倉庫です。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ 催眠 | | HOME | | 朔の安息 ≫ |
短編
鞘
『貴方は犬夜叉の何ですか?そうですね・・・しいて言えば、鞘・・・でしょうかね?』
かごめは、今1人で昔犬夜叉が住んでいたという地を踏みしめていた
町並みは大きく、人が沢山行き交う町
魚や、果物を売ってるお店なんて物まであった
『ここで育ったんだ・・・犬夜叉』かごめは極力小さな声で呟いた
が、この声を聞き、声を掛けてきた者がいた
『いま・・・今犬夜叉とおっしゃいましたか?』かごめはその言葉に驚いたが、コクンと頭を下げた
その人は、もうかなりの高齢だった・・・80位だろうか、白髪が目立ち、腰が痛いのか杖をついていた
『貴方は?』と聞くと、老人は『洋作(ようさく)』と言う名前で、犬夜叉に昔助けられたと
かごめに伝えた
『そうですか』かごめの知らない犬夜叉・・・
好奇心旺盛なこの娘は、どうしても聞きたくって、老人の家を訪れていた
粗末な家だった・・・昔は殿の護衛役をやっていたそうだった
『犬夜叉様・・・と言えばいいのでしょうな・・・奥方様が亡くなってからは、すさんでしまった』
老人は急須にお茶を入れ、湯飲みに注ぎながら話し始めた
『虐められていた犬夜叉様は・・目に灯火がないように見えました・・・・』
『やーい・・・半妖・・・お前なんて仲間に入れるわけねーだろう』
少年は石を投げつけた、その飛んで来る石をひらりとかわすと『けっ・・・』と悪態を付く
そんな事は毎日のように、まるで日課のようになっていた
毎日が面白くない・・・母が亡くなってからは孤立する一方だった
そんな時に、洋作は、城に手伝いに行ってた母と共に城に入る事となる
『半妖とは遊ぶな』それを言われた洋作・・・半妖と言う物は見たことがなかった・・・ただ好奇心で
そっと覗くと、木の上で『母様・・・っ』と、呟き涙する少年を見つけた
もう、年は10歳くらいだったからか、その木の上で泣いている彼は綺麗で、神秘的だった
『大丈夫?』その言葉を掛けたのは洋作だった、少年はハッとして振り向くと、その男の子は寂しそうな顔で
心配してると言う面持ちをカモチ出しながら、少年の側へ行った
『俺にかまうな・・・』(俺にかまえばお前も虐められる)
『聞いてるのか?早く帰れ』(こんな所見られたらお前も虐められるぞ)
『おい・・・』(何でそんな目で見るんだ・・・俺は寂しくなんかねー)
洋作は小さい頃からのしがらみで、【さとり】(人の心を読む)が出来た
少年の心・・・寂しさで押しつぶされそうな悲痛な心
『じゃー今の私の心も?』と、話しをかごめは止めてしまった
『あぁ・・・だからお前さんの考えは素晴らしいものだと思う・・・そして、一番犬夜叉様を信頼なさってる』
かごめはそんな言葉に少し恥かしかったのか、真っ赤になってしまった
『お前は変だ』洋作はそう言われるのに時間は掛からなかった・・・
『人の言いたい事先に言うな、気色悪い・・・お前も半妖と一緒だ!!』と、心すさむ者が放つ
『お前達が半妖と虐めてる人の心の方が綺麗だ!!』と、洋作は言った
そうである、虐めるのは決して良い事ではないのだから・・・ただ日々城の使いをしてる者達の子供はかまって貰えないのだ
親は見てくれない・・・その鬱憤が全てを虐めと言う形に変えてるのだ
『おめー俺のことは気にすんな・・・仲間に入って遊べよ』と、彼は言う・・・『俺、洋作・・・お前は?』
『犬夜叉・・・』彼は嬉しそうに頬を染めていた
そうして一緒に居ること一年・・・洋作は虐められて、しかも親達もが洋作を虐めだした・・・・
