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狼と私2章⑤

さようならと、貴方に伝えなくてはいけない。
だから、ごめんね

でも、大好きだよ




【 England 】←レン視点
【 Japan  】← 水希視点

での進行となります。..

【 Japan  】

日が過ぎ、レンが発ってから1ヶ月と半分ほど過ぎ
私の元に、イギリスから小包が届く。

差出人は カイル・カーレリンス

私は、その小包を開き言葉を失う。

中に入っていたのは、イギリスの王家の旗と1万ドルの小切手と
一通の手紙。
レンではなく、アルさんが書いたのだろう
英語が綴られていて、私はそれを父へ差し出した。

==============父訳

水希様
カイル様は毎日一生懸命王族関係者と親睦を深め
やっと王家の人間として、社交界で認められてきました。
日本に帰りたいと時折言いますが
元気にこの地で生活できている事を伝えたくペンを走らせました。
それと、大変申し訳ありませんが
現在メリッサ様と言う王家の女性がカイル様との
結婚を進める為に毎日、私宅へと足を運んでおられます。
桑本レンと言う名前は既に彼の名ではございませんので
日本の戸籍を抹消させて頂く事となります、ご了承下さい。
水希様が結婚された折には、イギリスの国を代表して
私どもで出来る限りの事はさせて頂きたく思いますので
通知等を頂けると、幸いです。

それでは、水希様の幸せを祈り…  アル
====================
「離婚届なんて要らなかったんだね、戸籍の抹消なんて出来るんだ?」

「水希…」

「うん、王族だと聞いていた時点で解ってる…
こうなる事も想像が付かなかった訳じゃないし」

「金は送り返すぞ?」

「そうして…私はレンを売ったつもりは無い
それに、王家の旗も送り返したいんだけど
交流とかで問題あるのかな?」

「…私が預かるよ」

「うん、そうして…それと、これも一緒に送り返して」

私は首から下げていた、緑の綺麗な石が入ったネックレスを
父へと渡し、側にあったメモ紙に
”レンさようなら 水希” と、書いた。

これでいい…
こうなるとどこかで予想していたから。

私は苦しくなんか無い…

【 England 】

イギリスに届いた手紙は、アルによって開かれた。
父の手紙と、水希のネックレスに手紙、そして
返された小切手に、アルが苦笑いを生む。

手紙の宛名は、カイルへと書かれているが
アルがその手紙を開いた

水希の言葉が一番気になるので、アルは
その水希の小さな手紙を開いてホッと胸を撫で下ろした。
ここで、贖われてはナカナカ思いを引き離す事など出来ないと思ったから。

さようなら…と書かれた手紙に心底ホッとした。

===================
カイル様

元気か?
私は元気だ。
レン、お前は自分のしたい事をすればいい
そう水希も言っていた。
だがな、私達の思いをバカにしてもらっては困る
金を送って欲しくてお前の旅立ちを認めた訳ではない。
水希も、そして私も妻の百合も…全てはレン、お前の幸せを願っているのだ。
もう一度金を送り付けて来る様なら、その金は全て寄付し
レンお前を恨まねば成らない。
誰と結婚しようが、レンの人生だ
私からは何も言うまい、だが水希の思いを金で解決させようとだけはしないで欲しい。

本当にレンの幸せを願っている事を忘れないでくれ。

                 桑本源蔵
=========================

アルはその手紙をそっと胸へとしまい込むと
二階の書斎へと足を向けた。

カイルへこの手紙を渡すために。

そして…全ての縁を断ち切るために。

コンコン

ノックされた部屋の中で、俺は本を読まされていた。
イギリスの過去や、今の自分の立場、位置、権力。
溜息が出るほどの息苦しさに正直逃げ出したいと思っていた。
そんな中、ノックが聞こえ返事を返すと
執事のアルが入ってきて、机の上に見慣れたネックレスを置いた。

「これ…」
「水希様よりのお手紙でございます」

小さなメモ紙に書かれた、さようならの言葉に
俺は唇を噛み締めた。

自分が送ったネックレス、高価なものではなかった
けれど、それを送り返してきたのは
別れを受け入れたと言う事なのか?

水希…何故君は俺に身を委ねた…
愛していると何度も口にするほど君に溺れていた俺を
捨てるのか…?

また、俺は捨てられるのか?

何故俺は…ここに来た?

