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なつめっぐ 保管場所

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願い

短編

願い

どんな願いならば・・・叶うのだろう?
この孤独を拭い去り、新たな道を進めるのであろうか?


ちゅんちゅんと鳥が鳴く、朝を示す声は澄み渡り先ほどまで訪れていた
闇が一気に浄化されたかのように、綺麗な空気
闇は日を恐れ、日は・・・闇を恐れる


『おはよぉ!』誰に挨拶を交わすというのか?誰も起き上がってはいない
まだ闇の気配が残る早朝、かごめは目を開いた・・・
犬夜叉が・・・また、桔梗に会いに行った・・・そんな夢を見たから
否其れはきっと言い訳・・・己の心の闇が見せる幻なのかもしれない

『すがすがしい朝だなぁ~』うーんと体を明一杯引き伸ばし
体を天へと向ける。漆黒の闇が日の光に浄化されるまでは・・・
その時間だけは、一人で居たかった
嫉妬という深く苦しい思いが残らないように、己も浄化されたかった

かさり・・・不意に背後から聞こえた木の葉を踏みしめる音
(犬夜叉・・・起きちゃったんだ・・・)
会いたくはなかった・・・己が今どんな顔をしてるか、そんなのは容易に分かった

『犬夜叉?ごめん・・・ちょっと考え事してるんだ・・・一人になりたいの』
振り向きもしないで放った言葉、犬夜叉は別に何もしてない、
只己が醜くて・・・見られたくなかった
澄み切った純粋なあの目に吸い込まれてしまったら、再び闇が襲い来るから

『あぁ』と、短く返事を返してきた犬夜叉はその場を去りはしなかった
ただ、かごめの後ろでごろりと横たわった
『何悩んでんだかしらねぇが、なんか合ったら起こせ・・・』
そう言うと犬夜叉は眠りについた・・・否
正確には、寝る素振りだけ・・・

(こんな汚い私をあんたに知られたくない・・・見せたくない)
夢に見た桔梗は綺麗で、犬夜叉はその桔梗を抱きしめていた
己には、めったにしてはくれない・・・己には・・・
(やっぱり、比べちゃう・・・・)


比べる・・・・

常に女らしさを持つ桔梗
常に平常心で居られる桔梗
常に・・・犬夜叉に愛され続ける桔梗・・・

嫉妬って・・・汚い・・・・
確かにそう思うが、嫉妬するほど相手を好きになったのは
間違いなく己なのだ・・・・
(犬夜叉を好きに成った事に後悔はしてない・・・)
自分が誇れる恋を今しているのだから・・・・。


一行のほとんどが目を覚ました・・・ざわざわと会話は紡がれているが
かごめは一向に動こうとしない、そんな姿に煮えを切らした犬夜叉が
かごめに一言呟いた・・・それは、きっと、誰にも聞こえないほどの
小さな声、そしてかごめにとっては、必要だった言葉
『無理をするな』それだけ、たった其れだけだった
その中にすべてが凝縮されてるようで、心に仕舞い込んだ


『ごはん・・・食べにいこっか?』不意に犬夜叉を誘い小屋へと向かう
(忘れよう・・・こんな夢・・・いつも乗り切ってこれたじゃない)
嫉妬心が深く・・・深くかごめを蝕んでも・・・きっと、
自分や、皆に癒される・・・だから、今は・・・忘れよう


穏やかに時は過ぎた・・・毎日見る夢は確実にかごめの心を壊している
流石に寝不足のかごめの顔色は悪く今にも倒れそうなのに
それでも、かごめは進む事を止めようとはしない・・・
奈落との戦いが近いから・・・そして、夢を忘れる為に・・・

漆黒の闇がかごめには怖かった・・・また、今日も見るであろう夢
毎日が地獄のような気までしてくる

『っは・・・だるぅー』
洗濯をしながら呟いた声は仲間達に聞き取られてしまった。ざぁぁー
と流るるせせらぎに、己のスカーフが流されてしまったのも
もう、己では気が付けないほど余裕がなくなっていた

『かごめちゃん・・・ここ何日かおかしいよね?』珊瑚が、横で薪を割る
弥勒へと問い掛けた・・・『確かにおかしいよな?』弥勒の答えでは
なく、横からひょいと現れた犬夜叉が答えた・・・
皆が変に思うほど、かごめは心身共に疲れ切ってしまっていた
その異変を探ろうと珊瑚が話し掛けても、すでに生返事しか返さない
そんなかごめに犬夜叉も煮えを切らしかける


