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狼と私2章⑭

続き

【Ren】

ちがう・・・水希はあの女たちとは違う。
王家の血を捨てても…怒る人じゃない。

でもね…俺はもう、どれが正解か解らないんだ
この手で水希の首を絞めた…
逃げてくれると思って。

今は自分で何をやっているかなんて解らないんだよ。

胸の中にしまわれた手紙を読む勇気もない…
別れの言葉が書かれているくらいなら
一緒に死んだ方が良いのかもしれないとか

そんな事まで思ってしまうほど
この世界は窮屈すぎる

逢いたくて…抱きしめたかったのに

この手が触れた女たちを思うと怖くなった。

水希はそれを許してくれるのか?
いや、そうじゃない…

俺が…許せないんだ

水希を思いながら他の女の手で何度達した?
何度吐き出した?
抱いてなど居ない…けれども、俺は…

「レン…」

切なそうに見る水希
懐かしい…この目が好きだった
この香りが優しくて…大好きなのに

壊しそうで…触れられない。

さっきはあんなに乱暴に触れたのに
首の回りに残された指の痕と、キスマークが
どれだけ俺を拒絶するかなんて水希には解らないだろう?

「水希…」
黙り込むレン。
私は何も言えず、レンの両手を握り締めた。

「レン…手紙を見て良いよ」
「…?」
「恥かしいけど…私に疑問があるなら
ソレを読んでから直接聞けば良い」

私はスッとレンの胸ポケットから出した手紙を
目の前で封を開けて
広げて渡した。

黙って、レンは手紙に視線を落とすと
私は近くにあったコーヒーメーカーまで足を進めた。

もう、喉がカラカラだった。

極度の緊張と、涙で水分はかなり自分から失われている。
レンは…私の名を呼ぶたびに…泣くほど私を思ってくれているのだろうか?
知りたい…。
レンの本心が
聞きたい…。
今ここで

そっと、食器を音を立てないように動かし、
仄かな明かりの中で、色々と探すのは結構困難だ。
と言うかオレンジ色の優しい光だけど、こんな光で
レンは手紙を読めるのだろうか?

いかんいかん…ソレより水分だ…
私はまた、あちらこちらを物色する
まるで恥かしさを隠すように…

本当に私はこう言う時…可愛い女になれないと痛感するんだよな…

レンへ

お元気ですか?
この手紙を書いた日、レンの手紙を見ました。
こんなに遅くなったのは、きっと回りの人が優しいから。
怒らないで上げてください。
勝手な言い分でごめんね…レンの事は、ちょっと最近知り合った
探偵にある程度聞きました。
レンが毎日何を思いすごしてるのか…
その思う中に私の事が少しでも入っているなら嬉しいと思った。
レンは毎日を苦しんで生きているようにも見えて
どうして良いかははっきりと解らない。

私は毎日レンに挨拶をしながら大学へ通ってる。
寝る前もレンに届かないお休みを言うんだ。

振られたと思ってたから。

でも、こうやって待っててっていう手紙が届いてて
読んではなかったけど…私は待つというよりレンの幸せのためだからと
日本からレンを応援しようと思ってた。
だって王族って大変なんだろ?
しきたりとか…私には無縁の世界だから解らないけど
私は、ずっとレンを思って生きていたよ。

結婚式…凄く嬉しかった。
強制で結婚したのではなく自分達の意思で
そうしたいと思ってくれてた事は、凄く…嬉しかったよ。
レンに伝えたい言葉がある。
本当に恥かしいけど…

愛しています。

書いてて照れてる私が、素直に伝えたいと思った言葉なんだ。
レンにとってのこの言葉はどれだけ重さを持つか解らないけど
私には凄く重かった…。
レンに言われた日、凄くうれしいのに素直に嬉しいと言えない自分が居た。
それはきっと、この言葉が私にとって凄く大事な言葉だったから
だから、レン…その大事な言葉を貴方に送ります。

                  水希
レンはカサリ…と、手紙を折りたたみ
それをしまっているのかな?

恥かしくてレンが見れない。

愛してるなんて、書いたことないし…言うのも初めてだし
だから、私は水分を補給したいんだ!
汗が出る!!!!

でも、コーヒーメーカーはあるのに、紅茶の葉しかない…
どーせっちゅーんだ?

