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狼と私2章②

彼には3つの名前がある。

カイル・カーレリンス 本当の名前
カイル・アルフォード 再婚後の名前
桑本レン        現在の名前

その全てが絡み合って、彼は今生きている。
狼に育てられた彼は、波乱過ぎる生活を今まで送った事になる。


※シリアスモード突入します!
シビアな話が多いのでご注意ください。


”Search for a missing son” 行方不明の息子を探しています。

ライアン・カーレリンスが、事故により死去した今。
彼を探す手段が、殆どなくなった事が無念とアル・フレンジャーは言う。
彼は、ライアンの長年の執事であり、未だに行方不明のカイルを捜索中との事。
彼の話を元に、カイルの失踪前の話をここに記したい。

カイルが2歳の年、彼が失踪して第一発見者は子守をしていたナタリーだった。
ナタリーの話によると、昼下がりに家の庭でプール遊びをさせていた時
電話が鳴り、自分の家からの連絡で5分ほど話しをし、急いで戻ると既に
カイルの姿がなかったと言う。
失踪当時営利目的の誘拐かとも思われたが、犯人からの連絡は一向になく
必死に捜索は行われたが、翌年、残念ながら手がかりなしとして捜索が一度打ち切りとなった。
ナタリーがその年にこれ以上苦しむライアンを見ていられないと、職場を去ってから
音信不通になった…。
そして数十年と言う年月にわたり探したが、未だに彼は発見されていない。
アルは、涙ながらに語ったが、未だに手がかりは無い。

現在ライアンの遺産などは全てアルが保管管理をしながら
カイルを探しているとの事。


「だってよ」
「……。」
「ん?どうした?」
「いや、すまん、なんでもないんだ…」
「これって最近の記事だな…」
平賀がスクロールしながら下まで行くと、
もう一つ…追記されている事に気が付いた。

追記:ライアンは王族の関係者であり、カイルを見つけたものには
国からの懸賞金として1万ドルの報酬が与えられる。
髪は茶、目はグリーン、背丈などは解らないが、右腕に痣がある。

「1万ドルって…王族ってすげー報酬だな」
「…だね」

その言葉を聞いて愕然とする。
王族と言う事は、本来この場所に居る人間ではない。
一緒に遊んだあの記憶も、本来はあってはならない記憶。
狼に育てられた事も、私とであった事も、結局はレンの過去を捻じ曲げてた
だけだと言う事が痛いほど解った。

だから、ノアは…話すると言ったのだろう。

くそっ、今更何でこんな事に…

私はどうすればいいの?

レン…

「おーい?水希先生?」
「あ、ごめ…ちょっと考え事してた…プリントアウトしといてくれないか?
私はちょっと、バナナ食ってくる」

「へいへい、人使い荒いなァ~」

「よろしく」

珍しく、反撃する気持ちも起きなかった。

ナタリーの子ではないのかもしれない…
誘拐したのがナタリー、そしてノアとは血が繋がっては居ない…
そんな事を考えると、ゾッと背筋が凍るのを感じた。
結局、一万ドルと言うものが目当てなのだろうか?
レンを売り払うと言う所だろうか…

ナタリーは何故レンを連れ去ったのか…

私は、ノアと話をする決意をした。
レンには幸せになって欲しい、そして私がレンを大事に思うからこそ
彼の本来の姿に戻してあげたいとも思った。

そして、通訳を和香に頼む事にした。

片言で話されても、時間だけ掛かる。それなら
ロンドンで生活をしていた和香に頼めば簡略的に私に伝えてくれる。

今日の夜、お互いに時間が取れたので
後はノアに聞くだけだった。

どうか…苦しまないで欲しい。

だから、父にだけはこの事実を伝えプリントアウトした物を手渡した。
沈黙の後、深い溜息を吐き出し、父が私に言った言葉…。

「水希すまん、レンとは離婚をして貰うかもしれない」

解っている。
レンの幸せを願うなら、それでも良い…好きだけど
側に居たいけど…
叶わない事だってある。

諦めきれるものでもないけど、後はレン次第。

「解ってる…」

「そうか、勝手ばかりですまない。」

「いや、もう慣れた…でも…っ…あ、あれ…っ…」

急にとめどなく涙が落ちてくる。
父が、涙を見せた私をそっと抱き寄せて、何度もすまないと繰り返してきた。

離婚…それが唯一私とレンを繋いでいた言葉の対義語。

愛していると…心から彼に告げる前で良かった。

「レンっ…ううっ…」

止まらない涙が父のシャツに染みて、母も横で泣いているのに気が付いた。
「お母さん…」
「水希、ごめんね…」

皆が私に謝ってくるのは勝手に入籍したから?
それとも、レンと私を引き離すから?