『かごめ?』『あ・・・楓おばーちゃん・・・。』
そう、仲間の他にも、かごめの異変を察知した人が居た。楓、桔梗の
妹巫女であり、そして、今はかごめと共に妖怪と戦い村を守る
巫女・・・楓
『なにやら、お前はおかしな事になってるな?』『うん・・・』
そこまでしか答えれなかった・・・
『私の在る意味・・・がね、わからないの・・・其れしか言えないごめん』
かごめらしからぬ答え・・・陰の部分が大きく出てしまっている今の状態は
巫女にとっては致命傷でも在る
『お前達・・・次の旅はかごめを置いて行け・・・』
楓が言うが、犬夜叉は首を縦には振らなかった
が、ばたり・・・・大きな音でかごめはその場に倒れこんだ
『か!かごめ!!』犬夜叉は慌てて近寄ると、額に何かが光った
『おい!かごめ?弥勒・・・かごめが変だ!』
額から漏れ出る邪気・・・かごめの物ではない・・・そう皆が信じた
だが、間違いなく邪気はかごめのものだった・・・・

<かごめ・・お前は邪気に塗れた・・・このまま犬夜叉の元から去れ>
幻の桔梗は今もかごめの心を侵食しつづける
『桔梗が・・・悪いんじゃない・・・私が悪いの・・・。』
うわごとで囁かれた名に犬夜叉がぴくりと肩の緊張を露にする

『かごめ?』申し訳なさそうに小さな声で名を呼べど、
かごめの声は返っては来なかった


『上手く行ってるようだね・・・・神無・・・』
『わからない・・・あの人魂大きいから・・・』

邪気は簡単に生み出せる・・・呪う心や恨む心からでも十分に
だが、魂が其れを鎮めようと浄化させる・・・
神無が、静かに鏡を移動すると。見えない光が更にかごめの魂を引き抜く
誰にも気付かれないように・・・静かにかごめを蝕んだのは
ほかでもない、奈落・・・。


『何かがおかしくないですか?いつもならかごめ様も、元気になってるはずなのに・・・』
流石に4日も過ぎるとかごめの体調が気になりだす・・・
犬夜叉を筆頭に皆が一斉に討論を始めた・・・が、今だその結論が
出せずに居た・・・神無の無の力は誰も知ることが出来ない
そして、もう一つ・・・悪夢を引き出す力の根源・・・それが
かごめのすぐ近くで身を潜めている事は誰にも分からなかった

『かごめちゃん・・・』珊瑚は、旅を犬夜叉と弥勒に任せ、かごめの看病に
志願した。こんなかごめを見るのは初めてで・・・妹のようなかごめ
友達のかごめ・・・大切な仲間のかごめをほっては置けなかった
無論犬夜叉とて其れは同じ、時折持ち帰る薬草が、効かぬと分かっていても
何かしなくてはと言うかのように持ち帰る


そんなかごめが目を覚ましたのは倒れてから5日過ぎた頃だった
『楓・・・ばぁちゃん・・・私・・・』
楓がかごめの問いかけに驚いたように身を寄せ話を紡ぐ
『では?』『うん・・・確証はないけど・・・奈落・・・』

かごめは夢の中で何度も見た男・・・鬼蜘蛛・・・
その心が見せたのだろうか?神無の鏡に魂を抜かれる夢を見続けた
そして、誰かが・・・早く起きろと・・・急かしていた
かごめは其れだけ告げると深い眠りについた
珊瑚は村外れまで買い物へ出てる・・・弥勒犬夜叉は、旅で2日に一度
かごめの様子を見てはまた出掛ける・・・従って今は、楓と、かごめ
この状態から神無を探し出すのは至難だ『珊瑚だけでも・・・』楓が
すくり・・・と立ち上がると、弓を担ぎ戸口へ向かった

『わしがやるしかないな・・・』と・・・小さく呟くとかたりと
音が聞こえ振り向く・・・『かごめ!無茶はいかん!』
楓の静止も効かずかごめはヨロヨロと戸口へ行き声を掛けた
『犬夜叉は・・・来てくれる・・・信じてるから・・・戦える』
『お前達は・・・なんて危険な繋がりなんだ・・・・』楓の口から
漏れる溜息と、そして言葉・・そんなのはすでにかごめの耳には入らなかった

魂が呼び合う
そばに来てと・・・・願う

(犬・・・夜叉・・・・来て・・・・)


