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なつめっぐ 保管場所

倉庫です。

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苦渋/黒曜石

※苦渋は桔梗が絡みます。

【苦渋】
苦しみも
悲しみも
全てが嘘だったら

きっと、私はこの場所には居なかった



夕日が差し迫る午後
私は小さな、小さな石を見つけた
拾い上げると仄かに桜の色を発色した・・・貝
『海でもないのに・・・』吐き出した言葉・・・
反応するかのように、不意に其の背後から声が聞こえた
『桔梗の花だよ』
『珊瑚ちゃん?』珊瑚ちゃんは私に悪いという顔を向ける
きっと、今の名前が・・・私の心を揺らすのを知ってるから・・・気を使わせたのかもしれない
『あ、あのね?これって・・・貝じゃない?』私は話をそらそうと、珊瑚ちゃんへと貝を見せる
夕日に照らされた貝は、目の前で見ると桜色だが、珊瑚ちゃんの前では・・・紫のあの・・・
桔梗の花に見えたらしい
『ごめん』『・・・。』私は・・・こんなに良い人に
こんなにも気を使わせているのだろうか?


『気にしてないよ』(嘘吐き・・・・)
『かごめちゃん・・・ごめんね?』『珊瑚ちゃんが悪いんじゃないし、気にしてない』
(嘘・・・・)


夕暮れはあっさりと私たちを深い闇へと引き込んだ
ぱちり・・・と火の燃え響く音は、心なしか大きく聞こえるほど・・・心が敏感になってしまってる
『あ・・・』珊瑚ちゃんの声に、思わず・・・振り向いた

『・・・・。』(犬夜叉?)視線の先を追わなければ
こんなに苦しい思いしなかっただろうか?

ゆっくりと誘うような・・・・死魂虫
(桔梗・・・・)言葉にしたら犬夜叉は・・・行かないでいてくれる?
立ち上がった犬夜叉の裾を・・・思わず握り締めてしまっていた
『か・・・ごめ・・・』金色の瞳に切なそうに見られて・・・私は躊躇った
この手を離したら・・・・きっと・・・・


だけど・・・行かないでと・・・言えない
『き、気を付けてね?』(ねぇ・・・犬夜叉・・・私巧く笑えてるかな?)
緩んだ指先から逃げるように衣の裾は・・・・遠のいて行く

溜まらず再び指を伸ばしかけて・・・あの時の言葉を思い出した
『一緒にいていい?』と・・・
犬夜叉は私が苦しむから・・・・別れを決めたのに
私はそれでも良いと・・・そう告げたのに
じゃーこの胸の苦しみは何?

知らない内に、犬夜叉は消え、私は手に汗を掻きながら・・・・胸元を握り締めていた


『かごめちゃん?』『ん?なぁに?』平静を装ったつもり・・・だって、
こういう時・・・いつも支えてくれる仲間だから・・・・
『無理・・・してない?』『うん・・・』(嘘・・・嘘・・・・)
『有難う珊瑚ちゃん』元気に答えた私はその場を離れた
危ないからと追って来てくれた弥勒様を・・・・一人にして!と・・・追い返してしまった罪悪感
やはり・・・汚い

満点の星
夜空を満たす星達は私をちっぽけにしか思わないだろう
でも、小さくても・・・心は、止め処なく求めてる


『犬夜叉・・・桔梗・・・分かってる・・・だから、この気持ちを・・・どうにかして』
星に願う   叶わぬ願い
『もぉ・・・苦しいよぉ・・・・』
犬夜叉も、皆も・・・居ない場所で弱音を吐く

そんな私は嫌いですか?

