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≪ 朔の安息 | | HOME | | 思い ≫ |
短編
リバース
天気が良かった・・・はず・・・
犬夜叉と薬草を摘みに来たかごめが、空を仰いで『綺麗な空』と呟いた記憶はある
が、
何故今は・・・こんな状態なのだろう?
『ちょっと、だから・・・やめてってば・・・』かごめは怒ってるようだ
犬夜叉は『るせーな・・・女言葉使うな!!』と、怒ってる
が、何かがおかしい・・・・
降りしきってくる雨の中自転車を漕いで楓の村に向うかごめ
その横を水分を含んだ服を靡かせたままの、犬夜叉が居た
先ほどまでの綺麗な空には打って変わって、今では湿気をたっぷりと垂れ流してる雲
かごめと犬夜叉は急いで楓の家へ向う途中、
雨は本降りになってきた・・・
『急げ』犬夜叉が言う急ぎたいのは山々だったが、向かい風で自転車を思うように動かせない
つい目が逸れた時、
『かごめあぶねー』目の前に犬夜叉が飛び出した・・・
慌ててブレーキを掛けるが、そんな簡単に止まるわけが無かった
ドン・・・カラカラカラ
自転車の空回りしたホイルの音と、草木が雨に打たれる音が響き渡った
『大丈夫か?かごめ・・・??』犬夜叉は、目の前に居る人間に驚いた
『え?わたし?』指を指す先は・・・犬夜叉のはずなのに
自分が居る・・・『『なんだぁ?どうした?の?』』二人同時に驚いた
犬夜叉が・・・かごめで、
かごめが犬夜叉?
『・・・。』困った・・・
そうだろう御互い入れ替わってしまったのだから
『どうしよう?』泣きそうになるかごめ・・が、しかし!
結果的に弱々しく泣きそうになってるのは”犬夜叉”になってしまう
『あ”~泣くな・・・』困ったように胡座をかいて、座った
『だめぇーーーーー(怒』かなりご立腹
それもそのはず・・・淫らに開かれた足は、かごめの太ももまで見せるくらいの
『あ・・・すまねー』謝るしかないのだった
『どうするよ?』『わかんないわよ・・・』『一応、皆に話すか?』『だって・・・恥かしいじゃない』
こんな会話がなされていたが、結局は暫らくは様子見で、内緒にすると言う事になった
『犬夜叉・・・遅かったな・・・』弥勒の言葉に反応したのはかごめだった
『あぁ・・・こけちまった・・・』それ以外の言葉が見当たらなかったが、かごめの口から出た言葉
『あ、かごめちゃん、転んだの?』珊瑚はかごめを心配して、手とか足とかを触って確認した
(珊瑚の奴・・・こんなにかごめに触ってるのか)小さな嫉妬・・・
嫉妬と言うか・・・羨ましい方が大きいだろう
『大丈夫・・・』そう言い残すとかごめは奥へ引っ込んだ・・・
呆然と立ち尽くすかごめ・・・いや、犬夜叉
『さて・・・かごめ様の様子が変です・・・お前何かしたのか?』と、鋭い目で睨んできた
『へ?』としか言えなかった・・・普段の犬夜叉と弥勒の会話なんてほとんど聞いていないし
なんて答えていいかも分からない・・・(どうしよう)
その思いだけが募る
『なんでもねー』犬夜叉の今は口癖みたいな言葉だった・・・その言葉を発して、かごめの引っ込んだ奥へ向った
『どうしよう・・・ねぇ?話そうよ・・・』かごめ・・・、いや、犬夜叉がかごめに近づく
『あ”~~~犬夜叉がかごめをおそっとる~~~~』七宝の声にビクっと身体を振るわせた
『やっぱり何か有りましたね・・・』弥勒が入って来る・・・もうどうにでもなれ!!