下の棚を開けると、中に茶漉しが入ってて
それで作るのかな?何て首を傾げてたら
背中が急に温かさに包まれた。

「レン?」

「何探してる?」

「ん…コーヒーメーカーあるくせに、コーヒーがないんだ
紅茶を見つけたけど…今度は紅茶を淹れる物がわからなくて…」

横からスッと伸びた手が、やっぱりあの茶漉しを取った。

「座ってて…俺淹れる」
「ん、ごめん」
「うん、砂糖居る?」
「いや…」

こぽこぽと、レンの手で淹れられた紅茶が
室内に良い香りを漂わせると、紅茶もナカナカいいんだなと
不意に思った。

紅茶を淹れるレン…
それをソファーに腰掛けて待つ私…

まるで、日本に戻った気分になれる。
いつもこうやって…過ごしていた。

本を読む私と、本ばかり構うなと…いじけるレンが可愛かった記憶は
そんなに古いものではない。
紅茶が机に置かれると
私の横に腰を落としたレンがありがとうと一言を吐き出した。

「え?あ、紅茶淹れてもらったの私だから、
ありがとうは…私の台詞だぞ?」

「…手紙」

「あ、う、うん…」

はずかしー!
早い話…ラブレターみたいなもんだろう?
そんなもん、子供の頃に書いた手紙しかない!
大人になってから書くのはかなり抵抗がある…。

しかも、レンそれ以降何も話ししてこないぞ…どうする私!!

「そのっ…解らない事、無かった?」
「うん」

何だこの沈黙…どーせっちゅーねん!

「俺を愛してるって…言って?」

「へあっ?」

変な声でるわ!

「あ…あのっ…」

うわぁ、顔が熱い…
でも、言うって決めて来たんだから…

レンを見ると、今にも泣きそうな視線を向けてきてて
胸が詰まった。

「レ…レン、い、一度しか言わないぞ?いいか?良いのか?」
「うん」
「っ…あ~…うん、言う!」

大きく息を肺へ入れ、ギュッと手を握り締めると
汗ばんでくるのが解る…なんでこの一言をいつもレンがくれているのに…
口に出すのが大変なんだろう…

「あっ…あい…して…る」
「うん…」

って、うんだけかよ!

「水希…」
「うわっはい!」
「緊張してる?」

思いっきり首を縦に振った。
「水希…」
「な、なに?」
「水希」
「どうした?不安になるようなこと書いたか?」
「水希」
「だから、何っ!?」

急にレンが抱きついてきて驚いた。
椅子に腰を掛けて、抱きしめられて…
回りは真っ赤な絨毯で、テーブルだって凄く細かい細工が施されている。
そんな、凄い部屋だと…なぜか思った。
それほど、思考を他にやらなければ、壊れるほど心臓が
ドキドキしてしまっている…。
冷静に回りを見渡せば…。
王家が使うものは凄く豪華だ。

私の家にあったカウチはまだあの家にあるけれど
それを使うだけで豪華な生活を送ってると思ってた
自分のキャパを大幅に超えてきている。

温かいレンに抱きしめられながら思う事は…。
やっぱりこの腕の中が一番安心できる。

表情はまだ硬いけど
それでも、香りや温もりはレンそのもので

与えられた体温が私の心を優しくしてくれる。

「沢山乱暴な事してごめんね」

「大丈夫…」

「俺…水希抱いた時みたいになれなくて…中に挿る事出来なかったんだ」

「へ?」

「だから、俺水希以外抱いてない…
それに、子供は要らないと思ってたからかもしれないけど
王族の血はもう…俺の子供には引き継ぎたくない」

「レン…」

「今…俺は水希も抱けないかも」

「別に抱いて欲しくて来た訳じゃない
レンに逢いたかっただけだし・・・
レンが笑えればそれで良い、私はお前の血を求めてる訳じゃないのは
伝わらなかったか?」

「伝わった…」

「うん…もし、レンが自由に出れる様になったら
あの森へいかないか?」
「森?」
「レンの…育った森、アメリカの」
「え?」
「狼の家族に私を紹介してくれ」
「狼…でいいの?」
「レンの人生の大半はその狼だろう?だったら
王族なんかに認められなくてもいい…戸籍だって
無くても良いよ…レンと一緒に過ごせる時間が有ればいい」

レンの抱擁が、きつくなって
私も抱きしめ返した。

なんかプロポーズしてるの私だったか?
なんて思うけど…日本であんなに愛を注いでくれたレンを
今度は私が注いで上げなければと思ったから。

だから、レン…私を怖がらないで…

「水希とあの森行きたい」

「うん…」

「還りたい…」

「うん」

「水希…たすけ…て…苦しいよ…」

やっと…レンが助けを求めてくれた。
私は強く抱きしめて、レンの頬にキスを落とした
いつもレンがしてくれていたように…笑顔で

「やっと…言ったな?」
「え?」
「助けてって…」
「……。」

そっと、私がレンの顔を引き寄せキスを今度は唇に落とす。
冷たくて…もう一度角度を変えると
レンの舌先が私の中へ入り込んで来るから、そっとその舌に
私の舌を絡めると、レンの体が私を押して来る。
頭を捕まれ、もっと深くへと押し入ってきた舌先を
何度も絡めとリ、腰が砕けそうになる。

