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なつめっぐ 保管場所

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華4・5

続きです

★華=四=★


ざざっ・・・と雑草の中を掻け分け、漆黒の髪を靡かせながら進む
ただ、セイの為に




「神谷さん・・・・」
川沿いの道をただ進むだけで一日を費やした
戻ろうか?進もうか・・・・
土方に言い伝えられた期限は3日、どう考えても一日歩いた状態で見つからないとなると
帰りの時間を考慮する余裕がなくなる

満点の星空、総司はその場所で足を止めると、腰を落とし握り飯を口に放り込んだ
足を摩りながら、空を見上げるとセイの笑顔が見えるようで
刀を抱きしめてゆるりと瞼を落とした

(沖田先生・・・助けて・・・・)神谷・・さん?
(苦しい・・・助けて・・・・)神谷さん、何処ですか?
声は互いに一方通行で、一生懸命問いかけても返事は無いまま
ただ、セイが困っている状況だと言うのが解った。

(先生に逢いたい・・・先生に抱きしめて欲しい・・・・)
あぁ・・・神谷さん、生きているのですね?
どうか、早く戻ってください、私の名を呼んで下さい・・・側に・・・・

ハッと目が覚め総司が額を拭った
たっぷりの汗が総司の額から流れ落ちたのだ

「くっ・・・神谷さん・・・・」刀を抱きしめ総司が呟く
漆黒の闇の中、虫の声だけが響き川のせせらぎがさらさらと響くだけで
シーンと静まった空間を不安に思う

少しは寝なくては・・・と思うのだが先程の夢が総司の焦りを呼んだ
動こうと思った時だった、足元に居た一匹の狐
「え?」総司の持つ握り飯が目当てなんだろう、大人しく総司を見つめている
「ほら、一個だけどお食べ」ころころと転がる握り飯を追いかける狐を見た総司の
張り詰めた糸が切れ、再び睡魔に襲われて、その場で深く眠りに付いた





セイは、気だるい体を感じながら目を覚まし、体を起こす。
少しは痛みが走るものの、前の激痛に比べれば、動かせる

「逃げなくちゃ・・・ここに居ちゃいけない・・・」
しゃらり・・・しゃらり・・・・足に嵌められた枷は逃げ出す事を叶えてくれはしない
解ってはいるが、数日の食欲不振で、セイの体もかなり痩せ細った

だが・・・「うぐっ・・・・」急に異変を示した
薬を・・・欲しがる自分。

堪えなくてはいけないと解りながら目の前に落ちてる玉に目が釘付けになる

(止めろ、セイこれは触ってはいけない)父が何をしても叱らなかった父が
セイを叱ったこの阿片・・・・・・
目の前に転がる姿が嫌に視界から離れない

「だめ、手を伸ばしたら終わりっ・・・・」
自分の体に絡め手をしまい込むと、背中を向けて苦しさにのた打ち回る

「セイさんとやら、それを手にしなくても貴女は妙に滅ぼされる
だったら、楽に行きましょう?無理に我慢をする事ではない・・・
私のように、されるがままに成っていればいいんですよ。」

「ふざ・・ける・・な」
その言葉に えっ? と男が声を掛ける

「お前はそれで良いのかもしれないでも、私は帰るんだ
沖田先生の元へ、帰らないといけないんだ・・・・誰が言い成りに成るものか
自分の意思さえ伝えられない弱いお前なんかと一緒にするなっ!」

セイはそれだけ紡ぐと、ひっくひっくと泣きだした
恋しいのだ。
総司の名を口にしてしまった
自分がどんな人間なのかなど、相手には滅多に伝えない
ましてや、セイを女だと知っているこの男達に教える訳も無い

(沖田先生・・・・おきた・・・せんせい・・・・)

泣き崩れたセイ、その空間がシンと・・・音を消した
目の前に立つ男に、セイは慌てて身を起こした
妙は先日まで居た小屋で生活していて、ご飯を情事の時のみ此処に現れる
それ以外はこの場所に男と二人きりなのだ
だが、男は姿も見せず声も、最初に話した以来初めてだった

