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狼と私2章③

苦しい…切ない…だから
私はレンをきっと忘れる事は出来ない

でも、忘れなければレンが苦しいだけと思うと
矛盾した私の気持ちが、どこにもいけない

レンに話す前に、聞いておきたくて
私は部屋でノアと席に座っていた。

私の思う事が当っているのであれば
きっと、家に帰ると怒られるのではないだろうか?

「ねぇ、レンを嫌い?」
「………」
「私…どうしてもノアがレンを嫌ってるとは思えないの」

その言葉に、下を向いてビクッと肩を振るわせたのを見て
やっぱりそうだったのかと勝手に納得した。

「いつ、レンと兄弟ではないと知ったの?」
「2年前母から」
「そうなんだ…でも、レンが生きてると知ったのは
もっと前だったはずなのに、どうして今だったの?」
「……父が亡くなった」

そうか、レンを虐待していた父を亡くし、母がレンを迎えに行くと
言い出したのだ。
母はまだ、ライアンを思っているはずだからと…

長い片恋は、日の目を見る事無く思い続けられた…
それはそれで切ない事だなと思ったが
それでもやっちゃいけない事をしているには変わりない。

「ノアは兄に会いたかった?」
「逢いたいない…母カイル(レン)の事ばかり」

レンの事ばかり考える母…逆にレンを憎んでも良い位の
憎しみがったのかもしれない。
結局は、叶わぬ思いの行く末。
私もレンを思い続ければ、こうなってしまうのかも知れない。

