倉庫です。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ 狼と私⑫ | | HOME | | 狼と私⑭ ≫ |
ここは?
私は?
なに?
※このページ以降少々シリアスモードです。ご了承ください。
失敗した。
私は一人になるべきではなかった。
でも、敵意を向けて来たのは、梅木だけ…彼女の犯行?
揺られる中一人考える。
まだ、白衣のまま…
目は布で覆われ、口にはガムテープ
身体を拘束するロープ。後ろ手に縛られたお陰で肩が痛い。
ロッカーにバナナを取りに行く日課。
毎日食べてたバナナを食べる前に後ろから手が伸びてきて
ハンカチにしみこまされた睡眠剤が私を眠りに陥れた。
私の考えでは犯人は二人以上
だって、私一人抱えるのは簡単かもしれないけど
学校から出るとなると別だ。
もし、運搬するならこんな縛り方では大きさが不自然になる。
だったら、思い切って馬の死体などと言って運べるようにしないと
この学校は不信がられる。
許可証と通行証が必要なのは当たり前だが
学生は車を認めていない。
となると…業者に成りすましたヤツかこの学校の先生
となるのだ
2時間ほど走ったかな?
何時間意識を失っていたかは解らないけど
今、トランクが開けられる音が聞こえた。
カチャっと聞こえた後に、バタンと戸の閉まる音が2回
犯人は二人以上に確定だな。
私は眠り続けたフリをする事に決めた。
怖いのもあるが、寝ていると思って話す事が
私の逃げ出す第一の手段だったから。
2日後には友達が来ると言うのに
本当に、ありがた迷惑な話だ。
ズルッ…ズルッ…
(いてぇよ!)
容赦なく引きずられて、腕が変な風に曲がった。
折れたりとかではないがかなり痛みがあって
声が漏れる。
「おい、目覚めてるのか?」
「シッ…」
会話はそこで途切れたが
声は随分と立派な野太い声。
知能が働く男だと一つ理解
声を殺し、メモで言葉を伝えてる感じがする
ほらまた…
ペラっと紙が動く音。
到着したのだろうか?私を持ち上げてそのまま
床に投げ付けられた。
ゲホゲホゲホッ…
背中から投げられたせいで、後ろにあった手が悲鳴を上げ
肩が脱臼するかと思ったが、その前に飲み込んだ息が吐き出せなくて
咳をするしかなかった。
怖い…そう思ってはいたが
流石にここまで乱暴に扱われると恐怖しか湧いて来ない
かぶされた袋から出され、肌が開放を感じる。
このまま、私ごと開放して欲しい…。
レン…助けて
お父さん…お母さん…
助けて!!!
「へぇ、泣いてるぜ?」
野太い男の声がするとビクッと背を揺らす。
涙が、いつの間にか目隠しの隙間から流れ落ちたのだ。
さらさらと紙に書く音が聞こえ
男が更に声を上げた
「外人と、日本人…どっちがいい思いさせてくれるか
やってみるのも良いな。
俺は上手いぜ?」
なんて言葉を発すると、奥で笑いをかみ殺している声が聞こえる。
「んーむーーん!!!」
ガムテープのお陰で口が開けれなくて、それがまた
ヤツらの愉快な遊び道具になる。
けれど、その後すぐに電話が掛かってきて、一人が出て行くと
私の顔にぬるりとした感触
うわぁあああ、ヤダヤダヤダ!!!!!
気持ち悪いっ!!!!!!!
その、感触が何かなど…すぐに理解できる
舌…。
首筋を舐めると、強く吸い上げてチリッとした痛みに
「んんー!んん~~~~!!!」
叫んでも、相手には届かなかった。
「良い子だ」
と囁かれ、ゾワッと鳥肌が立った。
足に這い上がる手の感触に身を捩るとかみ殺したような声でクッと
声が聞こえた。
まるで、あざ笑うかのような声。
手はゆっくりとスカートの中に入り込み、下着に指が掛かると
低一杯暴れる事で逃れようとした
と…
ダン!!!!!
大きな音がどこからか聞こえると、
「悪りぃ…」
と、圧迫を解いて部屋を出て行った。
人の居ない部屋、一人ぼっちでバナナも食べれなかった。
ううっ…
ひっ………ううっ
声を殺して泣くしか出来なかった。
【大学内】
平賀が、水希が戻らないのを不信に思い、ロッカールームへと
様子を見に行っていた。
「大事なバナナこんなに散らばして、何処行ったんだ?
