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悲しみは誰にもある
不安だって、切なさだって…
誰もが持っている感情で誰もが生きている証明
※シリアスモードでお疲れでしょうか?もう少しですのでお付き合いください><;
今日は、学校を休めと言われていたが
傷は然程酷くはないので私はレンに無理を承知で
仕事へ行く許可を出させた。
私は、野村と話をしなければならない。
きっとその前に彼は何かを仕掛けてくるかもしれない。
このまま、レンや皆を巻き込むのは正直辛い。
いつもみたいにバナナを食べながら、のんびり机にふんぞり返っている
そんな自分に戻りたくも思っている。
「レン、ごめんね」
「うん…」
大学に到着すると、レンは手を振って帰っていった。
そして白衣を着ると鈍く痛む肩に溜息を付きながら
研究室へと入った。
「水希先生?何で来たんですか!」
「傷大した事無いから…来ちゃ悪かった?」
「いや、そうじゃないけど…」
「それと、もう一人助手を考えてたけどそれやめる」
「は?」
「犯人解ったし」
「ちょ、それは危ないでしょう?」
「もう少しだけだから…平賀、悪いけど頑張って?」
「うわは~水希ちゃん強引!」
「よろしく!」
私は、机に座り、PCの電源を入れると
仕事をゆっくりペースではあるが始めた。
レンとの旅行が結構響いているのだ。
残ったレポートと研究資料などの調整かなり平賀が頑張ってくれているから
この事件が落ち着いたら、家で焼肉パーティでもしようか
なんて不意に考えたら、こんなに平賀と親密になった自分に苦笑する。
人と関わらないようにする訳ではないが
プライベートと、仕事で結構割り切った生き方をしてきたから
こうやって、ホームパーティに呼ぶなど、当時だったらありえない事
でもあったからだ。
野村楓。
28歳で独身
水希と同じ立場の、補佐業務が仕事。
狂ったのはいつからだろう?
あの人が…俺を見付けてくれたあの日から動き出したんだ。
もう、既に3年も水希だけを見てきた。
何度も好きだと告げたけど、嫌われるのが怖くて軽く言葉に乗せた
それなら、きっと…冗談だと流せたから。
けれど、いつの間にか水希が結婚していると言う噂が流れ
正直居た堪れなかった…。
好きで好きで見続けて、側に居れるだけで良いと思っていた思いが
現実味を増したのは、レンと言う旦那を見てから。
この男の下で、どんな声で縋るのか
この男の上で、どんな淫らになるのか
そんな事を考えるのが普通の男ってもんじゃないか?
前にも付き合った男が居た。
けれど、他の女を宛がっただけで、あっさりと別れたのを
俺は知っている。
何せ実行犯だから。
他の女は俺に寄る害虫。
一年で契約した女は、半年で水希と男を別れさせ
残り半年を彼女として過ごし、1年きっかりで別れる
手はずどおり面白いくらい上手く行った。
水希と正反対の性格の女たち。
そう、今で言う梅木香織のような
けれど、今回はその計算がことごとく外れて
俺は煮えを切らし、彼女を誘拐した…。
あの小屋ならばれないと自負していた。
怖がり、カタカタと震える水希が可愛くて…キスの一つでも落としたかったが
それは出来ない。
俺に恋心を抱かなかったら意味が無い。
だから、知り合いを通して一人の男を雇い
彼に水希を襲わせた。
あそこまでやるとは…予想外だったが。
梅木に、今日はレンは一人だから、そのすきにレンと
寝ろと命令すると梅木はすぐに行動に移す。
俺は、梅木にやったら裸の写真を撮り、ばら撒けば
それで二人の関係は成立すると教え
小屋へ戻ると、水希にのしかかる男に目を見開いた。
声は聞かせてはいけない。
ドン!
強く叩くと、男が驚いたように俺を見るから
ニヤリと笑ってナイフを見せた。
首に…赤い染みを作った男に、ナイフを突き立てようとしたが
水希の事以外で犯罪者になる気はない。
あいにく、下着はそのままだったのもあり、男を連れて一度戻った
金で雇った男に半額の値段を渡し、触った罰金として
半額を自分に戻した、男もそれを了承し
渋々ではあったが帰って行った…。
車で急いで戻ると、見慣れたスクーターが土手に置いてあり
計画の失敗を見せしめていた。
どこから情報が漏れた?