痩せてはいるが、美男と言うのはきっとこの人の事を言うのだろうとそう思える

「繋がれては居ないのか・・・・」
セイの言葉に頭を縦に振ると、男がセイの髪紐をその場から拾い上げその場を出た


漆黒の闇が遠のき、総司はすぐさま川沿いに道を進んだ
道ではない道を進み袴の裾が木々で切れていたり、朝露で汚れていたりするのが目立つ

必死に進むと、人の気配が総司の神経を過敏にした
「誰ですか?」刀の鞘に左手を掛け、親指で鍔を弾ける様に構えると右手を柄に当てる


殺気はない、総司は手に掛けたものをゆるりと解きほぐし
その人影をじっと見つめた

「慎之介と申します、あなたは?」
「こんな藪の中に、人ですか・・・・私は沖田と申しますが
人を探しています。」

男の表情を読もうと総司が人を探している事を告げた

慎之介がふっと総司の前に右手を出した
切れた髪紐が乗せられていたので、なにかと手に取った

「あなたが探している人は恐らく私の知っている人です」
その言葉に、総司が慎之介の胸座を掴み組み敷いた
「神谷さんは何処ですかっ!!」必死の形相に寒気さえ覚える
総司の正体はきっと、知れては居ないだろうが
彼の中に住む鬼が確実に目を覚ましているのだから、それを感じ取れないほど
慎之介も鈍くは無いだろう

「すいません、教えますから・・・手を・・・げほっ・・・」
胸元を押さえられ、慎之介が喉をぐうと鳴らしてようやく身をどけた
「す・・すいません・・・・」

「沖田さん、あなたはセイさんの何ですか?」
突然問われどきりと心音が鳴いた
「あの人は、あなたに自分の名を?」総司の観点は、自分以外の男がセイの名を呼ぶ
その男が何者なのか、セイにとってどんな人物であるか・・・・

「いえ、妙が清三郎と言う名を面倒がってセイさんと呼んで居るだけです」
ほっと胸を撫で下ろしたのに気が付き、独占欲とは怖いと苦笑いがこみ上げてきた

「あの人に逢えば、あなたも、そしてあの子も辛いですよ?それでも逢いたいと?」
男の言葉が飲み込めなくて、総司が声を荒げた
「神谷さんに逢う為に来たんです、何が辛いか解りませんが早く案内してくださいっ」
男はその声にふぅと息を吹くと、再び口を開いた

「そうですか、では、一つだけ約束をして下さい。あの子を連れたら
すぐに帰って下さい、私達には干渉しないように・・・お願いできますか?」
総司が、目を細めて慎之介を見ると、うーんと考える

「あの子を帰すには、あなたの承諾が必要です。そして何があっても
妙だけは、許してやってください・・・。」
総司は約束する事でセイが戻るならと、頭を縦に振るしかなかった



「ちょっと、慎之介を何処やったのよ!」妙がセイの頭を足で小突くと
セイが、動かしにくい体を引き起こし、妙に抱きついた
「離しなさいよっ、慎之介を返せっ!どこにやったんだ」
「ごめん、わかんない・・・でも妙さん、そんなに大事な人をどうして?
泣き叫ぶほど求める人をどうして苦しめるの?」

「お前に・・・お前になんか解るもんかっ」

泣き崩れる妙、膝を付き声を上げて泣き出したのをセイがよろけながら
支えると、ポンポンと子供をあやすように頭を撫でた
「沖田って人が居るんだよね・・・・
その人は大事な人を守りたいと頑張ってるの、だからね?私も頑張るの」
「そんな話はどうでも良い、慎之介を返せ!」セイの首を力一杯締め付けると
妙は狂ったように、怒鳴り続ける
「あいつは、私の物だ誰にも渡さないっ、だけど、だけど・・・
こんな私を好いてる訳が無いっ!同情で側になんて居て欲しくないのにっ
どんなに悪い事をしてもあいつは黙って抱いてくれる
なのに、どうして良いか判らないんだ」