思いの他神無は、すぐに見つかった。
キリキリと構える弓の先端が神無の心臓を狙った
『っは・・・った・・・魂を・・・・返して・・・。』
そんな異変を珊瑚も聞き付けやって来た『かごめちゃん!!』
だが、かごめには、神無に話し掛けるが精一杯でもう意識すら危うかった
『奈落に伝えて・・・こんなんじゃ・・・私は倒れない!』
しゅっと放たれた弓の先端が神無の鏡に吸い込まれた
『かごめ・・・魂…大きい・・・でも、死んで・・・』
前回のように農民から奪った魂が入ってなかった分かごめの魂は
吸い込まれ、弓はかごめの体を貫いた

『!!かごめちゃん!!』
珊瑚が寄って来る・・・楓が何かを叫んでる・・・神無は・・・
空へと神楽と一緒に上っていった・・・魂は戻ったはずなのに
先が見えない・・・・犬夜叉が・・・見えない・・・・

翌日、犬夜叉が胸騒ぎがすると戻ってきた・・・。
『かごめ!!』ただ、今は・・・側に居たいだけ・・・居させてやろうと
弥勒が言った・・・・・
もう、かごめは・・・・

たすからない・・・。


『かごめ?早く置きろ?奈落倒しに行くぞ?なぁ?』
まだ命は尽きてはいない・・・・
ならば、犬夜叉は。。。何を願う?


『かごめ?』『・・・。』『何故一人で・・・戦ったんだよ!!』

お前は桔梗と同じ道を辿るのか?俺が引き止めたせいで・・・おまえは
苦しむのか?俺は・・・また、守る者を・・・亡くすのか?
いやだ・・・・嫌だ!!・・・・

矢は抜かれてかごめの横へと置かれていた・・・かごめの血がべったりと
付いた矢・・・鋭い先端はかごめの血を付け・・・
かごめの命を危険にさらしている


『かごめ?聞こえるか?お前は生きて・・・くれ・・・』
ほのかにかごめが笑ったように見えてくる・・・そんな己はさぞや
惨めに見えるだろう・・・だが、どう思われても良かった
かごめが命を点すなら・・・・何だってすると心に決めていた
犬夜叉は、その場で座り込みかごめを見た
長い間眠るようなかごめ・・・・だが、まだ脈は果ててはいなかった
薬草や懇願・・・何もかもがやれることだった


『ん・・・・』『かごめ?』
『犬・・・夜叉?』『大丈夫か?』『遅かったね?』『え?』
『助けてくれて・・・ありがとう・・・。』
何故己はずっと付いていてやらなかったのかと心が痛む
『おれは・・助けてねぇ・・・お前は、神無に・・・』
その言葉を最後まで発する前にかごめに止められた
『私は・・・あんたと戦った・・・一緒に・・・・同じ場所に居なくて
も、あんたと戦ったんだよ?それに、死の淵から助けてくれたの
は、あんただった・・・。
私は思う・・・一緒に居なくても心は一緒にあると
どんな願いでも、その人が信じれば道は開けると
例えどんな苦難でも、受け入れなくては前に進めない、
桔梗と犬夜叉のように、
今、犬夜叉は桔梗を受け入れてる・・・だから、前に進んでる
そんな犬夜叉を私は受け入れてる・・・だから、信じれる
嫉妬や、恨みなんて在ったって良い、其れを勇気に変えれれば
其れだけで強くなれる
だから・・・・私は死なない・・・あんたが私を思ってくれてる限り
あんたが私を必要としてくれる限り・・・・
例え裏切られても、それでも、あんたを信じる・・・
私には其れしか出来ないから・・・・』

犬夜叉の襟元から小さな黒いものが浄化された・・・
誰も気が付かないほどの小さな玉
かごめの悪夢の根源・・・・
もう・・・悪夢は終わりを告げた


犬夜叉はかごめの手をそっと触れた『おれも・・・信じて良いか?』
『うん。』
信じる事と、疑う事は・・・実際は紙一重
信じるからこそ疑ってしまい、疑うからこそ、信じることが出来る
簡単なようで、難しい・・・・
そんな思考が絡み合いながら生きるのが人・・・
そして犬夜叉・・・彼自身も既に心は人になっている
其れをかごめが引き出し、共に歩んでいるのだ

『かごめちゃん!!』『あ・・珊瑚ちゃん・・・弥勒さま?七宝ちゃん』
皆と共に信じ合おう
信じる事が救われるとは限らなくても、それでも
同じ痛みを分かち合う仲間が居るのだから

FIN

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