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なつめっぐ 保管場所

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優4

やっとこさ、総ちゃん登場w

★=【沖田総司】=★










土方が戻ると、階段を上がった場所で総司が腕を組み
こちらを見ていた。
遅いと言いたいのか、何を伝えたいのか解らない
そんな瞳が向けられると自分が今何処に行ったかなどお見通しかと思えた

「神谷に逢ってきたよ・・・・」
ぽつりと語った土方に、鞄を渡すと総司は部屋へのドアを開いた
「お帰りなさい。」


既に人は夜の班に変わり、先程まで賑わっていた部屋も静かなものだった

「総司、神谷は・・・死んでない」
「は?」
意味が解るわけが無い。素っ頓狂な声を上げると興味深そうな目で土方を見やった

「神谷清三郎と言う人間はあの時代から、今の時代へ飛ばされてきた
死を知らないんだよ・・・・記憶も幕末のまま・・・・
だから、あいつは殺気を持っていてあたりめぇなんだろうよ。」
総司の笑みが、その言葉に消えた
どうして?と、聞いた所で土方が解るはずは無いだろうが
何か手がかりをと・・・思考を探るが元々考えるのが苦手な男である
結果を導き出せずに、頭をがりっと掻き毟った


「神谷さんに、逢えば・・・あの子をダメにしそうで・・・・」
ぽつり・・・ぽつりと・・・自分の思いを話し始めた

「私には、彼女が居ます」
その言葉に、土方が目を丸くした
「そうか・・・・」
今更、責めるのもお門違い、総司の年齢からして
居てもおかしくは無い

「でも、植物状態なんですよ・・・あの子・・・・」
寂しそうに告げた総司に、土方は返す言葉を見つける事が出来なかった
「一度は別れて、その後に別れたくないと言い出して・・・・
結局別れたのか、付き合ってるのか解らないまま・・・あの子は3年も眠っているんです。」

「だったら、てめぇが責任を感じるもんでも無いだろう?」
そうなんですけどね・・・と返してきたが、総司はその女が目を覚まさない限りは
他の女を見ないで生きると心に決めていると言うのは
真剣に投げられた視線が物語っていた

「だから神谷に逢えねぇのか?」

「解らないんです・・・・・」
セイへの恋情は、昔の総司の思い
麻耶と言う眠る少女は、総司の記憶が戻る前の思い・・・・

謝罪の気持ちなのか、愛なのか、解らなかった
総司はあの時代から女性はなるべく避けて通ろうとしていた
だからこそ、解らないのかもしれない

「逢いたくはねぇか?」
「逢いたいに決まってるじゃないですか・・・・」
「だろうな・・・。」

気持ちに素直に向き合えとだけ告げると、土方は部屋の中へ向かい
帰り仕度を始めた


数分で後片付けを終え、総司の腕を引くと、自分の車に乗り込んだ

「土方さん?」
「今の神谷を見てから、決めれば良い・・・・」
助手席にドンと押しやると無理にドアを閉め、土方が運転席に身を沈めた
「近藤さんに聞いてもらっても良いかもな」
どんなアドバイスをした所で、決めるのは総司自身
それ以上は余計な事を話もしないで近藤道場までやってきた

「いくぞ」
裏から入ると、勝手口が開かれ、孝が迎え入れてくれる
だが・・・・


めーん・・・・どーう!
ダンダンダダン!
踏み込みの音や、気合を入れる時の声
総司の足は自然と道場へと向かった

土方はそんな総司を見て、ヤレヤレ・・と言う表情をし一人中へと入っていった



「っく!神谷あぁ!」
一生懸命剣先を向けているのに一向に当たらない
やけくそで向かう裕を見ながらセイは身体を細かく移動させる
「もう終わり?」
「っは・・っは・・・んな訳あるかぁ~」
パンパンパンとリズミカルに竹刀がぶつかり合うと、セイの手が一瞬早く裕の肩先を捉えた
「くっそぉ・・・!」
めげもせずに、セイに体当たりを食らわせ、そのまま突き上げようとするが
当てられた反動で一歩下がった状態から腰を落とし、剣先を避ける

(上手く・・・なりましたね・・・神谷さん)
優しい眼差しが、セイに送られる
その視線に気が付き、セイがその視線の主を見つけた時、時間が止まった

止まったように感じた

余所見をした・・・・
目の前に敵が居るのに・・・・

ぐっと押し込まれた竹刀がセイの喉を捕らえ
手加減の無い剣先はセイの白い首を跳ね上げた

ダン・・・と倒れたセイに、裕が慌てて近寄ろうとした
だが、風が横に靡いたのだ
あっという間に、セイの上半身が抱き上げられ、面を外すと
「大丈夫ですか?神谷さんっ!?」
ぺちぺちと頬を叩く総司に、お前は誰だと問う裕
自分とセイの間に入られたのが、面白くないのだ
「道場の人間じゃねぇだろうが!てめぇ誰だ!神谷に何の用だ!」
「今はそんな事言ってる場合ではないでしょう?神谷さんを起こさないと・・・」


