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やっぱり・・・
学校で話題の中心を私の名前が飛び交っている。
しかも、旦那とまでばれているのは自分が前に言ったから
それに一度見られてはいたが、その時は
然程大きな反応は無かった
今回もそれを願うか。
レンが迎に来た翌日。
大学生徒の梅木香織(ウメキカオリ)と言う20歳の女が居る
その事に付いては前にも説明したが、私は好きになれない女。
その女に呼び止められて、ややこしい事になっているんだが…
本当にこんなの勘弁して欲しい。
「あの男の人の名前はなんて言うんですか?」
そんな事に答える理由ある?ないよね…
だから私は、答えないで
「そんな事より勉強しなさい」
と、通り過ぎただけなのだが…
なんと!
仕事が終わり自宅へ戻ると、家の前でレンとあの女が話をしているではないか!
しかも…レンの腕に、腕絡めてますけど?
何だあいつ…
「レン!」
イラッとして名前を呼んでみると、彼はニッコリと笑って側までやってきた
「おかえり、水希」
「うん、ただいま」
そのやり取りに唇を尖らせてるのは一体何!?
イライライライラ…でも、そんなの出せないし…。
「梅木、何しに来たんだ?」
平常心で話してやる!
なにせ、お前は生徒だからな…
「え~レンに会いに来たんですよ?」
うわぁ、既に呼び捨て?
ありえねぇ…なんだこの色気女…
「ジャーまた来ますね?レン」
腕を引くと、レンが彼女に手を振る。
イラッ… イライラッ…
なんかすげームカ付くんですけど?
頬染めて、また来ますね!だって!?あーもう、塩でもまこうかな?
「き…み…水希っ!」
「うえへ?」
あ、変な声でた…。
「家戻る」
「うん」
梅木香織、あの女はいい噂を聞かない。
元々噂を好まない私にまで聞こえる噂だから、
一概に噂だけではないと言う事だろう
男関係が乱れている。
と言えば解るだろうか…
私はあまり接点の欲しくない人間の部類では在るのに間違いはない。
だから取る方も悪いが、取られる方も悪いんじゃないか?と
思ってはいるが…
あそこまであからさまに態度に出されると、結構イラッとするもんだなと
改めて思った。
「水希先生~?」
遠くから黄色い声が響いてくる。
あー災いがやってきた…嬉しそうに背中から花を咲かせ
キラキラと光を背負いながら手を振ってる彼女を目で追う・・・
発情期の男共
「何の用ですか?」
「いえ、水希先生には別に用は無いですけど、レンに渡して下さい」
と、小さな箱状のものが入った紙袋。
「あっ、形崩れますんで揺らさないで下さいね?
彼の夕飯ですからぁ~♪」
ピキリ…と血管が膨張したのが解ったが
ニッコリと笑顔で答える
「解りましたが、今回限りです。
もし彼に持っていって欲しいなら教授にでも頼んでくださいね?」
「えーケチ!」
メンドクサイったらありゃしない!
何で、他の女の飯を旦那に食わす協力をしないといけないの?
しかも、ケチとか…ありえないでしょう?
一度は許可したんだからありがたく思いやがれってんだ!!!!
私はそのままロッカーへと戻り
バナナを房から毟り取った。
もちろん!
食べるため!もぐもぐと一気に3本平らげた。
イライラしている時は、甘いものが良い…私の場合に限りだが。
ぷっ…
「ぬ!?」
辺りを見回すと、平賀がこっちを見て笑いを堪えてる…
「お前はまた笑うのか!」
「梅木に押されてます…っぷ…ね」
「お前、笑いたいなら笑って一度死ねばいい!」
「ひどっ!…っぷ…」
「お前のその態度の方がイラッと来るから出て行け!」
「はいはい…お腹壊さないようにして下さいね~」
「笑い過ぎで、お前が腹壊せ!」
もう、子供の言い合いか?
と言うような会話がなされると、平賀はそっと部屋を出て行った。
残されたバナナの残骸
「あーもぉ、大人気ないなぁ…」
拾い上げてゴミ箱へ捨て、私は弁当を奥にしまうと
仕事に戻る・・・・だが、平賀が楽しんでいて、仕事どころの騒ぎではなくなっていた。
戻った私はすぐに席に座ると、横の平賀が椅子を
くるりとこちらへと向けるのを横目で見て
溜息が降りる。
「水希先生は、弁当渡すんですか?」
「……渡すよ」
「うわぁ、旦那さん可愛そう…貰って目の前で食べて水希先生に
睨まれて脅えるんだろうな・・・。」
「なっ!睨まないし、食べない方が失礼だろう」
「それだけじゃないでしょう?だって、夫なんですよ?