そう、開き直るしかなかった・・・
『違う、かごめが調子わりーって言うから、様子見てただけだ。。。気にすんな・・・ね?かごめ!!』
何かがおかしいが、どうにか切り抜けた・・・
かごめは布団で寝るが道理・・・
犬夜叉は戸の側で寝るが道理・・・が、
(あったけーなぁ~~かごめの匂いだ・・・でも、あいつ・・・寒くねーかなあ・・・)そっと
戸を開けると犬夜叉が眠れないように空を眺めていた
(やっぱり寝てねーじゃねーか・・・)そのまま立ち上がると、犬夜叉の側まで行った
『おい・・・さみーのか?』犬夜叉にかごめが問う
『いやね・・・そのぉ・・・・』じれったいくらいに言わない犬夜叉
『んだよ?』不機嫌そうにのぞくかごめ
((トイレ行きたいんだけど・・・))囁くように話した
『・・・・・・・・・。』
『やっぱ・・・我慢?』犬夜叉が聞いてきた
『・・・・。』
『ねぇ?どうすればいいの?わかんないよ~~~』
かごめは意を決したように、『俺が・・・やるよ・・・』と言った
『だ・・・だめぇーーー恥かしいし・・・だって。。。音聞こえるし・・・見えるし・・・』
かたくなに拒否する犬夜叉に、かごめはどうした物かと考えていた・・・
実際の身体は犬夜叉自身・・・でも中身はかごめ・・・
結局はトイレと言う物は・・・1人でするものだし・・・『わかった・・・やってみる』
犬夜叉は意を決した・・・『だって我慢できないもん・・・』
『間違っても!!あ・・いや・・・なんでもねーよ』かごめは真っ赤になった
『でさぁ?これって脱ぎ方・・・わかんない・・・』指は袴に向かっていた
『だぁーーーーどうすれって言うんだよ』かごめは半切れ状態
犬夜叉はそっぽを向いた『良いわよ・・・自分で考える』
何とも情けない格好だ・・・犬夜叉がかごめに袴を下げられている・・・
(で、こうする・・・でだなぁ~~~こうだろう?で、・・・・。後は自分でやれ)
困ったかごめ・・・結局は自分の一部をさらけ出さざる終えないのだ・・・
恥かしいのか、何なのか・・・取り合えず言葉を放つ『終わったら呼べ』
犬夜叉は、ドキドキしながら用を足した・・・
汗がびっちりで、身体が気持ち悪かった・・・・
『ごめんね・・・終わったよ』すまなそうな顔をした犬夜叉が草叢から出て来た
『大丈夫だったか?』かごめは、そのまま犬夜叉を抱きしめた
『女の方が・・・辛いよな・・・すまねーな』と、謝った
(こんなにでかかったんだ。。。俺って・・・かごめもこう言う感じだったのかなぁ?)抱き締めた
手は犬夜叉をすっぽり包む予定だったが・・・手が届いてない・・・。と言うか足りない
何か窮屈なものに詰め込まれた感覚が襲う
(わぁ、私が小さい・・・凄いなぁ~ある意味凄い!!)
結局二人は、そのまま川に向った
『水浴び・・・してもいい?』かごめに聞いた
『良いけどよ・・・裸になんのか?』と聞かれ、素直に頷く犬夜叉
『ねぇ?あんたが洗って・・・私目隠しするから』そう言うと、かごめの胸のスカーフをシュルっと
犬夜叉が取って其れを目に巻きつけた
『はい・・・お願い・・・終わったら私も洗うからね・・・。』その言葉に息を呑んだ
『俺もかよ?』と聞くと、『当たり前じゃない・・・女の子はデリケートなの』
『でりけーとって?なんだ???』かごめが聞くが、溜息で終わらせてしまった
皮の音が妙に響きやがる・・・)犬夜叉自身が自分の身体を、洗うのだ・・・
おかしいはずは無い・・・が、傍から見れば、やっぱりおかしい・・・
犬夜叉は、かごめの手が自分の身体を這うように脱がしていくのに気が付いて、ドキッとした
中心に何かが集まる・・・そんな感じを覚えた
『ねぇ?なんだか変なの?下半身が熱い・・・なんでぇ?』かごめは目に止まるモノを見て、
『あ・・っと・・・ん~気にすんな・・・』それしか言わなかった・・・
不満そうなかごめに何を言えよう・・・立ってるなんて・・・言えない
『さて、洗い終わった見たいだし・・・次行きますか・・』
のほほんと、かごめが真っ赤になってるのも、目隠しで隠れてて、
犬夜叉は話した・・・・『次は犬夜叉だよ・・・』目隠しを取る犬夜叉
そのスカーフをかごめの目に付けた・・・
『脱がせるよ・・・良い?』かごめは真っ赤になりながらコクンと頷いた
リバース
サラサラと流れる川の音が木霊する
『ねぇ?さっき・・・ごめん・・』
犬夜叉が不意に謝った・・・
『気にすんな・・・仕方ねーだろうが』かごめは、一枚一枚服を脱がされながら、
諦めてる表情で、呟いた
体を洗い終わった二人は、目隠しを外し、その場に座り込んだ
『どうしちまったんだろうな・・・俺は・・・このままじゃ』
犬夜叉は何かを言おうとしたが、言葉が止まった
『私も、皆に迷惑かけてるけど・・御互いの心を戻さなくっちゃね』
犬夜叉は下を向きながら、細く微笑んだ
『弥勒様と珊瑚ちゃんに言おう』犬夜叉は立ち上がった
『あぁ、このまま妖怪に襲われでもしたら・・・ひとたまりもねーからな』
(かごめを守れねーじゃねーか・・・くっそ!)