あの人は全く手のかかる…」
溜息ながらに、水希を探しに学校内を歩いていた。
不意に教室に人の気配を感じ
水希かと思って覗くと、足を組んで机に座る梅木が居た。
どうやら電話をしているようなので、声を掛けないで
違う場所へと向かった。
だが、1時間探しても彼女の姿はなく
校内全て見回ったのだから、一度戻ろうと
研究室へ戻ったが、帰ってきた形跡は無かった。
「ちょ、流石に…こりゃーなんかあったのか?」
仕方なしに、平賀は水希の無事を知るため
彼女の住まう家へと向かった。
水希の荷物を持って。
「こんばんは」
声を掛けると背の高い男、レン
「水希先生帰ってますか?」
「帰ってない」
「これ…」
「水希カバン?」
「きっと、大学にはもう居ないから…届けたんだけど…」
いよいよ、本格的にまずいんじゃないか?
「き…教授の家は?」
「父…隣」
「君も来て!水希さんまずいかも!」
実家に行って、3時から帰ってない事を言い、
カバンの放置とバナナの散乱の事を告げると
いきなりレンが、家から出て行った。
「レン!」
「俺も、探しますっ!」
「頼む…」
母はガタガタと振るえ、父は電話の前でウロウロとする。
心を決めたように、受話器を取ると
電話を掛けた。
「もしもし~?水希?待てなかったの~?」
と、電話の主は和香。
2日後に帰る事など知らずに掛けた。
「いや、源蔵だが」
「教授?どうしたんですか?」
「うちのが、そっちに遊びに行くって事はあるだろうか?」
「え?水希ですか?」
「あぁ…」
昨日、耐えられないと言うメールが来て
また家の事で色々と悩んでいると思ってメールを返し
2日後に帰る予定なんですけど…と説明を受けて
溜息が出る。
まさか娘が全ての物を置いてロンドンに向かう事など出来ないだろうから。
「探しているんだ…連絡が付いたら教えてくれないか?」
「え~?あの子また家出ですか~?」
「かもしれん」
前にも水希は家出という事をしでかした事がある。
それと同じ考えなのだろうが、今はそれとは状況が大いに違った。
「レンのカンに頼るか…」
出来るだけ色々と連絡を取ったが彼女は見つけられず
父親が深い息を吐いた。
レンと、平賀が二人で走っていたが、やはりレンに置いて行かれる。
野生の彼の足とスタミナには、結構な運動をしている人でも
ナカナカ合わせる事は出来ないだろう。
「まっ…まって!おい!」
「なに?」
「行き先 ハァハァ…解るの ハァハァ か?」
息を切らす平賀に比べ、レンは息を少し上げた程度。
「解る!」
「解った…少し待て大学からスクーターとって来る」
目の前は大学。
ソコまでを全速力で走った平賀は既に足がカクカクと笑い始めていた。
運動不足だなぁ…なんて思いながら学校に置いていたスクーターに鍵を差し込んだ。
ハッハッハと、規則正しいリズミカルな呼吸音。
それを、ブロロロロと、機械音がかき消す
(おいおい、15キロは出てるぞ…怪物か?)
だが、レンは彼女の場所がわかるという。
だったら、付いて行けば、何処にいるかも解る。
嫌な予感が拭えなかった。
と、その時レンの携帯が鳴った。
「はい」
と、出た先から眉間にしわを寄せるレン
「今日は無理、水希いない 水希大事 無理、他頼む 水希だ sorry」
次々に出される声は、どうもおかしい
「梅木か?」
「はい」
「付き合ってんのか?」
「いや」
「だったら、何で一緒に帰ってるんだよ」
「………カオリ内緒言ってた」
「お前、それで水希先生の信用なくしてるって知ってるか?」
「え?」
「お前の大事な嫁放置で他の女送ってて気分いいはずねぇだろう?」
「違う!水希OKした言ってた!」
「それは本人が言ったのか?」
「……カオリ」
「だろうな」
長い沈黙が生まれた。
互いに何かを深く考えているような…そんな空気が支配する中
二人は目的地を探した。
要約すると…
レンは、水希が一緒に帰るのをOKしたと言われ
梅木を送っていた。
水希の噂は学校中に広まっていた。
それを考えると二人は、梅木の策に嵌っている様な気もする。
「おい、アンタさ…」
「レン!」
「あ?あぁ、俺は平賀聡史」
「サトシ!俺水希間違えたか?」
「間違えてるな。」
「………教えてくれるか?」
平賀は自分の知りえる事を、全て話した
学校での事、噂、水希への梅木の態度。
そして、あからさまに流れた嘘は水希を見る目が変わっていた。
「そう…水希、苦しかった?」
「俺の前では平気そうだったけど…まぁ
苦しいんじゃねぇかな?」
「だよね…って、こっち!」
いきなり折れ曲がって、人の気配がしない山道へと向かっていった
そのレンを見ながら、深い溜息を付いた
「居る場所解るほど、水希先生を大事にしてるんだったら
もっと、言葉や態度で示せば良いのに・・・・」
「してる…けど、解らない…俺に家族、居なかった、愛し方、愛され方…」
「…そうか」
二人そろって不器用過ぎってどうよ?
