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なつめっぐ 保管場所

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狼と私2章⑩

続きですw

ノックの音で、普通にピンポンを押さない人間に
何事かと訪問者のカメラで覗けば
あの探偵…しかもレンの事を家の前で話し出そうとする

危険!この男!

仕方がなく中へと入れるが、玄関口。
クロを目の前に配備して家には上げない。
別に、レンの話を聞きたくない訳じゃないけど…
男をこんな就寝時間に家へ上げるのは抵抗があった。

「ここでいいですか?」
「まぁ、お茶が出ると嬉しいんですけど?」
「男性を家に上げるのは、昼間でも抵抗があるんです!」
「ですよね…ははは」

なんて笑う男にイラッと来る。

「調べたよ…君の事も、カイルの事も…」
「そうですか…」
「依頼とはだいぶん内容が変わったけどね?」
「はぁ…で、レンの事何かわかりましたか?」
「今週末だ、俺はイギリスへ飛ぶ、君も一緒に来ないか?」
「は?嫌ですよ…そんな」
「レンに逢わせてやるよ」
「え?」

今更会うって言ったって、どうやって逢えば良いの?
逢いに来たよ~ん!で、済む相手じゃないのに…

「上手く行けば…だけどね?」
「…今更いけません…」

逢ってしまったら…きっと、私が耐えられない。
レンに惨めに抱き付いて戻ってきてとまで言いそうで怖い…。

しょげた顔の私を見て、ポンと肩を叩くと

「うん、そう来ると思ったからコレ渡しておく」
「なに?」

「君を調べたがってる人への報告書と、君がくれた情報を元に調べた
物と、そして…今のレンの状況を書いてある。
調べ元は教えられないが、彼が今どういう状況にあるかは多分解る。」

と、辞典か?と言うほどの厚い報告書のコピーと思われるものを
私の手元において、ニッコリと笑った。

「君たちを助けれればと思ってる」

と、言い残し部屋を出て行った。

「は?何アレ…かっこつけに来たの?」

と、口で文句を言いながら4冊に分けられた報告書
それに目を通す事にした。
報告書は4冊
「桑本水希について」
「桑本レンについて」
「ノア・&ナタリー・アルフォードについて」
「王族に付いて」

自分が、どこまで調べられているか…
と言うのが気になり、私の報告書をペラリと捲った。

そこには毎日の行動と
見た目、予想の性格、友達、親戚、家族
そして学校にいつ侵入したのか、学校の事まで書かれていた。

「なんかこれ、人体解剖より気持ち悪い…」

と呟き、ページを進めると、私の男性関係のページが出てきた
過去に付き合った男数名の名前と、レン、ノアの名前

「ちょ、ノアとは付き合ってない!」

と、良く見るとノアの片思いと書かれていてホッとした。
と言うか、ノア片思いだったのか?
と言うか、私に思いを寄せていたのか?
探偵の癖に私の知らない事まで調べるんだ!?

野村の名前もあったが、彼に付いては記述が少なかった。
だが、犯罪まがいの悪行は確りと書かれていた。

レンとの関係に、結婚していたことも書かれていて
ふっと、笑った。

自分の事を調べ上げた池上に感服する。

一番興味を引いたのは、レンに関する報告書の厚さ。
残りの3冊を併せてやっと同じくらいの厚さなのだ。
読みたいが、時間も然程残されては居ない…

私は、レンの報告書は横へとずらしノアと、ナタリーについてに
目を通す。
ナタリーの過去、そして夫の暴力
赤裸々と書き込まれた真実は、やはり衝撃的だった。
ノアが全て話したのだろうか?
私が聞いた話と全く同じ事を書かれているので
さらりと読み流すと、ノアのページで動きを止めた。

彼は何を思いレンの事を伝えにきたのだろうか…
全ては母の意向だった。
けれど、レンをかわいそうだと思った事、そして最終的には
自分の母の起こした犯罪を少しでも償いたかったとの事が記載されていて
涙ぐむしか出来なかった。
王族に付いて…
と言う記述に、目を通すと
王族関係者の名前がずらりと並んでいた。