何故こんなに、駆けつけるのが早い?
そんな事で頭を巡らせていると、扉が開いたので
俺は慌てて車に乗り込み、離れた場所から彼らを見ていた。
「レンと、平賀か…?」
憎しみがこみ上げる。ここで水希を抱き捨て
彼女を癒す…そんな計画が無残にも帰依してしまった
どんなに、梅木を押し付けても、それを拒むレン
俺が好きだと何度も言ったのに答えない水希
二人が旅行へと旅立ち、俺はもう溜まらなかった。
水希を汚すレンにも…それを受け入れる水希も
だから、梅木を抱いた。
「水希…水希、愛してる…もっと、よがって…水希」
梅木は。涙を流しながら俺の下に組み敷かれ、違う違うとうるさくて
一度殴ってやったら気を失った。
だから何度も腹の上に思いを吐き出し、水希を抱いた。
でも、満たされない…
だから、あの時唇を重ね薬を押し込み
どうにか抱ければあの監視カメラに映り込めばと
行動を起こしたが、思ったより早く平賀が来てしまい
これも失敗に終わった。
水希…手に入れたい
水希…愛している
俺に振り向かない女は居ないんだ
私は、部屋に戻ってから、携帯が点滅をしているのを見つけ
開くと、一件のメールが来ていた
内容は最終決戦のメール
************
水希、明日の夜会いたい。
真剣な話しがあるんだ悪いが来てくれ。
もし時間が合わなければ、日にちを変えてもいい。
真剣な話だと言うのだけは、忘れないで
野村楓
************
解りました、明日何時にどこへ伺えばいいですか?
************
良かった、じゃー明日の7時に牧野上公園の
銅像の前での待ち合わせでいいだろうか?
あまり、騒がしいファミレスとかでの会話は避けたいんだが
野村楓
************
レンを連れて行っても良いのであれば公園でも構いません
けれど、一人で話をするのであれば、出来ればもう少し人気のある所が
好ましいと思いますので、ホテルのラウンジとかでどうでしょうか?
************
解った、出来れば一人出来て欲しい
話をしたいだけだからMホテルラウンジで7時
それでいいか?
野村楓
************
解りました、では明日お伺いします
************
メールのやり取りを全てコピーして
レン、和香、平賀にメールすると
レンが二階から降りてきた。
そして和香が私に、平賀がレンに電話をしてきて
これから4人で集まる事になった。
本当にこう言う風に助けてくれるのは心強い
そしてありがたい…。
1時間で皆が揃い、食卓テーブルに皆が座ると
温かいコーヒーを出した。
和香が平賀に挨拶を済ませ、話を切り出してきた。
和香は、告白ではないかと言うこの呼び出しに
皆が同意する。
自意識過剰とかではない…と思う。
けれど、あの梅木の話を聞けば、
きっとその手の話しになるだろうなと私も思った。
レンが、珍しく言葉を引っ込めているのは
恐らく怒った調子で英語で話してしまうからだろうが
今は、平賀も和香もいる。
二人とも英語に精通しているので、私的には構わないのだが
レンがそれはイヤなのだろう。
「告白には答えれないと、私はちゃんと断る」
と言うと、周りがウンウンと揃えて頭を縦に振った。
もう、恐らく私はレンに惚れている。
だからこそ、彼にも嫌な思いはさせたくないと思った
告白する勇気はまだまだ無いけど…。
「じゃー、私水希と一緒にラウンジいくわ」
「え?」
「違う席で見てるよ。平賀クンもレンクンも顔が割れているから
私が行けば良い…。」
「和香あぁ…ありがと~」
本当に和香は心強い…。
こうやって側に居てくれるだけで十二分に心強いのだが
更にこうやって助けられると、本気でありがたいと思う。
「俺行くよ?」
「へ?」
「もう水希守れないイヤだ。変身していく」
………お前は、ウルトラの星の人間か!?
