倉庫です。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ 狼と私27 | | HOME | | 狼と私2章① ≫ |
レンが…怒っちゃったぞ!
どーすんだこれ?
なんとか大魔王降臨だぞ?
やばいやばいやばい!
「納得いかない」
その言葉は、私に向けられたものだった。
レンはその言葉を残し、テーブルの上に5千円札を置くと
私を置いて一人で帰ってしまった。
今までこんな事無かったし、彼が何故ここまで怒るのか
それも思い至らなかった。
勿論、そのお金を持って私も後を追うんだけど
一言も言葉を発さないで家へとたどり着いた。
「レン?」
「……」
返事はなし
「何に怒ってるんだ?」
「水希」
返事が来たと思ったら、怒りの凶元私ですか!?
「なにか…したか?」
「うん」
「なに?」
何だか、レンが遠くに行っちゃいそうで
怖くなってレンの温もりで安心したくて、レンの腕に伸ばした手が
パシッと払われた。
「…考えて」
それだけ言い残し、レンは二階へ上がった。
何をした…?
私、あいつの話を聞くのは、レンだって渋々だけど
了承したのに…
その他に、関係してるのは、梅木、野村…だけど、そんなの
もう終わった事だったし…
野村にキスされたのを思い出したのか!?
「……んなわけないか」
深く溜息を付き、バナナを口に頬張った
私が考える時は、バナナがあるとかなり色々と考えれるんだけど…
今日は何も出てこない。
ご飯は食べるし、朝の挨拶もする
けれど…レンは3日ほど口を殆どきいていない。
私が悪くて怒らせた。
それしか思い付かなくて、レンが遠く感じる。
言ってくれなくちゃ、わからない事もあるんだよ…レン
和香に連絡を取り、会いに行く事を決めた
一人じゃもう…答えが導き出せない。
こんな事相談するのも気が引けたが自分では答えが解らなかった。
でもこの状況を打開したかった
側に居て欲しい、触れて欲しい、一緒に笑って欲しい…
だから…
「レン、出かけるから…」
「いってらっしゃい」
二階からの声に胸が痛む。
☆
「と、言う訳なの…」
「はぁ…レンクンが初めて怒ったんでしょう?」
「うん…」
「だったらアンタが100%悪い」
「ちょ、何でよ!」
ハーッと深く溜息を吐いた和香がテーブルの向こうでん~と考える。
そして、ニヤッと笑った
何よその不敵な笑みは!
「ねぇ、水希…あんた根本的におかしいわ」
「は?何が!?」
「アンタ何歳で、付き合ってた男よ」
「23だけど…」
「それじゃないの?」
「え?」
「良く考えれば解るでしょう?後は自分で答えだしな」
と、私は家を追い出された。
これから彼が来るらしいので邪魔だったらしいけど
23で付き合ってたののどこが悪いのか…
私は公園でブランコに揺られながら
なんか苦しくなる胸を抑えずに、ただ考えていた。
レンと出会う前の話…
23はまだレンに思いを寄せてなかった…
結婚と言う形だけで
……。
結婚
してたんだよね
あぁ…浮気になるのか、これは…レンの中では浮気にあたるんだ
だから怒ってる…。
そう考えれば全てが紐解ける。
妻の不貞…か。
あの時は、彼氏が欲しい年だった
19の頃初めて付き合った男は実は勝手に結婚したレンや、家族に対する反抗。
悪い事をしているなんて思ってなかった。
勝手に入籍して勝手に妻にされて…
私の将来は上手く離婚できたとしても、ばつが付く。
今でこそ恋心があるけれど。
なんか、腑に落ちないなぁ。
見合いでさえ、相手とは一度会う事でお互いの印象なんかを
ひっくるめて結婚すると言うのに
解らないままの相手で、しかも狼の子
今では納得は出来るけどあの時は…そんなの解らなかった。
確かに私が悪いのかもしれないけど
でもね、レン…今が大事なんじゃないのかな?
こんなくだらない喧嘩なんてしたくない…
気が重くて…帰る事が出来なかった。
空が白んでるのを確認して、溜息を落とすと
そのままブランコを漕いだ。
風が頬をすり抜け髪を揺らし、寒い風が
私の横を通り抜ける。
明日は、休みだし…このままネット喫茶でもいこうかな?
