忍者ブログ

なつめっぐ 保管場所

倉庫です。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

朧月⑧

続きです

「閏葉…もう、擬似恋愛は終わりだ」

「え?」

あれだけ熱い口付けを交わし、これだけ心に火をつけて彼は終わりだと…
言うのか?
寂しさと、息苦しさと、胸を焼く業火が暴れ出しそうになる。

そんな閏葉を今度は葵が抱き締めて口を開いた

「小説の話は全部俺の事…人を信じることも出来ずやっと信じた小金井はもう…」

「え、あ…じゃぁ、小金井社長って」

「うん、小金井章吾と健吾…あいつらが俺を人にしてくれたんだ。
そして閏葉は知らないかも知れないが…妙子も俺を知ってるんだよ」

閏葉は驚いた。

小金井の系列の人がこの店を愛用してくれてるのは
無論若女将として知ってはいたが…

まさか、そんな深い所で繋がっていただなんて。

小金井章吾は、健吾の父親。
今はもうこの世の人ではなくなっている。

健吾は今その会社を継いで居る事位しか解らなかったが
そう、葵は200年と言う時を過ごして来たのだ。

「なぜ母を?」

「健吾の、初恋の相手だったんだ」

「え?」

自分の父親は、生まれて直ぐ亡くなった…まさか、そんな!

「もしかして…その人が私の?」

「いや、違うよ。」

ドキドキと高鳴った心臓が、フッと力をなくした。
もしそうだったら、どれだけドラマ状態?だったのだが
流石にその洗礼は受けずに済んだ。

「閏葉の父親は、妙子が言う人で間違いない。健吾は片思いだったから
そして、今も健吾は妙子が好きなんだよ…」

「えええ!?」

その思いの、末を知りたくなった。
恋をする力がどんなものか
そして、大事にしたい想いがどんなものか…

そんな事も知らずに200年生きた葵は…

「閏葉、俺は死ねないし年も取らない。けれど一つだけ方法があるんだよ…」

「方法?」

きょとんとした顔で返してくる閏葉に薄く微笑んで続けた

「人と交わる事」

「っ…」

妖艶な瞳に射抜かれながら聞かされる閏葉にとってはたまったもんではない

真っ赤になってその視線から逃れるとクスッと、その閏葉の行動を笑ったのか、
これから話す事を笑ったのか…一瞬だけ微笑んで話を続けた。

「でもね、その方法が間違ってた…沢山の女をどんなに
抱いても心が満たされることは無かったんだよ」

「……。」

「でも、閏葉…」

グッともう一度顔を引き上げると今度は噛み付くように唇を重ね、舌先を吸い上げてくる

「んんっ、っふ…ん」

「閏葉…お前を欲しいと思えるんだ」

真っ赤に燃える瞳は今の自分の心情を表しているようだった…
そして…彼の言葉に驚いた。

「ふぇ?…わ…たし?」

「うん、閏葉にだけなんだこんな感情が湧いたの」

孤独な狼が…里を見つける。
そんな感覚だと、彼は笑った。

「だから、もう擬似恋愛は終わり…閏葉考えるんだ。

こんな俺を受け入れれるかどうか。

今は一時の感情かもしれない
だから、閏葉が俺を受け入れるまで待つつもりはある。
それに、何個か約束できない事もある…
戸籍が無い事。

お前と年を取って行けるかは正直わからない。

もし受け入れてくれるなら
お前の手で俺を葬ってくれて構わない」

悲しそうに微笑む彼に、何を言えば良いのか…
解らなかった。

拍手[0回]

PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]