部屋へ戻ると、皆はまだ寝息を立てていた
『こっち来いよ・・・一緒に寝るぞ』かごめは、布団を片側だけ開くと、
犬夜叉を誘い込んだ・・・・
(暖かいね・・・)犬夜叉はかごめの身体にぴったりくっ付いた
(おめーがあったけーんだろう?)暖かい温もりに、二人は眠りに落ちた
『うぉぉぉぉぉぉぉ大変じゃァァァァァァ』七宝が奇怪な声を上げて、珊瑚のもとに向った
その声に目覚めて、ふと戸を見ると・・・
皆の眼差しが痛かった・・・
弥勒と珊瑚は、凄い形相で犬夜叉を睨んでいた・・・
睨まれた先の犬夜叉は・・・ご機嫌そうに布団に包まれてまだ目を開けなかった
『珍しいねぇ~犬夜叉がこーーーんな事するなんて!!』少し殺気の篭った珊瑚の声に
『訳を聴いてくれ!!』と、かごめが言った・・・
『襲われなかったかい?』珊瑚の優しい瞳がかごめを見据える
『ちょ・・・待てって・・・俺は・・・犬夜叉・・・寝てんのが、かごめだ』
意を決したように言うが・・・『なーにいっとんじゃ?かごめ?熱でもあるのか???』七宝は
その後、しっかりとかごめの拳骨を受けていた
『てめーら、いいか、本当だって・・・俺とかごめは・・・』と、事の成り行きを話した
『ん・・・あ・・・みんなおはよぅ!』犬夜叉がムクっと起きて、何事もないように話し出した
『珊瑚ちゃん・・・朝ご飯・・・あ・・・』そう、やっと気が付いたのだ・・・自分は犬夜叉だってことを
『え?じゃー本当に???』珊瑚は命一杯顔を犬夜叉に近づけた
『あ・・・え??話したの?犬夜叉??』布団の上で黙って座り込んでるかごめに問い掛けた
『一緒に寝たのは・・・・戻ると思ったから・・・でぃ』小さな声、
それだけが原因で一緒に寝たのではないと思ったが、弥勒はそれをあえて言わなかった
『ともかく・・・元に戻せる方法考えましょう・・・かごめ様も自分の体をこの体力バカに使われたくないでしょう?』
『てめー体力馬鹿って言うな!!』胸元を掴む手はかごめ・・・
『ん!?って・・・ってめぇ~~~』弥勒はお尻を触っていた・・・
やっぱり身体は変わらないのですね・・・・と、のほほんという・・・いつもより強めの拳骨が弥勒を襲った
みんなの一斉の溜息に弥勒はたじろいだが・・・『では、方法を考えましょう』
そうして話しが始まった
楓は、そんな風になった人を見たのは初めてだと言い、弥勒は何かを思い悩んでるような感じで、
珊瑚はしきりに犬夜叉に話し掛けていた
『でもさぁ~かごめちゃんが犬夜叉の技・・・使えるの?』珊瑚のふとした質問が、空間を凍らせた
『そうなの・・・このまま・・・襲われたら・・・私は・・・』犬夜叉が下を向くと
七宝が肩を震わせていた・・・
『七宝・・・辛いのでしょうな』弥勒が頭を撫でると
『わっはっはは・・・すまんすまん・・・ひぃひぃ・・・っく・・・くるしぃひぃっはっはっはっは』
なにやら笑い転げていた・・・
『だってな・・犬夜叉が女言葉つかっとるんじゃ・・・ひっひっひっひ』
かごめの頭に血管が浮いた気がした・・・・
ごちーーーーーーん『きゅぅーーーー』
七宝はかごめに拳骨されて、またまた延びたが・・・皆はその言葉に確かに!と言う思いが有った為か、
弥勒珊瑚七宝楓・・・皆揃って肩を震わす
『てめーら覚えとけよ!!行くぞ・・・かごめ』そう言うと、かごめは犬夜叉の手を引いた
『何処行くのよ・・・』犬夜叉が聞くと、『笑いもんになりたくねーんだ』そう言って、井戸へ向った
