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はいはーい!続きます
★=錯誤=★
【錯誤】
見誤ってはいけない
あなたの居場所はどこか・・・・
私の居場所はどこか・・・・・・・
川の流れる河川敷、ひっそりと佇んでみるも、寂しさが胸を突き上げてくる
そんな感覚を、嫌がるように、頭を左右に振ると美しい髪が揺れ動く
(そうだ、翠月尼様が言っていた言葉・・・
”惚れて惚れて大好きなお人が・・・・
生きてそこにいてくれはるんやったら”
それ以上欲しがっちゃいけない・・・・)
先生は誰よりも傷付いているんだ・・・・・と
セイは思った。
ぎゅっと手を握り、セイの目が何かを宿したように輝いた
「近藤先生?」
ひょっこりと、指導の休みの日にセイが顔を出した
と言っても、住まいと同じ道場なのだから珍しくもないのだが
いつもの暗い瞳が消え去り、晴れ渡った表情を向けている
(総司との問題でも解決したのだろうか?)
などと思っても口には出さないが、なんだね?と、セイに切り替えした
もじもじとしながら、セイが近藤に耳打ちをする
その言葉に薄く微笑むと、いいよ・・・と、優しく声を掛けてくれた
「ありがとうございます!」と、元気良く近藤に返すと
竹刀を振っていた大人が、セイの姿を見やる
「あ・・・すいません、気にしないで続けてください」
その中には、無論総司も竹刀を振っている
仕事の休みの日は、セイを個人的には誘い出しはしなかったが
それでも、側に居たいと言う我欲があった
だからこそ、この道場に入会したのだし、総司も再び近藤と剣を交える喜びも
人知れずあった。新選組の当初も、今も変わらず総司は此処に居る事が全てだった
「沖田先生?」
「へ?あっ、はい・・・なんでしょうか?」
隅からセイが手招きをしているので、そこへと足を向けると
ちょっと頬を赤らめて手をモジモジとしながら総司にこの後は暇かと尋ねた
「えぇ、時間ならありますけど・・・どうかしたんですか?」
「お買い物を、お手伝い願えませんか?」
昨日の一件で、総司も暫くセイとは口を利くのも難しいだろうと思っていた
そんな時の出来事である、嬉しくない訳がない
「ええ、良いですよ。では、甘いものを食べに行くのもお付き合い願えますか?」
総司の誘いにも、コクリと素直に頷き、1時間ほどで終わる総司を待って
一緒に買い物へと出かけた
「てめぇ・・・・」
二人で、肩を並べて歩いていた時だった。
背後の声に振り返らずと解る・・・。
「土方さんもお買い物ですか?」
「くぉおらっ!総司っ、てめぇ今日は休みだから俺に付き合えって言ったのに!」
総司がクスクスと笑うと、携帯を取り出し電話を掛ける
ちゃららぁ~ん・・・ちゃららぁ~ん(BY 極妻
「お、おい・・・・」
「おかっしーなー土方さん留守ですかねぇ・・・・」
ゴン!「痛いですよぅ・・・・」
頭を思いっきり殴られ、頭を摩りながら総司が膨れる
セイはその二人を見て、ただ笑っていた
「土方さんに電話して一緒にお買い物付き合って貰うつもりだったんですよー」
「目の前に居る俺を無視してかっ!神谷も神谷だっ!」
「何で私が関係あるんですかっ!」
3人でぎゃーぎゃーと他愛もない喧嘩とも言えないじゃれ合いに
通行人がクスクスと笑うのを逸早く気が付いたのは土方であった
「あはは、副長はホント女の視線に弱いんだからっ」
と、大声で言うとキャーとセイと総司が逃げ出す
「この、お神酒徳利が、待ちやがれっ!」
商店街のアーケードの中を走り回り、やっと落ち着いたのは
セイがぴたっと止まった携帯ショップ
「どうしたんですか?」
「え、えっと、携帯を近藤先生の名前で買って頂くんですよ
それで、私はどんなの持てば良いか判らないし、先生に選んで貰おうと思って
誘ったんですよ・・・・もし良ければ・・・選んで貰えますか?」
最初は目を丸くしていた総司だが
にっこりと微笑んで3人で携帯ショップへと入っていった
アレが良いコレが良いと、土方と意見の出し合い潰しあいをしながら
やっと決まったのが、白の2つに折れるタイプの携帯
タッチパネルが付いてるのが良いという土方の意見を無視して
総司が勝手に契約までしてしまう
「はい、これすぐ使えますよ」
渡されて、セイがドキドキとしながら両手で大事そうに画面を開くと
うわぁ~と、声が漏れる
開くと文字が綺麗な色で浮かび上がり、画面には動く空の絵が入っていた
「あ・・でも、これって契約とか言うのをしなくてはいけませんよね?