「ん・・・」懐かしい体温・・・・
「・・や・・さん?」優しい声・・・・
「神谷さんっ!」暖かい手・・・・・

「ぁ・・・沖田・・・先生?」
抱き締められた体を動かそうともしないで
セイの手は総司の頬を撫でた
「えぇ・・・沖田ですよ・・・大丈夫ですか?」
「あぁ、裕に飛ばされたんだっけ・・・・大丈夫です。」

視線だけで裕を捕らえると、セイがにっこりと微笑んで見せた
「神谷、いつまで男に抱かれてるんだよ・・・・早く続きするぞ」
「無茶ですよっ!」
その無謀な提案を総司が叱ると、裕は心を痛め、やり場の無い怒りを覚えた
「だったら、お前が相手しろ」
嫉妬から狂いそうな激情をぶつける裕が、総司に向かって竹刀を投げた
ぱしっと受け取ったが、その場から動こうともしない
「てめぇも、舐めてやがるのかよ!」シュン・・・と風が切れた
だが、剣先は総司の右手一本で止められた

「なっ・・・」

たじろぐ裕にセイが、沖田先生は強いよ・・・と言われ更にカーッと血が登った
行き場の無い苛立ちを、何処にもぶつけられずに、裕は道場を逃げるように後にした

「神谷さん・・・・」
「はい。」
「神谷・・・さん・・・・」
「はい、なんでしょう?沖田先生」

あの頃の恋情が蘇る
愛しくて、苦しくて・・・今までの恋が一体なんだったのか?と言うほどの
焼け付くような思い・・・・・

知らずに抱き締めた
セイの体温を感じるように、セイの儚さを閉じ込めるように
「先生。。。苦しいっ・・・・」
無意識に力任せに抱き締めた事を思い出し、ぱっとその場を離れた


「生きてらっしゃったんですね・・・・お久しぶりです」
「えぇ、本当に・・・久しぶりですね」
「相変わらず、甘味は好きなんでしょうか?」
その質問に昔を懐かしみぷっと二人で吹き出した
「そこら辺は、全く変わっていませんよ」
穏やかな口調に、穏やかな笑顔
沖田総司は此処に居たんだと・・・セイは思えた


「裕のやつ、片付けもしないで・・・もう」
身体を総司から離し、てきぱきと片付けると、セイは沖田へと笑みを送る
「神谷さん、一本試合ましょうか?」
総司の提案に、ドキッと胸が高鳴る
「え?良いんですか?」
「今の私の方が弱いと思いますけどね・・・それでも良いなら」

セイはにっこりと笑い、竹刀を持った

「行きますよ?」
「どうぞ。」
竹刀を持つと男のセイが顔をちらつかせる
殺気も、漏れ出る状態に、総司もつーっと汗を流す
(こんなに・・・あの時代は厳しかったんですね・・・・けど)

パパン!パン!
竹刀が行く手を阻みセイを追い詰める
パンパン!
総司の風のような剣が、セイの心にゆっくり届いてくる

「さすが神谷さん。。。これはどうですかね?」
上段から振り下ろされた剣先が、そのまま床へ叩き付けられるほどの速度で落ちたと言うのに
剣先はそのすれすれで止まると、逆さを向いて競り上がって来た
慌ててセイは竹刀で受け流そうとするが、その力に押され、身体がふわりと浮かんだ

だが、やられてばかりではない
その浮かんだ浮力を利用し、総司の背に剣先を向けると、総司の身体が反転し
剣先を受け流す

(あぁ・・・この感覚・・・懐かしいなぁ・・・神谷さんは本当にあの時のままだ・・・
いや、上達はしているけど、気持ちの良いほどの真っ直ぐな剣を使う・・・・)

結局総司の方が余裕を持っている時点で、セイの負けなのだろうが
総司は面白がってしまい、止めを刺さないのだ
セイの体力が削れる


「くっ・・・・」
「おや?もうギブアップですか?」
その声にセイが睨み付けた
「何ですか~?怖いですねぇ・・・・」
「沖田・・・先生・・・外来語は・・・はぁはぁ・・・解りませんっ!」