人の作ったもの美味しいとか言いながら食べたら、気分は良くないでしょうに?」
「知るか!」
そんな事知らない。
自分は上手に料理できないから。
けれど、比べられる事は無い…レンに食事を用意する事はほとんどないから
あっても、パンと目玉焼きとかハムを焼くだけ。
それ以上の料理を食べさせたことが無いし、作った事も無い。
そんな中、どうやってレパートリーを増やせば良い?
私が作ったのを味見して、自分で調味料を足す母…
んっとに、百合(母)さん自己中過ぎやしませんか?
成長の見込めない私にも問題あるだろうけど…
けどだ!
成長の妨げしてるの確実に母親だからっ!
でも、母の料理はかなりプロ級なんだから文句も言えない。
はぁ…
私は、これをレンに渡していいのか?
うーん…
解らない。解らない。
こんな風になった事も無い
母に聞けばいいのか?
いや、母は自分の作ったものをレンに食べさせると
怒って捨てるだろうな…
なにせ、自分第一の母親だから。
私は自分では決めれずレンに電話する事にした。
「HI」
「レン?昨日の梅木居るでしょう?」
「ウエキ?」
「違う、梅木香織!」
「カオリ?」
「そう…」
「カオリどうなった?」
「うん、あの子がレンに弁当を持って来たんだ。私が預かってる」
「は?」
いやまて、はっ?ってなんだよ!
こっちがその台詞使いたい位なのに!
「預かるした?」
「うん、預かった」
「なんぜ?」
「ん?」
なんぜ…なんぜ…”なんで?”か!?と気づいた時には言葉を変えてきた。
「どうして?」
言葉が出なくなる。
どうして…そう言う回答は、今までに出くわした事が無いぞ?
「えーっと…」
「干支?」
「いや、いい…持って帰るからとりあえず帰ってから話そう」
「迎え行く」
「あ、解った」
たどたどしく言葉を交わし、私は今日の作業をさっさと終わらせにかかった。
あと、2行!
レポートの文字制限のせいで、要らない事を書いてしまい
修正してたら、遅くなった。
うん、良くある。
バナナが恋しい…
カタカタとPCを打ち込みながらレンがもう到着してるだろうと思うと
慌てて電源を落とし、ロッカーに向かった
憎らしい弁当入りの紙袋を持ち上げると
溜息が落ちる。
何でこんな事で私が悩まなければ成らないのか。
本当にイライラする。
仕方なしに、弁当を持ち
校門へ向かうと、入り口より少し外れた所に
「………またか。」
梅木とレンが居た。
「あっ!水希先生~レンが私を迎に来てくれたんですって~」
「へーへーそりゃー良かった」
「水希違う」
「うん、レン解ってるから。」
一生懸命弁解しようとするレンに苦笑いが込み上げて来る。
違うと言われて膨れるのは、梅木で、一緒に帰ると言い出した。
「NO水希迎え来た、水希帰る」
おろ、案外ストレートに言うんだ?
「えーでもぉ~ほら!外暗いしぃ?」
何だその語尾の小さな声は!ってか、鼻に掛けすぎて気持ち悪いぞ?
「あーっ!私のお弁当取ったんですかぁ~?折角
レンの為に作ったのにぃ~水希先生おっとなげなぁぃ~」
うっわぁーすげーコイツすげー必死だ!
なんか面白い!
「ぷっ…」
噴出したのは私…だって、取ったって言うのをレンに言いたかったんだろうけどさ?
私、さっきレンに電話して、言っちゃったよ?
そのままだと気まずくない?
だめだ…おかしい…
「えー?なんかぁ~水希先生私を笑うんですけどぉ~レン?」
「水希、行くよ」
「え?」
「帰る」
「あ、うん」
手元にあった、紙袋をレンが奪って、そのまま梅木に付き返した。
うっわぁーレンやっちゃってるし!?
ってか、何で私が睨まれてるの?