用は、悟りの力が、人には奇怪だったのだ
『お前は城を出ろ・・・半妖なんか構いやがって・・・』と、親共々
洋作の家を押しかけ火を放ったのだ
『あぶねー』戸が崩れる時に、犬夜叉は洋作と、洋作の母を抱き抱え助け出してくれた
そしてその後彼は姿を消した
『と言うわけですよ・・・』老人は目を真っ直ぐかごめに見据えた
『そうですか・・・良い話しが聞けて良かったです』そう答えるかごめに一寸の闇もなかった
『あんたは良い女だ・・・犬夜叉様が生きておられるのを聞いたときから思っていた』
その老人はかごめにお茶を進めた・・・・かごめがそのお茶を口に入れると
『あんたは、犬夜叉様の鞘だ・・・』と言う
『鞘?ですか?』と言うと、老人は口を開いた
『鞘とは刀を納めるもの。。。貴方が犬夜叉様を納めなさい・・・桔梗と言う人は、気にしないで』と、
かごめはドキッとした・・・『桔梗』確かに今浮かんだ名前である・・・悟りの力は凄いものだと実感した
だが、その言葉に怯まず、答えるかごめも凄いと思ってる洋作だった
『これをお伝えください』
『私は貴方にあえて幸せでした・・・命は大切になさってください』と・・・
洋作はそこまで言うと紙を取り出し、筆で字を書き始めた
一時間・・・かごめは立ち上がった『そろそろ行きますね』と・・・
『これを』そう言うと、丸めた一通の手紙に、犬夜叉様へと書かれていたそれと、着物を一着『目立つ格好は良くない』と言い渡した
かごめはそれを受け取ると、『渡しますね』と言い『良いお話しをありがとう・・・連れが待っていますので』と、
洋作の家の門をくぐり一礼した
私の知らない犬夜叉・・・誰も信じなかった・・・犬夜叉・・・会いたい
私は鞘にでもなんにでもなってやる・・・犬夜叉・・・待っててね
『かごめちゃーーーん』と、少女が走って来た
『珊瑚ちゃん・・・・ごめんね・・・遅くなって』とかごめが言うと、珊瑚は笑って櫛を見せた
『皆がいると買えないでしょう?特に犬夜叉がいると・・・早く行くぞ!!ってせかすし』
かごめはその通りだと思いくすくす笑った
『ねぇ。その着物・・・なんなの?と珊瑚が聞いた』手にしっかり握られた着物それを目で指しながら
「貰ったの」それだけしか言わなかった・・・昔の犬夜叉の話しを自分だけの中に留めたかったからだ
『へぇー可愛いねぇ~着てみなよ』と言われ、犬夜叉の待つ村の少し手前で着替えた
『あ~似合う似合う♪』と、嬉しそうに珊瑚が言った後に、自分の買った櫛でかごめの髪を梳いた
『遅いですねぇー珊瑚・・・買い物となると女子は・・・全く』と、弥勒が言う
『見てくるか?』と犬夜叉が言う
『何を言ってるのです・・・お前が行きたくないと駄々をこねるからこうなったのですよ!』弥勒が怒る
『駄々こねるって言うな・・・別に行ったって良かったんだ・・・』と続けるが・・・
気分的に暗くなる犬夜叉・・・それを見ていた弥勒の目に、綺麗な羽織を着込んだ女性が目に入る
それと同時に、犬夜叉の鼻に、懐かしく、そして誰も持っていない匂いと、かごめの匂いが同時に入ってきた
その不思議な匂いに誘われて目を向けると・・・
『か・・・ご・・・・めか?』犬夜叉の母の着物を着込んだかごめ・・・
目を擦るが、まさしくそうだった
『おい・・・どうしたんだその着物・・・』犬夜叉はかごめの前に立ち腕を掴んで聞いてきた
『痛いよ・・・』と言うかごめの声で我に返り、手を離して『わりぃ』と、呟いた
『これ、犬夜叉に・・・』そう言って手紙を渡した
『ん?誰だよ・・・え?洋作・・・・・』犬夜叉は一気に顔が明るくなった
『会ったのか?元気だったか?何やってるんだ?』と、かごめに一気に説明を求める