セイの喉がひゅっと鳴ると、意識が飛びそうになる
ギリギリと締め付けられた指が喉に食い込み
脳が圧力で血流を求めてむくみ出す

「おき・・・た・・・せん・・・せ・・・・」
最後に愛しいあの人の名を呼べた。
苦しいから、寂しいから、逢いたいから・・・声に出して呼ばなかった

「妙!やめろっ!俺はここに居る」

総司が見た先は、首を締め上げられたセイ
逢いたかった子が今にも命のともし火を消そうとしているのを黙っては見れる訳が無く
刀に手を添えると、慎之介を見つけた途端に妙がセイを離し飛び付いて来た

「神谷さんっ!」トサリと倒れた先は総司の胸の中・・・・
懐かしい香りにセイが一瞬我を取り戻し、再び意識を失った
そんなセイの声が聞きたいと何度も頬を叩いたり、揺すったりして起こそうと必死である
だが、異様な雰囲気の洞穴の中・・・・むせ返る香り・・・・

セイの横に落ちていた玉を拾い上げ眉間に皺を寄せた
(阿片・・・煙管に入れて吸う奴だったか・・・こんなものがなぜ・・・・)

「沖田さん、早く連れ出して・・・・妙は今に夢中に・・・なって
だから・・・早く・・・そして此処の事は・・・・他言のないよう・・・」

必死に纏わり付く妙、慎之介の男を求め着物を剥ぎ馬乗りになって男を飲み込んでいる
「え・・あ・・・・っ・・・」目が合わせられない
白昼同道と事に及んでる二人を尻目に繋がった鎖を刀で切る

セイを抱き上げると、総司は急いでその洞窟を後にした

女の甘い喘ぎ声だけが、総司の耳に残り、気分が悪くなる

かなり走っただろう、慎之介が教えてくれた抜け道を使い
昏々と眠るセイを一度下ろすと、背中に背負っていた風呂敷を下ろし
川の水で濡らした手拭をセイの顔に当てた

================================================





★華=伍=★



「んっ・・・・」「神谷・・さん?」「沖田・・・先生?それとも幻覚・・・?」
セイが手を伸ばすと、いつものようににっこりと笑顔を向け、もう大丈夫ですよと
優しく声を掛けられ、堰を切ったように泣き出した
「おやおや、泣き虫さんですねぇ・・・それにしても、よく頑張りました」
ポンポンと優しく抱きしめられて頭に手を乗せる総司の優しさに触れ
涙が止め処なく流れ出る

ある程度の涙は流れた・・・だがほっとした瞬間に襲う阿片の苦しみ
「うっ・・・うあぁ・・・・ダメ・・・先生、離れてっ・・・・」
セイの言葉と強い力にドンと押し倒された総司に、セイが馬乗りになる

ぽろぽろと涙を流しながら、セイが総司の上で息を荒くして総司の唇へ
自分の唇を重ねようとする。
苦しみから逃れたいから、切ない思いを吐き出したいから・・・・
総司も、何があったのかときょとんとしている。だが、この状態になり
先程の妙と慎之介の情事を思い起こした

「かか・・かかっ・・・神谷さんっ」言葉にならない言葉でセイを呼ぶ
唇が一瞬触れただろうか?・・・・

バッとセイは総司から身を離し、水の中へ入っていく
「ちょ!何やってるんですか!」ぐいっと引き戻され、総司の腕の中に抱きしめられたセイが
狂ったように離せと繰り返す

「先生ダメです、今は私の側は危険ですからっ」我に返ったセイが精一杯の言葉を発し
総司から離れようとするが、締め付けられた体は痛いほどで・・・
抱きしめられた腕や胸から温かさが伝わってきて
そのまま気を失った。


今までに見た事もないセイ、色気をふんだんに撒き散らし
総司の上に圧し掛かった艶のある表情に総司の心が泣いた
何をされたかは解らなかったが、尋常ではない
髪は振り乱れ、着物は袴など勿論付けれる訳もない
着流しのままのセイを抱き上げると着物の片側がはらりと
垂れ下がると、総司は真っ赤になりながら、それを引き上げ、もう一度抱え
草木の多い茂った中へと進んでいった