ポケットに入れていた小さな貝・・・
『これって・・・桜貝・・・・』もう・・・止まらない涙をどうしようかと考える
(このまま帰ったら・・・皆に泣いたってばれちゃうな)
弓を引いた
別に桔梗が憎いとか・・・犬夜叉が憎いとは・・・思わない
少しだけそう思うことも有るけど、それでも、いっつもそう考えている訳じゃない
今は無心になりたくて

シュン・・・・シュン
音は円を描くように落ちる弓を追いかけるように消えていく
『破魔の・・・矢』
(私は清浄なの?違う・・・・汚い・・・・きっと、心は汚れてる)
打ち放った矢は消えていく・・・どこへ行くのだろう?私も、消えるのだろうか?
不意に桜貝を握り締めた
『っつ・・・・』指先から流れ出る血液・・・赤く、紅く・・・流れ出て
思わず人差し指を口へ運んだ
『何やってるんだろう・・・』

桜貝を見つめ思う
こんなに綺麗だったら・・・良かったのに
何もかも受け入れれたら・・・良かったのに

其のとき、カサリ・・・と、音がした
妖気は。。。犬夜叉と告げていたけど・・・振り返る事が出来なかった
きっと、

珊瑚ちゃんと同じように・・・・悲しい瞳で私を見るから・・・・


『血の匂い・・・』『なんでもない・・・切っただけ』『そうか・・・・』
背後から聞こえる声・・・近付きながら・・・掛けてくる声は・・・やはり気を使っているのだろうか?

『なに?』『え?』『何か用があった?』『っつ・・・何だよ其れ?』『だって・・・一人になりたい』
犬夜叉は勝手にしろ・・・と、
そう告げて居なくなった・・・いや、居なくなった訳じゃない
自分の所へ・・・今日もまた帰って来てくれた
時折しか逢えない桔梗・・・・
犬夜叉と憎しみあっていたことがある桔梗・・・・

犬夜叉が好きになり・・・・其の思いを貫こうとした桔梗・・・・

辛いよ・・・犬夜叉・・・声に出したらきっと聞こえるから・・・胸にしまっておくね?


チクリと痛むのは・・・胸とさっき痛めた指先
でも私は泣かない
犬夜叉は今、ここに居てくれているから


『かごめ!』『え?』思わず振り返ってしまった私の目に、犬夜叉は映っていた・・・・でも
凄く澄んだ瞳だった。
『なに?』『怒ってんのか?』『どうして?』『おれが・・・』『怒ってないよ?』
本当に怒っているわけじゃない・・・悲しいだけなの
『かごめ?』『ん?』『そっち・・・行っていいか?』『なーに?其の言い方?何時もなら何も言わずに来るくせに』
『うるせぇー弥勒が、かごめは怒ってるって言うから・・・その。。。なんだ・・・』
(あぁ、そうだった・・・私は弥勒様に一人にしてと・・・・言ったんだ)
『うん。怒っては居ないけど、ちょっと一人になりたかったの』

『や、やましい事は何もねぇからな!』『分かってる』
犬夜叉はきっと、桔梗の前では・・・私を思ってくれてる
そう信じてる。だから・・・こうやって追いかけて来てくれるんだって・・・
自惚れでもいい
そう思えるから・・・犬夜叉を信じれる
『かごめ?』『ん?』『ほら・・・・』『は・・・な・・・?』
『み、弥勒と珊瑚が持って行けって・・・言うからよぉ・・・・』それにしても・・・・
『犬夜叉この花・・・根まで付いてるよ?』犬夜叉の不器用さが好き
『わ、悪かったなぁ、花なんか摘んだことねぇんだよ』犬夜叉の優しさが・・・好き
『か・・かごめ???』『え?』『っつ・・・辛かったのか?』
其の言葉と犬夜叉の視線で私が泣いてるって分かった・・・自分で泣いてるって分からないなんて・・・
『ごめ・・・』
叫びたい思いは・・・行く宛を失って涙に代わったんだ・・・・

『大丈夫。。ごめん・・・泣き止むから・・・気にしてないし。。。うん。。。だいじょう・・・ぶ』

体が一気に温かみを感じたと同時に抱き締められてると・・・・気が付いた
『すまねぇ・・・・』分かってる・・・だから謝らないで
『つれぇよな・・・』犬夜叉・・・あんたがそう想ってくれてるだけでいいの
『かごめ・・・・』そう、私は、かごめ・・・だから、あんたがそう呼んでくれるから・・・・
『かごめ・・・』『あ、ありがとう・・・本当に大丈夫だから』
犬夜叉の暖かさを・・・感じれるだけでいい

