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短編
ダブル 【ダブルデート】
キーンコーン
夕暮れが降り頻(しき)る中、校舎が赤く染まり、少年や少女達が姿を現す
楽しそうに笑う者、本を片手にブツブツ英単語を頭に入れる者、
其々(それぞれ)が帰宅の途に付き、グラウンドでは笛の音と、生徒達の掛け声が聞こえる
其の学校の中に残っていたかごめが溜息を付きながら、図書室へ向かった
勉強の方はどうにか追い付いてる物の、四魂の玉に付いての文献を探してみたのだ
妖怪に付いて、其れも全て信憑性が欠けていて、知ってる事ばかりの文献に、少々飽き飽きしてきた時だった
同じクラスのあゆみが、図書室に来ていたらしく、バッタリと出会ってしまった
『かごめちゃん?』ふわふわの頭に、少しおとぼけが入って居るあゆみ。かごめの無二の親友でもある
『どうしたの?』パタリと、妖怪の図鑑を閉じ、見えないように隠そうとしたが、時既に遅し、
あゆみに、何故そんな本を?などと突っ込まれ、気に成っただけだよ・・・と流した
何はともあれ、一度は犬夜叉に逢った事のあるあゆみに、本当は、好きな人は妖怪なんて
告げれる訳も無く、信憑性も無いだろうと本を元の棚へと戻した
『ねぇ?あの、ハーフの彼、かっこ良いよね?』『そ・・・そうかなぁ?』満更でもなさげに
かごめが言うと、あゆみがとんでもない事を言い出した・・・・
『へ?もう一回言って?』『だから~日曜日・・・ダブルデートしようよ?』
困り果てて、遠いから・・・と、理由を付けたが、迎えに行くからねぇ~と、あっさり流されてしまった
しかも、こなくちゃノートを貸してあげないと付け足され、深いどん底へ落ちて行った
(犬夜叉が・・・来る訳無いし・・・はぁ。)
かごめは溜息を落とす他無かった。が、土日は向うに帰るのに、お払いが梃子摺(てこず)ったと、じーちゃんに
足止めを食らってしまい、渋々かごめは日曜日に帰る事となった。
其れも其のはず、じーちゃんの相手をしてる、払われてる者は、多分、間違いなく・・・妖怪
妖気はそんなに感じない物の、変な違和感が手伝い、日曜日に帰ると決めたのだ
どうしようもない時は、妖怪を連れて、戦国へ向かえば犬夜叉が居るし・・・などと悠長に構えていた
お払いは困難を極めた。かごめが、其の場に行くと、妖気が増幅してる事に気が付き、
弓を取りに一度、戦国へ行くことも考えていた。
がららぁ!『くぉらぁーかごめぇ~おせぇから迎えに来たぞ~』・・・何と言うナイスタイミング!
かごめは一度母屋に戻り、犬夜叉を見るなり手を引き、来て!とだけ告げた。
犬夜叉がかごめに連れて行かれる先に妖気を感じ取ると、『ん?妖怪!』と、犬夜叉が鉄砕牙に手を掛ける
こんな時の犬夜叉は、いつも助けになってくれる。『じーちゃんがお払いしてるのよ・・・』
其の言葉に犬夜叉の目も点に成ってしまう。『お前のじーちゃんは、札さえ効かねぇってーのに?』
流石に、かごめも反論が出来ないと、ははは・・・と、困ったような笑いを向けた。
犬夜叉も、少し考え、じーちゃんの居る部屋へ入っていった
『おーお主も来てたのか?・・・ん?・・・・あれ?』『あんだよ!』『おぬし!何故入って来れる?』
『けっ・・・効かねぇよ、』じーちゃんが其の言葉を聞かないようにして再び妖怪封じにムンムンと、
何度も力を込める(じーちゃん・・・諦めようよ・・・。)
かごめが考えた所で、強情なじーちゃんを引き下がらす術が解らず、はぁ・・・と溜息を落とした
かごめは一旦犬夜叉に其の場を頼み、母に相談に行った。おじーちゃんをあしらうのは母が一番上手なのだ
結局、母がご飯だから一旦止めて食べてからしなさい・・・と言い出し、其の言葉に素直に従った
じーちゃんを横目に犬夜叉が鉄砕牙で、妖怪を退治して、そ知らぬ顔をする事にした。
妖怪と言っても、小さな箱に封印されて居るだけの、雑魚妖怪だったが、
人が相手となると、やはり、強い物なのだから、今のうちにと、犬夜叉が鉄砕牙を振るったのだ