「レンを連れて帰るつもりは無いのね?」

核心の部分を聞くと、ノアはyesともnoともいわず黙るだけだった。

「僕レン凄くうらまやしい!水希妻、母の愛、王族の子供…僕イラナイんだ!」

と、感情を露にして肩を震わせるノアを放って置く事など出来なかった。

抱き締めて何度も大丈夫と告げ
落ち着かせてる時にレンが、帰ってきた。

無言で側まで歩いてきたと思ったら、乱暴に
ノアから引き離され、寝室のベットに押し倒される。

「うわっ!」

ボスンと音がなるほどの強い押しに体が耐えられず沈むと
ギシッと片足を掛けて私を緑の瞳が射抜いた。

「ノアと何してた?」

ギリっと音が鳴りそうなほど強く握られた手首が、悲鳴を上げている。

「話をしていたの」

一瞬に沈黙後、すぐにレンは力を緩める事無く私に覆いかぶさって来た。

「抱き合って?」
「違うよ、抱き合っては居ない!」
「俺、気を付けろって言ったよ?」

瞳の奥が怒っているのをまざまざと見せ付けるように
真剣な瞳が私を射抜いて縫い付けてしまう。

「判ってる!明日話すから…」
「水希、ノアがいいの?」
「違う!全然違う!私は、レンが、好きなの!レンしか居な んっんんんっ…」

唇を強引に塞がれ、舌先が進入してくると
私はなすすべも無く言葉を飲み込まれてしまった。

ビッと、パジャマのボタンが飛ぶ音が聞こえると
乱暴に上着を脱がされ、レンが上を脱ぐと、肌が重なり合った。

熱く私を求めるレンを突き放す事は出来なくて。
重なった肌が嬉しかった。

レンの腕の中で、彼に染められ紅潮した体を侵食して来る。

もう、そこにノアが居ても良かった。
レンの好きなように、して欲しいと願った。

けれど、レンは傷付いた顔を私に向け、私の頭横の布団を殴った。

「Sit!!!」

重なったまま、動きを止めたレンを抱き締める事で受け入れますと示したが
優しく唇を重ねて来て

ごめんね。と私の髪を撫でた。

こうやって、私を大事にしようとしているレンが好き。
時に脅えたり、怒ったり…人だもの、そんなもの当たり前の感情だ。

「レンは何も悪くない。私が、不用意に近付いたから…
レンが怒ったの判る…言われてたのにごめんね?
明日話すから、全部話すから…裏切ったりしてないから」

思いつく言葉を並べてもレンにこの気持ちの半分も伝わらないのがもどかしくて
苦しかった。

せめて、私がどれだけあなたを求めているかが伝わればいいのに…

なんて、できるはずもない事を思うのは
きっと恋愛脳のせいだろう。

側に居れるのもあと少しかも知れない。

だから…伝えたい。

「レン、しようか?」
「水希?」
「レンを感じたい…」

そして初めて、私の中へとレンを招き入れた。

熱く私を求め、優しくぎこちなく
それでも愛してると何度も囁くかすれた声。

汗を光らせて躍動するレンに見惚れ
レンとの思い出を刻む。

朝までその行為は止めることなく何度も何度も揺さぶられ、
声を抑えることも忘れ獣のように求め合った。

朝方になりやっと落ち着いたレンが
眠りに付いた事を確認して
気だるい体を引き起こすと、腰が全く立たなくて苦笑いが出てしまう。

何度も吐き出されたレンを受け止めた体は、既に思うまま動けない程。
それでも、父に全てを話す為に
リビングへと出ると、青い瞳と目が合った。

「大丈夫?」

と、聞かれて、私が声を出そうとするとすでに枯れ果てた喉から声が生まれず
何度か咳き込むとコップに水を入れて置いてくれた。

「兄、嫉妬深い?」

その言葉に、苦笑いしながら
首を縦に振った。
その嫉妬の先が私である事が、今は嬉しかった。

ノアに、うるさくしてごめんねと伝え、父の元へ向かった。
ノアも付いてくると言うので、それを認め実家のドアをノックしたのは
午前6時半と言う早朝ではあったが

父は待っていたように書斎へと私達を導いた。

頬をかすかに染めてコホンと一つ咳払いをした父。

「水希、お前もう少し服装を考えろ…ノア君もいるんだぞ?」
何の事かと首を傾げたが

レンの思いが首に花びらを沢山落としていたのだ。
そして第一ボタンが飛んでいるため胸元が開かれていた。
と言っても、谷間が見えるほどすさまじものでもなかったのだが。

去年は知らなかった、花の落とし方。
それを教えたのはお前だろう!と、父を責めたかったが
今はそれどころではない。

パジャマの襟を立てて、苦笑いしながら
話を始める。

着替える時間さえ勿体無かったのだ
レンが起きるまでに、ちゃんと話をしておかなければ。

クロがそっと私の服の先を噛んで鼻を鳴らすしぐさに
私はクロの頭を撫でてやる。
久しぶりに会った気がする…。

父の調べでは、やはりレンはそのカイルだと言う確証が高いとの事だった。
父は、イギリスのアル.フレンジャー氏に昨日連絡を取り
話をしたらしい。

カイルの事情を少しでも聞き出せたらと思ったが、
懸賞金が付いている為情報は公開できないとの事で
やはりDNA鑑定をしたいとの事、レンが許可を出せば
日本で血液を取り、イギリスに送ると言う話になったらしい。

「レン連れてくる」

私は、重い体を引き摺るように自宅へと向かった。
まだ、私のベットで、寝息を立てているレン。

そっと揺り動かすと、目が合った。

「おはよう。」
「ん…おはよう。おいで」

レンに引かれ、温まった布団の中に引き込まれると
全裸だった事に気付き、目を隠した。

「クスッ 水希今更恥ずかしがら無くても…」

「う、うるさいなー恥ずかしいんだから仕方ないでしょ!それより、起きて?」

「ね、もう一回しよ?」

「ちょ!無理を言うなー!腰がもう無理!てか、レンに話があるの…だから起きて実家に来て?」

そこで、昨日の話が絡むのを察したのか眉間にシワを寄せて溜息をついた。

「水希…昨日は凄かったよ」

と、何故か甘く囁かれ、レンはシャワーへと向かった。

何なのーっ!あの、エロ魔神めっ!
私は、頬に登る熱を払いながら実家へと向かった。

レンは、私と重なる事で、緊張が解けたのか言葉が普通に戻っていた。
全てをレンに捧げた私への、ちょっとしたご褒美なのかもしれない。

大好きな、レンとの会話が。
凄く普通に出来る事に感謝した。

「桑本さん、お待たせしました」

その声にレンが立ち上がり、行ってくると言って
中へと入っていった。

私はこうやってレンを見送る事しか出来ないのだろうか?

一番、診察室に近い場所に移動してレンを待った。

カチャカチャと響き渡る音は、恐らく血液を抜いている
試験管の音。
何本かの音が聞こえ、終わりましたと声が聞こえると
すぐにレンが出てきた。

「レン?大丈夫?」

「大げさだよ、大丈夫…少し血を抜かれただけだし」

「うん…じゃー帰ろう」

レンと二人で家へと向かう。

「ねぇ、水希体もう平気?」

「…あ、う、うん…」

「抑え効かなかった…から、優しく出来なくて…」

いやいや、レン君そこはスルーで良いんだよ!
わざわざ言わなくても解ってるって!!!!
だから言わないで~~~恥ずかしいわっ!

