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続きです
道を歩きながら二人でしりとりをする。
それが言葉を覚えるには一番いいから。
「おおかみ」
「みどり」
「りんどう」
「うみ」
「みかづき」
解ってるんだよなぁ…しりとりできるし。
何で英語多いのかなぁ…
「ミズキ、隠さない、好き。だから英語」
「は?」
何告白なの?なんなのよ!
こいつは何を考えてるのよ!!!!!
「英語を話すのに、私が隠さないから好き?」
「ん~…」
「Me dislikes secret.」(私は秘密が嫌い)
「え?secretって、秘密?…でぃすらいくぅ?うーん…」
「秘密=secret?」
「うん」
「Yha!秘密きらい、ミズキ秘密ない、すき」
「あ~…隠さないって、秘密を持たないって事か…」
ビックリするわ、この外人め!
人前でイチャイチャ始めるのかと思ったわ!
どんな偏見だ!と、平賀なら突っ込みそうだが…今は残念ながら突っ込む人が居ない。
秘密ねぇ…と、水希は考える。
彼の存在自体を秘密にしているのだが…それはカウントしないのだろうか?
等と考えているうちに、あっと言う間に自宅に到着した。
大学から、丁度バス停5本分をしりとりと会話をしながら歩いて帰ってきた。
室内が無駄にうるさい。
本を読んでいる私の横を、数人の業者がバタバタと行き交い
静かな空間はあっという間に騒音しか奏でなくなった。
「ミズキ、よろしく」
改めて挨拶するこの男。
ため息しか出ない。
結婚9年目にしてやっと同棲が始まるが…マテマテ
同棲を辞書で調べよう!
[名](スル)一緒に住むこと。特に、正式に結婚していない
男女が同じ家で一緒に暮らすこと。「入籍せずに―する」
BY*goo辞書
うん、言葉が違ったようだ同居になるか。
その始めのステップを、今やってるらしいけど
水希からしてみればそんな事はどうでも良かった。
コーヒー片手に本を読み時折彼らの動向を見ては溜息を落とす。
父にこの家に入れるのを反対した
けれど、結婚している以上この家に入れるのが普通であり
父の住まいの方は、母との時間を大事にしたいため
ダメダと前もって断られていたのだ。
「ただの同居人だとしか思えない」
と、伝えるとレンはそれで良いんだと言う。
会って間もない彼を、顔だけで好きにはなれないし
きっと、レンもそれは一緒だろう。
掃除も同時にしてもらうため、結局は業者にお願いして
二階にシングルベット・冷蔵庫・TV・電話・PC・電気などの生活するうえで
大事なものを、入れていく。
二階のベランダは結構お気に入り場所だったが
この際仕方がない。
「レン?」
「yha?」
この家に住むには最低限守って欲しい事もあった。
入浴時間は、水希が仕事に出ている時間帯。
それ以外は必ず許可を取ってから。
家の庭の草取りは毎週交代で行う
などの小さな取り決めが数個出され、レンが必死に理解する。
「男と…同居ねぇ…気が重い」
「ゴメンナサイ、ミズキ」
なんて謝られても、父が勝手に連行してきたのだ
彼が悪い訳ではないと言うのは十分に理解してはいた。
夜も耽り、部屋が電気で照らされると
上での物音に、視線だけ上へと向けて溜息をつく。
今までもこう言う強引さはあったが
流石に今回は自分の女としての何かが欠落させられそう。
「お父さんの所行くから」
と、階段から上に向かって声を張り上げると
返事が来たので、隣へと向かった。
「よぉ、水希引越しは終わったのか?」
「うーん、終わったんじゃないかな?」
「なんだ、手伝ってないのか?」
「うん、だって必要ないでしょう?」
「お前なぁ…」
カチャカチャと食器を並べる母親の元に行き
手伝いをする。
父とこのまま話をするのは、どうも罰が悪かったのだ
「レンは?」
遠くから聞こえる声に、解らないと返し
水希は、キッチンに立つ。
「レンの事きらいなの?」
まぁ、母なら気にする場所か?
まぁ、嫌いではない…けれど
残念ながら好きでもない
その問いに答える事はなく、目の前に並んだ4つの皿を
テーブルへと移動した。
水希が並べる食事はいつも母が作ってくれる。
レンも、後からやってきて食卓へと付くと皆で頂きますをする。
社会に出てもこんな生活してて良いのかな?
なんて思っては見るものの、それ以上の手を掛けたくないと言う
めんどくさがりが顔を出す。
けれど…
「私食事作るかな…」
ポソリと呟いてみた。
25になってお湯しか沸かせられません…なんて、あまりに恥ずかしい
平賀を思い出すと、彼は自分で弁当を詰めてくるのだ。
生活費が大変だからと言う。
「レンクンに食べさせてあげたいのね?水希が、そんな事言い出すなんて」
と、一人頬を染める母に、違うと言ったところで
考えは変更される事は無かった。
「レンの食事はこっちにしてよ 人に食べさせられるものでもないし」
なんて言うと、やっぱり母が作ると言い出す。
弁当は、流石に頼んでいないので
そこから始めようと、水希は心の中で思った。
食事は進み、レンの話しになると
昔の彼の実態が露になる。
言葉を話せず、父に噛み付いた事もある。
狼との交流は流石に2年ほど過ぎると途絶えがちにはなったが
それでも、何度か足を運び、向こうも会いに来ている事があった
など、様々な彼は人として生きてきた事の無い道を歩いたんだと
まざまざと見せ付けられるようだった。
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