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なつめっぐ 保管場所

倉庫です。

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短編




ざわざわと風に揺らされる木々
昼下がりになり、急に風が出て来たと、溜息を落とす少女が
手元に集めた草を落とすまいと手で隠し、砂利道を進んだ

いつも見慣れている風景が視界に入り、にっこりと微笑むと
洗濯物をはためかせていた所で、一生懸命子供を背負いながら
取り込んでる姿に、声を掛けた

「珊瑚ちゃん!雨降りそうだね~」
「うん、だから下ろしてるんだけどさぁ~」
不愉快そうに視線を送った先には・・・
「あ・・・・」
犬夜叉と弥勒。

こそこそと話を進めては、犬夜叉が一人暴れて、弥勒に殴られている
「あれは、良からぬ事を企んでるとしか思えないよ・・・」
「う・・うん・・・・」
洗濯物を下ろした珊瑚に微笑みを向けると
「珊瑚ちゃん!私薬草取って来てるから、一度戻るね?」
「うん、解ったよ」
そう言い残し、少女は小屋へと向かった

簾を上げると、楓がにこやかにお帰りと告げてくれる
その心地よさに、ただいまと返すと、かごめは薬草を洗い
部屋の中へ敷き詰める
「今日は犬夜叉は近寄れないな・・・」
笑いながら告げる楓に、そうだねと告げるかごめ
臭いがきつい薬草が干されて行く時ほど、強く香る
それでなくても鼻の良い犬夜叉、いつもこの時だけは、小屋にも近寄らなかった


「かごめ・・・・」小屋の簾の外で呼ぶ
その声が誰かなど、すぐに解る・・・。
「犬夜叉どうしたの?」
「手が空いたら、話がある・・・・」
別にそこでも良いじゃないとかごめが告げたが、犬夜叉は後で呼べとだけ
言い残して、その場を既に去って行ったのだ
「相変わらずせっかちだなぁ・・・」と、楓が溜息混じりにかごめを見ると
納得してるような顔付きでにっこりと微笑み返した


「で・・・話って?」
犬夜叉の背に揺られながら、かごめが耳元で囁いた
「あのよ・・・・その・・・・」
いつも、ハキハキと答えるこの男が珍しい事もあるものだと
かごめが、首をかしげた

「で、何処行くのよ?」
その言葉にも返事が返ってこない

「犬夜叉?」

呼び掛けたと同時に犬夜叉がその場に止まり、かごめを背中から下ろすと
その場に座った
「え?なに・・・?」
辺りを見回したら・・・・

ご神木・・・・・

大きな木が、揺ら揺らと風に押し流され
ぎぎぎぃ・・・と木の根が軋む
風に髪を浚われ、手で押さえながらかごめが犬夜叉の前に出ると
木の下の方にある傷を手でなぞった

「因縁も・・・桔梗も・・・全て終わった」
口を開いたのは犬夜叉
滅多に口に出さない名前にかごめが思い出していた
桔梗を助けた事
犬夜叉と愛を育んでいた事
裏切りと思いを断ち切った事

切なく苦しい戦いがやっと・・・やっとの思いで終わり
一度塞がった井戸が、二人を会わせる為に開いた
「そうだね・・・・」切なげにかごめの口からも言葉が出てくると
犬夜叉は続けた

「もう、お前を放すつもりはねぇ・・・・」
「へ?」
「いや、だから・・・う~・・・・」
かごめが先程の言葉をもう一度頭で考え直し、かーっと赤くなった
「どど・・・どうしたのよ?」
「かごめはどうなんだよ!」さっきの言葉に返事をくれと言わんばかりの怒声
自分の気持ちは伝えたと、彼は此処で思ってしまったのだろうか?
また、自分が言わなくては成らないのだろうか・・・・?
「どうなんだろうね?」はぐらかした。
犬夜叉が悪いんだと言い聞かせ

「お、おい・・・・」
狼狽する犬夜叉が愛しい・・・・
「か・・かごめ・・・?」
大好きだと、何時でも言えるのに
「黙ってちゃわかんねぇよ!」
赤くなりながらどんな答えを期待しているの?
「犬夜叉だって言ってくれないじゃない・・・言わなければ解らないよ。」
かごめが、問い詰められて出した言葉。
言わなければ伝わらない

愛してくれなければ、愛する事に不安を覚える

「かごめ・・・・」背後からぎゅっと抱き締められた体が
どんどんと熱くなるのを感じ、かごめは回された手に自分の手を添えた

「同じだよ・・・・きっと」
「え?」
「私も犬夜叉を離すつもりは無い」
抱き締めてきた腕がきゅっと圧迫を強められてかごめは胸が詰まる
大好きだと、何度言えば解ってもらえるのだろうか?

