
咳も嘘のように出てこない

「私も、言いたい事があったんです」

総司は竹刀を振り、じんわりと汗を流していた

「私からで・・・良いでしょうか?」
竹刀をゆっくりと置き、セイを手招きして先程の縁側へ座らせると
横に座り、セイの頭を自分の肩へ持ってきた

「どうやら、私は貴女に恋をしたようです。
一生この思いは偲ぼうと思っていたのに、恋情が産む狂気には
勝てませんでした。どんなに気が付かない振りをしようと
鈍くなる努力をしようとしても・・・・もう、貴女に囚われた私は
その術さえ、無力で・・・・せめて一緒に隊士で居る事を望みました。」

「私も、同じです・・・先生」

涙が総司の肩を濡らしていく

「神谷さんには敵いません・・・・大好きです」

「私も、お慕いしています・・・先生」

抱きしめながら二人は、ゆっくりと唇を重ね

セイが眠った・・・・。



縁側の昼下がり、神谷清三郎こと、富永セイ、永眠・・・・


思いを伝えられるのを待っていたのかもしれない
総司も剣を既に握れないまで衰弱し、布団から起き上がれないで居た


「総司・・・神谷の墓は名を刻まないで作った。」

土方の声に首を縦に振って答えると、総司は瞳を伏せた

どうか先生は、頑張ってください。
私の命は消えかかっていますが、先生の炎を私が
あちらから吹き上げて差し上げます
だからどうか。先生は生涯を全うし、思い残す事無く

そう・・・セイは告げた


「セイ・・・・」

コロコロと良く笑い、犬のように毛を逆立てて噛み付いていた
そんな時代もあった・・・・
抱きしめた柔らかさに頬を染めた事もあった・・・・

神谷さん・・・神谷さん・・・・

何度呟いても、返事は総司の心の中でしか帰ってこない


「土方さんも、此処を離れるんですよね?」
あぁ・・・と、寂しげに答える土方に指を刺し、刀を指した

「あの大小は、私の菊と神谷さんの物です。良ければ、お使い下さい」


それきり、総司は口を閉ざし、目を瞑る

瞑った先に愛しい人

「土方・・さん・・・眠くなっちゃいました。
神谷さんがそこまで来ています・・・私を迎えに・・・・

どうか・・・息災で・・・・・」


こうして二人は天に昇った
美しく散る花のように

思いを抱きしめ



「セイ・・・・」
「総司様・・・・」


きっと、二人は共に雲の上で甘味でも食べているのだろうと
土方が思う


長く・・・生きていて欲しかった

そう願う大事な二人を思い、局長を思い


新選組としての仕事を全うした土方が

不憫だった隊士を思い


二人の墓を並べて立てた


神谷・・・総司・・・幸せになれよ


===============================ふぃん

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