だから近藤先生にお名前を借りようと思っていたんですけど・・・・
今使ったら、近藤先生に迷惑を掛けるのでは?」
現代では素っ頓狂な考えに値する発言に土方がぶはっ!と、笑いを耐え切れず
噴出した
「神谷さんに失礼ですよっ!土方さん!」
「自動販売機とかいう奴の前で、先生も大笑いなさってましたよね?」
「うっ・・・・そ。それは。。。」
セイの突っ込みにシドロモドロの総司に再び土方が笑い転げる
「神谷さん、それは私が買いました、だから私が払いますんで大丈夫ですよ?」
「えぇ?沖田先生にそこまでして頂こうと思った訳ではないのに・・・・」
「ええ解っていますよ。でも、早く欲しかったでしょ?」
その言葉に、セイがコクンと頭だけで返事をすると、大事そうに手に収め
その後は総司の希望通り甘いものを沢山食べれるお店へと入り
総司がひたすらぱく付いている間に、土方に教えてもらい携帯の操作を覚える
「解ったか?」
キラキラとした目が土方を捕らえ、教えていた場所から後ずさった
「教え方がお上手なんですね!」セイが早速名前を登録したいと
ポケットに入っていたメモ紙を出した
「へー・・・最初に登録するのは、沖田総司かよ・・・・」
「なっ!何見ているんですか!助平っ」
セイがぷいっと横を向きながら、総司から貰った携帯番号を丁寧に入れると
近藤土方と続け、山南、藤堂と続けて入れるセイに土方がダン!と机を叩き立ち上がった
「なんれふ、かいきなひ!」≪直訳:なんですか、いきなり!≫
総司が口に物を詰めたまま言うと、土方がセイの携帯を取り上げた
「ちょっと、何するんですか~返して下さいよっ・・・・」
セイが奪い返そうとするが、逆方向を向かれ、返してもらえずにただ立ち尽くす
そんなセイを他所に土方は、入れられた電話番号へと、電話を掛ける・・・・
「なっ、ちょっと勝手にっ!」
だが、土方をそうさせた相手は・・・・
「どちら様でしょうか?」
「・・・・山南さんか?」
「え?」
「土方だ。」
ようやく、セイの携帯を急いで取り上げた事に合点がいった
(ふふふ・・・山南さんと、あれ以来逢ってなかったんですね・・・・)
切なそうな瞳を向けながら、そっぽを向く土方の背中があまりにも哀愁が漂い
セイも、口を挟まないで置こうとケーキを口に運んだ・・・と・・・
「うわっ、沖田先生10個とかありえませんよ・・・・」
「うーん、もう一つ食べようか悩んでたんですけど、そんなにありえませんか?」
「えぇ、ありえませんっ!」
セイとの問答が楽しさを増し、総司の食欲を促すのだ
数を沢山食べると満たされるのは、お腹ではなく心なのかもしれない
「神谷さん、私の携帯に後で電話掛けて切って下さいね」
「え?何故ですか?」口へ入れようと、フォークに乗った生クリームをそのままに聞き返すと
ぐっと、セイの手を自分の方へ向け総司はその生クリームを頬張った
「電話番号が入りますから、こっちからも掛けれるでしょ?」
この男は・・と呆れるが今は携帯の話しなのだ。
「そう言うものなのですか?」
ウンウンと総司は頷きながらセイのケーキをその場から持ち上げ、自分の口へとほおりこんだ
「・・・・沖田先生、食べすぎですよって先程から申し上げていますが」
昔のようにじゃらけて来る総司が、子供のようでセイは苦笑いを向ける
「ってか、土方さん話し過ぎですよ~通話料金高いんですからね~」
ちらりと文句を告げる総司を見やると、知ったもんかと言わんばかりにそっぽを向く