『こらこら・・・そんなんじゃ話になりません・・・ゆっくり聞きなさい』と、弥勒が嗜めた
パラ・・・・
手紙を読む犬夜叉・・・
『・・・・。そうか・・・』小さく呟くと、まだ着物を着ていたかごめの手を捕まえて、川へ連れてきた
『なによ・・・痛いってば・・・・犬夜叉・・・・?ねぇ?いぬ・・・や』
急に抱きすくめられたかごめは息を呑んだ
『ありがとう・・・かごめ』優しい母の香り・・少しは薄れているが、それでも匂いはする
『この着物は・・・俺のお袋のだ。。。。だから、少しだけこのまま』と言い、その身体をかごめに預けた
サァァーサァァーーー
吹き抜けていく風に、かごめの髪がゆれ犬夜叉の髪を包み込むように絡める
どれだけの時間抱擁しているのだろう・・・犬夜叉は一向に顔をあげようとしない
ただ、抱き締めてくる手が、強くなったり、弱くなったり
『立ってるの・・・辛いか?』と、下を向いたまま聞いてきた
『大丈夫だよ・・・大丈夫だから・・・気にしないでね』と、かごめは言葉を返す
かごめは手を犬夜叉の頭に置くと、そのまま髪を梳いて優しくポンポン・・・っと背中を叩き始めた
『ありがとう』犬夜叉は呟く・・・色んな思いが交差する
『気にしないで』かごめはそのまま返す
ゆっくりと時の流れに身を任せてる二人には言葉は要らなかった
犬夜叉は不意に顔をあげ、かごめの顔を見据えた
かごめは、にっこり笑うと、そのまま犬夜叉の頭を撫でていた
すっと伸びてきた犬夜叉の手にかごめはドキンと胸を鳴らした
その手が、ゆっくり頬を・・・ゆっくり唇を・・・かごめを確認するように動いた
『な・・・に?』と、声を出した・・・ただ、沈黙と、犬夜叉の目が辛くなったのだ・・・
そして顎に手が伸びそのまま顔が近づいてきた
予感があった・・・きっと、このまま
二人の影が重なった・・・白い花が咲き乱れて、川の音がサラサラと聞こえる
かごめは、唇を合わせた時に、驚いたが、そのまま目を閉じて、犬夜叉の抱きしめる手が強くなったのと共に、
かごめも力を入れた
二人が唇を離すと、急に寂しい気持ちになった・・・
犬夜叉は『嫌じゃなかったか?』と聞いて来た・・・
赤くなったかごめは、『やじゃないよ・・・』と、答える
いつもいるはずの、弥勒珊瑚・・・両名はなにやらご飯を作ってるらしく、現れなかった
『話・・・聞かされただろう?』と、かごめに言うと、そのまま恥かしいのかそっぽを向いた
『私は・・貴方の鞘になれと・・・洋作さんに言われた』と答えた
犬夜叉は不思議な顔をして首をかしげる
『わかんなかったらいいよ・・・気にしないで』と言うと、そのまま抱き締めた
暖かいかごめの身体と、暖かいそして優しい匂い
『かごめ・・・ありがとよ・・・』そう言うと又、顔を埋めた
ガサガサ・・・
弥勒が草の陰から覗いていた『なぁ、あの犬夜叉が甘えてるぞ・・・』
弥勒の横にいた珊瑚が言う『二人っきりにしてあげようよ』
『珍しいことがあるもんだ・・・あの犬夜叉が・・・はぁぁあ明日は大雨か・・・』
『てめーら聞こえてんだぞ』と、かごめの体から身を離し、弥勒の後を追った
『七宝が居たら、甘えてるぅーーーって言われるぞ~~~』と、逃げながら冷やかす弥勒
『うるせーなぁーー黙れこの変態坊主』と、追い駆ける犬夜叉を見て
優しく微笑む珊瑚とかごめ
『ご飯だよ・・・かごめちゃん』と、珊瑚が言う
『うん。先に食べてようか?』と、二人で先に小屋へ向った
ぴたっと足を止めてかごめは自分の唇をなぞった
(犬夜叉・・・)
走ってた犬夜叉の方も先ほどの感覚が忘れられないように、急に止まると木の上に上がり、
唇をなぞる
(かごめ・・・・)
≪ 催眠 | | HOME | | 朔の安息 ≫ |