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なつめっぐ 保管場所

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朔の安息

短編

朔の安息

また、月は新月を迎える
 半妖の身の、犬夜叉・・・
朔の、の晩に人間へと姿を変え行く


菜の花の香りが辺りを埋め尽くす、妖怪の血が在る時は感じていた凄まじい香りも
今では心地良い。
黄色い野の花がさわさわと風に攫われる
そんな時間でも、妖怪が襲って来やしないかと心配だけを心に膨らませると
己の胸が泣いてるのに気が付いた

『くっそ・・・』小さく呟いた
誰も聞いてる者など居ない・・・否、居た・・・・
犬夜叉の辛い夜は必ず誰かが起きていた
それもその筈、いつもの夜の襲撃に一番に反応する犬夜叉は、今では反応できない
だからこそ、その男や、仲間を守る為に、”誰か”が起きてるのだ、
だからと言って、寝ていない訳ではない、朔の日は必ず起きてる女も居るのだ
犬夜叉に心を捧げた女
犬夜叉を慈しむ女・・・そして誰よりもこの半妖を理解してる女でもある


シュラフに体を預け必ず寝入る振りだけをする・・・
彼には其れは解っていた、だが、寝ろ・・・とも言えず、寂しいから、傍にいたいから
彼は身を起こしてその場を離れる・・・・
必ず、少女は追いかけて来るのだ。
少年は木に登り、高い空を見上げる・・・・月が出ていない夜空は恐ろしかった

早く、一緒に居たいんだ・・・・心を癒してくれ
悲痛な叫びが少女を呼び寄せる
『寝れないの?』その声に少年は反応し、その姿を捉える『なんでぃかごめか・・・・』
(分かってる、お前が傍に居れば、俺は俺を保ってられる、恐怖に駆られる事はねぇ)
『何だって何よ・・・もぉ、朔の日は一人で出歩かないでよ!!』怒ったような
諭してるような少女の声は、きっと分かっていないだろう、
彼は必ず一人になる訳を
きっと少女が聞いたら、笑うだろう、”そんなことしなくても、一緒なのに”と・・・


『ねぇ?降りて来ない?ここの草、何だか気持ち良いよ』少女の声に彼は身をすっと降ろした
隣に座ると胡座をかいて、『気持ちが良いかなんてわかんねぇ・・・』と
何時もの如く呟く
『まぁたそう言う事言うんだから・・・・』と、呆れたように返してくる声が心地良いなんて
いつも怒らせてるのは、その声が聞きたいからだなんて言える訳もなかった

シンと静まり返り、耳に響く音が嫌に甲高(かんだか)い
その場で二人はそっと寄り添うだけだった・・・少年は事を起こそうと、手を肩に乗せるが
恥ずかしいらしく、引き寄せる事もしない

朔の日は己の感情が沈んでいる為か甘えたくなるのが事実
だが、好いた女に甘えさせてくれと言える訳がない
この男の、意地?いや、自己防衛なのだろうか?
少女はそっと、彼の膝に手をかけた。
ドクン
高鳴る心臓がわかる
『ほらね?』満面の笑顔が向けられた、少女の手に己の髪から拾い上げた花弁
彼女によって紡がれた会話は、少年には届かず、気が付いた時の顔の近さに己が驚く
『な、なんでぃ・・・』その言葉が悪かった・・・
『何よ聞いてなかったの?もぉ・・・いっつもそうなんだから』少女は、少年を優しいままの瞳で
一睨みした、少年は其の睨まれた目に吸い込まれそうで、目を逸らす
『あんた、桔梗の事考えてるの?目を逸らすけど・・・・』悲しい色の瞳に変わる
(こんな時でもお前は信じてくれないんだな、否、信じさせてやれねぇんだな)
少年の心に不安が過ぎる

昨夜の話だった、弥勒が彼を諭して居たのだ
『桔梗さまの事もわからんでは無いが。。。かごめ様とて不安なんだぞ?』
『わかってるよ、だが俺にどうしろって言うんだ!!!』
そう、桔梗を選び、其れでも傍に居ると言ってくれたお前が・・・
そう、少女の存在がでかくても、少女はきっと、桔梗には負けてると思ってるだろうから