「…王族って本当に面倒」

何だか全く知らない人の家系図を見ているみたいで
溜息を付きながら、ページを閉じた。

明日、レンの記述を見ようと、水希はバナナを頬張りながらベットへと横たわった

けど…

「あーもうっ!先にレンの見ておけばよかった!」

気になるものは気になる。
明日返すものでもないのに、レンが今何をしているのか
どういう生活を送っているのか…
気になりだしたら止まらなかった

寝室へと報告書を持ち込み、眠るまでとページを開いた
レンの全てではない…けれども現在メリッサと言う婚約者が
自宅へと出入りしている事や、レンは出入りすら出来ず
時折来る従兄弟のジョイと言う男に連れられて外出する程度に留まっている。
せっかくのイギリスを堪能できないなんて…。
故郷に戻ってるはずのレンがかわいそうに思える。

王族直径では有るが、実際レンの位置だと
王の座に付くまでには8人居る。
その8番目にレンが居る。

レンの母、父共に王族では有るが
自由の効く身だった。
その系統をたどると、6番目のライアンと4番目の母だった。
二人は自由に出来たのに、レンが自由に出来ないのは
おかしい事である。
「寝れん!」
現在朝の3時…いい加減寝ないとマジでヤバイ!
でも、レンの事を読み進めていると、どうしても区切りが付かなくて
そのまま読み込んでいこうとページを開くと
どうやら、睡魔にグッサリ刺されたらしく、そのままパタリと
ページを閉じ、気が付けば朝だった…。

眠い目をこすりながら、レンの報告書をベット脇に置き
私はクロを連れて家を出た。
今週末…レンに会えるかもしれない…
それは、高鳴りなのか、動揺なのか全く解らない心拍数。

「参った…」

本気でそう思った。

今日も一日、グルグルと忙しい時間帯を乗り切り、やっと
バスケット部へ顔を出すと、皆必死に練習をしている。
バナナを食べながらそんな子達を見ていると
自分も頑張らなくちゃと思う。

「水希てんてぇ~猿になるよ~ん」
「うっさい!3P練習してろ!」
「え~ひっどーい!」
「酷いって…やるって言ってたでしょう?」
「……ハイ。フォーム見て~?」
「解った、ちょっと喰い終わるまで待ってくれ」

うん、バナナ優先!だって食べかけだったんだもん!
ぶーぶー文句を言われたが気にしない!

「ホラ、打ちなさい」
「50本ね?」
「解った…」

それぞれのポジションごとの練習の時は、人数が合わなくなるので
余った人を私が見るという形にしていた。
綺麗なフォームで打ち込んだ3ポイントシュートは
綺麗な弧を描き、リングへと吸い込まれていく。

「ナイス!」
「えっへっへ、さんきゅ~っす!」

やっと、時間を終え私は自宅へ戻ると風呂へ入り今度は
レンの報告書の残りに目を走らせた。

子供の頃の誘拐、虐待、そして捨てられた過去。
父に拾われ、私との婚姻
全て間違いない。

「こう見ると、本当にレンの生活は過酷だったんだ…」

頭では理解していたが、文字になって並べられると
とてもでないが自分だったら生きては居ないだろうなと
溜息を落とす。

やっぱり、レンには幸せになって欲しい…。
そう言う思いが膨れ上がった。
最後に、現在のレンに付いての
回りの言葉を拾った記述があり、それに目を通して、私は動きを止めた。

「なっ…なにこれ」

自然に声に出るほど、驚きの連続。

『カイルの現在の様子』
と書き出されたそれは、衝撃的だった。

カイルは、王族のなかでは、表情の無い男と言われ
アイスマスクと呼ぶ人も居る。
言葉も冷たく、女性に対しては突き放すような事が多い。
現在の婚約者もそれで難航していて結婚に踏み切れて居ない。
男性に対しても、言葉は殆ど掛けず
一匹狼的存在を保持している。

王族に入った当初はまだ、笑顔も見せては居たが
段々とその笑顔も失われ今は生きた人形の用でもある。

「どうして…?ねぇ、レン!?何があった?」

報告書に声を掛けたところで…答えなど帰ってくるわけも無い。
私の事を調べた報告書も前もって見ていたため…
コレが全てウソの情報だとも思えずに固まった。

何故…?

