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≪ 狼と私2章⑩ | | HOME | | 狼と私2章⑫ ≫ |
レンに会いに行こう…
この手紙を無視して別れの手紙を書いた私を
責めてくれれば心が軽くなるかもしれない…
レンを闇から引き上げたい。
笑わない無表情なあなたは…私をまだ求めてくれていますか?
自宅へと戻ると、既に時間は深夜の2時を回っていた。
父の家から持ってきた手紙…
父への手紙を見て、英語を携帯で調べると
森へ帰りたいと書かれているようだった。
もう、私の元ではないんだ…?
「レン…ごめんねっ」
無くしか出来ない私を許して…
今泣けば、後は強くなる…レンが戻るまで
ちゃんと泣かないで強く居る!
だから今は…
「っ…っふ…ううっ…レン…」
声が漏れたって構わない…クロが心配そうに
私を見るから、抱きしめて一緒に泣いた。
「まだ、私の口から言ってない事が有るんだよ…レン
”貴方を愛してます”って…今度は、負けずに言うから!
だからっ…戻って来て…」
泣き腫らして…私はレンと逢う事を決めた。
明日、父に連絡してパスポートを貰い、恐らく今週末
レンの所へいける。
見るだけでも良い…
逢いたい
そして私は、レンへ手紙を書こう。
大丈夫…まだ、レンは壊れてなんか居ない
【 Ren 】
手紙を、大事な人へ書いた。
さようならとは書けず…ただただ、思いを書いた。
今自分の下で、口を懸命に動かす女を見ながら
行為を繰り返されている。
水希にしか…反応しないはずだったのに
思ったより、欲というものが凄いのだと知った。
でも、中へ挿れようとすると…驚くほど萎えるんだ
全部、相手がしている事で
俺はもう、どうでも良かった
ただ、吐き出す時はやっぱり、体すべてが生きていると感じれる。
だからと言ってそれに依存する訳でもなく…ただ、したいと言う女に
俺を与えているだけ。
アルが呆れていた…。
次々に女を連れ込むなんてと…。
別に連れ込んでなんか居ない…勝手に入ってくるんだ
そして口をそろえて皆が言う言葉は、”また来て良い?”
俺に何を期待するんだ?
女を悦ばせる気なんて全く無い。
「っ…っは」
吐き出した吐息と共に、女の口の中に吐かれたソレはゴクリと
飲み干されていく。
一瞬だけ生まれる俺の表情。
それは、どんな顔をしてるのか…それすら解らない。
「また今夜も、連れ込んだのですか?」
「あぁ、そうだな」
「何故メリッサ様とではダメなんですか?」
「知らん」
「……。貴方の奥さんになる人ですよ?」
「へぇ…」
言葉が途切れると、アルが頭を抱える。
俺は抱いてなど居ない…勝手に来て勝手に触って帰るだけ
何もしてなんか居ない。
「アル…中には挿れてない」
「は?していないって事ですか?」
「俺の精液は振りまけるもんでもないんだろう?
それに、子供が今の俺と同じように成る事が目に見えてる
そんな子供など、作った所で苦しませるだけだ」
「今日は饒舌ですね…」
「もう、嫌なんだよ…何もかもが」
「日本へ…帰りたいですか?」
「それを断ち切ったのは誰だ?帰る場所など…もう、俺には無い」
アルの目が揺れているのが解るが…何も思わない
思えない…。
「どうして…カイル様は解って下さらないんですか!
帰る場所はここです!」
珍しく感情を表に出しているアルに何かを言わなければと思うのに
出てくる言葉は…。
「俺は…カイルなのか?この地獄しか、帰る場所が無いのか?」
だった。
「ミズキ…」
と呟くと最近勝手に涙が出るようになった。
だから名前を呼ばなくなった…。
愛しすぎて…名前さえ呼べなくなった俺は
この先誰を思えば良い?