『お前の気持ちを少しでも伝えれれば良いのだが』
弥勒はもう珊瑚に気持ちを少なからず伝えていた・・・
だが、前にも言ったが楽しんだり笑ったりしちゃいけねぇんだ・・・・
と心が自制する。横に座る少女に目は向けれなかったが、彼はそっと呟いた
『お前を大切に思う、惚れてるんだと・・・おもう・・・って、いねぇ・・・・。』
勢い付けて、やっと出来た告白を、聞いてると思い口を開いた・・・
姿を確認しなかった自分も悪いが、黙って消えた少女に腹が立つ
が、先ほどの、言葉を静かに思い出した「桔梗の事考えてるの?」うかつだった
その場で考え込まなければ・・・・俺が気づけば・・・・


慌てて立ち上がると、目に入る光があった
静かに風と戯れる草木、その風に誘われるように揺ら揺らと
揺らめく光は、儚い桔梗のような光
そして、強いかごめのような光・・・・

『どこだ?かごめ?おい!!』声を掛けるが返事は返ってこない

少年は探した・・・探し続けるしか、少女と会うことは叶わない
傍に居たい思いがまた、犬夜叉の心を支配し始める
『ちっ、匂いを追えねぇ』苛立つ心、きっと少女は。。。この近くで一人で泣いているか
悩んでるのに、彼は追い付けない、


『あーあ、犬夜叉のばぁか・・・もぉ、』桔梗と照らし合わされるのを人一倍嫌う少女
多分それは犬夜叉の想いが桔梗と同じにされたくないと思うのだろうか?
それとも、かごめの中の力が桔梗にまだ及ばないとでも思い馳せそう思うのか
それは本人しか分からないだろうが・・・このどちらかだと思えた

ふっと少女は目を上げる・・・・せせらぐ川が静かに蛍と戯れる水飛沫が上がると
その上がった場所に目が勝手に行くのだ
『あ、犬夜叉・・・・ほったらかしだ・・・帰らなくちゃ・・・・』
彼女は、別に少年の感情を忘れてる訳ではないが、こんな時くらい、一緒に居たいと思っていたのだ
だが、考えたのは桔梗の事だろうと推測すると居ても立ってもいれなかった
その場を迂闊に離れてしまった自分に溜息が出る
今きっと、犬夜叉は寂しい思いをしてるだろうと、急いで向かう先は犬夜叉の元
『あ・・・。』急いでいたかごめの前に、男数人に囲まれた少女がいた
<やめてください>(おいてけよ・・・男に敵う訳無いだろうが)
そんな会話がなされるのを、黙って見てられない性格だ、かごめは、

『やめなさいよ!!』と、持ち歩いた弓を持ち構えた
『ほぉ、変な服装だなぁ?お前の金目の物置いて行け』
男は鋭い眼光を放つが、犬夜叉達との戦いの方が数倍、否何十倍も怖い思いをしてる
『射るわよ・・・・その子を離しなさい!!!』
かごめの弓がキキキィと撓(しな)る
その撓った物が重力と共に、少女に手を掛けていた男の鎧を狙った
流石にかごめも、”人殺し”だけはしたくないと思うのだ



『かごめぇーーーーどこだぁ?』犬夜叉の声が聞こえた、かごめは低一杯の声で叫ぶ
『仲間が来たわよ・・・もう逃げれないわよ・・・早く離しなさいよ!!!』
犬夜叉の人間になった耳でもかごめの声は聞こえた、澄んだ通る声
『かごめぇ・・・・』ざざぁ・・・と、その場から出てきた男を見て夜盗たちが呟く
緋色の衣は多少威嚇感を感じたが、それ以外は「只のガキだな」と

犬夜叉はその言葉を聞きニヤリと微笑んだ
『只のガキかそうでないか・・・・確かめてみるか?』と、告げる
相手は人間だ、犬夜叉とて人間・・・今なら負けるかもしれないと不安が過ぎった
だが、犬夜叉とて男、ここ一番の時には妖怪だって、倒した・・・

『無理しないでよ・・・・お願いだから・・・・』
そう声をかけたが、己を恨んだ、
(何で助けに入ったんだろう?犬夜叉が朔なのを忘れてた訳じゃないのに・・・)
とかごめは自問自答していた、その時のかごめは無防備だった・・・・

