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≪ 狼と私2章⑪ | | HOME | | 狼と私2章⑬ ≫ |
追いかける事なんて、出来ないと思っていた。
飛び立ってしまえばこんなに逢いたくなるなんて。
私は、レンに逢いたい…..
早朝、空港に到着すると私は、出発ロビーに向かった。
金属検査やらなにやらを済ませて中で待とうと考えたが
探偵さんと待ち合わせ場所を決めていなかった。
「ったく…準備悪いな」
「そうだね」
「ってうわぁ!」
並んでる後ろに居て驚いた…。
神出鬼没だな…。
「おはよう?」
「あ、うん、おはよう」
「眠れた?」
「…どうにか?」
「そっか、まぁ寝不足なら飛行機で寝ると良い」
「そうだな…うん、そうだ!寝れば良い!」
この心臓に贖う事が出来なくて
早い脈をどうにかしたかったんだが…眠れば問題が無い!
「電話はあっちでも使えるんで、その番号のままだから」
「あ、あぁ…わかった」
私の電話は対応してないけど…探偵さんのは対応済みらしい。
二人で金属探知機をくぐると、探偵さんだけ
引っかかって、警備の人とグダグダやっていた。
全く…この前飛行機に乗ったばかりなんじゃないのか?
アメリカ行きの…
さて、現在やっとイギリスに到着した。
逢う事など本当に叶うのだろうか?
既に、心臓がバクバクと音を高鳴らせている。
「水希さん、いくよー?」
タクシーに乗り込むと、ホテルまで到着し、チェックインを済ませると
探偵さんの部屋へと向かった。
といっても隣なのだが
「今夜舞踏会がある、8時からだが君にはドレスを着てもらい
カツラとカラーコンタクトで変装して貰う。」
「…って、私英語できない!」
「うん、日本語も危ういのに無理だろうね」
こいつ…完全にバカにしてるな!
くっそーでも、本気で出来ないんだ!だけど日本語は話せるぞ?
「ぷっ、君の言葉荒いよね?」
「は?そんなもんしゃーないだろう、男口調なのは十二分に
知ってるから突っ込まないでくれ…」
頬を赤らめながら言う水希の姿に、探偵がこう言う所が好きになられたのかな?
なんて思える可愛らしさがあった。
「仮面舞踏会って解るかい?」
「は?仮面つけて踊るあれ?」
「そう、それが今夜開催されるパーティの名称」
そこに潜り込むと言う筋書きらしい。
来るのは各界の著名人と、王族関係者
仮面の下はよっぽどの事が無い限り
知られる事はないのと、上手くカップリングが出来ると
その人達は一夜のアヴァンチュールOKの不思議なパーティ
そんな中にレンが出て居るのも驚きだが…
「誘われたら全て、NOで切り抜けるんだ、俺が側に居るから」
「解った…」
と、探偵はカラーコンタクトと仮面、カツラと、主力商品をそろえる為に
出かけたので私はバナナを咥えながら
部屋の中で、パソコンを開く。
ぶぅん…と音を立て立ち上がったパソコンを、コンセントに繋ぎ
和香にメールを打った。
”ミズキブジツク”と…電報風に。
「とりあえず、シャワーだけでも済ませよう…」
本当に、会いに行っても良いのだろうか?
側に行っても、良いのだろうか?
けれど、そんな思いもすぐに消える事となる。
完全なる場違いだと、自覚するまであと2時間。
部屋に戻った探偵に着替えさせられ
着替えたドレスも、何もかも似合ってなど居なかった。
パーティ会場に到着すると、探偵さんが腕を差し出したので
そのまま黙って腕を組んだ。
それが入る前の約束。
彼にエスコートされて入るという事は、他のフリーの男達は声を掛けないのだ。
と言っても、チャチャを入れようとはり切る男も居るのだが。
会場は広いダンスホール。
赤いじゅうたんが高級感を漂わせ、回りはスーツの男とドレスの女が
あちらこちらで話をしている。
とりあえずここで休もうと、置くばった場所にある椅子に腰を掛け
私は探偵さんの持ってきた飲み物に手を伸ばした。
「見つけたら知らせろ」
探偵の言葉に、は?と答えると、苦笑いを向ける
彼はレンを見た事が無いのだ。
茶色の髪にグリーンの瞳を探せば良いだけ…なんて思っていたら
結構その手の人間が居る事に気が付き
私はがっくりと、肩を落とした
どーやって探せっちゅーねん!
キョロキョロは決してするなと言われれば
視線だけで探すしかなかった。
30分ほど過ぎると、流石に痺れを切らしたのだろう
「まだか?」
と聞いてきたが、首を横に振っていると
不意に目に入った一人外れた所で立っている男。
いた!あれ、レンだ…
時折、頬を掻く癖とか、身長とか…間違いない
でも、決め兼ねているのは…笑顔どころか表情が一切無い。
それでも見間違う事は無い…。
やっぱりレンだ…
涙が落ちて、慌ててマスクの下にハンカチを押し込んだ。
コンタクトがずれる。
でも、目が離せなかった・・・。
探偵はあきれたのか自分で探しに出てしまい
今は一人ぼっち。
このままではまずいと、私はトイレへと向かった。
水分を上手く逃がせないコンタクトがずれて気持ち悪い。
コンタクトを一度外し、目薬を挿して何度か瞬きを繰り返すと
外から彼の名を呼ぶ女の声が聞こえた。
「カイル!」
コツコツと聞こえる足音はレンのものなのだろうか?