其の後、じーちゃんが、箱を見て涙を流しながら、退治が出来たと大喜びだったが、
犬夜叉とかごめは、何も言わず苦笑いをしただけと成った。
『さて、片付いたし・・・帰るぞ?』『あ・・・うん・・・(ノートがぁ)』
かごめの、ハッキリしない返事に、犬夜叉も何か感じたらしく、どうした?と・・・聞いて来た。
なんでもないと答えるかごめに、不信感はあったが、草太が、犬夜叉を引っ張り、急いで部屋へ連れ去っていった
『はぁ?・・・・何で草太が?』変には思ったが、ま、いっか・・・と、呑気に風呂へと向かった
犬夜叉自身も引っ張られて何が何だか解らない内に、部屋へ引きずり込まれて、戸惑った
『犬のお兄ちゃん!』『お・・・応?』『デートした事ある?』『はぁ?でーと?』
犬夜叉に伝わるように説明した草太が、明日デートするから、教えてくれと言い出したのだ
『何で俺が!』『だって、いつもねーちゃんとしてるんでしょ?でーと!』
何はともあれ、女の子が喜ぶ事を知りたかったらしい・・・が、
犬夜叉に解る訳が無い!否・・・解ったら奇跡かも知れない・・・(コラ)
『男の俺に聞くより、かごめに聞け!』『だってねーちゃん、忙しそうなんだもん!』『俺だって忙しい!』
まぁまぁ。と宥(なだ)められ、犬夜叉が草太のベットに腰を下ろした
『で、何をしてぇんだ?』『キス!』『はぁ?きすぅ?』『うん。前にね・・・出来なくって・・・意気地なしって』
犬夜叉は意気地なしとかよりも、キスの単語に頭をグルグル巡らせていた
『あ、口付けだよ?キスって!』其の言葉に火が付いたように一気に赤くなり、何を言ってるんだ
などと、草太に告げた。が、どうやら真剣らしく、犬夜叉に喰い付く、『お願い!教えてぇ』
犬夜叉とて、己から唇を寄せた事など無いのに・・・そう思いながらも、色々考えてみる
が、脳味噌は煮沸されたように、熱くなるばかりで何も浮かんでは来なかった
(おれにどーしろって言うんだ・・・ったく!)
かごめが風呂から上がり、草太の部屋へ向かった。犬夜叉がまだ、捕まってるだろうと戸を開けると
下を向きながら、大人しくしてる草太と、何かを悩んでるような犬夜叉が目に入りどうしたの?
と声を掛ける。犬夜叉が待ってました!と言わんばかりの顔でかごめに先ほどの話を告げた
『はぁ?小学生が?キスぅ?って・・・ちょっとあんたら・・・早いんじゃ?』
『そんなの関係ないよ!好きなんだもん・・・それに意気地なしって・・・そんな事言われて黙ってられない』
まぁ、男としては黙ってはいれないだろう・・・そう言うと、ちらりと犬夜叉を見た
其の視線に気が付いたのかそっぽを向く(ばか・・・)心の中でそう告げると、犬夜叉に聞こえるように紡ぐ
『好きなら。大丈夫じゃないかな?そう言う事をしたいなら、彼女と公園でも歩いて、優しく声を掛けてあげれば
きっと喜ぶって?ね?』と言うが、それじゃ駄目だと、キスの仕方を聞いて来た・・・
『ちょっと、草太、それは私でも・・・』いくらなんでも・・・と思うが、草太が、余りに本気で
渋々相手役をする事になった。そんなかごめを横目で見ると、犬夜叉も何故かしら赤くなり、再び視線を外した
『い・・・いい?』『早くしなさいよ!だけど、触れたら駄目だからね!』解ってるって!と言いながらかごめの
ほのかにピンク色の唇が草太によって塞がれそうで犬夜叉も気が気ではなかった。
ゆっくり近付く唇に、犬夜叉がバッ・・・と、かごめを引き寄せた『へ?』
(もしかして・・・。妬いてる?)犬夜叉の真赤な顔の奥に潜む怒りの心がかごめには伝わって来たのだ
『じゃー犬のにーちゃん!ねぇちゃんとして!僕見て勉強するから』其の言葉にかごめが怒る、後は自分でどうにかしなさいと
犬夜叉を引き連れて己の部屋へ戻ったのだ
『ごめんねぇ・・・草太の奴、急に男らしくなるんだから・・・ったく。』勉強机に静かに教科書を開いたかごめだったが
犬夜叉の返答がいつに無く帰って来なかった(また・・・寝ちゃった?それにしちゃ早いしなぁ)そう思いながら振り返ると