なんなのよ!?
なんて睨み返してたら、レンが力任せに私を引いた
「うぉっ!」
「行く!」
おかしい!おかしい!梅木真っ赤!!!!
やっばい、めっちゃ面白い!
もう、笑いが止まらなかった。
久しぶりに横ッ腹が、キシキシ言うほど笑ってる。
「水希」
「っは…な、なに?ッツククック」
「笑う良くない」
「え?」
「人の事笑う…良くない」
「あ…ごめ…んなさい」
レンが私に対して怒ってる。
しかも、目が怖い…っ結構お怒りっぽいなぁ
いや、今回は私が悪いか…?
いやでもなぁ…
「レン?あの子嘘ついてたの解った?」
「うん」
「…そっか」
解ってて…怒るって事は、あの子の行動を笑ったから
だったら、私が悪いか。
うん、そうだね…梅木は一生懸命レンを手に入れたいんだから
その必死さを笑うのは良くないのかもしれない
「水希お弁当預かるダメ」
「うん、それはもう相手にも言ってあるから」
「俺水希のご飯かママサンのご飯食べるそれだけ」
「私、ご飯まだ作れないよ?」
「水希失敗でも食べる」
「お腹壊すって!」
「水希!」
グッと、肩を両手で押さえられて動けなくなった。
綺麗なグリーンの目が私を捉えてて
足を動かす事が出来なくなった。
「水希のご飯だったら、食べられる。」
カンペキな日本語…。
頬の辺りからカーッと血が上るのが解る。
真剣なまなざし…そして間違わなかった日本語
たった数文字の短い文章だったけど
それだけで身体が沸騰しそうなほど、恥ずかしさと言うか
照れと言うか…なんて表して良いか解らない思いが胸を締める
「獣肉食べるも一緒」
ぴきっ……
一瞬の言葉はあっと言う間に消え去った
獣肉と一緒にするなっ!
私のときめきを返せー!ばかー!!!!!
って、私ときめいてたのか…
最近自分の気持ちがよく解らないのだ
これ以上かき回して欲しくないのに…
獣肉って…たとえば?
熊?臭いって言うよね…
鹿?硬いって聞くよね…
いやいや、そんな事じゃない!
私は明日から、もう少しちゃんと作れるように、努力はするつもり。
誰の為って…自分のだけどさ
だってこの先この家に住めなくなったりしたら
ここまで夕飯のために通うのは嫌だし。
いやいや、もう考えるのがメンドクサイ…
とりあえず今日の夜お買い物でも行こうかな?
なんて考えて、金曜の夜の校舎を後にしたんだけど…
見える光景に、呆れるしかない。
一生懸命、タッパを渡そうとしてる梅木
それを断ってるレン。
もう、どうしたら良いのよ?
さっき、平賀に言われた言葉が蘇る。
レンが梅木を好きなのに、私と結婚しているが為に
それは叶わず、私が離婚を認めないと…
また凄い作り話が出てきたもんだ。
と、さっきまでは思ってたが、私を迎えに来ただろうレンを捕まえて…
あ、あれ?
二人で校門出てったけど…なに?なんで?あれ…?
腕…組んでるけど…?
目の錯覚かと思ってもう一度目をこすってみるも
「間違いない…」
………そ、そうだよね?
レンだって人と接する事もあるし、話す事だってある。
当たり前に家に居たから…気付かなかったんだ。
と、とりあえず…スーパーへ…行かないと。
頭が廻らない。
気分がズンと音を立ててるほど。
あれ…凄く寂しいかも
離れた事無かったからかな?
知らない人と居る姿なんて、そんなに気にならなかったはずなのに
っと、マテマテ!おかしいぞアタシの頭!
やばい、ちょっと恋愛脳になってる気がする!
よし、スーパーだ!
行こう!
気を取り直して買い物に挑んだが
買えたのは鶏肉と片栗粉と、メロン。
なんだこのちぐはぐ…
ハーッと息を吐き近くの公園へ差し掛かると
無意識のうちに、中へと足を進めていた。
買い物袋を下げて、ぷらぷら歩くには日が落ちすぎていた
そう言えば、前にレンを連れてきた時、はしゃいでたたな~
なんて思い起こしながら、家へと向かう。
それがなんだか遠い昔に感じるのは
きっと、梅木のせいだろうな
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