幸せになるんじゃなかったの?

ねぇレン…今貴方は…何になろうとしているの?
イギリスへ…行かなければならない…
こんなレンになって欲しかったわけじゃない…。

じゃーなんで私はレンを見送らなかった?
王族と言う言葉に…

「怯んだからだ…」

送られてきた国旗と、手紙…それに
仕方がないと諦めたから……?

レンの声が聞こえるような気がした。
助けてって…。

行った所で…逢えるかも解らないのに?
それで良いの私は…?

自分の目で…確かめなくちゃ!
私は、夜の12時に針が届こうとしているのに
実家へと向かった。
明日は仕事があるから、荷物を全て持って、クロを連れ
実家へと帰った。

父と相談するために。
桑本宅に、届いた手紙。
2通目となる手紙が、今源蔵の心を揺らしていた。

源蔵へと書かれた手紙は
もろく崩れそうな今のレンの心をそのまま写したかのようで…。

『To those woods I would like to return.』
(あの森へ、帰りたい)

たったそれだけの内容。
水希に宛てたものではなく…自分へと来た手紙。
そして、涙で滲んだように文字が揺れていた

そして、水希へも、同じように手紙が入っていたが
前のように長い物ではなく、ペラリとめくると
目を見開いた。

「沢山の愛を貴女に…
愛しています、そして愛していました」

短く繰られた…その手紙にレンの心が全て詰め込まれているようで
源蔵がもう一通の手紙を取り出し、妻の元へと向かった。

「百合…私達は…レンも傷つけたかもしれない」
「……水希に話しましょう」
「あぁ…そうだよな」

と、二人で話しているときに、水希が家のチャイムを鳴らした。
こんな夜更けに誰だ?と父が出ると
目に一杯の涙を溜めた、水希が立っていて慌てて自宅へ引き入れた。

「どうしたんだ?」
「レンが…壊れた」

その言葉にドキッと胸が鳴った。

「どういう…事だ?」
「これ…」
「っ…お前、探偵を雇ったのか?」
「違う、そうじゃないけど…見て!レンの今の姿…文字でしか解らないけど
こんなのレンじゃない!私が、幸せになって欲しいって思ってるレンじゃない!
どうすればいい?お父さん!私、レンに逢いたいよっ!!」

胸倉を掴み、必死に訴える娘に…もう、腹を据えるしかない。

「水希…これを」
「そんなの見てる暇無い!レンをレンを助けて!」
「水希っ!取り乱す前にその手紙を見ろ!レンから…だ」

目を見開き、私は慌ててその手紙をとった。
私を…愛してると、かかれた手紙と、愛していましたと書かれた手紙。

「な…に…?どう言う…事?」

とめどなく流れる涙は、レンの下手な文字の日本語をもっと、歪ませる。
正直に話された…
すべては私のためだと…

何がどこで間違えたの?

勝手に籍を入れられて、それに反発してたのに
それを受け入れて…レンを失って…

「私って…なに?」
「水希…」
「私っておもちゃ?」
「違う!今回は…そうしてはいけないと解ったから…
だからこそ、水希の為を思って渡さなかったんだ」

解ってる…そんなの解ってるよ!
でも、レンがこの状態で、私が喜ぶと思ってたの?
もう、嫌だ!
頑張って、一生懸命願った幸せが…どうして…

「一人になりたい…帰る」
「水希っ!」
「離してっ!」

無理につかまれた腕…でも痛みなんか感じなかった。

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