レンの居ない所で、事は次第に大きくなっていった。
レンが戻ったら、出かけていると伝えてもらうようにし
レンに父から事の真相を伝えてもらえるようにした。

私の口からは言えない…離婚してだなんて。

こんなにも好きでこんなにも、愛しいのに


今日はもしかしたら午前様になるかもしれないと言い残したレンが
昼ごろに出たらしいのは、母から聞いていた。

私は、急いで和香に連絡を取り、家に居たノアを連れ出した。

和香の家が一番静かで落ち着く。
だから場所は和香に提供してもらった

家に入ると、ノアが和香の頬にキスをするも
和香は平気な顔で、ありがとうと返すあたり、本当に外国生活していたんだなと思う。

そして、本題。

「ノア…レンについて教えて」

ノアはゆっくりと口を開いた。

ノアとレンは血が繋がっていない。

ナタリーが好きで好きで思いが遂げられなかった彼、ライアンの子供を
自分の子供として育てたのだ。

ナタリーは当時ライアンが好きだった。
けれども思いは届くどころか、他の女が現れた。
メイドと言う立場ではあったが、その女に嫉妬までした…
けれどナタリーの思いは通じず彼女と入籍し、実質上ライアンの妻となったのだ。

一年間は地獄の苦しみだったが、それでも彼の側を離れられなかった。
そして、その傷を埋めたのがノアの父親となる。
無論父もそれを知ってのうえで、ナタリーと関係を持ち子を授かった。
と、同時にナタリーは子供はいらないと拒否したのである。

好きなライアンと一緒に居られない。
だからこそ、ナタリーは子供を生まない道を選ぼうとしていた。
と、そんな葛藤の中、ライアンに第一子が授かったと言う報告が入る。
同時の妊娠に、ナタリーは深く傷ついた。
お腹が二人とも目立つようになってくると、段々自分の腹に居る子が
ライアンの子供だったらと何度も何度も思ったのだと言う。

だが、目の前で自分を抱く男はやはりライアンでは無く
ナタリーは苦しんだ。
そんな葛藤の中、子供がお腹の中で亡くなってしまう結果となった。

だが、ナタリーが死産をした後にカイルが生まれる。
そして、ナタリーが産休で休んでいる間に、カイルの母親が死亡した。
それは出産後の産褥が悪くナカナカ体力が回復せずに
病弱だった過去も相成って、その結果に導かれたが

産後だと思われていたナタリーには絶好のチャンスとなった。
子を育ててると思われている今、ライアンに取り入るには
この機会を逃せないと、ナタリーはノアの父と別れ
カイルの面倒を見るようになった。

自分の子供は、祖母に連れて行かれているのでと言う
もっともらしい嘘を塗り込み、時には泊まる事もあった。

だが、思いはやはり通じず新しい母親として違う女の気配を感じるようになる
…それがレン2歳の時。

次なんて…そんなのに耐えれる訳が無い。
自分に頼ってくれたら…カイルを返してあげるのに…と
願いながら そして誘拐が実行された。

実家には子供が出来た事も何も伝えては居なかったので
自分の子供だと告げ、出産の記録として取っていた
エコーの写真などを見せればすぐに自分の子供だと
認めてくれた。

とりあえずは子供を預け、チャンスを伺う様に一年は働いたが
今度はライアン自らがナタリーに告げたのだという。
カイル(レン)の母親を見つけたのに、そのカイル(レン)が居ないなんて…と
嘆き悲しんだ言葉、そして
その傷を埋めるのも彼女でしかないと…。

側にこれだけ居たのに…何故思いを気付いてもらえないのか
憤りは隠せず、カイル(レン)を我が子として、育てる決意と共に
ライアン・カーレリンス邸を出たと言う。

そして行く先は、今のノアの父親の元
行ってすぐにノアが授かり出産。
カイル(レン)が自分の子供ではないと知っていた父はカイルを突き放した。

そこからは地獄だった。
酒に狂う父、レンを殴り、母を殴り…最後には、母がレンを手放す事となる。

そんな経緯を聞いて、私は言葉が出なかった。
一人の女がやらかした事。
きっと彼女は自分を好きなんだろう…レンをも手放せるほど
しかも、森へと置き去りにする程の…。

通訳をしていた和香が後半苦しそうに伝えてきていたのを思い出し
私がそっと和香の肩を抱いた。

「懸賞金見た?」

「見たが…まさか!?」

ノアは飄々と言う。

「それが狙いなの?」
「yes!」
「レンを売るの?」
「育てて居たんだから貰って良い!」

その言葉に私は机を強く叩いた。
勿論和香も同じ思いだったらしく
手を握り締めてしまう現状に、私は言葉が出なくなった。

王族のレン。
狼の子のレン。
私のレン。

きっと、どれも正解
でもね…だからってレンを売って良いとは思わない。

レンに知られたくないか…と、ノアに問われる。
けれど、知られたくないとかじゃない…知らなくてはいけないのだ

「レンは、レンの道を自分で選ぶ権利がある」

それだけ言うと、もう彼とは話したくなかった。
ただ、レンの言う母は…きっと、あのナタリーだろうから
私は一緒に行かないとレンに言おうと思う。

きっと、会ってしまえばレンの事を考えずに責めてしまいそうで
母親と信じた女が、実は違う人だったなんて…。

2度もレンを裏切り今三度目の裏切りを家族でしようとしている
きっと、レンを温かく迎えるんだろうな…
嘘で塗り固めた家へ。

そんな事を考えていると、電話が鳴った

着信:レン

出ない訳には行かない。

「もしもし?帰ってきたの?」
「うん、でも皆居ないから電話した」
「うん、これから帰るね…」
「何か有った?」
「どうして?」
「声が…いつもの水希じゃない」
「…そっか、なんか色々と疲れただけだから
帰ったら話そう?」