『さてどうしたものか・・・』弥勒はさっきまでは笑っていたものの、実現を考えると、怖かった
『ねぇ?いつも爪で攻撃するじゃない?あれってどうやるの??』犬夜叉がかごめに問い掛けた
『あー?んでそんな事・・・まさかお前・・・』かごめは犬夜叉の肩を両手でつかむと
『やめろ・・・下手な事すんな・・・な?お前は妖怪になんかなれねーんだよ・・・』
犬夜叉は、かごめに向かって告げた
『じゃーこれは?』と、スラっと鞘から鉄砕牙を抜いた
一瞬にして変化した・・・『ね・・・昨日試したら、ちゃんと変化するのよ・・・重いけど・・・。』
笑いながら言う犬夜叉に向って更に怒鳴った、
『死ぬかもしんねーんだぞ・・・無理すんな・・・な?解ってくれよかごめ・・・』
犬夜叉の必死な叫びに耳を取られた・・・
(こいつ・・・私に守られたくないんだ・・・全く・・・意地っ張り)
『ねぇ、聞いて犬夜叉・・・朔の日、貴方は隠れるでしょ?それと一緒で私の身体は、朔の日みたいなものなの』
『小さな傷でも血が出るし、治りだって遅い・・・ね?犬夜叉がこのまま飛び出せば・・・』
『私に帰る場所がなくなるの・・・魂だけが取り残されちゃう・・・』
かごめは考えてる顔をして、そっぽを向いた
『わーってる・・・俺はかごめを守る・・・この体を』自分の体をキュっと抱き締めた
それを見ていた犬夜叉は自分が抱かれてる錯覚に陥った
『犬夜叉・・・分かってくれとは言わないわ・・・でもね
私自身を守る為にも必要なの・・・絶対に私に向かってくる量が多くなるはず・・・
だって、妖怪だしね、それに、弥勒様や珊瑚ちゃんだって、二人同時に守るって事できると思う?
こう言う機会だから言うけど・・・私は守られてるだけじゃ・・・やなの。
皆で乗り越えたいのよ
分かってくれる?犬夜叉・・・。』
暫らくの沈黙・・・
森がざわめく・・・
『そこの木・・・爪で裂いて見ろ・・・』かごめは意を決したように言い放った
『爪で?』犬夜叉は自分の手を見つめ、ふぅ吐息をはいた
かごめが犬夜叉の手を取り、『ここだ・・・折れる事はねーから・・・』と
犬夜叉は言われるとすぐ立ち上がった
『この爪で・・・やってみる』
木を爪で切りつけようと思うが・・・爪が剥がれた時の痛さを思い出し、力が十分に掛けれなかった
『力抜いてやってどうするんだよ・・・しっかりやれ!!』
かごめの激が飛ぶ
『はぁはぁはぁ・・・・っつ』何度も切り裂いたが・・・裂けるまでは行っても、大きい傷らしいものは付いてなかった
『やめるか?』冷たい声だった・・・何に怒ってるかなんてかごめでも十分わかった
力を入れろと言うのに、全く入らない自分が不甲斐なかった
だが、かごめの中の犬夜叉は怒っては居なかった・・・
ただ、自分(犬夜叉)を守ろうとする心
仲間を大切に思う心・・・
それ全てがさっきの言葉に込められてたのに気が付いたからだった
『そんくらいにしとけ・・・明日は朝一でやるぞ・・・』そう言うと、かごめは犬夜叉に背を向けた
『うん。おなか減ったなぁ~~~』と、かごめの腕に捕まり、歩いた
なんか・・・変だね(クスクス)かごめは思った、大切なこの体も、傷付けさせない・・・と
夜の帳が下りてきて、
闇が全てを包む頃・・・
ザシャ・・・
ハァハァ・・・・っく
ズバッ・・・メキメキ・・・
ハァハァ・・・
(もう・・・何なのよ、あいつの力が・・・私には出せないの?)
