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なんだか、ややこやしい…
レンもあの日の事は何も言わないから
私も何も聞いてない。
しかも、野村まで絡まってくると
もう、何がなんだか…あぁ…あの平穏だった一人暮らしに戻りたい
そんな事まで考えてしまう。..
初めてのレンの単独行動は
違う女との行動。
モヤモヤと胸の内に暗雲が立ち込めるような不快感を
溜息で押し出しても、またすぐに溜まってくる。
しかも今日は、最悪の月間行事、授業がある。
一般公開しているこの授業はあまり知られてないため
あまり人数は増えないが、教授の授業じゃなく助教授の授業。
一人15分で4人の助教授がそれぞれに話を筋立てて発表する。
平賀がごそごそと奥に仕舞い込まれた物を探りながら
私は資料を並べながら…その準備に追われる。
「もぉーだるいな~」
「水希先生人体模型はどれ使うの?」
「あ~太郎で」
「内臓太郎?(骨格に内臓の付いたもの)」
「うん、今日は人間と、獣の食の違いやるらしいから最初の担当の
私は人間だからな~」
助手の平賀に持たせた人体模型。
私はすたすたと校内を歩く。
教室を開けると、やっぱり…
父の横にいたのは梅木。
父は見に来ると言っていたから、知ってたが
梅木が居るのは意外だった。
私の授業を、バカにでもしにきたか?
溜息を吐きながら、教壇の前に太郎を置くと
梅木が
「いやっ、先生あれこわぁぃ~」
なんて言ってる…うん、実にキモイ。
私が頭を下げ、授業を始めると、次の説明者が用意を始める
後5分ほどか?
でも、言いたい事の大半は言えてるので、焦る事無く進めていた。
ぎぃぃ・・・と、上の扉が開くと、そこに現れたのは
レン…
そっと、入ってきて梅木の座る席の方ではなく
父の横に腰を下ろしていた。
「~~~であるから…」
説明をしながらレンを見やるとニッコリ微笑んでこっちを見ている。
心臓に悪いな…と思いながらも中断は出来ず
話を続けていると、父の横の梅木が立ち、レンの横に座った。
あからさまな行動に吐き気まで覚えそうだ…。
「では、質問ありませんか?」
平常心で続けていた話。
これ以上あの女に私の心をかき乱して欲しくない。
「はーい!」
と思ってる矢先にお前かよ!!!!
「そうぞ」
「その人体模型の真ん中付近にある大きなのの名称は?」
「は?」
「ちょっと赤黒い臓物の名称!」
「それは質問か?」
「もちろん」
「…肝臓だ」
「へー…」
「後は質問ないか?」
誰も手を上げないのでホッとして、次のヤツに交代した。
と言うか、初歩問題で間違う訳無いだろう…
何でそんなに私に絡むんだ?
レンを構ってればいいのに…いや、それはそれでイヤか…
溜息を落とすと、教室の隅の席へと腰を掛けた。
野村が、なんだか横で話しかけてくる。
返答も面倒だと言うのに
「でな?どうなんだよ…水希!」
「あ、聞いてなかった…なに?」
「梅木だっけ?あの生徒…俺から乗り換えやがったな」
「乗り換えるって…あんた表現おかしいでしょう」
「いいか?梅木は半端無いぞ?」
解ってるよ、だって初日からレンを呼び捨てとか
レンの腕に腕絡めたり…私に弁当頼む女が
決して良い人とは思えなかったから。
梅木…半端無いぞ?
その言葉が頭の中で、何度も駆け巡る。
何でこんな苦悩せんとならんのだ!と
雄叫びを上げたいが…
と、授業が終わる時だった。
「っ…」
「水希?」
視線に入った…梅木のキス。
レンの頬に穿たれた唇がチュッと音を立てる所まで聞こえた気がした。
数名の見ていた人間がうぉ~っと、声をあげ
父はキョトンとしている。
梅木は静かに向き直り、私に笑顔を向けてくる。
レン…レンは…なんで何とも思ってないような顔するのよ!