「もぉ・・・・」
「あ、えっと、通話料金ってどれ位なんですか?」
「あ~神谷さんと私は無料で通話出来ますから、いつでもどうぞ後は、そうですねぇ・・・
一回の電話は10分以上はしないようにして頂ければ、大丈夫だと思います・・・
ただ、やん事無き用事とか、緊急度が高い電話に付いてはある程度は我慢しますよ」
総司がニコニコと笑いながらセイに話をしていくと、それを遮るように口を開いた
「あ、えっと、毎月月謝は貰っているので、先生にお支払いして頂かなくても
私自分で払えますから。それに、私の物ですから!請求は私に回してくださいね?」
「嫌だなぁ~私が契約者なんで、払うのも私です、気にしないで持っていて下さい
と言うか・・・私が話したい時に捕まえれるのが嬉しいので、持っていて下さい。
だから、支払いも私がします。神谷さんの知人は、私も良く知っている方々ですしね
あまりに高額になるようでしたら、お支払いお願いしますんで ね?」
にっこりと笑って首をかしげながら無邪気に言う総司に、心底弱いセイ
少し照れ笑いをしながら、ありがとうございますと声に出した時に携帯が
セイの手元に戻ってきた
「・・・・。電池が切れた」
「え~買ったばかりだから、電池の残量普通に少ないでしょー神谷さんが可哀想ですよ~」
「す・・・すまん・・・」どうやら、本気で申し訳ないと思っているのだろう
素直に謝ると、土方が山南の事を饒舌に話し始める
と言っても、昔の記憶を巡るだけと成るのだが。
「さて、神谷、お前の番号教えろよ」
「いやだから電源落ちてますって・・・・」総司の言葉に、ハッと我に返り
先程まで山南と話を出来た喜びで浮かれていた事が露見する
慌てて周りを見咎め、土方がニヤリと笑ったと同時に声を上げた
「総司、そこに充電あるぞ・・・」
カウンターの会計の横にあるBOX
携帯をそこへと押し込み充電を開始した
「で・・神谷さんは何故携帯を欲しくなったんですか?」
「あ~幕末では使った事ねぇからじゃねぇか?」
「そうなんですか?」
二人が押し問答する中、セイは少し赤くなりながら紡ぐ
「沖田先生や、皆と連絡を取れるようになったり、孝さんが
メールをしようと言って下さり、そうしてみようと思ったんです。
墨もなく文が書けると教えられましたから・・・・」
「あぁ、メールだったら私も出来ますから何時でも打ってらっしゃい」
「打つ・・・?ですか?」
「えぇ、文字を携帯の中に打ち込むので、打つって言われるんでしょうね・・・」
総司の携帯をまじまじと見ながら横にぶら下がったキーホルダーを見付けて
ぶっ!と、噴出したのはセイと土方・・・
「ウケましたか?」照れくさそうに言う総司に拳骨が再び落とされた
「何でそんなもん付けてやがる、気色わりぃ・・・」
涙目で頭を摩る総司の携帯のストラップは、土方歳三のQPバージョン・・・・
ありえねぇと叫びながら、土方はその場を去って行ってしまった・・・・・
「あーあ、耳まで真っ赤でしたよ・・・」
「嬉しいんだか、嫌なんだか・・・紙一重ですよね?」と言うセイの言葉に
「え~神谷さんが沖田総司QP付けてくれたら私喜んでしまいますけどね~」と、総司が煽る
「ばっ!バカな事言わないで下さい。付けませんからねっ!」と、セイは断りを入れるあたり
昔のまま。赤くって、嬉しそうに笑いながらでも、恥ずかしそうに俯くセイ