かごめは、井戸の近くで、犬夜叉から教えられた技を習得しようと
ただ、必死に練習していた
仲間を傷付けないように・・・
犬夜叉自身を守るように・・・
そしてかごめの身体を守るように
『ん?かごめ?いねーのか?』あたりは静まり返っていた・・・
『かごめ様は・・どこかに出掛けたのですか?』弥勒が目を覚ましかごめに聞いた
『しらねーよ・・・さっきまでは居たのに』かごめは立ち上がると、外へ出た
(しゃーねー探すか・・・でもかごめの身体で・・・っく・・・弓でも持っていくか)
かごめは、側に有った弓を持ち、探しに出た
シャン・・・しゃり・・・
『なんでい?弥勒』弥勒は、さっきまでと打って変わって、目をしっかり見開き、
かごめの背後に付いた『私も一緒に行きます・・・万が一は起ってからでは遅いのです』
弥勒の話しも一理有ると思い、無言で先刻訓練していた林へ足を踏み入れた
『居ましたよ・・・』弥勒が指を指す
かごめはふっとその方向に目を向けると
汗だくで、火鼠の衣は、脱ぎ捨てて、ただ、ただ木に立ち向かう犬夜叉が居た
(あいつ・・・・まだやってたのか)
練習を終えて、家へ戻り、布団に入ると、慣れない身体のお陰で、すぐに眠りに付いた
それを見計らって、訓練に出たのだろう・・・
『かご・・・『お待ちなさい』弥勒が止めた・・・
『くっそぉーーーーー』その声にかごめは目を見張った・・・
『なんでよ・・・出来ないじゃない・・・強くならなきゃ・・・誰も守れない!!』
犬夜叉の必死な叫び・・・地面に頭を擦りつけ、泣いてるのかと思うほどの悲痛な叫び
(犬夜叉も、きっと、同じ思いで強くなりたいって・・・そう言い続けてるんだ・・・)
そして又立ち上がり、犬夜叉はまた、木に向かって飛び出した・・・
『弥勒・・・もう、止めていいか?あいつ、限界だぞ・・・・』
かごめは、弥勒が(そうですね)と、呟いたと共に立ち上がり、犬夜叉の元へ向った
ふと、目を上げるとかごめと弥勒が立っていた。少し起ったような目を見て
『あ・・・犬夜叉・弥勒様・・ごめん・・・心配掛けちゃった?今帰る・・・』
犬夜叉はフラフラと立ち上がると、火鼠の衣を持ち上げ、だるそうに、前進した
『夜中は危険です・・・いくら身体は犬夜叉と言えど・・・です!分かってください』
弥勒が優しく言うと、『すいません』と、下を向いたままトボトボと歩きだした
少し進むとかごめが犬夜叉に寄り添うようにやって来た
『爪の立て方が違うんだ・・・斜めじゃなく、縦だ・・・明日又やるぞ・・・』
かごめは犬夜叉の肩を抱き、そう告げると、『うん』と、それだけ答えると、小屋へ入り
布団に潜り込み、すぐに眠った
『・・・。前と同じ衝撃を与えると戻るとか?』弥勒はぼそっと呟く
『それは最初にやってみたがダメだった』かごめは弥勒の横に座り肩を落としていた
この一日でわかったことがあった
俺が無茶をすると、心がこんなに不安になる事、
かごめにとっての俺は強く、皆にとっての俺も、強いという事
だが、無理はさせたくはない・・・と言うこと
かごめの目線がこの高さという他愛もないことまで新鮮だった
皆が寝静まり、朝靄が掛かる頃
『妖怪?』犬夜叉は向くっと起きた
誰も気が付いていないらしい・・・でも、妖怪の匂い・・・
(そうだ!犬夜叉の鼻・・・?でも違ったら・・・わかんない)犬夜叉は
外へ飛び出した
そこで目にしたのは・・・死魂虫・・・・『ききょう・・・だ』
何故かは解らなかった・・・ただ、会いたくなった・・・
犬夜叉の頭が反応してるんだろう・・・気が付くと、桔梗の前に立ってる自分が居た
『ききょ・・・う・・・』手を差し伸べると、桔梗は案外簡単に身体に抱きついてきた