あーもーイライラ。
なんなのよ!
「くそっ!」
「水希先生荒れすぎ」
「人の旦那に良くもあんな事出来たもんだよ!」
「うへー繁殖期の山猫みたい」
「うっさいわ!」
イライラは募るばかりで、どうしてこんな思いをしなくてはいけないのかと
何度も繰り返し思う。
誰か助けてくれはしないだろうか?
「コンコン」
「入ってきてから言うな!」
「うん、ちょっと帰りバッティングでも行かないか?」
「ヤダ」
「良いから、スカッとするぞ?」
「…ヤダ」
「ほら、水希少し考えただろう?良いかムリにでも連れて行くからな」
「ちょ、野村っ!」
帰りに、カバンを持って逃れるように学校を逃げ出した。
あいつとは、長く居るが正体がいまいちつかめない。
裏の顔が絶対にあると思ってたから
絶対に寄らない。
まぁ、そこからうまく逃れたが
父とレンが梅木に捕まっていた。
本当に必死だな…
「オヤジ、レン、待った?」
私が来たとたん、レンの腕をがっしり掴み
フンと鼻を鳴らす女の醜さ。
もう苛立っても仕方ないと思うのに
それでも心の中は沸々と怒りがこみ上げて来ていた。
「帰ろうっか」
今日は待ってると言われたので、素直に口に出した
早く帰りたくて。
「じゃー私レン送るね?」
「大丈夫、俺を送る、暗くなる」
「うん、だから私の家まで送って?」
「……」
レン断って!ダメ、イヤ…もう、本気でイヤ
けれど私の願いは勝手な私の願望。
「わかった」
レンの言葉に、涙が出そうになった
きっと、断ると思ってたんだろうな…
裏切りじゃないのに
裏切られた気分だった。
距離が、遠くなった。
そう感じてしまう絶望感に溜息を吐いて
私は親友にメールした。
もう、一人では抱えきれなかった。
〔助けて〕
和香、お願い…私おかしい
もう良く解らないほど頭の中が沸騰してるの。
いきなりこんなメールでごめん
でも、もう私降参…。
〔Re 助けて〕
珍しいな、弱気なんて
3日間…待てる?帰るからその時話そう。
いい?ムリしたって疲れるだけなんだから
心休める空間とか場所を探して
一人で考える事も必要だよ?
じゃー帰ったら飛んでいくからね
このメールを受けて私はホッと胸をなでおろした。
だって…もう、一人じゃない。
正直、レンの事を友達以上には思ってても
それまでで、そこから先の気持ちは持ち合わせていなかった
けれど、梅木の出現で私の中に嫉妬とかが
渦巻いているのは…いい加減認めないとダメだろうと思う
大事なものを奪われる…それがイヤで苛立ってる…
明日、休日だ…。
大学に来るのが苦痛になるなんて思っても見なかった
まさか、こんなに噂が尾ひれはひれをつけて一人歩きしてしまうなんて
人って…怖い。
レンと恋人になれたと…喜んで言い回る梅木。
そして、私はその男を取られた女。
惨めだった…。
流石の毒舌平賀まで、気を使うほどに
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ…気にする事は無いさ」
結婚しているのは既に私が暴露している
お陰で、二人の邪魔をする女として生徒から睨まれているのだ。
でも、この後とんでもない事件が起こるんだが
その前にオサライ
梅木はレンと付き合った。
私は離婚を認めない女。
梅木は、私が放った敵?に見張られてて動けないから
レンが時折迎に来てくれる。
レンも別れたいと言うのに、私が納得しないので
どうして良いか困っている
これが、私の耳に入った全てだった。
そして、この事が切欠で、私は
校内から姿を消した。
自らではない
連れ去られたのだ。
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