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なつめっぐ 保管場所

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終焉

短編

★終焉★





漆黒の闇、一点の灯りさえないこの場所で
犬夜叉とかごめは四魂の玉の終焉を見た。
それが正しい答えだったのか
それが本当に二人にとって良かった答えなのか

誰も解らない

ただ、無情にも二人の絆は闇の中へと吸い込まれた



「犬夜叉・・・・」名を呼べば逢えるのだろうか?
否、そうではない。逢いたい想いが一層に募り、一筋の涙を
かごめは右腕で隠した


風が啼く
鬱蒼と茂った木が揺ら揺らと葉を落とし・・・・
ただただ・・・・・逢いたいと願うしか出来なかった



「かごめ・・・・かごめっ!」
目の前に現れた微笑が、忘れられる訳がなかった
三日に一度は井戸を覗き込む己に苦笑するしかない
ただ、自分だけがかごめを愛している訳ではない

残してきた現代の家族が、きっと、己の代わりに
愛しい子を守ってくれるだろうから・・・・

「夢・・・か・・・・」
手が空しく空を切るとその手を掻き抱いた
声になど出来るものか・・・呼んでしまえば、募るばかりの会いたさに
飲み込まれて狂ってしまう
逢いたい・・・逢いたい・・・・

願えば願うほど、想いは果てなく湧き出て
犬夜叉は、息を思いっ切り吐き出した


苦しいと何度思えば、自分は許されるのだろうか
何度胸を焦がせば、想いは和らいでくれるのだろうか
逢いたいと願う気持ちが、どれだけ己を苦しめてるのか

「狂っちまいそうだぜ・・・・」
切ない思いが何度も過ぎり、一日を終える
かごめは・・・おれに会うために生まれてきてくれたんだ
だから、おれも・・・・お前に会うために、生きる
かごめ・・・・かごめ・・・・・

願いは空しく胸に秘められたまま
ただ、弥勒と珊瑚の愛が、一人だった苦しみから守ってくれた
かごめが繋いだ・・・・この心を許せる人を
おれに残してくれた・・・この、優しい心を


「のぉ・・・犬夜叉は辛くないのか?」七宝が覗き込む
「あぁ」寂しいと辛いと言えたら、これほど楽な事はないのに
犬夜叉は、苦しみから逃れる為に言った訳ではない
その苦しみさえも愛しく、今はかごめを素直に大事に思えるから
だからこそ


七宝が心配をしているのも解る
楓が気に掛けてるのも、弥勒が何かを伝えたがっているのも
珊瑚が、優しく微笑んでくれるのも・・・・

そして、木々が自分を落ち着かせてくれ、空が時には強く
そして優しく自分を癒してくれる

その全てがかごめなのだ。


「愛してる・・・・なんて軽いもんじゃねぇ・・・・」
もう一度かごめを腕に掻き抱く事が叶うなら
何十年だろうと、何百年だろうと待ってやる

そして

「二度と、離さねぇ・・・・」

二人を別けたのが天命なら、それを覆す力を持とうと思えたそして、
かごめが己の腕に戻る日をただじっと待った





「かごめ~?」「ん?」
ハンバーガーショップでかごめとその友達がわいわいと会話をする
奈落との戦いで、失った時間を取り戻すほどに
時間はゆっくりと、でも確実に過ぎて行った

「今日は、遅くまで遊べる?」
「明日神社の掃除するのに早く寝ないといけないんだよね~」
井戸がいつも繋がらない・・・自分の気持ちの問題なのかと、何度も
何度も思った・・・けれど、どんなに求めても
どんなに犬夜叉を呼んでも
想いは募るだけで姿を現してはくれなかった

「あ、そう言えば彼氏最近来ないの?」何の気なしに聞かれる言葉に
胸がズキリと痛みを覚える
「最近はちょっとね・・・」
どう答えて良いかも判らないまま、かごめは瞳を伏せ
その空気の重さに、店を飛び出した

あれほど大事だった勉強も、今は邪魔すら入らない
「犬夜叉も・・・待ってくれてるかな?逢いたいと思ってくれているかな?」
パタパタと落ちる涙が、ノートに染みを作る


私が戦国時代へ呼ばれた理由・・・それは
四魂の玉を、浄化する為・・・・・
だけど、それだけではない。

2年が過ぎ、かごめは井戸を見つめる
「犬夜叉・・・もう2年も経ったよ?逢いたいね・・・・」
そう呟いて、井戸へ視線を向けても
ただの土のまま変わらなかった


犬夜叉はどうしているだろうか?
又無茶をしていないだろうか?
それを考える事は出来ても、確かめる術がない・・・・

私は、きっと、あの世界での役割を終えたんだ・・・・

そう考え、かごめは井戸を背にした
今を生きよう・・・犬夜叉を思い続けながらも。
だって・・・必ず、会いに来てくれるから
それが犬夜叉だから・・・・

かごめは、ただ、空っぽの心のままで高校生活を過ごしていた



「わんわん!」
「わんわんじゃねぇ!犬だいぬぅ!」
珊瑚の子供が段々と大きく育つ
犬夜叉は、あまり得意そうではなかったが
その子供達は、隔たりなく犬夜叉にしがみつく

