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なつめっぐ 保管場所

倉庫です。

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【2009.9.20 5話完結】(注意:薬剤の使用・17禁
セイちゃん、阿片に苦しみます。総ちゃん何処まで頑張ってあげれるのか!?
Hな表現もありますので、入室には注意をしてください。

★華★





乱れ舞う

この激動の幕末に華が舞う


「ちっ、逃げ足の速い」
数人の男が、バラバラと何処からとも無く寄り集まり
小声で押し問答をする


その集団を横目に、小さな影が懐から文を出す。

土方に託された文、届け先の黒谷へ着いた時だった
数人の男に囲まれ、文をよこせとセイを狙った

渡すもんか・・・

そう思い、セイは胸の中へ握りこんだ
(数が多い・・・撒けるかな・・・)


「桂さんに良い土産になる、お前ら絶対あの童を逃がすなよ」
「あぁ、だが逃げ足が速いからな・・・」
「大小を差してるから気を引き締めていけよ?解散っ」

男達は長州の人間だろう、桂に土方が出したであろう文を強奪して渡そうと
狙っているのだ、セイの背中に汗がつーっと流れると、きゅっと唇を咬み
踵を翻した 戦えない。戦える人数ではない

(士道不覚悟になっちゃうかなぁ?・・・)




そんなセイを他所に日が落ち始めた
夕暮れ、門番の隊士が口を揃えて神谷が遅いと呟く

門番を平隊士が交代でやっていたのだが
本日は一番隊の持ち日なのだ
「沖田先生に言った方がいいよな?」

その言葉に頭を縦に振る男


提灯に灯が灯るのはもう少し後ではあるだろうが
影が伸びている、このまま帰らなければ、恐らくは土方も異常に気が付いておかしくない


「総司を呼べ!」

副長室から響いた声から数分と経たず男が部屋へと入った


「どうしたんですか?」
土方の緊迫した雰囲気に総司も気を引き締めた

「神谷に朝方黒谷へ文を託した・・・だが、まだ帰らねぇ
先方に飛脚で問い合わせたら、まだ来てねぇと・・・。
神谷に限って逃走はねぇだろうし、何かあったに違いないと読んだ
総司、数人連れて出てくれるか?」

刀を腰に納めると、「承知」と伝え副長室を出た

(嫌な予感がする・・・・神谷さん・・・)


一番隊を集めてると、門番の男も総司にその旨を説明した
「皆さん、そう言う事ですので、神谷さんを探しに
黒谷へ向かいます、相田さん、山口さん、捜索をお願いします」

屯所から3人の男が出て、黒谷へ向かう
総司は馬にまたがると、先に行きますのでと言い残し
颯爽と駆けていった


一方逃げる身のセイ
黒谷に居てはまた見つかると思い、少し離れた川沿いの小さな小屋で身を潜めていた
「っ・・・情けないなぁ~」
刀が掠り、袖口が少し切られてその中から白く細い腕が覗く
その腕には赤く滴る血液

懐から取り出した手拭を噛み手で引き千切ると左腕に巻きつけた
「あーあ・・・今日はお団子をお土産に持って行こうと思ってたのに」
ふぅ、と息を吐きセイはゆったりと木の壁に背中を預けた
耳を澄まし、人の気配を感じる為に

(実はこう言うのは苦手なんだよねぇ・・・・)

苦笑いしながら、人の気配を探る。
小さな小屋だ、囲まれればきっと逃げ切れない


その時だった、かさっ・・と草が揺れる音を不規則に鳴らした
セイは慌てて大小を腰に携え、窓の隙間から外を伺った

どきどきどきどき・・・心音が煩く囀る


張り詰めた神経は、セイの五感を研ぎ澄まし
こう言う時は、一端に武士の阿修羅が目覚める

「童が見つからんぞ?」「逃げ足が速いな。。。どうする?」
追う身の男達が悠長に言葉を紡いでいる
既に人数は3人に減っては居る物の、中に手慣れが居たら間違いなく
文を奪われるだけでは済まない

(だめだ、ここに居ては囲まれるだけ・・・今なら・・・・)

3人しか視界に入らない
上手く逃げれば、橋がある。その橋を越えれば目の前は黒谷

セイは、手に手貫緒を掛け、ぎりっと刀を構え抜刀出来る状態にすると
こっそりと開いた扉から飛び出した

(はぁはぁはぁ・・・・・・・)

