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続き
下弦の月 最終章
全てを話した葵
それを聞いた閏葉。
そして彼を受け入れる事が出来るのか?
閏葉の思いとは…
=最終章=
下弦の月です。
「うー…」
ベットに身体を投げ出して、閏葉は唸る。
葵の告白は、あまりに重い。
まだ、軽はずみの恋愛をする事だって出来る年齢なのに
200年前の彼と、今の彼を
ひっくるめて愛していけるのだろうか?
自分の唇にそっと触れると
先ほどまで繰り返された口付けを思い起こしてしまう。
甘く、優しく激しくどこまでも深く彼は閏葉を翻弄した。
下半身がキューっと締め付けられる感覚に頬を紅くする。
「凄く…葵が好きなんだ…」
身体も彼を求めている。それは、
初めてされたあの時の一瞬で終わった軽い口付けでも解ってはいたが。
深く交われば、交わるほど抜け出せない迷宮に足を踏み入れた感じになる。
ルックスは良い
顔も良い
そんな男が、徐々に年を取っていく自分を愛し続けてくれるのだろうか?
200年恋など知らずに来た葵。
初恋の相手が閏葉なのだ。
うーっと、深く悩んでから携帯を取り出し
深呼吸してから着信履歴の一番上の電話を発信する。
「もしもし?」
「閏葉ぁ~良かったぁ~大丈夫だった?優来てたの?」
電話の相手は加奈。
自分を一番理解してくれていると思える友達。
「時間作ってもらえるかな?あって相談したい事があるの…」
彼女なら信頼が置ける。
葵の事を話しても…誰にも言わないで居てくれる。
「今から泊まりに行く!」
「え!?こんな夜更けに?」
時間は11時半を過ぎていて
終電も12時15分が最終
急がないと!と加奈は言う
「あんたの一大事だもんね?待ってて?」
「ちょ、迎えに行くよ!」
結局、加奈が来てくれると言う事になり、閏葉はパジャマだった服を着替え
駅まで迎えに出ることにした。
加奈の家は二駅先にありそんなに遠い訳でもないのだが
こんな時だからこそ早く逢いたかったのかもしれない。
「どこに行くんだ?」
玄関をそっと抜け出した先に声がして、ビクッと背中が粟立った。
「葵…ちょ、ちょっと駅まで」
「…こんな時間にか?」
「…うん」
「解った、待ってろ」
葵が、上に一枚ジャケットを羽織り
目深に帽子を被ると少し後ろを歩くから気にするなと言い、
トンと閏葉の背中を押した。
ちらりと…振り返ると彼が歩いている姿。
やっぱり、モデル体型だ!と思えるような優雅な歩行に
深い溜息も落ちる。
きっと…もてるよなぁ…
暗がりを歩いているのに安心できる。その気遣いが閏葉にとっては単純で凄く嬉しい
「ねぇ、葵一緒に行こう?」
放れて歩くのはなぜなのか?
自分を邪魔しない為に気を使ってくれているのだろう。
何だかそんな事を考えると凄く彼を愛しく思えて声を掛けた。
「良いのか?」
「だって、私の為に付いてきてるんでしょう?」
「そうだが…」
自分を思ってしてくれている事。逢う相手も聞かず離れて歩く事…
何だか胸がぽかぽかしてくる。
そんな感情が閏葉の心に芽吹くと、さっきまでは異質の人と見て取れた葵の事も
案外そうではないのかも知れないと思えるようになった
「それ…隠してるの?」
帽子の下から覗きこんだ閏葉に苦笑いを向ける
「俺を知ってる人間は、普通驚くだろうからな…」
「普通って…私が驚かなかったのがそんなに変?」
「いや、変と言うか変わってるな」
そう言うものかな~?と、ブツブツ言う閏葉に、クスッと笑って帽子を取った。
「うわぁ…凄いよ!」
帽子から零れ落ちる白は
限りなく透明で、月の光が反射するのか、
それとも艶が良いのかキラキラと光って見える。
そこから覗く紅い瞳に、閏葉は見惚れる。
「ん?」
「え、あ…や、やっぱり隠して!」
「は?…なんだよそれ」
閏葉は真っ赤になってそっぽを向いてしまった。
仕方がないと、溜息を吐きながら帽子をかぶると
もう目の前は駅。
「閏葉ぁ~!」
駅の入り口で待ってると、葵がその場から離れたとたんに
改札を抜けて加奈が駆けて来た。
「ごめんね~迎えに来させちゃって。タクシーで行こうと思ってたのに~」
「ううん、全然大丈夫だよ~それに…付き添ってくれた人も居るから」
「え!?あんた、マジで優の言うように男作ったの!?」
「ちょ、声!大きい」
「ご、ごめん…でも、そうなの?」
「ん…ちょっと違うかな…それを加奈に聞いて欲しかったの」
「解った…ちゃんと説明してくれるんだよね?」
「うん」
二人が駅を出ると、後ろから背の高い男が帽子を目深にかぶって付いてくる。
「ねぇ、あれって…」
「うん、担当の作家さん」
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