『なぜ、逢いにくる・・・』桔梗は腕の力をこめて抱きついてくる
(身体が・・・言う事聞かない・・・犬夜叉・・・違うのに・・・)
色んな思いが張り巡らされる
『まだ、一緒に逝く気にはならぬのか?』桔梗の甘える目・・・
(苦しい・・・)
『何か言ったらどうだ?犬夜叉・・・』桔梗の目は優しく、”かごめ”には絶対見せない目
『ごめん・・・違うの・・・』桔梗はその言葉に驚いたように身を引いた
『お前・・・かご・・め?』一気に桔梗の目が、いつもの目に戻った
『ごめんね・・・なんだか入れ替わっちゃって・・・』犬夜叉は申し訳なさそうな顔で桔梗を見た
『そんな犬夜叉は見たくない・・・帰れ・・・なんで来たのだ!!早く帰れ!!』
怒られてる・・・多分・・・抱きついたのに抱き返した自分が悪いんだ・・・でも、でも
『さっきのは、身体が勝手に動いたの・・・犬夜叉の心だから・・・ごめんね』
そう言い残し、犬夜叉は背を向けた
『かごめーーー』かごめは必死に探した、見つけれない自分に腹が立った
『かごめさまぁーーー』皆で探していた
『ねぇ?あれ・・・』珊瑚の指の先には・・・桔梗の死魂虫
『行かない方がいい・・・』弥勒が言った
『なんでだよ・・・』かごめは反論する
『大丈夫・・・すぐ帰ってくるから・・・』珊瑚もそう言う・・・
(まるで俺が桔梗に会いに行ってるようじゃねーか・・・・)
ズキン・・・・ドックンドックン・・・心臓が高鳴る
何だこの気持ちは?と、不思議に思う犬夜叉
かごめは川原に立った
水面を見つめると、自分の顔が浮かんだ・・・(俺?いや、俺の顔は今はかごめだ・・・)
不快な変調・・・涙が出てくるのが解った(何だってんだよ・・・)
不意に後ろから声がした
『かごめちゃん・・・犬夜叉はきっと帰ってくる・・・』(何だよそれ)
『ねぇ?悲しいなら・・・もっと声をだしなよ・・・受け止めるからさ』(珊瑚・・・)
涙はまだ止まらない・・・別に俺が泣いてるわけでもないのに、胸が苦しい
押し潰されそうな想い・・・・(俺が、桔梗と逢う事で、かごめはこんなに脆くなるのか?)
『ねぇ?犬夜叉聞こえてる?かごめちゃん・・・いっつもこうなんだよ』(え?)
『私達に黙って1人で泣くの・・・そして、又笑顔に戻る・・・いっつも』(いっつも?)
『あんたが桔梗とかごめちゃん選べないの解るけど・・・でも、皆辛いんだよ』(珊瑚も辛いのか?)
『私や、法師様は、ただ黙って見てるだけ、こう言う時のかごめちゃんは誰も受け付けないの』
(誰も受け付けない・・・のか?)
『話はそれだけ・・あんたに、1人に決めろとは言わない・・・ただ、もう少し考えて』
珊瑚はそう言うと、小屋へ入って行った
(何を考えろって言うんだ・・・かごめも、桔梗も大事なのは・・・罪なのか?)
<そうだ、罪だ・・・1人に決めても、お前の心は揺れる>
(分かってる・・・桔梗を選んだ俺が、かごめをここに残したのだって、罪)
<そうだ。。。罪は深い>
(でも、互いに棘の道を歩くのは・・・きっと、かごめだと思う)
<その棘の道に連れて行くことも・・・罪>
<<私の居場所は何処?>>
不意に頭を掠めたかごめの声・・・(なんだ?ここじゃねーか・・・)
<<私は、結ばれなくても・・・いい・・犬夜叉が・・・笑ってくれるなら>>
(かごめ・・・・)
『おーい・・・ごめんねぇ~』不意に犬夜叉の声が響いた
『何処行ってたのさ・・・犬夜叉心配してたよ』犬夜叉が振り返ると・・・
満開の笑顔で、待っていた・・・・(何故俺は・・・笑ってるんだ?心がまだ苦しいってのに)
『ただいま・・・犬夜叉!!』犬夜叉はかごめの顔の前でにっこり笑った
ドキン・・・(あ・・自分に何故ときめいてるんだ?をぃをぃ・・・俺は自分が好きなのか??)