そうして切れた電話。
レンの声を聞くだけで、切なくて胸が苦しくて
息が詰まるかと思った。

「ノア、レンをこれ以上辛くさせないで?」
「いいよ、それが望みなら」

その言葉に違和感を感じながらも帰宅の用意を始めた。

和香が、ただ…辛そうに何か有ったら連絡してね?と
言ってくれ、本当にありがたかった。

そう、昔の私に戻ればいいだけ

レンと出会う前の私に…。


「ノア、帰ろう」
「yes」

部屋を出てタクシーで自宅までたどり着くと
待っていたレンに抱きしめられた。

この温もりが…感じられなくなるのだろうか?


ノアは、何も言わずレンの部屋へ上がり、
私もレンにしがみついたまま離れたくなかった。

「どうしたの?」
「少しで良いからこのままで居させて」
「…ベット行こう?」
「うん…」

レンが抱き上げてくれて
お姫様抱っこで布団へと寝かされると
レンを抱き寄せてしがみ付いた。

離れたくない

レンと…別れたくない…

「どうしたの?変だよ?」
「レン…ちょっと嫌な事があったのごめん」
「……もしかしてノア?」
「うんん、違うよ…レンもう少し側に来て」
「っ…積極的だね?」
「うん…側に居て」
「居るよ?いつでも…水希君の側に」

抱きしめてくれるレンは、やっぱり温かく優しく私を癒してくれる。

「ごめんね、アメリカには一緒に行けない」
「……母に会うのが嫌?」
「レンを捨てたお母さんを許せないから」
「うん、俺も許せない…母も、ノアも。」
「ノア?」
「うん…母は俺を捨てた、そしてノアは水希、君を
俺から奪おうとしているんだ」

ポンポンと頭を撫でながら言うレンに目を見開いた。
「な、なにそれ」
「昨日、水希を譲ってくれって言われた」
「は?」
「水希は、あげない」

そう呟いて、抱きしめてくれるレンに答えるように抱き返した。
やっぱり、話そう…全てを。
明日でも、父と二人でレンに選んでもらおう。

「水希が帰らないなら、俺が帰る意味は無いね」
「へ?」
「だって、水希が母に挨拶したいだろうと思ったから
帰ろうと考えたけど…今更…でしょう?」

そう、本当に今更…だよ。

「そっか…明日もレンは忙しい?」
「え?あ~…うん、明日で追い込み終わるから明日までは忙しい…」
「そっか…」
「明日何かあったの?」
「ん、明後日でも良い」

そんな会話をしていると、急にレンの腕が止まり
私の頭を撫でていた手が力を無くした。

昨日の寝不足もあるんだろうが、疲れて眠ってしまったらしいレンを
私はそっと撫でる。
大事に、大切に…さよならが来ても、あなたを好きでいると
気持ちを込めて。

翌朝早くから父にレンの素性についてを話した。
勿論、それが本物かどうかもわからない。
ノアの話を総合すると…と言う事になる。

でも、ノアは私にそれを教えた時点で
レンを返さないと解っていたのではないだろうかと
一日過ぎて思った。

だって、アメリカに帰ってしまってから、イギリスへと
レンを連れて行くのが一番誰にもわからずに
連れて行けるのだから。

もしかしたら、ノアは…嫌われ役を買って出たのかもしれないと
不意に思った。

レンに明日話すことを決め、そのために父も資料を見たり、
イギリスに居る知り合いにその事に付いて調べて貰うと言う。

確証は恐らくレンのDNAとかだろうが
それでも、何か解る事があれば越したにない。
レンの右腕の痣は、然程大きくないが
トカゲが這った様な痣があった。

それは、レンと風呂に一緒に入った旅行の時に見ている。
それを父に告げ、その痣の形などをイギリスで
調べてもらって居ると言う感じになる。

王族のレン…もしそうだったら、私はレンには釣り合わない。
英語は話せない、気品も無い、バナナ咥えているだけの女
詳しいのは生物学だけで他はからっきし…
父に教え込まれてテーブルマナーなど社交的なことは一通り出きる物の
それは恐らくレンも一緒。

そんな世界に身を投じるレンの事を思うとまた胸が苦しくなった。

そろそろ朝食の時間。
私は家に戻り、レンとノアに実家でご飯を食べようと声を掛けた。

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