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色々と彼を知り
色々と私も、知って貰った
だから、もっと話をしよう?
もっと、楽しく生きよう
それが、私達の結婚の意味かも知れない
レンとの話は互いの心の有り所を深めたと思う。
だけど、だからこそ
レンには幸せになって欲しい。
そして、私も、幸せでありたい
そう思えた。
その日は、互いの体温の中眠りに付いた。
それからは、時折苦しい時や不安な時は一緒に布団に入る事になる。
と言うか、レンが勝手に侵入して来る。
だからって何か有るわけでもないし、厭らしい事などひとつもない。
そして、私も、それを期待しているわけでも無かった。
季節が過ぎ、もう少しで1年の節目が来る。
そんな中父が知り合いから貰った温泉の券をレンにあげたらしく
私に一緒に行ってと言い出した。
「温泉…かぁ」
「水希行こう?」
「うーん、まぁ来週なら行けるかな。」
2人で行動する事は苦ではない。
逆に楽しい事の方が多い気もしてる。
だからって、クソジジイの思惑通りにはなら無いだろうけどねっ!
こちらの気持ちとは裏腹に、父は孫が見たいと、訳の分からん事をレンに言っている。
レンも、そう言う事などきっと今は考えてないだろう。
と言うか、考えてたら蹴り倒すけど!
旅行は、別の意味で楽しみではある。
「レン!明日は、早くから出ると思うから、荷物だけは用意しておいてね?じゃー私は、仕事行くね!」
「あー!水希!キス」
「…はいはい」
頬を出すと彼が、優しく唇を頬に落とす。
もう、かなりこの行為は続けられていて私も、あまり気にはならなくなった。
ただ、時折人前でやらかす事が有り、それだけはダメと何度か叱った事がある。
まあ、それ位レンを受け入れる事ができてはいた。
実はあの誘拐事件から3ヶ月
何も問題は今の所起きてはいないが
梅木の攻撃は激化していた。
翌朝、水希が父から車を借り、レンを助手席に乗せて
車を走らせた。
久しぶりの運転だが、残念な事にレンは免許を持っていない。
「水希!湖!」
指差す先は、水が溜まると言うより…水だらけ
「海だよ」
「海…海!?」
「そうそう」
ニューハンプシャー州は、湖の多い土地。
海は見た事があまり無いのだろう
「海行ってみる?」
「yha!」
私は車を止めて、水辺までレンと降りると海の波に驚いていた。
打っては返す波を、追い掛けては逃げた。
まるで犬ね…なんて思う
「水希!辛い!」
ペッペと、舐めたであろう塩水を吐き出しながら美形が歪む。
「塩解る?」
「Salt!OK」
「そう、それが濃いから、塩辛いの」
「シオカライ…」
再び波打ち際に走って、手に持った貝殻を振りながら
私の名を呼ぶ…まるで、子供
「レン…そろそろ行こう?」
私の短い髪が、潮風に浚われて、さらりと揺れる。
レンの髪も、さらりと揺れて私は彼に見入る。
背が高く、癖のある髪が風にふわりと盛り上げられ
グリーンの目が私を捉えると、ニッコリと微笑んだ。
「行こう」
レンは手をだし、私の手を待っているのだろう。
それに従っても良いのだろうか?
そろそろと手を出しかけたら、待ちきれなかったレンが
私の手を取り、車に向かった。
心臓…痛い。
ドキドキと高鳴る心音は、車に乗り込むまで続いた。
恋愛脳が作動してるのは解っている、けれどそれを全て
払いのける事が出来なかった。
危険と信号は胸の中で音を鳴らしているのに
彼を拒む事は出来なかった。
運転を再開して溜息を落とした。
こんな風に相手の事を考えて身動きが取れなくなることが
今までになかった。
これを恋と認めれば、その病は大いに広がり
私を蝕んでいくだろう。
解っている、けれど…勇気が無い。
「音楽掛けていい?」
「いいよ」
音源から音楽を流し、私はスピードを速めた。
温泉に到着し、チェックインの時に問題が起きた。
「スイート一室です」
「え?でも二部屋って父には聞いていますが」
「ええ、そのうちの一部屋分の料金で、スイートにして部屋に二人と
承っておりますが…。」
「えっ!?ちょっと確認してみます」
電話をすると、結婚してる同士一緒に住んでいる同士何の問題がある?