「大丈夫だから」

それ以外の言葉が思いつかなかった。
家へ帰ると、ノアが実家へと部屋を移動した事を聞かされ
私は何故?と聞くと…どうやら夜はゆっくり休みたい…だそうだ

ハイゴメンナサイ、昨日はうるさ過ぎましたね…
あーもー恥ずかしい!
親にばればれの関係って凄く恥ずかしい…

でも、凄く嬉しかった。

レンはノアが部屋を変えても
私の部屋に寝るとやってきた。

「…レン君…なにかな?」
「……ん、もう離れれないでしょう?」

横でクスクスと笑いながら、本を読んでいる私の横で
布団に包まり触れては離れるを繰り返していた。
まるで、付き合いだしたばかりの恋人のように…。

にゅって…読んでる本と私の間に
下から顔出してきた時は本気で驚いたわ。

そのままキスされて、身体を重ねる事に
なったのは言うまでも無いでしょう?

でも、レンとは確りと話をしないといけない事がある。
彼の意思…
だから、DNAの結果が出るまでは…ずっと私のレンで居て欲しかった。

「水希?」
「ん…」
「どこが気持ちいいの?」
「っ…知らないっ」
「だって解らないと…愛せないよ?」
「う…」

何この凶悪な艶顔!
なんなのよー!
ダメダメダメー言える訳無い。
でも、レンはそれでも、探すように、探るようにしながら反応の強い場所を見付けては責め立てられた。

てか、この男の性欲は尽きないのか?

レンの下に組み敷かれ、荒い息を上げながら何度目か分からない快楽に身を委ねる。

「レンっ…もう、壊れちゃう!」

身体が先に悲鳴を上げて、レンの動きを止めた。

そんな事の繰り返し。
昔読んだ狼の生態を思い出しゾッとした。

躍動を強めてレンは上り詰める。
私の中へと深く深く自分を刻み込むように。

やっと数日を過ごし、私は落ち着かない。
家の電話の前でそわそわソワソワ。
あの日から、レンとは会話よりも身体を繋げて愛を深め合う事に
夢中になっていた…そのお陰で、レンの気持ちを確認できなかった。

今日連絡が来る。

レンの運命の日。

でも、待てど暮らせど音は響かず
私は椅子をクルリと引っくり返しジーッと電話とにらめっこ。

父が呆れたように、背後から声を掛けてきたのは、優に1時間ほど過ぎていた。

「連絡ならもう来たぞ?レンは、間違いなくカイル.カーレリンスだとアルから連絡があった。
明日までにレンがイギリスへ飛ぶ飛行機を手配するから、一度レンはイギリスヘ帰らなくてはならない。
水希、辛いだろうが…。」

「あ、明日…?」

「あぁ、そうだ…明日レンは発つ」

父に差し出された、緑の記入欄がある、離婚届。
既に、保証人欄には父と母の名前があった。


「……うん」

椅子を机に戻し、父の差し出したペンを取ると手が震えた。

自分の名前を書くのにここまで緊張してしまうとは。

気持ちも既に決めていたはずなのに。
ここに来て決心が鈍るなんて…

「水希?」
「うっ、うるさい!わかってるよ
書かなくちゃいけないのなんて判ってる!少し黙って!」

ごめんね、父さん。
ヤツあたり……わかってる後で謝るから

このやり場のない思いを少しだけ吐き出させて。

やっと書き上げた名前と生年月日住所…皮肉にも私の誕生日が
今日だった。

10月5日…生まれてから27年を過ごした事になる。
レンとの結婚生活も、もう少しで1年半になるんだと漠然と思った。

レンは、連絡が来たら行くと決意していたし
私には止める事はできない…

私も望んだ事だったから、なのに急に実感が湧き上がって来る

レンは、私の帰りを待っているだろう。
きっと自宅で、仕事をしているはずだから。

けれど、怖くて…私は逃げ出した。

「私散歩してくるから、レンには伝えておいて」

目の前で離婚届に記入するレンを見たくなかった。

愛してる…そう、体を重ねて初めてたどり着いた思いは儚く散っていくのだから。

私は、一人で結構遠い場所まで来た。
レンと旅行で出かけた温泉の近くの海。
潮風が冷たくて、涙も攫ってくれそうだった。

さようなら…レン

愛してたよ。

凄く

大切だった…

絶対に忘れないからね…

そんな事を思いながら、打っては返す波をただ静かに見ている事しか出来なかった。

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