全ては水希と正式に結婚できるように
俺の戸籍をはっきりさせたかっただけなのに。
本当だったら水希の側を離れたくなど無かったのに…。

水希…俺は君を忘れる事は出来ない
さようならなんて言葉を言わせたくてこの地に来た訳じゃなかったのに

水希…愛してるんだ

さよならなんて…言わないで…

その手紙に、残り香があり
スッと吸い込むと源蔵の香りがした。

何故か、違和感が拭えない。
この手紙のほかに、何かがあったのではないだろうか?

「アル…」
「はい、カイル様」
「源蔵からの手紙は無かったのか?」
「ございますが…」
「出せ」
「……。」
「出せ」
「ですがカイル様」
「良いから早く出せと言ってる!」

渋々、アルが胸元から出した手紙。
パラリと開き胸が苦しくなった。

「金を…送ったのか?」
「懸賞金の1万ドルです、送るのが正常な判断でございます」
「アルの正常はそうかもしれないが、俺は水希を失ったら
ここに居る理由もなくなるんだぞ?」
「は?」

キョトンと目を向けるアルに俺は続けた。

俺は一度深い溜息をはき、アルに全てを伝えようと口を開いた。

「俺は、王族になるつもりはない。
水希の為に戸籍をはっきりしたかっただけだったからな
俺は死んだ事として受け取ってもらっても構わないし、遺産財産全て
王家へと差し出しても良い。

どうしても血が必要なら、俺の血液だけを置いていこう。
もし、あのメリッサが婚約者と言うのであれば
彼女には違う男を与えれば良い。
俺は、水希以外の女を妻とは認めない」

困った顔のアルをみやって、瞳の輝きを深くした。
失いたくないんだ…自分が初めて大事に思った家族を。

「では、日本へ戻られるのですか?」
「そのつもりで、こっちへ渡ってきたし、俺はすぐに帰ると
水希に言ってある。いい加減戻らなければ水希を失いそうで怖いんだ

俺は、水希と一緒になるためなら、なんだってするよ?」

「解りました…水希様を一度こちらへお呼びして
はっきりと話をすると言う事でどうでしょうか?」

その提案は、賛成できない。
俺の居ない所で水希に何かを吹き込まれればひとたまりも無い…
それほど、今の水希は弱っていると思ったから。

「いや、俺が戻る」
「それはいけません!王族が国を出ると言う事は…」
「だから、何度言わせる?王族は俺とは関係ない」

静まる室内に、アルは言葉を失っていた

【 Japan 】

「水希~?」
「和香!久しぶり」

なんか、あの手紙以来、遠い人間になってしまったレンを
自覚したと言うか、私が不釣合いなのが良く解った。
だから、忘れられるまでに時間は掛かるかもしれないけど

ゆっくり、進まなくては成らないと思った。

レンを思いながら…私なりに生きるしかない。

久しぶりに会った和香にレンとの事をすべて話し、
今の考えにたどり着いた事を話すと、泣いてくれた。

私の涙は枯れ果てるまでながしたはずだから
もう、一滴たりとも流してなどやるものか。

「大丈夫だよ?」
「本当に?」
「うん、一年半の長い夢から覚めたと思って頑張って生きるよ」

そう思い込まなければやりきれないんだけどね…と付け足すと
和香の優しい香りが私を包んだ。
もう、大好きなレンの腕には還れないけど…私を支えてくれる腕は
沢山あるのだと思えた。

「バナナ食べたい…」
「ファミレスいく?」
「ん…。」

大学帰りに駅前で待ち合わせした和香と私は
その足でファミレスへと向かった。

「バナナパフェ!」
「じゃー私はミルフィーユ」

オーダーすると、すぐに来た食べ物を頬張っていると
横に現れる2人組の男。

「なにか?」
「お暇だったら一緒しない?」

うん、久しぶりのナンパだ!
和香が可愛いからこうやって二人でいるとナンパされる事が時折ある。
私はいつものように断ろうと、口を開こうとする前に
思いも寄らぬ声が和香から上がった。

「いいよ~?」
「ちょ、和香!」
「今まで水希は、レンクンと言う番犬が居たしね?
自由に出来る今、少しくらい良いんじゃない?」

和香には彼氏も居ると言うのに…
何だか申し訳ないとか思ってしまう。

これで、本当にさようならだね…レン

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