そうすれば、レンの怒った顔を見る事もない。
あんな空気…家に欲しい訳じゃない
突き放された痛みが胸を何度も叩いて
レンの納得いかない…という言葉が胸に刺さる。
「どうすれって言うのよ!」
声を上げて、空を見上げたら涙が止まらなくなった。
ギィィ…と、揺れが不安定に止まると、急に暖かさが背中を包んで
その香りがレンだと解った。
でも、私だって腑に落ちない…納得なんかしない!
冗談じゃない!
背中の抱きしめてくる手が暖かくて
甘えて縋りたいのに…どうしてこんなに天邪鬼なんだろう。
「水希」
「……。」
「泣かないで、ごめん」
「……ないてない。」
「うん、ごめん…和香から電話で聞いた」
「そう…」
レンが何を聞いたのか、和香が何を話したのかは解らない。
でも、私はそんな事どうでも良かった。
~ren sid~
時間は2時間前に遡る。
水希の帰りが遅い…自分が怒ったから?
でも、腹が立った…。
自分が思って居る時彼女が違う男と恋をしていたのも
そして、違う男と笑い合ってたのも。
狼は別につがいになったからと言って
他のオスを選ぶことだってあると言うのに。
「Sit!…」
俺は、水希が行くと言っていたワカの携帯に電話した。
帰って来るなら、迎に行かないと…
こんな時間の一人歩きは流石に俺が怖かった。
ワカは電話の向こうで鼻に掛かったような寝起きのような声で
出ると、こんなに時間だし寝ていて不思議は無い
時計を見ると2時。
一言遅い時間に掛けたのを謝り、水希を頼むと伝え電話を
切る筈だったのに、その言葉を発したら思わぬ答えが帰ってきた
水希は帰った…しかも3時間も前に。
かなり悩んでたみたいだが、その事に付いては相談を受けたと
聞かされた。
俺は慌てて、家の鍵と財布そしてワカと繋がったままの電話を
手に持ったまま家を出た。
水希は、レンと結婚した事を最初受け入れてなかった。
当てにならない父親は、レンを連れて戻る事があるのかすら解らない。
そんな中で、自覚など持てないのも解って欲しいと言われた。
俺は水希に逢いたい一心で、ひたすら日本語を覚えてた。
けれど水希は、逢いたいと思う前にレンを知らない。
恋をして彼女を縛ったのはレンそして共犯者は父。
水希の将来は、そこで決められ一時期はかなり悩んでいたとも聞いた。
「嫉妬…でしょう?そろそろ許してやったら?
水希もかなり反省してたよ?」
うん、解ってる。
反省をさせる為に怒ったんじゃなく自分の苛立ちが
水希を追い詰めた事。
探さなくちゃ!
そう思ったら、匂いを探しあっちこっちへと足を向けた。
ワカの自宅まではそんなに距離がある訳ではないが
途中繁華街などが有り匂いの混在で
手間取ってこんなに時間が掛かった。
水希はたった一人の俺の家族。
そして俺が守るべきもの
なのに、それを自ら…
「水希、どこにいる?」
携帯を取ってそれで…水希に何を言えばいい?
俺が悪いんだ、水希を追い詰めてるのは俺
泣かせたくなんか無いのに、苦しませたくなんか無いのに
「俺は一体何をしてたんだ!」
一度怒ったものは、ナカナカ普通に戻す事が出来ない。
人との接触はこんなにも苦手なのに、何故自分から離れてしまったのだろう?
「探さないと…」
どこかへ消えたらどうしよう?