「わんわーん!」「違うって言ってんだろうがぁ~」
怒鳴るわけにも行かず、がりがりと頭を掻き毟り苛立ちをそこへ向けると
子供を優しく抱き上げ木の上に上った
「といー!」「とりだ!」
指を差しキャッキャと笑う顔に、安堵の想いが募る

黄金色の瞳が遠くを見つめかごめを想う・・・・

「いにゅー・・・」「お?言えるじゃねぇか」
子供が何かを察知したのか、犬夜叉をぎゅっと抱き締めてくる
その抱擁に、切なく抱き締めたかごめを思い起こす
「いにゅ~・・・よちよち・・・・」
ぽんぽんと抱き締めた小さな手が、犬夜叉の胸を叩くと
苦笑いが零れた

ガキにあやされるほど・・・・辛い顔をしてたか・・・と
含み笑いが漏れ、珊瑚へと子供を戻し犬夜叉は今日も井戸を見やった


「くぉらっ!早く帰ってこねぇと、珊瑚のガキがでかくなっちまうぞ?
聞こえるか?かごめ・・・・・」
井戸に向かって何度も何度も話し掛けて来た
日課のようになっているその姿を弥勒が見つけて深く溜息を落とした

「犬夜叉・・・」
「あぁ、解ってる。」
何かを言おうとした弥勒の言葉を止めるには最善の言葉だった

「酒でも飲んでみますか?」
「あんな、くせぇもん飲めるかよ。」
「まぁ、お前にはそうでしたね・・・・」
犬夜叉の横に腰を掛け、弥勒が再び溜息を落とした


「お前から見た おれは、情けねぇか?」
「いや。」
「そうか・・・・」

短い会話が途切れ、犬夜叉の琥珀の瞳は未だ井戸から離れようとしない
「お前には時間がある」
「あぁ、今度は逃がさねぇよ・・・例え弥勒が死んでも、ガキどもが死んでも
おれは人ではないからな・・・・」
そこまで想っていてなんで素直にかごめに思いを伝えなかったんだろうと
弥勒は苦笑いを向けた
「お前は」「おれは」
二人同時だった、声が重なり、犬夜叉が恥ずかしそうに目を背け
「まだ、かごめに言わなくちゃならねぇことが有るから・・・」
と、続けた


伝えなくても伝わる思い
けれど、伝えなければいけない事だってある

「かごめ・・・・」そう呟いて3年目の冬を迎えた





卒業式・・・・既に3年を過ぎたこの日
自分の行く末を考えなければいけなかった
大学へは通うつもりはなかった
神社を継ぐ事も考えたが・・・でも、犬夜叉を思えば思うほど

「忘れれる訳ないじゃない・・・・」
呟いて、かごめは井戸へと向かった

想いもしなかった・・・・こんなに求める力が強かったなど
想っても居なかった・・・・犬夜叉を、記憶の奥へしまおうとするのに
その蓋は開け放たれたように、彼ばかりを思い出すのを・・・・

解っていた。

逢いたい想いが加速度を上げて行く事を


井戸の淵に手を掛け、土と成り果てた底を見つめた

犬夜叉の居ないこの世界は、寒くて苦しくて・・・・
逢いたい・・・・

犬夜叉・・・・

不意に感じる井戸の空気

背後から現れた母は自分を探していたのだと解っている
行くなと言われるだろうか?
でも・・・・

「ママ・・・私・・・・犬夜叉に逢いたい・・・・」


また、いつ閉じるかも解らない
けれど、もう・・・・
「犬夜叉を、忘れられないの」

3年の月日が思いを募らせ、戦いの為に費やした時間を
この時代で取り戻し、そして・・・・

「いってらっしゃい」
母の優しい声が響いた

急いで居たから・・・何も持たずただ、逢いたい一心で
その繋がった井戸へと飛び込んだ。

そこに見えた緋色
大きくていつも守ってくれた手がそこにはあった

「犬夜叉ごめんね・・・。待っていてくれた?」
抱き締めてくれる犬夜叉の身体は・・・やっぱり逞しくて
衣からふんわりと香る太陽の匂いに、懐かしさがこみ上げた
「ばかやろう・・・今まで何してたんだ・・・・」
その言葉だけで充分だった

待っていてくれたと、解ったから
私が来たら、すぐに来れる場所で
あなたは、待っていてくれたから


「かごめ・・・もう、離さないからな・・・覚悟しとけ」
「うん。 私ももう離れないつもりで来たの」

やんわりと、犬夜叉の手が頬に宛がわれた
瞳は真っ直ぐにかごめを見据え、逸らす事無く目を細めた
あぁ・・・・
これが幸せと言うものなのだ・・・・
互いに唇を押し付けながら想った

「会いたくて狂いそうだった」
「うん。」
狂ってしまった方がどんなに楽だったか

お互いの時間をこれから共に過ごそうと
犬夜叉は言った

桔梗に告げられた言葉を、今度は犬夜叉がかごめに言った

再び降り注いだ唇を、かごめは愛しく受け止め

二人はこの場所に生きた


「犬夜叉あぁ!」
「わーったよ・・・・うっせぇな・・・・」
いつものように、悪態を付いてはいるが
本気で煩いなど想うはずもない
愛して愛されて


今共に生きていられる事に感謝する・・・・・

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