セイを抱えてるお陰で、時間を必要以上に消費している
それは総司にも解ってはいたが、土方の約束は明日。
間に合うはずはない・・・・

(今日は此処までですね・・・・)
総司はセイを自分の羽織を脱いでその上に寝かせ、腕を首の下に滑り込ませると
セイを抱きしめた
「あ・・・先生・・・・」「気が付きましたか?」目の前に居る総司に吃驚して
セイは飛び上がりそうになるが、総司がそれを許さなかった
「嫌でなければ、このまま居てください」
ずっと求めた温もりが此処にある。生きていた嬉しさを感じるようにセイを抱きしめた

「先程は・・すいませんでした・・・」「何があったか・・・聞かせて頂けますか?」
その優しい口調に、頭を縦に振り話を始めた
命を助けられた事から今までの経緯・・・そして、今自分の状態が普通ではない事


しんと・・・静まり返った森の中、二人きりで大きな木下に身を横たえ
セイの話を総司が一つ残らず聞き、震えながらセイを強く強く抱きしめた
「先生・・・くる・・しいです・・・」震えながら抱きしめてる総司を感じ
寒いのかと、空いた右手で総司の背中を摩った


「先生、すいません・・折角見つけて頂いたのに、このままでは帰れないんです」
セイの言葉に総司がぎゅっと力を込めた
「此処で良いですから・・・・先生は明日帰隊して下さい」
「何を言ってるんですか!だめです。こんな神谷さんを置いて帰ったら
士道不覚悟で私が切腹ですよ」

「でも、明日までに帰らなければ、いけないんですよ?」
土方さんは解ってくれますと紡ぎセイをぎゅっと抱きしめた
総司の胸の中で眠れるなんて、どれだけ幸せなのだろうとセイは涙を目尻に溜める
「では、お願いがあります・・・いえ、やってください・・・。」
両の手を総司に出すと、自分の持っていた手拭でセイを縛った
おずおずと縛る緩さにセイがもっと強くお願いしますと声をかけ
再び縛り上げる。口も猿轡をしてくれと懇願したが
総司にはそれだけは出来なかった

「折角逢えた神谷さんの口を縛ったらお話できません」と、頑なに拒否する総司に
折れたのはセイだった。

やはり襲い来る・・・・ぐっと唇をかみ締め、横で眠る総司に迷惑を掛けたくないと
セイはその場を離れ、のた打ち回る。
かはっ・・・と、吐き気に似た胸の圧迫が気持ち悪くて吐き出すが
何もでない。苦しくて逃げたくて、遣り切れない思いがドンドン胸を侵食して
セイは自分の頭を木に打ち付けた。
額から流れる血が、顎下まで落ち、苦しみに負けそうで
あの快楽を求め戻ろうとしている自分に気が付く
(だめっ、戻れない・・・戻らない・・・沖田先生が迎えに来てくれたんだから
セイ・・・戻ってはダメっ)再び打ち付けた額が、柔らかい何かに包み込まれた

「苦しそうですね・・・・」「っつ・・・沖田・・せんせい・・・っく・・・はぁはぁ・・・」

「あの洞窟へ薬を貰いに戻りたいですか?」ふるふると頭を左右に振る
長い髪がゆらゆらと揺れるその愛らしい姿を総司は知らない
女の下ろし髪などは、生涯見れないだろうと思っていたのだから・・・

そんなセイを苦しめている薬にも苛立ちを覚え

手首を掴み、乱暴ではあっただろうが自分の胸にセイの体事収めた
「暴れても、噛み付いても離しませんから・・・苦しいなら好きにして良いから
薬が抜けるまで、手伝わせて下さい。」

総司の言葉に、涙が出ない訳がない。今まで一人でその薬を抜こうとしていたのだから

だが、セイはそれを拒んだ

額の血を拭い、拒絶された寂しさから細い木を見つけてセイを括った
総司がその木とセイの間に押し入り、セイを正面から抱っこする形になると
ぎゅっとセイの体を抱き締めた「何をなさるんですか!」
「沖田先生っ!」
「嫌なのは解っています・・・でも、見ているだけは・・・辛いです・・・」
総司は木に背中を預け、セイを自分の足の上に座らせると、少し足を縮めて
出来る限り抱き締めた。
暴れていたのも、体力の限界が引き起こす睡魔に負け、セイはくったりと総司に身を預け
懇々と眠り出した・・・。
それを確認した総司が、ふぅ・・・と深い溜息を吐くと今ある自分とセイの距離に
一瞬にして顔が真っ赤に染まった。

