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続き
一日を越えれば、明日は旦那と父が来る
そう思うと眠れるものも眠れない。
「あーもー、ウザイ…考えるな自分!」
と、目を閉じるもそれはその場しのぎなだけ。
結局明け方近くまでだらだらと布団の中を蠢く羽目となった。
いざ朝になると
目の下にはクマ。
倦怠感満載の身体に溜息さえ出てくる。
「ありえない」
折角の休みを返せ!と、恨み言の一つでも言ってやろうか?
などと思いながら掃除と洗濯を終わらせ、ソファーにだらりと
身体を預けた。
「ミズキ…朝だよ?」
「んー?うっさいなー朝なんて知ってるよー寝不足なんだってばぁー」
「ミズキ…」
心地良い男性の声。
耳の奥で聞こえる声…夢と現を彷徨って気持ち良いのに
ガバッと身体を起した。
私をカタカナで呼ぶな!!
うん、夢の中でそう叫んだはず。
けれど…現実に声に出ていたらしく
「おはよう。ゴザイマス」
なんだ、そのカタコトは!
水希はじっくりと声の主を見やった。
「ミズキおはようゴザイマス」
お前は、オウムかっ!何度も繰り返さなくても判るわ!
「おはよう」
仕方なしに挨拶すると、満面の笑顔。
うん、悪くない。
第一印象。
濃い目の栗毛にGREEN Eyes
線の細めな人だと思った。
けれど、それが失敗。
目立つ!
水希は、口をポカンとあける。
野生の動物のような、鋭い視線。
何となく見ているだけで、獣と似た仕草。
「名前…」
その言葉に、首を傾げる。
「あーYou are Name?」
「Yah、レン!クワモト」
何なんだ!日本語通じてないじゃないか!
けれど、名前を聞いて確信した。
こいつが旦那かよ。
「あのクソジジイ!絶対家にいるなっ!」
ここで優雅な昼下がりは終了となる。
水希が、ため息を吐くとレンの手を取り実家?へ、向かう。
「うわっ!背高っ!」
ソファーに寝てた自分に視線を合わせてくれていた彼が、手を引かれ走った為如実に身長差が出る。
「ミズキ、ヤボだめ!」
と、グイグイ自宅へ引き戻されて
気が付けばソファーに再び座らされていた。
ソファーに戻され、水希はポカンとするしかなかった。
「ヤボなんて言葉知ってんだ!?」
7年の年月、この男の妻だったのか…
しかも、ヤボなんて言葉は死語に近いだろ!?
思い通りに行かないのは承知していたが、ここまでとは…
「こんな旦那要らないー!」
どうせ、理解していないだろうと叫んだが…傷付いた表情と視線が重なって驚いた。
「ミズキ、キライ?」
「いや、そのっ…そうじゃなくて…」
しどろもどろしてしまうのさえウザったいが、悲しげな目で見られると弱いんだよっ!
どうにもならなくて、水希はソファーに身体を横たえた。
あり得ない現実から逃げるには睡魔に誘われるのが一番だった。
目を覚ますと、既に日が赤く染まり
影が夕方を知らせている。
「んっ…寝すぎたぁーふわあぁ!」
と、アクビをしたままピキリと音を立てて固まった。
ソファーの横で黙ってコチラを見つめる緑の瞳に心底たまげた!
ずっと見つめている目は獲物を目の前に捕食の瞬間を今か今かと待つような視線。
「レン?」
「おはようミズキ」
「ずっとそこにいたの?」
質問に首を傾げるレン。
理解してないのを確認すると
深い溜息を吐き
夕飯の電話に、隣の実家へ向かった。
「何なのよつ!クソオヤジ!!!」
最初の第一声と共に、太もも辺りにローキックをかます。
「ヒドイ…」
「どっちがよっ!」
ずっと帰って来なかった父親は、久しぶりに見ると少しは老けたかも?
とは思えるが、そんな事より
レンの事。
「この人が私の旦那なのっ?!」
「あぁ、そこから話さなければならないな」
なんて寂しい目で見られても。
騙されませんから!
「ええ、しっかり話してもらいましょうか?」
水希の挑戦的な態度に、少しは気付いてほしいが、それは叶わなく
父は一人語り出す。
それは、行って一年目の動物の生態調査の一貫で行われた
森の動物達。
インディアン種族の村へとたどり着いた一行は、そこで狼の話を聞いた事から始まった。
狼が人に変身した。
それが、インディアン種族の人達で話題になっていた。
「ある訳無い!」
と、理論学上の言葉は彼らには通じずにその実物を見せてくれると言う話しに、興味を持ったのは父。
孤高の狼が、人と共に生きるなど聞いた事がない。
いや、昔話ならいろんな話しを聞いてはいるが
それでも信じがたく、その人間が見れる場所へと導かれた。
そしてある時、出発つ前に水希から貰った、手作りのお守りを落とした。
それを拾って届けてくれたのが、彼だったのだと言う。
二匹の狼を従え、キャンプまで降りてきてテントに石を投げてきたのだ。
父は慌てて外に出ると、お守りを手渡しで返してきた。
話し掛けても返事はしなかったが
お礼にあげた干し肉を痛く気に入ったようで
明日も上げると通じるかわからない言葉で渡すと翌日も貰いに来るようになり
彼との接触に成功したと話す。
母は、スゴーイ!そうなの!?
なんてイチイチリアクションしていたが
「手っ取り早く言えば餌付けじゃん!」
それから何度も繰り返し接触して、どうにか懐いて貰い話をすると
5歳程の年齢で、森に捨てられたと言う。
言葉も話せるが狼との長い生活の為
カタコトの言葉を使いながら
では有るが話す事を思い出し、連れ帰ったとの事だった
狼との生活が長く、人として生きていく
知識や生活習慣を身につけるのに10年掛かったとの事。
現在、25才でこれから日本で生活する事に理解を示したため
父と帰国いや、国外逃亡?
してきたと言う。
IQが、かなり高く教えるのに苦労はしなかったと聞き、
水希はブンッ!と首が折れる勢いで彼を見やった。
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