と、逆に質問された…。
あぁ、クソオヤジのクソっぷりは、相変わらずファンキーだ
私にどうすれって言うの!?
信じらんない!!!!
もう言い合っても無駄だと思い電話を切った。
私はフロントに空いてる部屋を借りる提案をしたが
明日の花火大会のため、満席となっていると聞かされた。
「水希?」
なんか不安そうな顔をしているレンに苦笑いを向けて
今の説明をすると、大丈夫だと…この男もホント…わけ解らない!
確かに何度も一緒に寝た事はあるけれど…まる一日彼と一緒に過ごす事は
今までに殆どない…
もつか?私の心臓。
来た以上は鍵を受け取り、部屋に行くしかなかった。
スイートルームを開けると、そこは窓越しの川が走り、サーッと言う
水の流れる音が耳に入る。
ベットはキングサイズベットが置かれており
一緒に寝る事が確定する。
いつもはレンが入り込んできて寝ている私の後ろに来るのが
普通で、一緒にベットに入る事など殆ど無かったのだが
流石にこういう雰囲気で入るのは抵抗があるなと私は思うと
バナナを食うしかない!
「レンバナナ頂戴」
「ん」
目の前で皮を剥いてくれて、手渡ししてくれる。
今までと違う行動取らないでよ!
そのまま渡せば良いのに!
もぉ~レンのバカバカ!ありえん!
なんだこの、甘い雰囲気…まずい!危険と、私の中の何かが言ってる!
カラッと、音を立てて窓が開けられると、私も視線をそちらに走らせた。
レンの髪がさらりと動くだけで心拍数が…
ダメダメダメ!このままではまずい!
よし!
「お、お風呂行って来る」
「え?」
「お風呂!」
「解った」
実はスイートには、部屋に露天が付いている…
けどね?けどーね?
すだれ一つしか掛かってない!こんな場所で入れるか!!!!!
私は、着替えと浴衣を持って部屋を出た。
レンを残して…
ザーッと流れる泡。
綺麗に洗い終わると、ハーッと息を付きながら湯船につかる。
気持ちいい…そして癒される。
かれこれ入浴してから1時間は過ぎている…レン一人か
一緒に来て別行動って…流石に可愛そうだよな…
しかもレンはきっと、部屋から出ていない。
言葉をあまり上手く発せ無いので、彼はあまり人前に出ない。
と言っても、誰かが居れば別なのだが。
ザバーッと風呂から身体を押し出し、浴衣を着込むと
レンの待つ部屋へと向かった。
そう、無理に部屋に居る事は無いと悟ったの!私凄い?うふふ
レンを連れて庭を散歩し、周りの商店を廻ったって全然良いんだって
お風呂で思い付いたのは、他の宿泊客が面白かった…からはじまる
この辺の事情を話していたから。
「レン~?」
部屋に入ると彼の姿は無い…
あれ?一人で居なくなる事は無いと思ったのに…
なんて思ったら
カラッと開いた扉から、腰にタオルを巻き水で濡れた
体と髪をオールバックにしたレンと目があった
「んやがああああああああ!なななななあああああ!」
「シーッ、声大きい」
「ごご、ごめ、じゃない!何やって…ってあ…そっか」
レンの後ろにあるのは露天風呂。
「こっ、こっちの入ったんだ?」
「うん」
「まだ入るの?」
「もう、出る」
「じゃ、じゃ…じゃー服早く着て!」
「これ、着る解らない」
「ほうぇあっ!」
ボクサーパンツ一枚だけ履いて、髪をガシガシ拭くレンが
差し出してきたのは浴衣…。
「これ、着るの?」
「ダメ?」
私が着付けるしかないのか…それにしても恥ずかしい!