結婚をやめると言われたらどうしよう…
怖い、今日ほど日本に来て怖いと思ったことは無い
「水希~?」
既に空が白んで、俺はやっと、水希の香りを捉えることが出来た
息が切れるまで走った…。
『どうすれって言うのよ!』
不意に聞こえた声で…俺は躊躇してしまう。
側に行きたいのに、抱きしめたいのに…
手を伸ばせば届くのにそれが怖いなんて
ユラユラと揺れるブランコで水希の涙が
パタパタと砂に吸い込まれて行くのを見たら
もう、体が勝手に動いていた…
「水希ごめん」
ワカは言っていた。
水希は結婚相手もわからないまま結婚させられている。
俺がいくら好きだと思っていたって
それでは、水希が解らないのも無理は無い。
やっと見つけた水希の匂いは、外の香りを沢山吸っていた。
そして、水希は俺に告げた…
「レンのバカ」
「うん、ごめん」 俺がバカだった…
「ごめん…レン、あんたの気持ち考えもしない行動だったね
でも、私だってあの時恋をしたかった…彼氏も欲しかったし
沢山遊びたかった…見えない結婚相手より
やっぱり、好きだと目の前で言ってくれる相手が良かったんだと思う
結婚していると言う実感は無かったし、レンがどんな人かも
どんな男かも解ってなかったし」
腕の中で涙を流しながらも、確りとした口調で言う。
気丈な人だ、今までの事だってそうだし実際俺が来て
水希と住む事だって…本来だったらそんな事は殆どない。
俺が甘えていたんだと、今更に気が付いた
「うん、ごめん…水希ごめん」
「うん」
「水希 … I Love You 」
愛しているよ。
『水希、I Love You 水希、愛してる』
抱きしめてきたレンが、そう告げてきた。
なんて答えれば良いの?
どうすればいい?
好きだよ、レン…大好き
けれどね…愛してるってどんな感覚なの?
好きと同じなの?
「レン…」
「水希」
抱きしめてくる手は、温かく優しい。
アイシテルって言葉が出てこなかった…。
☆
レンと自宅へ戻ると、一人寝室へと入った。
この気持ちが好き?愛してる?
どこまでがその言葉なの?
曖昧すぎて私には解らない。
一言でくくればいいのに…
好きと、愛してる…
「寝るね」
「水希?」
「ん?」
「いや…おやすみ」
「うん」
扉を閉じて私は大きなベットに身体を沈めた
「ごめんね、心配掛けて…」
「そっかーレンクン探してたから、私からは連絡しなかったんだけど」
「うん…」
今日は和香と、休日に会っている。
「水希?あんたレンクンを好きなんでしょう?」
私はためらう事無く首を縦に振った。
だって、本当に好きだ…あの顔の下のレン…
カッコイイから外見だけでも好きになるかもしれないけど
レンの言葉や思い、長い間掛けてやっと
彼を好きだと認めて間もないのに
喧嘩が始まった。
好きだって自覚したからなのかな?
レンを思う時間が長くなり、気が付けばレンで埋まっている。
「ねぇ、好きと愛してるの境目がわからないの」
私の真剣な言葉に、和香が苦笑いを向けてきた。
「解るわけ無いじゃない、自分が思ったときが境目なんじゃない?」
和香の言葉に安心したような逆に不安に駆られたような
良く解らない気分になる。
「レンクンに何か言われたの?」
「愛してるって…言われた」
その言葉に、キャーと頬を赤らめて喜ぶ和香が羨ましかった。
自分は素直に喜べない。
好きだと…それだけではダメなのかな?
和香が、深い溜息を一つ落とすと
ニッコリと笑って私に言った…。
「気楽で良いんだよ?レンクンはレンクン、水希?あんたは、あんたなんだよ
だから、レンクンが愛してると言っても水希は好きだって思っているなら
お互いに距離は近いはずだから、何も怖い事は無い」
和香の言葉に、コクッと頭を上下させ
私は一人でもう少し考えてみようと思った。
普段の生活をしていれば
きっと、元の二人に戻れるからと和香に言われ
私は自宅へと戻った。
「ただいま…」
「あ、うん…」
うわぁ、やっぱりぎこちない…
照れてるとかだったら…まだいいのに
そっか!レンに酒与えれば。
前見たく話してくれるかな?
でも、酒の力を借りるのをあまり良くは思って無さそうなんだよねー。
「はぁ、なんか疲れた。」
「うん、疲れる」
おろ、レンが、乗って来ちゃった。
「水希?なんか、最近変」
「私が?」
「水希も、俺も…」
うん、激しく同意しますよ!
さあ、レンクン!場を作るんだ!
て、ある意味他人任せか…
「俺変な事言った?」
「私が考え過ぎなんだと思う…」
「…俺が…」
ぎこちない。
ぎこちない…ぎこちない…!
「レン!なんか違うよね?もっと、気楽にしようよ?
どうしても緊張しちゃうのは仕方ないけど…」
「そうだね」
レンはそれ以上口を開かなかった。
そしてこの気持ちをあざ笑うかのように…
事件が起こる。
レンの…弟が現れたのだ。
≪ 狼と私27 | | HOME | | 狼と私2章① ≫ |