息が荒くなり心臓が酷く脈を強め息が上がる

「居たぞ~こっちだー」
一人が叫ぶとセイがちっ、と舌打ちを鳴らし、再び向かう

橋下駄の近くで追い付かれ、セイがぐっと握る手を強くし
もう片方を鞘と鍔に添えた

キン・・・と響いた鍔鳴りがセイの精神を更に研ぎ澄ました

「いい加減諦めろ、お前はもう囲まれているんだ」
息が上がっているのを確認し、セイは男の懐へと潜り込んだ

シュッと風が切れる音と同時だった
セイの体が男をすり抜け、肩で息をしている
刀を一振りすると、身を翻し再び橋の上り口を見た・・・
(くそっ、あんな人数相手に出来ない。)

踵を翻し、川へと向かう。
かなり緩やかな川だが、水深は見た目とは違う
表面は凪いで居ても、中は荒れている事もある
だが・・・・

不安がっている場合ではなかった
大事な書状ではあったが、濡れて読めなくなれば
セイが守ったものは、きっと、相手には伝わらないと踏み
ザバザバと中へ押し進んだ

一人が、セイの前から追ってきて男の進む速さに敵うわけも無く
簡単に側に来る事を許してしまった自分に失策だったと毒付いた

橋の上には3人、自分を追って川に足を踏み入れてるのは2人
いつの間にか合流していたのであろう
セイは、ジリジリと前を見据えながら後退していく

「ほらほら。童よ、文を大人しく渡せば殺しはしないよ?」
優しそうに言葉を紡ぐ男にキッと睨み返し
「私は神谷だ!童と言う名ではないし、命惜しさにこの文を渡す気もない!」

膝までの水深ではあったが、セイは必死に対面へと向かうが・・・

陸を歩く人に敵う訳がない。
あっという間に川を挟み両の川岸に男が揃う

「くそっ!」
追い詰められた・・・

その時だった。天の神はセイを見放してはいなかった

「神谷さんっ!無事ですか!?」そう、馬に跨り総司がセイを見つけたのである
「沖田先生っ!」

対岸で鬼が剣を振るう
月に浮かんだ美しいまでの剣筋にセイが見とれている時だった

「くそっ、書状だけでも・・・」と、男がセイ目掛けて剣先を滑らす

一太刀を避けると、軽く身を交わせる場所ではないと気付き、刀を手に
男と対峙する。

(貴女は、女子なのだから競合いには向かない)
解っています。
でも、今は競り合わなければ・・・・
命が無い・・・・。


キインと響き渡る音が総司の耳に届いた
「神谷さんっ!」対岸の敵を全て熨してしまい、逆側へと足を速める
橋の中腹に来た時、セイが男の首に飛びつき、刀の先を首に押し付けた

総司は横目でセイを見ながら対岸へと到着した時
男が飛び掛ってきた
キン・・・ガキーン・・・・音が響き渡ったと同時に
ぐぅ・・っと男達が痛みに眉をしかめる

残り一人

その時だった、ズズン・・・と地が揺れる

その揺れに堪えられずセイは男から滑り落ち、再び形勢が逆転された
「神谷さん!逃げなさいっ!」総司が無意識に叫んだが
既に剣先は天を仰いでいた


「神谷さんっっっ!」セイの体が不意に・・・・ぐらりと持ち上がり
剣を空高く舞い上げていた男も、ぐらりと体を煽られる

ゴゴゴゴ・・・・・

川が啼いた・・・・

一瞬水位が引き、その瞬間、背後からセイの体を丸ごと飲み込んだ

総司の声も既に届くはずも無く、セイはその体を水によって攫われたのだ
無論対峙していた男も一緒に流れ、川の水が汚く濁っていた

「待ってくださいよ・・・・何の冗談ですか・・・・」

総司は水の中を必死に探した。濁った水は視界を悪くし、まだ、先程の濁流を
流し切っていないかのように、総司の足を取る。
何度も名前を呼んでは耳を澄まし、その場に見当たらないセイの名を
何度も何度も。

遅れて到着した隊士達が、まだ息のある男を捕らえ
相田が、対岸の男を確認する
瞬殺だったのだろう、男の体が一刀両断されている
よっぽど焦って居たのだろうと、総司を見るといつも居るはずの
小さな隊士が居ない

「先生・・・神谷は・・・?」

呆けていた総司が我を取り戻し、慌てて走り出した
すぐさま馬に身を翻し隊の命令を置き駆け出していく

「神谷さんが濁流に飲まれました!探すので他の隊士と合流し次第
帰隊してください、私は神谷さん追いますっ」


神谷さん・・・どうか無事で・・・お願いします・・・神谷さんっ!

切なる願い空しく、セイは総司の視界に戻る事をしなかった

翌朝、生気の無い総司が抜け殻のようにボロボロになって帰って来た

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