懐かしさと愛しさがこみ上げ、苦笑いをしながら総司はセイの頭を撫でるだけしか出来なかった
ただやんわりと、時を過ごせれば良い
戻る時が来るまで、否来たとしても、セイは総司を思い続け
その時が来たら、笑って彼の元から去ろうと決意を固めた。
ただ、伝えるだけが恋ではない
ただ求めるだけが恋ではない
それは、あの時代に散々思い知った事実
(私は沖田総司を愛します、そして自分に悔いの無い様に生きます)
錯誤していた想いが一つになり、セイはにっこりと微笑んだ
2009.10.14
============================
★=息吹=★
しんと、静まり返った道場でセイは裕と二人
互いに言葉を交わすでもなく、ただ黙って正座をする
精神統一をする事により、気の流れが解る
ゆらりと波を打つように揺れた蝋燭に、セイが目を開けた
「裕、そろそろ、稽古しますか?」
「なぁ、神谷お前さ・・・俺を嫌いなのに一緒にいて良いのか?」
「は?誰が嫌いと言いましたか?」
きょとんと返すセイに吃驚してしまった裕
本来なら、付き合わない=嫌いと想像するこの男の思いも
解らないではないんだが・・・・
セイには全く判って居なかった
「俺の思いを無視してそれかよ」
「無視なんかしてないよ、ありがたかったし・・・でもね
私には好きな人が居るの、そしてその人とは絶対に
結ばれる事は無いんです。だから、私は死ぬまでこの思いを貫こうと思っているし
それに、もうその人しか見えないの。だから、ごめんね」
凛とした姿のセイを見やると、裕は深く溜息を落とした
「そのセイの思い人より、好きにさせりゃー良いんだろ?」
そう告げられて、セイはぷっと吹き出した
「なんだよ!仕方ないじゃねぇか・・・・」
「ありがとう、でもね、きっと無理だから諦めなさいね」
セイはスッとその場を立ち上がり、裕に向かって竹刀の先を向けた
裕もその先に向かっていく
今は無理でも、これから先がある
そう願いながらセイの心の男の正体を知りたいと願った
「あっ、神谷君」
近藤に呼び止められ、セイが振り返ると藤堂と裕が竹刀で打ち合いをしていた
「あれ、藤堂さんだ・・・なんか久しぶりに見たなぁ・・・・」
「あ~もっと久しぶりに、山南さんと佐之も来るぞだから孝と飯の支度をして欲しいと・・・」
皆でやっと集まれるのだと、セイはにっこり笑い、承知と伝え孝の元へ向かった
ピロロン♪
「あ・・・携帯っと・・・」
神谷さん、今日土方さんと皆さんに会いに行きますから
よろしくお願いします
総司からのメールに、ニコニコとしながら、階段を登ると
孝が忙しそうに部屋の中を歩き回っていた
「局長に手伝いを言い渡されたので、使って下さい」
セイが、胴着を着たままで手伝いを始めた
「今日は沖田さんも来るんだよね?」
「えぇ、メールが来ましたからね」
「だったら、もう少し可愛い格好してみたら?」
「いいえ!それは、良いんです・・・・それより、お鍋が・・・」
ぐつぐつと吹き上がった鍋、慌てて側に寄ると火を止めた孝の手をセイが払い除けると
吹き零れがセイの手目掛けて落ちてきた
「あっ・・・」声を上げたのは、孝
セイは苦笑いしながら、冷やしてきますと部屋を出た
洗面台で、冷たい水を浴びながらセイの手はジンジンとする痛みを忘れるほどに冷えると
手を拭き台所へ戻った
「セイちゃん大丈夫?」「うん、赤くなったけどすぐに治ると思います。」