と疑いたくなるが、きっと、彼は変身ではなく変装と言いたかったのだろう。
それに、平賀も賛成すると言うとんでもない事になってきた…
明日の午前中に休みのレンと和香で場所の下見を済ませ
予約できるのかなどを聞きに行くと言う。
人気があるならその場所はどうにか予約しなくてはならなくなるし
そうでなくても、急遽場所が変わると言う事もありえる
車には乗らないつもりで居るので
移動するにしてもこの近辺と言う事になった。
もし、不穏な動きがあれば和香が偶然を装って
水希を助け出すと言うシナリオまで出来あがった。
ともあれ、仕事に向かい彼とも何度かすれ違ったが
それに対しての話は無く、私はいつものようにロッカーに
今日は平賀が、付いてきてくれていた。
「水希先生終わりました~?」
「んむ…もうふこひ!」
もぐもぐと頬張ったバナナ、毎日それが楽しみだったのに
最近のレンはバナナをくれない。
あの絶妙なタイミングが凄く嬉しかったのに…。
バナナを食べ終え、定時に上がると
私はレンの迎を待って自宅へと戻った。
着替えを済ませ、夕飯を少しだけお腹に入れると
レンが変装を見てくれと出てきてたまげた。
「ちょ、なんで女装?」
「ばれないってサトシが」
「サトシ?あぁ、平賀聡史ね」
「うん…化粧お願い」
「えー?メイクするんだ?」
「…しないとばれる」
「そのままでも目の色が緑の時点でばれますよ旦那…」
「あ…」
そして彼は変装を断念したのであった。
カラーコンタクトでも用意しているなら別だけど…そうじゃないなら
きっと目の色でばれる。
滅多にグリーンの瞳の人は居ないから。
なんてやってると、和香が来て、平賀もやってきた。
6時…出かけないとそろそろまずいなと、私はカバンに盗聴器をしまい
家を出る事にした。
和香が先に行くため、毎年の初めに撮られる集合写真で
野村を見せた後に別行動でホテルへと向かった。
ホテルのラウンジに到着すると
私はメールを送る。
*******************
ホテル到着!いまから野村にメールする。
*******************
皆から一斉に了解の文字のメールが来て
ニッコリと笑った。
*******************
ホテルのラウンジに到着していますので
付いたら連絡待っています
*******************
メールはそこでおしまい。
スーツを着込んだ野村が目の前に立っていた。
「あ…野村」
「おう、悪かったな呼び出して」
「いや、大事な話があるんだろう?」
「あぁ…」
と、エスコートされて、ラウンジの奥へと案内されると
ソコにはどうにか和香の姿が確認できた。
カウンター席は周りが見渡せるようになっているのだから
そこに座れば間違いないと言った和香が、凄いと思う。
椅子に腰を掛けて、飲み物をオーダーすると
乾杯とグラスを傾けてきた。
「酒飲まないんだ?」
「うん、今日は飲まない…」
不審に思われるだろうか?
でも、飲んでいかがわしい事になったり、逃げ遅れたりするのは
勘弁願いたかった。
「水希」
「ん?」
「俺さ今まで水希に何度も好きだって言ってただろう?」
「あーそうだな、でもお前の場合私のバナナが狙いかと思ってたが?」
「は?」
「あれ?知らない?お前と平賀どっちが私を落とすかって
賭けがあったらしいぞ?で、その景品が私のバナナ…
どうやら、あれを食べると頭が良くなるらしい…と言うとんでもない噂つきだ」
「…んなのしらねぇし」
「そうか」
「だから、お前はいつも俺の言うことを流してたのか?」
ハーッと深い溜息を付きながら野村がグラスを一度回すと
中に入った水分がぐるりと円を描くように回った。
「で、用件とはそのことか?」
「あぁ…」
数日前に襲われたあの事件
思い起こしても、苛立ちが先立ってくる
「だがな…校内であんなことしておいて
お前は勝手すぎやしないか?」
「…そうだな、あの時は俺が悪かったと思ってる」
「うん、そう言う人を好きになれと言われても私には無理だ
それにレンが居る限り私はレン以外を見る気は無い」
「18で結婚したんだっけ?」
「あぁ、そうだな」
「それでも、水希が好きなんだ」
「うん、その気持ちはありがたいが答える気は全く無い」
野村は私の答えを聞き、黙りこくった。
「野村…お前私に何をした?」
「キス」
「それだけじゃないだろう?」
「は?」
「梅木…お前が操ってただろう?」
「は?なんの事だ?」
「違うのか?」
「違う!!」
「じゃー小屋は?」
「そんな危ない事水希にするなんておかしいだろう!」
私は、深く息を吐いた。
人を追い詰めるのは好きじゃない…
けれど、この野村だけは確りとかたを付けなければ…
「そうか、危ない事と解ってるって事か」
「は?」
「小屋とだけしか言ってない、何故危ない事だと?」
「それは平賀が教えてくれたからだよ」
「へぇ…そんなに交流があったか?」
「……たまたまだ」
「平賀はたまたまで話す人間でもないと思うがな」
「俺を疑ってるのか?」
悲しそうな目の色をする…そう思った。
失意に飲まれそうな目…虚空の瞳
「すまん、さっきので疑いが深くなった。
私は野村、お前より平賀を信じるしレンを信じる
だから、梅木にも揺るがなかったんだ」
「二度と…手を出して欲しくない」
カタンとテーブルに半分だけ飲んだウーロン茶を置き
私は席を立った。
「どこ行くんだ?」
「帰るよ…もう野村には関わって欲しくない」
「ちょ、水希!」
千円をテーブルに置き、私は店を出ると
後ろから追ってきた野村に抱き締められた。
あぁ、やっぱりこの匂いは…
「野村、この服の香りは車と一緒だろう?