その名前の他は英語で全然聞き取れない。
すると、男子トイレに入ったレンを見送った女が
やばっ!こっちきた!!!!
うわうわうわ・・・どうしよ…まずいまずい!
私は慌てて、戸の閉まる室内に篭ると
ブツブツと文句を言いながら鏡の前で化粧を直す音が聞こえた。
隣のトイレにレンがいるのかな?
それとも、カイルと言う名前はオーソドックスな名前なのかも知れない
私にはレンの世界は全くわかってなかった。
女が出て行く足音を聞き
ホッと胸を撫で下ろすと、レンらしい人の口から出た名前に
心臓がドキリと鳴った。
「メリッサ…」
その後は、英語で解らなかったが
二人の会話を聞いて初めて胸に込み上げて来る黒い渦に
胸元をギュッと締めこんだ。
レンに間違いない…そのレンが呼ぶ名前は…メリッサ今の婚約者
もう、水希ではないんだ…
痛いほど解った。
彼の世界はもうここで動き出していると。
コンタクトを再び押し込むと、私はトイレを出て
髪の長さの無い頭に、無造作に乗った髪が邪魔で
一度掻き揚げると、ずっとこちらを見ている視線に気が付いた。
レン…
逢いたくて、逢えなかった
胸がギューッと何かにつかまれた感じに呼吸さえ止まった。
少しの沈黙と、レンの熱い視線。
そんなレンの後ろから金髪の男がレンの腕を引いて連れて行ってしまった。
SPなのだろうか…?
「っは、はぁはぁ…」
息するのマジで忘れてた…
笑わないレン…
どこか寂しそうなレン…
どうしたんだ…?私はどうすれば良い?
そこに居るのに手が伸ばせないもどかしさに…
胸が締め付けられる。
とりあえずは、探偵さんの場所まで戻ろうと
ふらつく足を無理に動かした。
「ちょ、どこいってたの」
「と、トイレ…コンタクトずれて」
「そっか、すまないねレン君の回りにSP5人ほど付いててさ」
「うん、トイレでレンの声聞いたよ」
「え?」
「情けないな…目が合ったのに、話し掛けることも出来なかった」
陽気な音楽が流れる中、私はまたポロポロと流れる涙を
どうにも出来ないで居た…が、
一人の男が探偵さんの前に立ちはだかり、話し掛けてきたのだ
「ねぇ、あんた日本人?」
「あぁ、そうだが…」
「そっちの女性は?」
「…何故?」
「レ…いや、カイルが気にしてるんだ」
「カイル?」
「あんた、水希じゃねーの?」
その言葉に私は顔を上げかけて、留まった。
「水希って…誰ですか」
もし、私達がここに居る事がばれれば
恐らくレンはもっと酷い監禁に合う。
だったら、姿も見れたのだから…もういい。
「声控えろよ?
俺は味方だ、ジョイって言う親戚だ」
私は手を口に当てて声を押し殺した。
私の行動に薄く笑った彼が、探偵さんに声を掛ける。
「間違いないと受け取って良いか?」
そして彼はコクリと頷いて、私の正体を明確にした。
「あいつ、ほっとくとここまで来るかも知れないんだ
水希に違いないって言い張ってるからな…
騒ぎを起こす前に、逢う場を提供してやるよどうする?」
「…お願いします」
「ついておいで、あ!野郎は後で迎に来るからここに居ろよ?」
探偵はコクンと頷くと、その場に腰を下ろした。
フロアを出ると、所々で抱き合った人達がいる。
それを横目で見ながらコンタクトの痛みで、目をしかめる。
「水希…あんたさ、どの面下げて来たわけ?」
「…え?」
ドンと、開かれた部屋に押し込められ、私は驚きからその場に
よろよろと倒れこんだ。
「レンは知らない…俺が勝手に動いてるんだ」
「っ…」
「いや、解ってても…もうあんたには逢えないと思ってるか」
「そんなに…私は嫌われてるの?」
「いや…愛されてるんだよ」
その言葉に、全身の血が沸きあがる。
本人からの言葉ではないのに…嬉しいと素直に感じたから。
「今のレンは…ひどいもんだ…あんたに振られてから
レンは人ではなくなった…だから、良いもん見せてやるよ」
そう言われて…
私は、トイレへ押し込められた
ビッと引き剥がされたガムテープが
私の口の上に乗せられ言葉が出せない状況を作られたが
手は縛られていない。
「剥がしても良いが…絶対に声は出すな」
何故か解らないが…水希はそれを守る。
ソレはまるで自分を守るような感覚に似てて
剥がす事を怖いと思ったから。
この目で確かめなければ成らない…
トイレには格子窓があり、部屋の中が見える。
ベットは、半分ほどだろうか?