「うん離れねぇよ・・・すき。。。だ・・・」
ビクッとかごめの身体が跳ねた
耳元で、吐息と共に擦れた声で吐き出された言葉
ずっと待ち望んだ形で、犬夜叉は伝えてくれた
自分を・・・すきだと

「私も・・・犬夜叉が好き・・・」

想いが繋がってはいた
だけど、結局言葉は無くて
信じても居た
けれど、寂しさが圧し掛かって来るのを拭えなかった

この言葉が、どれだけ二人の間に大事だったか
やっと思い知ったのは、身体を反対に返して抱き付き泣き始めたかごめを見る犬夜叉だった

かごめは、当に気が付いていたはず
何度となく独占欲だけでかごめを叱ったり、怒鳴ったりしていた
挙句、意地の悪い行動も取ってきている
それでも、解らないほどの野暮ではない

好きで好きでたまらない・・・そんな感情が
ドンドン犬夜叉を埋めて行く

かごめが此処に戻る決意を、自分は、当たり前のように感じた
ただの独占欲なのに
あれだけ心配をしていた家族を置き
一人で己の為に来るのが当たり前だと思っていた
去られるのが怖くて・・・・

帰る事さえ許さなかった自分に、少し痛みを覚える

「色々とすまなかったな・・・・」
「なにが?」まだ、涙が乾いていないかごめの瞳に吸い込まれ
犬夜叉はそっと唇で涙を拭った

「っ・・・なっ、なに・・・?」
「一緒に家を建てて住まねぇか・・・?」
楓の小屋で住んでいるかごめ。
犬夜叉も一緒に寝泊りする事もあるが大抵は村の大きな木の上で
眠っている事が多かった

「え・・・?ちょっとまって・・・いきなりすぎて・・・」
かごめの動揺が、面白いくらいに犬夜叉に届く
「楓の小屋は小さいし、かごめが住む家はあった方が良い
匂いのきつい薬草も無い所でなら、かごめを守り続けれる
そして・・・おれにも帰る場所が・・・出来るから。」


「かえる・・・ばしょ・・・・」
「あぁ・・・かごめの居る家がおれの帰る場所だ」

折角引きかけた涙が、脆くも再び流れ落ち
今度は犬夜叉が狼狽する
「厭だったか!?あの・・・おい・・・かごめ・・・?」
覗き込んだ犬夜叉の首に飛びつくと、かごめがわんわんと泣き出した

「もぉ、なんて口説き文句よ!ばかぁ~」
「くっ・・・口説き文句って・・・」

この男、先程弥勒と交わしていた言葉を思い出しながら話していただけ
帰る場所はかごめの家だと、結論を出したのは自分だが、
口説くつもりとかは一切思っては居なかった

だが、犬夜叉の性格を知らないかごめではない
だからこそ、こんな言葉が降って来るとは露も思わなかった。
「弥勒様に考えてもらった?」
目を真っ赤にしたまま犬夜叉に問う

「いや、帰る場所はかごめだともう決めていたから・・・
それを言えば良いとは言われたが考えて貰ってはいねぇぞ?」

もう、かごめは何度目の嬉し涙を流しただろうか
やっと告げられた思い
そして、大事に思ってくれる思い

嬉しくて・・・嬉しくて・・・・

「犬・・・夜叉ぁ・・・・っ・・・・う・・・」
優しく頭を撫でられ、かごめを包み込む腕が温かくて
ぎゅっと抱きつくと涙を衣へ押し込んだ

「3年・・・逢いたくて、狂いそうで・・・
かごめが側で笑ってくれているあの時を、思い出すしかなかった
でも、かごめが側に戻ってくれた・・・だから・・・
一緒に生涯を過ごしたいと思った。
弥勒には、家の話をしてたんだ・・・おれでも・・・・
半妖でも家を持って良いのか、判らなかったから。
村の奴らはおれを知っているし、楓が色々と世話をしてくれる
弥勒も、あそこから動かねぇみたいだからな・・・・
何があっても、かごめや村の奴ら位守れるだろう?」

すっと、かごめの身体を優しく引き離すと
目を覗き込んだ
「厭か?」
頭を左右にフルフルと振り、かごめは一度呼吸を整え
「厭じゃない・・・嬉しい・・・の・・・」と続け
待っていた回答を得られた犬夜叉はかごめの頬を手で覆った

「3年も待ったんだからな・・・・」
「たかが3年じゃない・・・・」
「あぁ、そうだな・・・・・」

唇が重なり、想いが互いに伝わるほどの深い口付けを交わした

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