なんて平賀が思ってると、川沿いに下りる場所に小さな小屋があった
「サトシ!あれ水希!」
「OK!」
平賀はバイクをその場に置いて、レンはそのままで
その小屋へ向かって走った。
ガガッツ…ゴッツ…
音がイヤに響いて、水希が身体を縮める。
ゴンゴンと、音が何度か響くと、バーンと大きな音がけたたましくなって
風が頬をすり抜けた時だった。
身体に抱き疲れる違和感…
先程の嫌悪感がまた蘇り、足をばたつかせて逃げた
「んーっ!!!んんっ!!!」
「水希!」
レン?
レンの声…幻?
幻聴って良くあるって言うし…助けて欲しいと願ったから
こんな声が聞こえるんだなぁ…
なんて思ってたら
もう一度はっきりと
私の名を呼ぶレンの声が聞こえた
「水希っ!」
「水希先生!」
平賀の声?…なんで組み合わせの悪い二人…
やっぱり、幻覚?
と、しゅるっと解かれた目隠しと、ビッと剥がされたガムテープ
「いっ…ってぇ~~~~!」
口の周りが真っ赤になったんじゃないか?
それ位の痛みはあったぞ?
ってか…目の前の二人
異質な組み合わせの、レンと平賀
助かった…んだ?
「レン…?」
「水希ごめん遅くなった」
「っ…う、ううっ…」
助かったんだと思ったら涙腺緩みました。
涙垂れ流しです、平賀も居るのにはずかしいったらありゃしない!
そっと、レンの指先が涙を拭った時だった
ゾワッと、背筋を凍らせる舌の感触が一気に私の身体を支配した
「いやっ!」
身体を手から逃れる為に大きく仰け反ると、レンがポカーンと言う顔を一瞬見せて
その後にすごく悲しそうに瞳を曇らせた。
違う!レンが嫌だったんじゃない…
「ごめ…レン?ごめん…違うの」
「水希怖い?」
「レン聞いて?違う、レンを怖いわけじゃ」
スクッと立ち上がったレンの目は、真っ暗だったけど更に暗く見えて
悪い事をしたという罪悪感が込み上げて来る・・・と
バキッと、強く殴りつけた音が聞こえ驚いて目をやると
平賀がレンの頬を殴っていた
え?何で平賀?
ってか…なにこの状況?
「お前男だろう、察してやれ!水希先生が怖がってたのは
お前じゃなく連れ去ったヤツラだろうが!
勝手に自滅してんじゃねェよ!」
「……そうなの?」
振り向いてこっちを見るレンに大きく首を縦に振った。
「あ…首…水希赤…い…」
レンにばれるだろうか?
ストッキングはボロボロ、でスカートも汚れてて…
目を背けるしか出来ない。
何もされては居ないけど…でも、触られた
「っ…」
「水希…ごめん」
ギュッと、レンが抱きしめてくれてもう、ソコからは大洪水の涙とよだれと
鼻水まで便乗してくる。
「うわぁあああ!怖かったんだからっ!
うううっ!レンのバカぁああああ」
八つ当たりだ。
うん、でも今日くらい許して…。
「水希先生、何もされなかったって事なさそうだな…
首に印が付いてる」
「…なめ……なめられだぁ…」
「へぇ、俺の先生に随分な仕打ちしてくれたらしいな」
「う?俺の?」
なんなんだ?俺のって何だ?でも、涙止まらないぃ~
「レン…怖かったよぉ~」
「うん、ごめんね」
水希の横にスッと寄ると、平賀が手を伸ばす。
あからさまに青くなる水希に、ハーッと息を吐いた。
「レン、お前嫁が他の男の所有印付けられて許せるか?」
「ショユーイン?」
「あぁ、英語じゃないと解らないか?」
コクリと頭を上下するレンに
「Possession mark 」(所有印)
「はっ?」
ここ…と指をさしたのは赤くなった水希の首筋
「他の男の侵入を許した証だぞ?」
「水希!?」
「あのっ、ちが…何もされてない!舐められて…その…
さ…さわられ…ぶっ!」
レンが今度は強く抱きしめてくる。
暖かくて心地良いはずの胸の中なのに、焼けるような熱さが伝わってくる
急に冷気を帯びた空気がドンドン回りを埋め尽くして行く。
平賀が青ざめてるのが視界に入り、慌ててレンを見ると
恐ろしく無表情の彼が居た。
伝わってくる心音が、せわしなく動いているのは、怒り?
「レン?」
「捕まえる」
「え?」
「この印、許せない」
≪ 狼と私⑫ | | HOME | | 狼と私⑭ ≫ |