背中で熱い息が首筋に掛かり、悪寒と共に振り返ると夜盗の一人がかごめを羽交い絞めにした
【きゃぁぁ】と、少し声を上げると、犬夜叉は振り返る、
当たり前のように繰り返される日常で、かごめの悲鳴だけは、避けて通れないのだ
犬夜叉の耳に届く悲鳴は、”犬夜叉助けて・・・”と、己を呼ぶ声に聞こえる

シュ・・・・
体が冷えた・・・一瞬だった、犬夜叉はかごめを羽交い絞めにしていた男の肩に
変化もしない鉄砕牙を突き立てた

ぐわぁぁぁ

声だけが木霊した山間に、一つの影・・・
良く見ると、雲母に乗った、珊瑚と弥勒だった
『かごめちゃん?無事かい???』真っ先にかごめを心配する珊瑚
弥勒は犬夜叉に応戦していた。


『かごめ?大丈夫か?』かごめの背なから声が聞こえる

『犬夜叉っ・・・・』
驚く一行、ましてや、犬夜叉とて驚いていた

『ごめんね・・・朔だって分かってたのに。。余計なことに首突っ込んで』
今抱き付かれてる意味はこれか・・・と理解した犬夜叉は、そっとかごめを己の腕に
さらに引き込んだ
『ばぁか、こんなもん、大した事ねぇーんだよ。お前が無事なら其れでいい・・・・』
優しい瞳をかごめへ向けるとそのままきゅっと抱きしめた

『弥勒珊瑚・・・・”覗かないで”二人にしてくれ』
かごめが可愛く、今の犬夜叉に縋るのは、己とて気分がいい
弱いはずの人間を縋って来る、更に弱い女・・・だが心は強い女・・・
今は腕の中にずっと収めておきたかったのだ・・・・

弥勒と珊瑚は静かにその場を離れた

『かごめ?俺は・・・強かったか?』
『うん。凄く強かった・・・ありがとう助けてくれて・・・それと、ごめんね』
犬夜叉の胸に顔を埋めたまま呟くかごめに、そっと肩を引いた、
先ほどまで暖かさを感じていた間に風がどこからともなく流れ行く
『もう時期、朔が明ける・・・でもな、朔は嫌いだがお前と過ごす朔は、嫌いじゃねぇ』
『え?嫌いじゃない?』かごめは首を傾げる、当たり前に嫌いだと言い続けた犬夜叉が
かごめと過ごす朔は、嫌いではないと言うのだ
『あぁ、お前に優しさを与えられてばかりだが、俺からだってやれる事がある』

一陣の風がひゅぅーっと音を成し、静寂が立ち込める森林での出来事は
慎ましく、儀式のように行われた

風が掻き揚げるかごめの髪を犬夜叉は抑え、前髪をそっと触れる
その仕草にかごめとて心臓が大人しい訳がなかった
そんなかごめを解ってるのか解らないのか・・・犬夜叉は一連の動きをする
かごめも、そんな動きにくすぐったさを感じ首を少しだけ肩と寄せあう
『くすぐったいか?』優しい声だった、今までに聞いたことがないように思える声に
かごめの声も静かに変わり行く
『ん・・・少し・・・でも気持ちいいよ。暖かいよ。犬夜叉』
そっと撫でられる頬
密着はしていた事もあるが犬夜叉がかごめを正面切って”触れる”という事が無かっただけに
かごめの心がこの先を期待する
犬夜叉の瞳がかごめを捕らえたまま離さないのだ
だが、日は明るさを増して行く