(うわ・・・うわ・・・うわぁ・・・な・・・何やってるんですかねぇ私・・・・)
身を離したい・・だけど、子供のように寝入ってるセイを起こし、体を離すのも出来ず
総司は混乱した。

わたわたと動き回ろうとするとセイが、寝心地の悪さから一声唸る
その声が首筋に甘い吐息が降りかかると、うわーうわーと焦るばかり

頬を真っ赤に染め上げ、セイから視線を離す事でどうにか逃れようとするが
鎖の胴着さえ付けていないしかも、着流しの布が折れた所から晒された足は
総司の男を擽り目覚めさせようとする

(一応男なんですよね・・・私も・・・)
ふぅと、深い息を吐き、セイの体と木の間からゆっくりと抜け
手首を縛っていた手拭を解くと、セイを先程の場所へ連れ帰り、今度は一人で苦しまないように
総司の手とセイの手を括った
右手は、刀を振るうには必要だからと、総司の左手とセイの右手
絡められた指先が触れ合い、総司は再び目を閉じた


「ぁ・・・」セイが目を覚まし繋がれた手を見て赤く染まった
だが、セイの左手が痛みを訴え、右手は繋がれたまま・・・・
(なんで、繋いじゃうんですか・・・もぉ・・・)
総司の不可解な行動は、セイの女の部分が喜んだり悲しんだりする
恐らくは、男同士であっても総司は同じ事をするのだろうなァと
苦笑いすると、するすると手拭を解き、セイは、その手拭を水で清め、総司の汚れている頬に宛がった
「ん・・・あ、神谷さん・・・」「おはようございます」にっこりと笑うセイ
昨夜までの乱れを忘れさせるような笑顔に総司も釣られて微笑んだ

「もう、苦しくないのですか?」不安げに見上げる総司に、微笑むだけの返事を返すと
行きましょう・・・と、今日は歩きますよ!と、力一杯伝えた


自分が苦しんでいる時
自分が自分を忘れた時
逢いたいと思った時
総司はそれを裏切る事はなく、川原で助けてくれたあの姿を
ふっと思い出しセイは心に決めた

こんな薬に惑わされている場合ではないと

震える手が、苛立ちを増幅させ、薬を求める己を止める為にセイは傷口を握り締めた
激痛で声が漏れないように、総司から少し遅れを取ったように見せながら
上がる息は仕方ないと諦めるが、心配性の総司を少しでもその負担を軽くしたいと願った


夜・・・日が隠れ月が昇り、どうにか最初に戦いを繰り広げた黒谷まで辿り着いた
総司がにっこりと笑い、セイを導く
と・・・セイがグラリと体を傾かせたのを総司の横目が捕らえ、セイの体を支えた
「あ・・・すいま・・せん・・・」その時に総司に伝わった震え、汗、呼吸の乱れ・・・・
「っ・・・貴女、我慢していたのですか!?」怒声を帯びた声にセイはにっこりと微笑んだ
そのまま、意識を飛ばすセイの右手がだらり・・・と地に落ちると、総司がその手を持ち上げ、セイを抱き上げようとした
が・・・・

「貴女って人は・・・・・」
深い溜息が総司の口から零れる

ぐいっと左手の袖を捲り上げ、皹が入ってると言う場所
二の腕まで捲ると総司はセイを抱えたままで左手を頭に置くと、がりっと掻き毟る
無数の傷、しかも、先程までセイが自分で付けていた傷
右手の爪の先に赤い皮膚片が付いていて、それがあまりに新しい血液だと言うのは
日頃、血液が流れるのを良く目にするからすぐに察しが付いた

「ばかですねぇ・・・・あなたは。」そう呟くと、セイの体を背中に乗せ
籠を頼むと、そのまま、法眼の家まで運んだ

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