犬夜叉と、視線が絡んだ(え?)『かごめ・・・』『な、なに?』少し動揺をしながら返事を返すと、かごめの椅子をクイッと引っ張り
己のすぐ側に近付けた『あ・・あのぉ?』『あ、わりぃ・・・』急に自我を引き戻したのか、赤くなった犬夜叉がふいっとそっぽを向いた
(意気地なし)心の中の声は、たぶん犬夜叉も聞こえただろう。きっと、己自身同じ思いだろうから。
結局何も言えぬまま、夜が明けた。戦国へ帰ろうと支度を整えた時、『かごめちゃーん行くよぉ~』と
『あ!あゆみちゃんだ!やだぁ~今日ダブルデートなんて言ってたっけ』其の言葉に犬夜叉の耳が動いた
『行くのか?』『あ、行かないよ・・・あんた誘っても疲れるでしょ?街歩くの?』以外にも其の言葉に、いいぞ と
返して来た。どうやら昨日の草太の、デートと言うのが気になって居たらしい。
だが、緋衣を纏ったままでの外出は目立つし、と犬夜叉に言うと、以外にも着替えると言い出した。
(???どうしちゃったの?)かごめにはチンプンカンプンだったが、これで、ノートは確保できる!
そう思いながら犬夜叉が着れそうな服を探した。
上は自分の持っていた男物のパーカー。下は、ジーンズ、母がじーちゃんにと買ったのだが、サイズを間違えたらしく
草太が大きくなったら履かせようと保管していた物。靴は無いので、サンダルをじーちゃんに借りた。
思いの外犬夜叉はがっちり体型だと思い知らされたのは己の服を着て、少し小さいと知ったから。
だが、自分も用意しなくてはと、タンスをひっくり返しながら、服を選んだ。
ダブルデートとは言え、犬夜叉とデートが出来るのだ。犬夜叉には頭にスカーフを巻いてもらうだけで、
事は足りた。もし帽子が風に飛ばされたら、と考えなくても済むからだ。
そうこうしてる内に、あゆみが痺れを切らせて、早く~と、せかし出した
(あ・・・そう言えば・・・あゆみちゃんって・・・彼居たっけ?)
そう、あゆみに彼が居るとは聞いてなかった。だから、其の彼を見て驚いた
『よっ!日暮!』『ほ・・・北条君!!』どうやら、あゆみに嵌められたらしい。
北条がどうしてもかごめの彼を見たいって言うから・・・と、付け足されて渋々一緒に行動する事になった
『酷いよ日暮・・・彼氏が居るなんて知らなかった!』『あ、あははは・・・』
笑うしか他が無かったかのように、あゆみに声を掛ける『ちょっと・・・どうするの?』其の言葉にあゆみが答えたのは意外な言葉だった
『昔の彼女を忘れれないなら、妬(や)気持・・・妬かせて、かごめちゃんがどれだけ大事か思い知る方がいいじゃない?』
あゆみの提案は意図も簡単に通ってしまう。が、あの犬夜叉に焼き餅だなんて・・・と、不安さえ隠せないかごめが、
なるべく犬夜叉に寄り添って行けばどうにか成ると、またもや安易な考えに落ち着いた
『ボートだ!あゆみちゃん!乗ろう?』かごめが久し振りの現代を堪能する。犬夜叉は、静かにかごめ達を見守る形となった
昨日草太に、デートでは、女の子を恥かしい思いさせないようにする!だの、終止見守るだの・・・一端の男を語ったからも有るだろうが
かごめにしてみれば、何時もの犬夜叉と違う・・・と言う思いで一杯になっているだけだった
確かに、いつもならかごめに、あれは何だ?だのこれは食い物か?だの、質問ばかりなのだが、今回に限ってはそうではなかった
『どうしたの?』『あ?いや・・・何でもねぇよ』と・・・この調子なのだ
『僕が漕ぐよ!』ボートのオールを手に取ると、自慢げに漕ぎ出した。犬夜叉に、北条がちらりと目配せをすると
ピキ・・・と、額に怒りが浮き出るが、ぷいっとソッポを向いてしまった
(デートじゃないみたい・・・・はぁ。早く帰りたい・・・)などとかごめが考えてるだろうとは誰も知らないであろうが
感の良い犬夜叉が不意に声を掛けて来た『疲れたのか?』『へ?』『いや・・・溜息ばかりだし。疲れたのかと・・・』
かごめは、其の言葉が嬉しかった。どんなに長い道のりを歩こうが、決してそんな事をかごめに言った事が無い