『馬鹿やろう!大丈夫な奴が泣くかよ!!『え?』おまえなぁ・・・・
大丈夫だって言う奴ほど信用ならねぇんだぞ?自分に言い聞かせる言葉じゃねぇだろうが!』
そう・・・言い聞かせるしかなかった
自分の心に・・・・だから、大丈夫って・・・・何度も・・・・何度も・・・
『っふ・・・っつ・・・・』『泣いて・・・しまえばいい・・・』
犬夜叉の言葉が優しくて・・・止めたい涙は私の意志には従ってくれない

『泣かせてるのも、苦しめてるのも・・・おれだから・・・お前はここで泣けばいい・・・』
グッと、頭を押されて、私は犬夜叉の胸で言葉を失った
ただ・・・込み上げる涙を、犬夜叉の衣はずべて受け止めてくれた
そして思いは・・・犬夜叉が受け止めてくれている
だから・・・
だから・・・・

『ありがと・・・・犬夜叉・・・・』『ばーか』

優しさに、暖かさに・・・触れさせてくれるから
私は貴方の側に居る
守ってくれるから、守ってあげたいから・・・・

『犬夜叉・・・側に・・・居るからね?』

『居ねぇと・・・力が出ねぇからな・・・・』

甘い言葉なんて無くていい
こうやって
抱きしめてくれるなら


『おれを・・・支えれるのは・・・おめぇしか居ねぇよ』
其の言葉に
また・・・・
苦しい思いが流されてゆく
何時も、いつでも側にいれる私
求めてくれる犬夜叉が・・・そう思えるから
『側に居る』


FIN

=====================

『黒曜石』



漆黒の闇・・・深く深く落とす闇は
辺りをも飲み込み、ただ、揺れる木々と草の音だけが
さわさわと音を成すだけだった


『暗いな・・・・』
そう呟く男・・・月に見放される時期が近いと告げてるようで
心許ない思いだけが・・・ゆっくりと蝕んでくる


『犬夜叉?』『あ?』『明日。。。どうする?』『けっ、行くに決まってんだろ?』

木の根元に座っていた少女がすくりと立ち上がり、にっこりと笑い告げる
『わかった、皆にはそう伝えるね?』『・・・・。』答を待たずにかごめはみんなの元へと向かう

明日は朔。月も今は細く細く・・・身を潜める準備をしてると言うのに

『ったく、どいつもこいつも・・・』
嫌ではない。。。知ってる人達だから
怖くも無い・・・知ってる人が・・・人だから
辛さも、心許ない思いも・・・
『今が・・・いや、こんな時が来るとはな・・・』

ポツリと呟いた。
犬夜叉の幼い頃からの身の守り方・・・只隠れ
喰われないかと怯える・・・その時は、既に皆によって和らいで
恐れを・・・・忘れるほどの勇気と
痛みを消し去るほどに大切なものを両手一杯に貰っているのだ


『でも、妖怪からかごめを守るためには・・・・』ギュッとその手を強く握った

見上げる月は、身を隠そうと、黒い闇へ呑まれようとしているのに


『おやじ・・・お袋・・・・』
月に問う思いは何なのかは本人しか分からないであろう
ただ、
分かる事は

昔のように、母や、父を・・・・重く感じなくなった

人の母を。時折・・・羨ましく思い
妖怪の父を・・・強い人だと思えるように成っていた


『ったく・・・かごめのせいだ』
悪態の裏に隠された感謝の言葉

かごめの為にして来たことを、きっと父も母の為にして来たのだ

そして人だった母は、今のかごめのように・・・・
大きく優しかったのだろう
己を全て包み込むように


『かごめ?おれ・・・やっぱ、変わった
お前と知り合えて、お前に封印をとかれて
おれは生まれ変わったように・・・

見るもの全てに命を・・・
触るもの全てに息吹を
感じれる・・・・かごめ・・・・・


お前を守り・・・そして、

其れはおれの願い


好きだ・・かごめ・・・・』




風が一陣吹き抜けるその音に流されたように犬夜叉の声はかき消され
その思いを受け止めたのは

犬夜叉の身体を受け止める巨大な時代樹
そして

細くなった・・・朔前夜の月だけだった


FIN

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