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短編
確かな気持ち
一行は夜露を防ぐべく、小さな村に足を踏み入れていた
『あ~今夜はどうすんだ?』犬夜叉の呟きに、フッと微笑み『いつものように・・・』
そう答ると、弥勒は足早に町の中心部へ向う
若い女どもがワイワイと騒ぎ立てる夕暮れ時、静かにその輪に入ってゆく1人の男
『私は旅をしている法師です、御困りの方は居られまいか?』
すらりと背の高い男、年齢的にも、今が一番輝いているだろう、切れの整った顔に
女達はざわめく
『全くもぉー法師様はいつもあーだ!』怒ったような珊瑚は、すっと、弥勒の元へ足を進める
『あのぉ・・法師様私と、子を成しては頂けないでしょうか?』
その言葉に一斉が沈まる
当の本人も驚いているようだった
(今・・・なんて? なに?)珊瑚は進めていた足を止めるしか他に無かった
『おや、貴方はどこの娘さんで?』弥勒は後ろに佇む珊瑚にチラッとだけ目を向けたが
視線を交わす事はなかった
『どうでしょうか?』弥勒の手を握る少女
髪は青く、綺麗に流れ行く水のような、サラサラとした髪を惜しげもなく靡かせる
大抵の女は元結で結ぶ方が動き易いと言い、必ずと言って良いほど働く女は元結をする
が、この女は、その髪を振り乱したままなのだ・・・
(金持ちの家だな・・・この女の着物も高価な品だ)
法師はこの女の家に、一泊するつもりらしい
『私で宜しいので?』弥勒は少女の手を握り返すと、またチラッと珊瑚を捕らえた
今度はしっかり目が合う、ここで、多分・・・殴られるか、はたまた飛来骨が飛んで来る!
少しの緊張が走る・・・・が、弥勒の思考を思いっきり交わしたのは珊瑚の方だった
『少し・・・歩かない?』かごめに言う
しっかりと法師に背を向け、かごめの手を引いた
震える手、今にも泣きそうな珊瑚の目・・・かごめは犬夜叉に
『法師様と先に行ってて・・・珊瑚ちゃん居るし、大丈夫だから・・・ね?』と
犬夜叉は今の現状を見て、溜息を付きながら『あんま遅くなんなよ・・・』と、
かごめに、緋色の衣を渡した・・・多少の防御服になる為なのか?それとも寒さから身を守れというのか
かごめはその衣を己に肩から掛けて、『いこ・・・珊瑚ちゃん!』と、
強く引っ張った
その姿を見た弥勒は深い溜息を付く、『あのぉ?あの方が貴方様の良いお人でしょうか?』
少し寂しげに弥勒を見上げてる少女に、『私は旅の法師、ここに留まる事はできません』
そう告げると、訳を聞き出した
子供が出来なくて夫になる人が居ない、それが訳である、
代代伝わった家を潰しかねない、と、家族に言われ、彼女は恋もする事が叶わなかった
恋に落ちるならば、家を出てしまえと言われ、出ると言うと男は逃げる
金持ちの家、たったそれだけで苦労をしてしまう少女・・・。
弥勒は不意に呟く『すまん・・・珊瑚・・・』
その言葉は誰の耳にも届いては居ない・・・が、1人だけ、聞き逃さなかった
耳が良い犬・・・犬夜叉である、彼は無言でその言葉の意味を考えていた
(なんで謝るんだ?お前ら付き合ってるのか?なんだってんだ?やっぱり珊瑚は・・・・。)
『ごめんね・・・かごめちゃん』珊瑚は広い野原で囁くように言う
『ん~無理しない方が良いよ』かごめの目が真っ直ぐ珊瑚を捉える
珊瑚はその目を一気に逸らした・・・
(今きっと私の目は汚いよ・・・嫉妬で汚れてる・・・)
『ねぇ?珊瑚ちゃん、弥勒様の事好きなんでしょう?』悪戯っぽい顔に少し苛立つ
『さっきのだって、いつも止めていたけど、女の子が言い出したから・・・止めれ無かった・・』
正にその通りだった、いつも法師は己から近寄り言い寄る
が今回は女の方からだった・・・珊瑚の躊躇、好きと伝えれない自分・・・
『解った口利かないで!!』苛立ちが全てを崩す・・・
珊瑚の中の何かが崩れ行く、八つ当たり・・・きっと、これの事なのだろう
珊瑚の口調にフッと笑いこたえるかごめ
『わかんないよ・・・でも、好きって気持ちはわかるし、やきもち妬くのだって解るつもり』
そう、かごめだって同じ女、そして二人を好きだという男に心を奪われている・・
『ごめん・・・私が怒る事じゃないのに・・・』珊瑚は理不尽な自分に腹が立った
『ねぇ?一度弥勒様と話したら?一緒に居たいって・・・弥勒様は裏切る事は無いでしょ?』
かごめの爽やかな笑顔、心が休まる・・・珊瑚は、フゥ~っと邪念を捨てるように
深く深呼吸した