目のやり場に困る…って、あ…お守りだけは外してないんだ…
イヤイヤマテマテ…だめだ、おかしくなる!
私は大急ぎでレンの浴衣を後ろから羽織らせ
前をあわせると、腰に帯を巻くのだが…
…小さいなこれ。
「レン、ちょっとまってね」
フロントに電話をすると、XLサイズがあるというので、LLサイズとの
交換を申し出た。
足がツンツルテンなのだ。
すぐに、ホテルの人が来ると、浴衣をレンに着せ直した。
「oh!サムライ!」
「ぶっ、サムライって…」
「これ違う?」
「それは浴衣…侍は着物、似てるけど違うものだよ」
しょんぼりしたレンを、そのまま外へと連れ出した。
「いってらっしゃいませ」
と送り出され、私とレンは庭へと向かった。
石で書かれた波の模様や、置かれた石が風情を感じる。
そして、ここもまた心地良い。
「静か、いいね」
「うん、気持ち良いね」
黙って20分ほど座っていたが、レンがあれやこれやと見ては
うごいてを繰り返しているので
そのまま、下の街並みへと出かけた。
手元には5、000円を持ち、買い物へと出かける
「あ…水希あれやる!」
「は?」
指を指した先の女性がこっちを見てて…
男性が、面白くなさそうな顔をしている…のは良いが…
あれって…腕組むの?
レンが嬉しそうに私側の腕をグッと開いてくるから、仕方がないか…。
「人に指差したらダメよレン?」
「ごめんください…」
「いやいや、ごめんなさいだから!」
「解ってる!わざと!」
なんだ!わざと間違えるのか?いや、絶対素で間違えてるぞ…
腕にレンの体温が伝わってくる…
あーもう、この恋愛脳、勝ち割ってやろうか!?
ほんと、何でこんな所で赤く…って…レンも赤い?
ちらりと見上げたレンの横顔の頬辺りが赤くなってる。
あまり表情を上手に変えないのに…
それを見ちゃったらもう、耳まで赤くなるしかないじゃない!
うぶ過ぎるだろう!!!!!!
ある程度の買い物を終えて、家へと戻ると
レンがTVを点け、私は部屋の露天風呂を見に行った。
常に湯気が立って、いつでも入れますと言わんばかりのこの存在は
ナカナカ私の心を擽ってくれる。
チラリとレンを見やるが、テレビに見入っている。
うーん…とりあえず夕食後考えようとパタンと扉を閉めた
「レン?お腹減ってない?」
「ん、さっきお好み焼き食べた結構きつい」
「だよねー」
時間を考えないで外で買ったお好み焼きを食べてしまった。
失敗したなと思った時には遅かった。
りんご飴などの屋台が出ていて、レンには初めての屋台
目を輝かせて射的をやらせたら、案外上手で驚いた。
「これ」
「なに?」
お祭りで一緒に歩いてたものの、時折レンがあれが見たいこれが見たいと
ウロウロとしていたのは知っていたが、まさか
こんなものをどこから手に入れてたんだ?
「つける?」
「え?」
「おいで」
呼ばれてレンに近寄ると
首に指先がかかり、ビクッと身体を震わせるが
私の身体を抱え込むように後ろでモタモタと指を動かしている
彼に包まれる形となった以上
動けないし…
「できた!」
なんて考えていたら、レンがニッコリと笑って身を引いた。
首に巻かれたネックレス。
緑の石を丸く針金が囲っていて、それを吊るす銀のチェーン
首から下がると、それはきらりと輝いたように見えた。
「くれるの?」
「うん」
「あ…ありが…と」
ポンポンと頭を撫でられて、顔が火照った。
レンが、こんな風に接してくるのも、この場所に来たからなのかな?
本当に恋人同士みたいで、ちょっと困った。
うん、嬉しいんだけど困るんだよ…
だって、本当に…どうしていいか解らないんだもん。
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