その言葉に、総司がきょとんとし、手を止めた瞬間だった
面!と、軽く頭を叩かれ、イテテ・・・と撫でる総司
だが、次の瞬間
「やっぱり、神谷さん面白いっ」
ぶわははは・・・と、腹を抱えて笑い出す始末・・・・
「知りません!」と、そっぽを向くセイに後ろから抱き付いてきた総司が、セイの
耳元で囁くように声を掛ける

「生きていてくれてありがとう」

セイは、その言葉を貰う為にこの時代へ流れたのだろうか?
などと、ふと考えた。
「生きてですか・・・・今が正しいのかいつか帰らなくてはならないのか
私には判りません・・・・でも、先生のその言葉が凄く嬉しいです。」
そう言いながら、セイは首元へ絡まった手の上に己の手を絡め、微笑んだ




2009.10.6
============================
★=セイ=★







幸せなんて、そう簡単には手に入らない

もがいて、苦しんで、それで手に入れれる恋は一握り



朝の心地良い光がセイを包んだ。
昨日の沖田との抱擁に胸を躍らせた自分に少し後ろめたい

つい、何ヶ月か前に彼は逝ったのだ
それを忘れ、その悲しみを背負ったまま同じ人を
今もまだ愛せるのだろうか?
否、彼は愛してくれるのだろうか?

あの時代だからこそ側に一緒に居れた
あの時代だからこそ、片思いでも良いと思った

でも、この時代はわからない事ばかり
沖田の口から出た外来語に、反応できない自分

「はぁ・・・なんか、つまんないな・・・・」
生き生きとした時代は、命のやり取りがあった
自分が生きる為に沢山の思いを犠牲にした
だが

この時代にはそれは無い

「あ、裕?」目の前に罰の悪そうな表情をした裕が立っていた
「あの男・・・神谷の男か?」
(なんて答えれば良い・・・いや、答えは決まっている)
「違うよ。あの人は、昔の知り合い」

ふぅんと。。。安心したような笑みをセイに向ける
「俺さ・・・神谷のこと・・・好きなんだわ・・」
恥ずかしくて背を向けて一世一代の告白
振り返って返事を聞こうと思ったら・・・

「いや、普通にありえねぇ・・・・」
竹刀を奥で振るセイ
「ん?なんかいった~?」
いや、何も・・・としか言えなかった

恋情が、まだ若い裕を貪る
狂気にも似た感情にセイも突き動かされていた時代があった
否、今もそうなのかもしれない


【明日、昼から休みなんで、遊びに来て良いですか?】
道場があるからと断ったが、総司はだったらこの道場に入門すれば良いと
あっさり回答し、近藤に許可を貰った

増える時間がセイには恐ろしかった


「神谷、話があるんだけど・・・・」昼に近い時間
午前の子供の部が終わった時に呼び出された

道場の入り口で、その会話はなされた

「お前の事、俺好きだから。」「は?」
いきなりの告白に目を丸くするセイ
「神谷が好きだ・・・付き合ってくれよ」

「・・・ごめん」
セイは視線を背けるしかなかった
「好きな奴がいるのかよ!」納得の行かない裕はセイを攻め立てる

「うん居るよ。離れられなくて大事で、その人の為だったら何でも出来た。だからごめん」

「俺だって・・・・」
セイの身体を抱き寄せて震えながら裕が呟くように思いを吐き出した
「俺だって好きなんだよ・・・何でもお前の為ならしてやれる」
「ありがとう・・・でも」
セイは裕の身体をそっと離すと、悲しく微笑んだ

『咎人なんだよ・・・私は』
とだけ残し、何かに気が付いたように慌てて道場へと消えた

悔しくて、切なくて・・・伝えた事を後悔している訳ではないが
涙が自然に溢れてくる。
此処には今は居れないと判断した裕は踵を翻し門を飛び出た

「!!・・・・くそっ、振られたのがそんなに楽しいかよっ!」
門の所で、佇む総司と出くわした。
彼にどんな顔を向けて良いか判らず、どんな言葉をかけて良いか判らず
視線だけを向けていた総司に八つ当たりと言う言葉がもっとも適切な言葉を浴びせて消えた

走り去った裕を見ながら、思う・・・・
何故彼女は咎を背負ったのだろう?
自分が死んだ後何があったのだろう?
自分はもしかしたら大きな間違いを彼女に教えていたのだろうか?
恋情に負けて、隊に残したのが悪かったのだろうか・・・?