私が浚われた時にお前の車で移動した…だから匂いが
すぐにお前だとわかった…これ以上なにか聞きたいか?」
「…たまんないんだよ!好きで好きで!」
「その気持ちはありがたいが、他人に迷惑を掛けるような恋愛は
もう沢山だ…それに、今の私はレンが居る」
「レンレンレンって、あいつさえ居なければお前は「無理だ」」
野村の言葉を遮った。
レンが居なくても、野村とは恋に落ちなかった。
簡単な告白、梅木にした仕打ち、私を手に入れるためにやった手段
全てが私の中で認められない事ばかり
「もう、側に寄らないで。他の人を見つけるんだ」
「イヤだ!水希じゃなきゃ、俺は…」
「悪いが、私はレンを愛しているんだよレンじゃなきゃダメなんだ!」
ドンと野村を突き飛ばし
私は夢中で走った…
はぁはぁと…切れた息を整えながら
皆にメールを一斉に送った
*******************
心配掛けました、どうにか逃げて今ホテルの裏の公園に居ます
*******************
一斉に皆が集まり、ホッとすると、足が急にガクガクと振るえ
ぺたりと座り込む形になった。
けれど、レンの姿が見当たらなくて私はキョロキョロと見回した。
それを見て罰が悪そうに和香が苦笑いしながら私に伝えてくれる言葉は…
「あ~…レンクンさっき野村と話しするって…すれ違った」
「は!?はぁああああ?」
せっかく吹っ切ったと思ったら、何してくれてるんだあの男!
「男のケジメてやつじゃないの?」
平賀が私に手を差し伸べながら言う。
「「待ってやろう?」」
二人に言われれば、そう答えるしかない…
「うん…」
20分後レンが私の所に戻った。
頬に殴られた痕…拳が赤く腫れてて、殴り合いをしたのは
十分に解った。
「もう、大丈夫だから」
と、レンが私を抱き締めた。
爽やかな風、心地良い空。
ふーっと息を吸い込むと肺一杯に広がる緑の香り。
昨日レンが何をしたのかは語らなかった…
けれど、すっきりとした気持ちと、レンの思いが嬉しかった。
皆も世話を掛けたと言う事で、バーベキューを催してます!
皆で食べる肉や野菜、笑いながら、怒りながら
4人で話をしながら食べていると
平賀の彼女も来ると言う事になり、皆興味津々。
結局、終わり掛けにはなったが、平賀の彼女がやってきて
自己紹介をする彼女に、私たちも個別に自己紹介をした。
彼女の名前は平賀洋子…平賀?
そう、結婚していらっしゃった…。
あの平賀がと思うとなんか悔しい。
まぁ、それはさておき。
病院の看護婦をやっていて時間がナカナカ不規則だったため
平賀が私の家に来るとか、家を空けることには全く不快感を持たなかったらしい
うちに一度は泊まってるんだから
それはそれで、奥さんに叱られるのでは?と思ったが
レンの部屋に寝たこともあり、他の家にも時折
泊まりに行くらしい事を聞いた。
和香の彼氏は、残念ながら会う事は出来なかったが
どうやら、飛行機のパイロットらしいので、また後日話すこととする。
野村とは、結局そのまま、互いに害の無い人間になった…という感じだろうか?
レンがあの時、何を思い何を言ったのかは…
未だに私たちには教えてくれないが
平賀にはどうやら話したらしい…
仲の良い友達が出来たと言う事だろう。
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