セイの手を取り、薬を塗り込むと「ごめんね、私のせいで・・」と、誤りだす始末
セイは孝の身体に傷が付かなくて良かったと思ってただけなのに
こんなに有り難がられるとは・・・とちょっと照れてしまう。
当時であれば、拭き零したものの罪、それを守ろうと手を差し伸べたなら、その差し伸べたものの罪
「孝さんが謝る事では無いですから、大丈夫ですよっ」
にっこりと笑いながらセイはポテトサラダたるものを必死に制作していた
「ぉ?神谷~久しぶりっ」裕の稽古が終わったのだろう
藤堂がセイを見つけ側まで寄ってくると、綺麗に並んだ唐揚げの一つをつまみ上げ口へとほおりこんだ
「こらっ、ダメですよ~」セイがその手をペチンと叩くと、苦笑いを向けてくる
「神谷はあの時のままだな・・・・」ぽろっと口に出してしまった言葉にシマッタ!と言う気配が蔓延する
その雰囲気を払い飛ばすのはやはり、自分なのだろうとセイがにっこりと笑った
「ほっといて下さいっ、藤堂さんだって殆ど変わらないじゃないですか~」
チョット怒ったように気に止まらないほどの言葉だと教える為に
セイは告げると、作業を再び始める
その言葉にホッとして、藤堂も部屋のテーブルを出す作業を始めた
幾分か時が過ぎ、人が集まり近藤家のテーブルは満席になった
「お・・お里さんだ・・・」セイが見た山南の隣を静々と歩く女
洋服だが見間違えるはずが無かった
「記憶はまだ還って来ないから里さんはまだまだ生きたって事だろうなぁ」
喜ぶセイに言葉だけで静止を掛けた近藤に、頭を縦に振るだけで理解した
「さて、集まった皆、久しぶりだな・・・」近藤の声に皆が背筋を伸ばす
土方、沖田、原田、藤堂、山南と取り揃い昔の試衛館の人々
セイが入隊した時はこの人達の他にも数名居たが、セイは屯所の思い出が駆け巡り
そして、全ては自分より先に逝った人々だと言う悲しみまでも込み上げて来る
再会を喜ぶこの場面で、泣く事は出来ないと思いセイはシャワーだけでも入ってくると伝え
胴着のままの自分に感謝しながら、部屋へと向かった
「っ・・・皆生きている・・・・」
嬉しい思いと、こんなに早く逢えるとは思っていなかったと言う想いが交差する中
涙を人知れず流していたのだが・・・・
ベットが軋んだ。
「おきっ・・・!!」
照れ笑いをしているのだろうか?赤くなったままの総司がセイの涙をハンカチで拭った
「あなたの涙は、私の涙でしたよね?」
「え・・・」
「まだ、あなたの涙を拭う仕事は有効ですか?」
「もう、沖田先生は泣けるはずです、自分の事で低一杯ですから
自分の涙は、自分で始末してくださいっ!」
膝を立て、その膝を抱え込むように泣くセイの手にハンカチを渡し
総司は立ち上がり部屋を出ようと進んだ。
ドアを開けようと思ったが、えっぐえっぐと昔のままに泣く彼女をほって置けるわけが無かった
ギシッと軋むベットに総司は再び腰を下ろし、深く溜息を落とすと
セイの背中に自分の背中を押し当てた
「今度は一緒に泣く権利でも貰いますかね・・・・」
早い話、離れたくないのだ
総司とセイの背中が愛情で満たされる
その嬉しさに、総司の心が包まれ、ゆっくりと瞼を落とした
全身全霊でセイを感じたい・・・・
総司はしゃくりあげて泣くセイの体の動きから、その為に荒くなる息まで感じ
両の手をセイの身体に向けようと向き直った
包み込んでしまいたい・・・・
抱き締めて、腕の中で泣かせてあげたい
だが、それは許されるのだろうか?