「参りましたねぇ・・・・」

「あ、こんにちは。」大人たちに混じって総司が顔を出した
セイは罰が悪いと言う顔を向けてくる
(立ち聞きしてたの・・・ばれちゃってるみたいですね・・・)

気配を消すのはかなり上手い方だろうが、当時の感覚までは行かない
セイの側に行き、総司が話をしたいと切り出すと、意外にも自分もそうだと
セイが言って来た。
終わった後出かけると約束を取り付け、総司は新しい道場にヒタリと素足を付けた


「皆集まって下さい~新しく入った新入生ですよ~」
セイに言われ、総司もなんだか不思議な感覚を覚える
「えっと、自己紹介お願いします」
「沖田と申します、剣道は段取りはしていますけど神谷さんと同じくらいかな?」
「なっ、何言ってるんですか~」
総司の言葉に皆が一斉に笑う
だが、今度は息を呑むことになる

総司を相手に出来るのは、セイと近藤位
セイに稽古を頼む総司が面白くてセイが一人でころころと笑った
「沖田先生面白すぎますって、何で私に稽古頼むんですか・・・あはははは」
そうもその会話が、セイを今まで指導してきた先生だと皆に思われ
二人とも苦笑いをする。
現代ではない時代で、確りとした師弟関係はあったのだから

「木刀で行きましょうか?」セイに言われ、ドキッとするのは総司だった
直に重さを感じてしまう木刀ではセイには不利だと解っているのだろうか?
そう思っていた矢先だった
「ハイ!」と、差し出された木刀
「あなた、コレが何を意味するか解っていますか?」
「えぇ、先生の腕はあの当時と殆ど変わりません・・・けれど、私は変わりましたよ?」
するりと、裕の剣を避けたセイをふっと脳裏に浮かべ、仕方ないですねと呟いて中央へ出た


道着を着込んだ二人はまさにあの当時の二人
蘇って来る記憶と恋情と恐怖に向き合わなければこの木刀は振り下ろせない

「行きますよ?」やはり言い出すのは総司
「はい・・・」
すっと、二人を取り巻く空気が豹変する
やはり、セイからは仕掛けてこない
ならば・・・・と、総司が一歩前へ足を踏み込んだ

「うぉ~」と、道場内が割れるような声援
総司の突きを身を反転して翻し、その勢いを利用して剣先を総司の手に向ける
カカンと競り合う木刀
「神谷さん、女子で競合いは」
「えぇ、向きませんね」
剣先をぐいっと捻ると、総司の剣先がずるりと宙を舞った
「くっ・・・」総司の剣先が今度はセイの横腹に狙いを定め向かう
それを、床に木刀の先を置き、足で刀の先を押さえ手で押しやると、総司の剣先はセイの身体には届かなかった
「やりますね・・・・」
セイはひたすら無言で戦い続ける


当時には出来なかった自分の型を、総司に伝えたかった
自分の全てを総司に受け止めて欲しかった
総司亡き後に、自分なりに死なないように、土方の元へ行ける様に
必死に磨いた剣を、総司は知らない
だから

==伝えたい==
そう思った

カカン・・・・カン・・・・決着は、体力を使い果たしたセイが足を崩し
剣先が鼻先に突き付けられて、決着を付けた
「っはっ・・・っはっ・・・参りましたっ!」
汗だくで、二人はその場にへたり込んだ

「神谷さん粘りすぎ~疲れちゃいましたよ~」
「あははっ・・・あのままの私だと思われたくなかったので」
セイの言葉にドキリと胸が泣く

この子はやはりあの後も・・・・必死に戦ってきたのだと

「さてと、皆さん練習始めますよ~?え・・・?おーい?」
あっけに取られてたのだ。
激しい攻防戦に魅入られて、全ての者達が黙り手を握り締め
ハイレベルな戦いに、我に返れないで居た

「ぷっ・・・皆ボケーッとしすぎ!っ、ハイ!」パチンと手を叩くと
今までの空間から呼び戻った
スゲーとか、信じられないとか色々と言葉が飛び交い
セイとしては、充分満足な結果となった

その後、2時間ほど練習を続けたが、無論セイも総司も参加し
体力お化けとか言われる始末。
そんな二人を懐かしい目で近藤が見ていた
「総司、神谷君あがって良いぞ、後は私が指導するから」
近藤の計らいで、セイの時間は大いに余った

「出かけると話しているのを聞いたよ。行っておいで」
にっこりと優しく言う近藤に頭を下げ、総司とセイは軽くシャワーで汗を流し
30分後に合流した

「沖田先生・・・どこへ?」
総司に連れられて向かう先が解らなくてセイが聞くがこの時代の場所など
わかるわけもなく、無言の総司に黙って付き従うしかなかった

「神谷さん、貴女に言って置かなければならない事と、聞きたい事があります。
無理に答えなくても良いですけど、その答え次第で場所が変わります」
「はい・・・解りました」



============================ 2009.10.11

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