黒い髪がまだ靡いている
かごめは、待ちきれなかったかのようにそっと手を犬夜叉の首へ回した
『なぁ?俺は、お前を・・・守って行きたい・・・いいか?』
かごめは声には出せず、顔で答えた・・・・微笑めば伝わるから
『かごめ・・・』
犬夜叉はかごめの頬をそっと触ると、そのしなやかな動きが首へ伸びる
今は爪がない・・・だからこそ出来る愛撫・・・
首筋をそっと触るとかごめが以外にも声を抑えきれなくて、犬夜叉へ向けてしまったのだ
『はぁっ・・・・ん・・・』
どくんと心音がした気がした、犬夜叉はその、かごめの淫らになりそうでならない顔が
己の心を沸き立てさせるのに気が付くと、指は以外にもかごめの体をなぞりたいと
己の意思以外で動き出す
『やっべぇ・・・とまんねぇ・・・』その声に、かごめは身を離した・・・
真っ赤になりながら、『あ、ご・・・ごめん・・・なんか、こ、声出ちゃった・・・あ、あは』
しどろもどろと赤い顔のかごめが言えば自ずと冷静を取り戻した
『来いよ・・・』とだけ声にすると、すんなりかごめは犬夜叉の腕に収まった
以外ではあるが、これがかごめの常日頃言う、”むーど”なのだろう
『口付け。するぞ・・・』かごめは、その言葉に驚いて犬夜叉を見た
何時もと変わらない顔付きではあるが、瞳だけは潤んでいた
『な、言わなくても・・・良いのに・・・』かごめは赤いまま下を向いた
『下向いたらできねぇよ・・・』犬夜叉の声に
(自分で私の顔上げてよ・・・恥ずかしいのに・・・・)
と心で呟く早鐘の心音は、とめどなく鳴り続けるかごめではあったが、意を決してクイッと顔を
上に向け、犬夜叉を見据える


『こ、こう言う時は、男の子が顔を上げるものなのよ・・・』と横を向き軽くレクチャーを施した
『わかってらぃ・・・』と、恥ずかしそうな声が聞こえかごめは犬夜叉を見ようとした
が、かごめの顎先に指が辿り付いていたのだ


どきん
 どきん
どくん
重なる唇は意外に暖かかった
甘い香りがしてくるのは気のせいなのか?それとも己が酔っているのか?
御互いに同じ事を考える
思考が停止しそうなほど、まった口付けは優しく
牙のない今でしか出来ない、そう言わんばかりに、舌先をかごめへ向けた
『ん・・・ちょ・・・』かごめは、驚いた、それはそうであろう、唇が触れるだけの口付けすら
”今”覚えたのだ、未知の領域に踏み込むのを躊躇(ためら)うのも無理はない

『これで、止めるから・・・もう少し感じさせてくれお前の暖かさを』
そう言うと返事も聞かぬ間に舌先はかごめの唇をそっと割った


・・・・っつ・・・・・・ん・・・・・っはぁ・・・・・
息が上がるのに   心は求め
声が出せないのに   思いは伝わる


舌先の動きが激しさを増した
かごめの唇が擦れて赤くなり行くが・・・・朔は、時間をくれない
傷付けたくないから・・・そう思う犬夜叉の心使いなのだろうか?



『っつぅ・・・』
その声で我に返り、唇を離した・・・・
『わ、わりぃ・・・夢中になっちまった・・・・』恥ずかしそうに下を向く犬夜叉
かごめは、少しの痛みを唇に感じたのだ、その場所は・・・・犬夜叉で言う牙の位置
そっと触れると、ぬるっとした感覚があり指を見る

『あ・・・血だ・・・』と呟くと、犬夜叉はマジマジと見る
唇が切れて血が滴っていた
犬夜叉はその血をみて『すまねぇ・・・』と、悪く思ったかのように言うと
そっと、唇を舐める
『な、なにすんの!!』明るい、そう、もう顔色さえわかるし、どんな行動をしてるかすら解る状況で
かごめは唇を舐められてしまった・・・驚きと、嬉しさとあっただろうが、驚きのほうが優先した

『なんでぃ、さっきまでしがみ付いてたくせに・・・・』と、今回は悪態所では済まなそうだ
『な、な・・・何いってんのよぉ・・・・』


おすわり!おすわり!!おすわりぃぃぃぃぃぃ!!!!!


『もう少し女心を理解しないとだめだな・・・あいつは』
『覗くなって言われてるのに。。。法師様こそ、犬夜叉の怒りを買うよ?』
『あそこでおすわり食らってるので・・・しばらくは動けまい』
『かごめちゃんの怒りは?』
『え?かごめ様の怒り?』

がさがさ・・・・
見ていた木の周りに生えそろった草が揺れる

『みーろーーーくーーーさまぁ~~~~~~』かごめの形相に珊瑚の背中に隠れる
『い、今着たばかりです・・・口付けは、見てません』



かごめの手によって・・・・葬られましたとさ
(いや、生きてるけど・・・・)


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