犬夜叉とて、多分疲れてはいるだろう。何せ着慣れない着物・・・乗った事の無い乗り物ばかりが続いたのだから
ボートが呼び出され、地に足を下ろすと、平衡感覚を失ったあゆみがクラリ・・・と、膝を落しそうになった。
犬夜叉が其れを手で受け止める・・・・かごめにとっては、痛い場面ではあったが、北条にはもっと、痛かったらしい
そんな他愛も無い嫉妬が渦巻く中、かごめとあゆみがアイスを買うと、二人を残して其の場を去った
『犬夜叉君?』『あ?なんだ?』『君って・・・日暮が好きなのか?』其の言葉にドキリ・・・犬夜叉が慌てる
『僕は・・・日暮が好きだ・・・。』『な!あの女を好きじゃなかったのか?』『あぁ、今日は君に逢いたくて』
イライラと苛立ちが犬夜叉の中を駆け巡る『そんな小細工しねぇとかごめと逢えねぇのかよ?』
『俺に逢いたければ、そう言えば良いじゃねぇか』イライラ・・・イライラ・・・・苛立ちだけが渦を成した時、
かごめ達がアイスを持って帰って来た
『はい、犬夜叉に・・・バニラ』渡されたアイスは”ばにら”だった。他の味が混じるより、そのままの味の方が良いだろうと
考えたかごめの、小さな親切。
其のアイスにかぶり付くと、不意に正面にいたカップルがアイスを分けあってるのを見て、犬夜叉は、かごめの手を引いた
『え?』『色が違う・・・こっちはなんだ?』ぱくり・・・口に入れる犬夜叉を北条がアングリ・・・と口を開けて見る
『あんたなんでそんなに食べるのよ~あ~無くなった』ドキドキとしながらも、カップルらしい会話がかごめには心地良かった
犬夜叉が自分のアイスを渡してそれでも食っとけ・・・などと言い出したものだから、かごめにしてみれば
今回のダブルデートは大成功に収まっていたのだ。
夕暮れが差し迫ると、流石に帰るだろうと思っていたが、あゆみが言い出したのは、観覧車・・・・
確かに、綺麗な夜景も見たいと思ったが、犬夜叉は無口なまま・・・戦国時代も気にもなり、帰ろうか?と言い出した。
『観覧車・・・行こうよ?最後にさぁ~』其のあゆみの言葉に、はぁ、と溜息を落としながらも、承諾をした。
確かにデートらしいデートをした訳だが、ダブル・・・北条や犬夜叉に気を使い過ぎたかごめも、へとへとになって居た
乗り方を知らない犬夜叉。動いてる物に乗るのだが、多分遅いだの何だのと文句を付けたいだろうが、皆が居れば
犬夜叉もそうは言ってられないだろうと、別々に乗る事を告げずに、二人が乗り込んだのを見て犬夜叉を引きとめた
『な・・・』『次のに・・・乗ろう?』先に進んだ二人はワタワタと慌ててはいたが、
これくらい許して。と、かごめが手を振った
二つ目のゴンドラが来て、犬夜叉と共に乗り込んだ・・・案の定犬夜叉は、おせぇ~と言い出した
『あんた、今日疲れたでしょ?』『ん?な・・なんで俺が疲れなくちゃならねぇ!』などと言ってるが、其の言葉は笑って流し、
目の前に広がる夜景に息を飲んだ
『すっごぉーい・・・久し振りに見たけど・・・きれぇ~』犬夜叉の横に座り、窓の外を見るかごめ・・・
『あのよぉ?疲れたのか?』其の言葉に疑問を感じる。『どうして?』『何時ものおめぇじゃねぇから・・・』
解ってくれているのだ。何時もは、気など使わず、ありのままの姿で思いで、犬夜叉にぶつかってる事を
其れが何となしに嬉しかった
『あんたもね?いつもの犬夜叉じゃなかったよ?』『そ・・・そうか・・・。』『うん。そう!』
静かに回って行くゴンドラ
其の中は密室。互いの息が聞こえる位の近距離。何だか胸が騒ぐ・・・互いにそうは感じていた。
『あ!』静かに流れるゴンドラの中、かごめが犬夜叉の肩に頭を寄せた。
『厭?』『・・・。べ、別に・・・厭じゃねぇ』優しい香りが犬夜叉を包み込む。
何とも言えない思いが込み上げてくる
たった15分。其の間に少しでも犬夜叉と二人きりでデートらしい事をしたかった。だから、肩に頭を預けたのだ
『か・・・かごめ?』『ん?』『あの・・・』『なぁに?』『その・・・な?』『ん?』
言葉が途切れると、犬夜叉が静かにかごめの顔に顔を寄せて来た。(え?)