助ける手段なんてまだ解らない…けど

今は温もりをレンにあげる。
一緒にこの冷たい世界を抜け出す方法を探そう…

一緒に…助け合いながら支えながら…模索するのも一つの手だと思う。

「んっ…っふ」

甘く声が響くその部屋をドンドン埋め尽くすのは
私とレンの愛情であるならば、私は強くあれる

カチャリと開かれた扉から
一人の男が入ってきて、二人のキスシーンに声を上げる。

「あ…」
「うわぁっ!」

部屋が開かれているのにも気が付かないほどキスに夢中になってて
慌ててレンの胸板に顔を埋めた。
レンはそんなの関係ないと言うように無表情で私一人だけあたふたとするのが
ソレはそれで…恥かしい。

そっと、背後の人間を確認するようにレンが振り向くと
呆然としているジョイと目が合った。

「ジョイ…」

「その女に逢っちまったか」

「…あぁ」

「どうする?貴族にでも売るか?」

ちょっちょ!何言ってんの!売られるの?
恐る恐るレンの顔を覗くと、薄く微笑んだ気がした。

「売ったら俺が買う」
「は?何言ってんの?お前を捨てた女だぞ?」
「そうだったね…」
「って、なんでお前そんな穏やかな口調なんだよ」
「そうかな?」
「は?…いや、わかんねぇ…」
「ジョイ…ここ座って」

指差した先は、迎え側のシングルの椅子。
言われるがままに座ったジョイが私を睨んでくるのは解る。

「で…レンはその女に丸め込まれたのかよ」

彼の言葉に答えずに、私の顔を覗き込んでくるレン

「水希?…ジョイ手紙を出してくれた人だよ?」
「あっ…」

父が見せてくれた、ジョイの言葉を今更ながらに思い出して
私は立ち上がってペコリと頭を下げた。

「見るの遅くなってすいません…でも、ちゃんと家には届いてましたので
本当にありがとうございます…その…返事遅くなってゴメンナサイ…」

その言葉もどうやらジョイには嘘にしか聞こえないらしく
フンと鼻で息を付いて終わってしまった。
「ジョイ…ごめん、俺水希と話できたからもう少し協力してくれないか?」

そう告げるレンに目を一度見開いたものの

「…いいぜ?でもよ…またその女が裏切るかもしれないぜ?」
「もういいよ…裏切られても。それだけのもの貰ったから」
「え?なにそれ…私裏切るの前提なの?」

その言葉にそうじゃないけど…なんて言うレンに
ジョイは心底驚いていた。

レンは基本イヤだ、ダメだ、やらない、する…
はっきりとした言葉を多用する癖があった
それが…何を間違ったらこの短期間で
濁す言葉を使うようになるのか…と言う所だ。

「レン変わりすぎだろ…」

「これが本当のレンに一番近いです」

と、間髪入れずに言った私をギロッと睨んできて
慌てて目を背けた。
マジ怖いんですけど…。

「すいません、ジョイさん…あの男の人どうしましたか?」
「あ?放置!」
「あ、あはは…呼んで来ても良い?」
「は?」

「あの人がここに連れて来てくれたから…それに話しもあるみたいだし
話をしなくちゃ…」

「あんたさ…レンに何されたか…まぁ、想像付くけど
首とか酷い事になってるの解ってる?そんなんで行くの?」

言われて気が付いて慌てて胸元を隠した

「……」

そうだった…私は…首絞められたりキスマーク付けられたりして
あああああ…もぉ、なんて事してくれるんだこの男は!
ギロッと睨んだら申し訳なさそうな顔でこっちを見てるレンに
怒る気にも成れず、苦笑いを向けると
レンがジョイに呼んで来てと頼んでくれた。

引き裂かれたドレスを、どうにかしないと!
私は慌てて部屋の中を見回し、シーツで身体をくるもうかと考えたが
うん…無理!

ウーンと考えていると
レンがいきなりきていたワイシャツを脱ぎ始めた。

「え?レン?」
「これ着てな」
白いワイシャツが、渡されて
レンの上着のジャケットを裸の上から羽織った

「なんか…レンの格好エロいんですけど…」
「…水希の胸見られるより良い」
「…は、はい…」

私は、レンの着ていたワイシャツを着ると
まぁ、ぶかぶかですね…。
イギリスのワイシャツは、襟が立てられたものが多いのか
レンの着ていたものも、襟が立っているので
確りと上までボタンを閉じれば
どうにか首は隠せる程だった。

と言っても…凄く痕が付いているらしく
鏡の前の私はかなりちぐはぐな格好をしている訳で…

ぷっと吹き出してしまう。

「どうしたの?」
「レン、キスマーク付けすぎだ」
「ごめん」

良く見ると顎の下辺りにまで及んでいるそれを見て溜息を落とした。
獣の本能に従ったかのように…荒々しくでも
私に触れてくれたから…。
それでいい…と思えた

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