だが、真っ直ぐの位置にある椅子は完全に視界に入る。
しばらく待ったが誰も来る気配が無いので
水希はコンタクトだけは外した。
もう、目が開けられないほど痛み出してきたのだ。
と、女が笑う声に体が固まり格子から
その様子を覗いた。
そこに居たのは、さっきよりもかなり近い場所での
レンの表情。
言葉も殆ど発さないまま女がレンに絡みついているのを見て
やめて!と叫びたくなったのをグッと堪えた。
ソファーに腰を掛けたレンの前に座る女は、テーブルをグッと押して
レンのまん前を陣取ると、甘い声で囁いた。
「Carry out?」(していい?)
「Make it like.」(好きにしろ)
「oh!Yes,Yes~」(するする~)
レンの冷たい声…こんな声は今までに聞いた事が無いって程
低く地を這うような…声だった。
女は、目の前でレンのズボンをいじってるのが解ると
これ以上のことをするのだろうと理解し
目をそむけた。
耐えられない…あれが、メリッサ?
いや…あの人はさっき見たけど、髪が金髪だった…
だったらこの女は?…
なに?どうしたの?
何で私がこんなシーン見なくちゃならないの?
やだ、レン…離れて!!!
部屋の中に卑猥な音が響き、女がフンフン鼻を鳴らしながら
レンを貪る。
私は耳を塞いだ…見たくない!
こんなのレンじゃない…いや…見なければいけないのかもしれない
胸が痛んで涙がただ漏れ状態になっているのに
私は、もう一度そむけた目を…レンに戻した。
女がレンに何をしているかはすぐに解る…けど、なに?
あの顔…
悦んでるでもなく、ただ虚空を見つめ…
好きに触らせているだけ…
何度かレンの上に跨っては、口を動かす女を見て
レンの体が反応を示していない事は解った…。
これを、あの人は見ろと言ったのだろうか?
私はそこまで深い傷をレンに与えてしまったのだろうか?
止まらない涙がパタパタと落ちる。
漏れでそうな嗚咽を、服の袖で隠し…私は
自分の罪深さを目に焼き付ける。
10分ほどだったろうか?
微かに…レンが身体を動かした。
と言っても…こっち見てない?あれって…
あっ!匂い!!!!!!
そう…レンは私を匂いで感知する犬のような男だと
今更気が付いた…。
「みず…き」
その言葉と同時に、レンの目から感情の無い涙がハラハラと落ちた。
名前を呼ばれビクッと背筋に汗が吹き出る。
と…女が、急に泣いているレンに抱きつき
私が慰めてあげる…なんて言ってるんだろうと思う。
けれど、その女を押しのけ、レンは服を正すと真っ直ぐ
私の居る…
トイレに来るな!!!!
ダメだ、今見られたら酷い顔してる!
ヤダヤダ…
私は慌てて小さく身を丸めた。
「you can go away!」(去れ!)
レンの声が、トイレを開く前に響いて
私は背中を凍らせた。
”you can go away”位は…何となく解る…出て行けと言ってるんだ…
「hurry…hurry up!」 (急げ…急ぐんだ!)
急げって事?さっさと出て行け…って事?
そうだよね…私の事を許す気は…ない…って事か
口のガムテープを剥がすと、ハーッと深い溜息を吐いて
私はトイレの戸をゆっくりと開いた。
目の前に居るのは、間違いなく…レン。
ごめんなさい位は、言わせて?
「レン…ごめんね」
「……。」
誰も居なくなった部屋で
レンは黙って私を見ているだけ…
そうだよね…答えてもらえるわけない。
私はレンの横を通り抜け、部屋を出ようとした時
強い力で掴まれた。
「っ…痛った!」
「Who are you ?」 (君は誰?)
「え?」
「Who are you…?」
「……」
私の事を英語で聞いてるの?
私の名前も…忘れたの?
そんなはずない、さっき…レンは口にしたんだから
レンの腕は、ギリッと音を立てるほど強く握ってくる。
逃れるに逃れられない状況…。
「Who am I?」(俺は誰?)
「え?」
混乱してる…のか?
「お前は、レンだろう?」
「Who am I?」(俺は誰?)
「レン、桑本…」
その名を口に出して良いか迷った…。
けれど、それが何かの引き金になったのか
急に私の身体を抱き上げて、ベットへと押し倒された。
「Who are you ?」 (君は誰?)
「……水希」
名を告げたとたん、レンの唇がまるで獣の捕食をするように
私の唇を舐めだした。
「ちょ、レン!」
「みず…き」
「そうだよ、水希だって、んっ…んーっ!!!」
バタバタと暴れてレンの身体を引き離そうとしても
塞がれた唇が離れるどころか深く深くなっていく。
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