『なによ?なんかあったの?』(あくまでも、隠すのか?桔梗と会った事・・・)
『おい・・・よく帰ってきたな・・・』それ以外言葉に出来なかった・・・
『なによそれぇーーーーもぅ!』そう言うと、犬夜叉はかごめの手を引いた
『お、おい?』『練習~~~いこぉ~~~~お~~~ぉ!!』1人ではしゃぐ犬夜叉
かごめは(ふぅ)と、溜息をつくと、練習をする場所へ向った
(かごめ・・・すまなかった・・・俺は、どう償えば良いかわかんねーけど・・・)
『今は、側に居るからな』
『うん』
二人は手を離さないまま、練習に向った
リバース
『何やってんだ、違うって言ってんだろうが!』
怒るかごめ、いつもの犬夜叉ならば、きっと怒ってるだろう
練習をしていたその時だった・・・
暗雲が立ち込め、犬夜叉の鼻に、届く香り
『犬夜叉・・・来た!隠れて』
『あぁ、感じる・・・だが、逃げる訳にはいかねーよ』
そう、かごめを残して、消えるなんてできなかった
足音がもうすぐ届く・・・
かちゃ・・・
犬夜叉は鉄砕牙に手を掛けた・・・
『ここは、私がやる・・・』犬夜叉はその手を震わせながら言う
『来たぞ・・・かごめ』目の前に居る巨大な生き物
よだれを垂らし、美味しい物を見るような顔
『やっつける!!』犬夜叉は”散魂鉄爪”を、放つ
まだまだ弱いが、相手もそれほど強くはなかった
『まだだ・・・』犬夜叉は次々と技を繰り出す
『かごめーーー無理すんなぁ~』かごめの声に反応する妖怪
『うわぁ~~~っく』目の前に降り立ち、かごめの首に爪が食い込んでる
犬夜叉はそれを助けるべく飛び上がり、腕を鉄砕牙で、切りつけ
引き離した
『あんたむかつく!!えい!!』
無意識に斬り付けた刀から、風が沸き起こる
『な・・・風の傷・・・・あいついつの間に・・・』妖怪の手から
開放されたかごめが言う・・・だが、喉にはひりひりと残る跡
犬夜叉は少し遠めで戦っている
弓を・・・かごめが弓を探し出し、その弓を構えた瞬間
『きゃぁぁぁ』犬夜叉の首をギリギリと締めている妖怪を見た
『待ってろ、かごめ』かごめは、弓で狙いを定めた
『くっそ・・・定まらねー・・・』かごめは、狙ってるが
ナカナカ指から放つことが出来なかった
その様子に妖怪は、犬夜叉をかごめに向けて投げつけた
『うわぁ~~~~』二人でかなり飛ばされ、
怪我を負った妖怪は消えていた
『っつ・・・っく』犬夜叉が起き上がると、目の前に倒れてる者が誰かわかった
『か・・・・ご・・・め?戻ったのか?』そう、御互いの元に戻っていた
『ゴホゴホ・・・・』苦しい顔を向け『良かったね』
それだけ呟くと、気を失った
『かごめ様・・・・犬夜叉が、倒れたのですか?』
犬夜叉はかごめを抱き帰ってきた所を、弥勒が見つけて側による
『あぁ、戻ったぞ・・・』
それだけ言うと、かごめを楓の家に寝かせた
自分も魂の疲労からか、眠気に襲われて
(ん~・・・あ、そうだ、戦ってたんだっけ)
急に起き上がるが、何かが邪魔して起き上がるのを止められた
ふっと目を落とすと、スヤスヤ眠る犬夜叉の顔
『おはよう、それとお帰りかごめちゃん』そう言いながら
珊瑚が部屋に入ってきた
とにかくこの状況を、何とかしたい・・・が、抱き締めた手は
思った以上に強く・・・
赤くなるだけで終わったしまった
(無駄な抵抗って奴よね・・・はぁ)
『二人はまだ寝てるのですか?』弥勒が顔を出した
『心配掛けてゴメンネ・・・どうにか、戻ったみたい』
犬夜叉はまだ眠っているが、身体は離してもらえなかった
『これはこれは・・・羨ましい』その言葉が言い終わる前に
珊瑚の飛来骨が飛んだ
『幸せそうに寝ておる・・・』七宝が覗き込むと、少し赤くなってる犬夜叉がいた
『かごめ、こいつ、狸寝入りだぞ』
七宝の突っ込みに、布団の中に引きずり込み『うるせい!!』
そう言いながら、布団でじゃれていた・・・・
幸せって、こんな時なのかもしれない
御互いの思いが・・・一つになったみたいだね・・・
もっと、頑張ろうね・・・
FIN
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