好きと言えなくても・・・一緒に居たいと伝える事はできる・・・
『居てくれるかな?』不安げに聞く珊瑚にかごめは答える『弥勒様も満更じゃないように見えるしね』
と、かごめは立ち上がると珊瑚にてを差し伸べた
『いこ!!』満面の笑み
珊瑚は躊躇しながらも、手を繋いで村へ向った
『おい・・・良いのかよ』犬夜叉は弥勒に問う
もう既に日が沈み、薄っすらと月が顔を出しつつあった
その様子を大きな家の中で見上げる犬夜叉、その横には目を閉じ静かに物思いにふけってる
青年が居た、『あぁ、私は頼まれ事は受ける・・・』そう言うとまた、朧の月を見上げる
薄っすらと色を濃くして行く月
『わかんねーけど・・・あのままじゃ、珊瑚がかわいそうだろう?』と、珍しく諭された
『そうですね、お前にも解るって事は相当なんだろうな・・・』弥勒が言う
犬夜叉は、”おまえでも”って所にカチンときていた
『てめーは女好きなだけだろうが』犬夜叉の毒舌が唸る
『だが、お前だって1人に決めれない事実があるではないか・・・』
その言葉をかけられると弱い犬夜叉・・・その後口は開かれる事はなかった
『法師様?今宵・・・わたくしの部屋へ・・・』早くも、夜の話しに入る少女に不快感を
表す犬夜叉・・・法師は黙って頷いた
その頷いたのを目にした犬夜叉は『けっ・・・わっけわかんねーお前』と言い残し
かごめを探しに出た
『あ、ここだ!』かごめは四魂の玉の気配でここまで来た。
『おい!!』荒くなった声が聞こえる
二人は一斉に眼を向けると犬夜叉が門の上で待っていた
『どうしたの?そんな所で?』という問いに犬夜叉は少し赤くなりながら『待ってちゃわりーかよ』
と答える、その答に珊瑚は少なからず期待をした
目はキョロキョロと探す
あたりを舐めまわすように見たが・・・・『居る訳ないか・・・』と、
法師の姿を探していたのだろう、きっと待って居てくれると思ったので有ろう
少し込み上げる熱い物を抑えるように『お腹すいたね』と言う
『珊瑚、野宿するか?』不意の言葉、かごめは犬夜叉の顔を見て悟る、
今中に入れば、珊瑚が辛いのだ・・・
『何いってんのさ、ここで決まってるんだろう?』冷たい目、何者も信じないような
そんな目を一瞬放つ
『いや、お前が良いなら別に俺はどこでも良いし・・・』と、答える犬夜叉
珊瑚の声に圧倒されてる様子だった
珊瑚は何も無かったようにスタスタと歩く
家主に用意された部屋には3組の布団
かごめ、珊瑚・・・犬夜叉・・・
珊瑚は頭がキリキリと痛むのを感じ横になった
(法師様・・・どうして、私は。。。貴方が・・・すき・・・)
珊瑚は聞こえては居ないと思った・・・だが流れ行く涙は容赦なく声を引き出す
『っく・・・・・っつ・・・・』
布団越しに上下する珊瑚、眠りに付いたような安らかな波では無い事に、犬夜叉とかごめは気が付いた
(何もして上げれないのかな?)小声で犬夜叉に聞くかごめ
(もう当人同士の問題だろう・・・・)冷たいようだが的を得たような答
『では・・・』弥勒は袈裟をゆっくりと下ろした
『はい。』その場で座っていた女が帯をゆるりと解く
弥勒はまだ触れずに居た、珊瑚の涙が思い返される
その煮え切らない態度に少女はそっと指を弥勒の手にかけ、持ち上げると胸元へ向けた
『良いのです・・・』そう言うと、胸元にあった手をグイッと己のふくよかな場所へ導いた
『では、子を成したら私はここを去りますが、それでも良いのですね?』と聞くと、
答を待たぬまま、少女と布団の中に崩れ落ちていった
『口付けはしては頂けないのでしょうか?』少女が切ない顔を向ける
『口付けは大切な人の為に取ってあるのです。』そう言うと、胸元に引き込まれた手を
くいっと翻し、豊満な胸がさらけ出された
弥勒はその手をそっと乗せると、
ジャラリ・・・と、右手が音を立てる
動かすたびに聞こえる数珠の音
じゃらり
じゃらり
『これではダメですね・・・』弥勒が手を止めた
『何がですか?』少女は既に高潮して、しなやかな髪に手をかけ、梳きながら問い掛けた
『私が使い物にならないのですよ・・・悪いが、相手はお前様ではなかったということです』
冷めた目を向ける弥勒に少女は己の帯を投げた
『恥をかかすのですか?』胸元を抑え、涙を流す少女
少女は荒々しく部屋を飛び出した・・・
弥勒はそのままの姿で、その場に座ったまま目を閉じる
私には珊瑚・・・お前だけなのかもしれない・・・
抱けなかった・・・其れが答だ
だが、お前は今・・・辛い思いをしてるのだろうか?