ほんのり赤くなった犬夜叉がゆっくりと瞳を落しながら近付いて来た。(もしかして・・・・)
吐息が互いの顔に触れるくらいゆっくりではあったが、確かに、目の前に居る犬夜叉が唇を求めてるのだと・・・
そう感じ、かごめも瞳を静かに落した(あ・・・)軽く触れた、其の瞬間
『きゃぁぁぁぁ!』二人がびっくりして慌てて飛び退いた『な・・・何?』
不意に上を見上げると、小さな子供がゴンドラの取っ手で遊んだのだろうか?戸が開き、子供がその取っ手にぶら下がった状態だった
『犬夜叉!』かごめが声を掛けると、犬夜叉は解ってるって・・・と言わん顔を向けながら、シュッ・・・
己のゴンドラから飛び出た。
『高いから気を付けてね!』『俺を誰だと思ってる』そう言い残し、犬夜叉が子供の元へ辿り着いた
中の母親に渡すと、また犬夜叉は飛び出して、かごめの居るゴンドラへと、飛び返った
『ガキは大丈夫だったぞ?』『うん。良かった。』『でもよぉ・・・。』其の言葉にかごめはハッと気が付いた
今は現代、誰がピョンピョン飛んで高い位置まで行き、子供を助けて又戻るのだろうか?
もうすぐ付くであろう下を見ると、皆がじっとかごめの乗るゴンドラへ目を向ける
『やばい・・・犬夜叉ここから降りれる?』『誰に物言ってる!行くぞ!』
犬夜叉の背に乗り、かごめと二人でゴンドラを飛び出した。
一部始終を見ていたあゆみと北条が言う・・・『体育会系?』(をぃ)
この二人はどこまでおとぼけなのだろうか・・・・・
日が暮れ、漆黒の公園で、ベンチに犬夜叉が腰を掛けていた。
白銀の髪が風に攫われて、ウザったそうに、髪を掻き揚げる姿は、綺麗だと心底思えた。
そんな事を思いながらも、手に持つ缶のお茶を犬夜叉へ渡し、横でリングップルに手を掛けた
『あのよぉ・・・目立っちまったの・・・すまなかった』『え?』『草太が言ってたけど、恥ずかしい思いしたくねぇんだろ?』
かごめがクスリと笑った『人助けたのに、犬夜叉は悪くないよ、逆に自慢出来ちゃうよ。ありがとう。』
先程まで静かだったのは、きっと、その事を考えて大人しくしていたのだろうと思うと、何だか嬉しくなった
『犬夜叉?』『ん?』『帰ろうか?』『お、おう!』
手をゆっくりと触れ合わせると、静かに手が繋がれた。どちらからでもなく、指先が絡み合うと瞳を合わせ、微笑む
そんな姿が、心地良い。
『犬夜叉・・・今日は有難う。』ノートを確保するのに借り出された犬夜叉だったが、
かごめはその事を忘れる位の幸せ感に襲われていた。また、戦国に戻れば戦いが、仲間が待ってる。
だからこそ、この時を大切にしたかった。
『かごめ・・・』『ん?』
月の光が見守る中、二人の影が一つになり長い線を描く。街頭の明かりが指し示す道は
この先の二人に課せられるかのように二本に別れてはいる。だが、一つの線も、間違いなく存在する線
明日にはまた・・・戦いと言う世界に身を投じ、再び過酷な運命を背負う二人の、たった一時の休息だった
FIN
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