どうしようもなく恐怖が押し寄せると、総司はその差し出そうとした両手を握り締めた
そして、再び後ろを向き背中を預けた・・・・
そんな総司を、セイはガラス越しに見ていた事も知らず
総司は呼吸を整えて言葉を搾り出した
「神谷さん、そろそろシャワーに行ってらっしゃい。その顔を元に戻して・・・
皆会いたがっていますからね?」
優しく語る総司にハイと小さく返すとセイは総司の背中から身体を離し
そして・・・・
「っ・・・・神谷っ・・・さ・・・ん」
総司の背中に抱き付いた
ぎゅっと締め付けられた心地よさに眩暈を覚える
汗の香りなのだろうが、さわやかなセイの香りに包まれ
総司は抱き付いてきた両の手を握り返した
「相変わらず、甘えっ子さんですね・・・・」
「100数えたら笑います」
懐かしいやり取り、でも、セイは100数えれば笑える自信が在った
ガラス越しに見た総司の姿に
この人は、自分を求めてくれているのだと感じたから
あっと言う間に時間は過ぎ、セイは赤くなりながらも何も言わず
総司の背を離れると、用意してあった着替えを持って走って部屋を出た
耳元で、ありがとうございますと呟かれ、総司の方が真っ赤になった
ポーっとしたままの総司がわいわいと賑わう居間へ身を戻すと
皆が一斉に総司に酒を勧めた
いや、無理ですから・・・飲めませんって・・・
どんなに断っても俺の酒は飲めないのか!状態で先程の恋心を思い起こす暇すら与えられなかった
そこへ、シャワーから戻ったセイも合流して皆で懐かしみ
笑いながら時が過ぎた
「神谷・・・さん・・・」
土方の側で何かが蠢き、そして彼にしか聞こえない程度の声で紡いだ言葉・・・
「げ・・・」
土方の足元で酔った総司が寝ていたのだが
どうやら、目の前に居るセイに抱きついて甘えている夢でも見ているのだろう
だが、相手が悪い
「だーっつ!!!!! 総司気持ち悪ぃっての!」
ゲシゲシと足で蹴り、総司の場所と自分の場所の間に空間を作ると
鳥肌を収める為に身を掻き抱いた
「副長はこの手の話しになると本当にダメだな・・・わっはっは」
原田が笑いながら土方に指差しをしている
総司の言葉は聞こえなかったが、土方には確りと伝わっていた
やはり彼は、彼女を求めているのだと
再確認した瞬間でもある
夜も更けて・・・総司が寝に入ってから4時間は経過しただろう
セイが眠くなってきたと言う事で、部屋へと戻ろうとした
「おい、佐之助 総司を神谷の部屋に捨ててこい」
いきなり命令された原田がニヤリと笑った
「ちょ、副長っ!」
「なんだよ、異論でもあるのかよ」
「待って下さいよ、私は女子ですよ?」
「寝てるんだから襲われやしねぇよ。それに総司と一緒に寝るなんざ
昔っから、屯所でやってただろうが、気にするな・・・俺と山南さんは此処で寝るし
佐之もここで寝るだろうしな。まぁ、藤堂は・・・・・」
総司のもう一つ奥で寝ていた藤堂を見やった土方がフンと吐き出すと
セイは仕方が無い・・・と言う視線を送った
原田がセイの部屋へと総司を運び、ベットの上に寝かせると
後は頼んだと出て行ってしまう。
「もぉ・・・」
総司の寝顔を見ながらセイはふっと総司の最後を思い浮かべる
当時のように痩せ細ってはいない・・・・
手が、昔より柔らかい・・・
髪は短くなってしまっている・・・・
一つ一つ何かを確認するように
セイは愛しそうに総司の姿を指で追った
============================ 2009.10.16
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