私がこの依頼を受けたのも、答を出したかったからなのかもしれない
珊瑚は何時ものように止めに入らなかった仕返しかも知れない
試したのは私のはずなのに・・・
結局試されていたのも私だったか・・・・
弥勒はふぅと息を付くと『犬夜叉・・・聞こえますか?』と少し大きめの声で呼んだ
布団にくるまった珊瑚には到底聞こえない声でも、聞こえるのは犬だから?
『犬夜叉。。。珊瑚を連れて来てはくれまいか?』
その声に気が付き、犬夜叉は布団に入ったまま泣き続ける珊瑚を
急に抱き上げ、驚くかごめを他所に、
布団に入ったままの珊瑚を弥勒の居る部屋へ連れて行った
『てめーで迎に来い!!ったく』犬夜叉はそう言うと、珊瑚を弥勒へ渡し、また消えて行った
『な・・なんだよ・・・私は頭が痛くて寝てたんだ・・・ほっておいて!』
強い口調の珊瑚、が、少し腫れた目を見せたくなくて、布団に入ったままだった
『珊瑚・・・お前は泣いていたのですか?』その問いに『琥珀の事を考えてたんだ』と
悟られまいと必死に、嘘を重ねる
『嘘は良くありません・・・』そういう弥勒に腹が立ち、珊瑚は顔をあげて
『嘘って何故わかる!!』と怒りをぶつける
男の人の力は強い
いとも容易く抱き締められて
今、唇を奪われている事に気が付かずにいた
『っつ・・・』離された唇に珊瑚は戸惑いながら、さっきしたであろう行為を自分にもすると思うと
嫌悪感が襲ってきた『やめて・・・やだよ・・・あの人と同じ事をしないで』
我慢しているはずの涙は知らず知らず珊瑚の綺麗な肌を伝う
『同じではない・・・』そう答えるとまた唇を求めてくる
『同じじゃないか・・・何が違うんださっきまでしてたんだろう!止めて、離してよ』
抵抗する珊瑚、だが、弥勒にはその抵抗さえも愛らしい
『お前しか・・・役には立たないのですよ・・・私は』そういう言葉に珊瑚が顔をあげる
『何?それ・・・』珊瑚には理解が出来なかった、何が役に立たないのか?
『今夜は離しませんよ・・・お前しか私を静めれないのですから』
悪びれた顔で珊瑚に囁く
『なんだってんだ・・・』珊瑚が悪態を付くと
『可愛いおなごはそう言う口を利いてはいけません』と、諭される
『法師様・・・』珊瑚は抱き締められた手を振り解けないでいた
『私は珊瑚だけなのです、お前が私の大事なおなごだ、忘れるな、何があっても大切なのはお前なのだから』
『え?』突然の告白・・・珊瑚は頭が混乱した
『珊瑚、お前はどう考えてるのですか?私ではダメですか?』優しく
大切な物を扱うかのように
刹那げに
珊瑚の髪を触り、髪の一本だって愛らしい
『珊瑚、惚れてるおなごはお前だけです』
優しい目にすっと笑ったような微笑の憂い
『法師・・・さま・・・』
そのまま二人は闇と戯れ、
己の気持ちを身体に表し
心を声にして
一つになった
『いつまでも一緒に生きよう』
『うん。』
FIN
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