そう簡単に忘れれるはずもないし、忘れる事もしたくない。
俺の中では、水希はまだ家族だと…細い見えないほどの細さの糸が
まだ、絡んでくれている事を…祈っていた。
今日はメリッサがやたらと不機嫌で俺の部屋へと入ってきた。
どうして毎日違う女が来るのか、そして
何故自分がすると言うのを拒むのか…に付いて
どうやら討論したいらしい。
面倒になった俺は、したきゃすれば良い…と答えると
悦になった顔を、気持ち悪いと思った。
メリッサが服を脱ぎ俺の手を、導いても
指先は気持ち悪い感触だけを伝えてくる。
必死に咥えて少しでも勃つと、挿れようと腰を絡めてくるが
その間に萎えてしまう。
ストレスを感じているんだろうな…メリッサは
なんか言葉を吐き出しているのに
それを聞く事さえ出来なかった。
「そんなに水希がいいの!?」
と、どうして…水希の名前だけは良く聞こえる…。
「…しか俺は抱かない」
名前…言えてないな
怒ったメリッサが、服を持って帰っていくと
脱がされたままの俺にアルが近寄ってきた。
中途半端に脱がされた服、だらしなく露出された下半身。
アルが全てを整えてくれ、俺は虚空を見ているだけ。
「水希様に逢いたいですか?」
「あぁ…逢えるものなら…逢いたい」
「解りました…手はずを整えます…」
その言葉は、俺の耳には届かなかった。
メリッサが一晩中頑張ったお陰で、眠れて居ない
だから、俺はそのまま目を閉じていた。
【アル・フレンジャー】
長年執事をしていた私は、ライアン様に出会い
とても良い仕事をさせて頂いていました。
充実した職場と言うのは、案外手に入らないものです。
だから、王家の言葉をないがしろに、私はライアン様の言葉を聞き
諫める所はしっかりと諫めてきました。
けれど、奥様が亡くなり、カイル様が居なくなり、ナタリーが辞めて行くと
見る見るうちに元気を無くされ、私に王家の言葉を守れば良かったのだろうかと
呟かれました。
あぁ、私が諫めなければ…いけなかったのだ。
そう、感じていましたが今
見付かったカイル様がドンドン壊れていく様子を
ただただ、諫めながら見てきて思った事は…このままでは
カイル様は、生きる屍になる…と言うこと。
私はどうすればよかったのでしょうか?
普段は勝手に踏み入らない、ライアン様の部屋。
そこへ足を踏み入れて見つけた
書物…自由は何よりもの褒美と書かれたそれは
ライアン様の手書きの自伝だった。
今更ながらに、私の事が書かれているページを何度も読み返す
良い執事だったと、褒められる事に喜びを感じていたのに
カイル様は、それすら、不要とおっしゃいました…。
意地になっていたのかもしれません…
私がカイル様を壊したのかもしれません…
見る見る間に表情がなくなり、言葉が少なくなったと思ったら
今度は荒ぶる口調に変わられた。
1ヶ月ほど前から付いてくる女を部屋に入れるようになったのは
断るのが面倒になった…と言う理由。
自由が…そう言えば無かったなと気付いたのは
この時でした。
執事として…もっと彼の精神面を守らなければならないのに
メリッサ様との婚約と、カイル様の社交の場の応対などの訓練に
抜けてしまっていたのでしょう。
だから…水希様に逢う事を…自由を
許可しようと思いました。
和香が、来てくれて…私は少しホッとした。
手紙を書きたいと言った私に、桜柄の可愛い便箋を持って来てくれた。
本当にこう言うときは友達が居てくれて良かったと思える。
「5日ほど掛かるから、週末に行くなら持った方が確実だよ?」
と言う言葉に従い、持ってイギリスへ行く事にした。
探偵さんと、早く話をしなければ、明日金曜日になってしまう。
月曜日は祝日で休みだが、火曜も休もうかと考えているのだが
どうしようかと悩んでいると
和香が休みは取っておくに越した事は無いからと
言ってくれたので、明日休む事を告げようと思う。
逢えなければ…遠くから見るだけでも良い
レンを自分の目で確認しなければと…思った。
「いい?本気で無理しちゃダメだよ?」
「解ってる…」
「あっちで、王族に喧嘩売ったら、辛くなるんだからね?」
「うん」
「ごめんね…一緒に居て上げれなくて」
なんて言う和香に、涙がこぼれそうになる。
「解ってる…皆が私のためにって考えてくれる事…
でも、レンをこの状態にしてしまったのは
きっと…私だと思うから」
だから、父も母も悪くない…
悪いのは私だけで良い…
「水希自分を責めないで…確かにレンクンは苦しいのかもしれない
けど、不幸の事故が重なっただけと思って、頑張れ!」
「ありがとう…」
これ以上彼に…レンに不幸が来ない様に
話して良い方法が見付けれればと思う。
翌朝、止まってくれた和香も帰り、私は
気まずいながらも父と母の元へと向かった。
「水希…」
と、心配そうに私の名前を呼ぶ父に微笑んで見せた。
「レンに逢ってくるわ」
「……そうか」
「うん、帰りまでにパスポート出しておいて?」
「…解ったよ」
「私は傷ついても立ち直れるから…時間掛かるかもしれないけど
それでも、立ち直るから…行かせてね?」
コクンと上下に頭を振る父にクロの手綱を渡し、家を出た。
平賀と、部の人に話し、休みを伝えると
私は仕事を終わらせ実家でパスポートを受け取るとそのまま
クロを置いて自宅へと戻った。
形態に知らない番号からの着信があり、それが探偵さんだと
何となく思ったので掛け直してみる事にした。
「水希ちゃん?」
「やっぱり探偵さんだった…」
「うん、ギリギリまで考えたいかと思って…」
「あー行きます」
「そうか…シートは取ってあるんで
明日の8時発だが大丈夫か?」
私はハイと答え、電話を切ると昨日の寝不足分を補うように
旅行バッグに服を詰め込みすぐに眠りに付いた。
夢の中のレンは…ちゃんと笑ってた。
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