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≪ 向日葵5 | | HOME | | 向日葵7 ≫ |
長い…w
それは、何故起こったのか…
あの声は、なぜ自分の心を乱したのか…
考えなくても答えは見えている。
大事な人、だから心が乱れた
好きな人だから…苦しくなって、要らない事まで考えてしまった
(そうだ、カカシ先生がそんな事するワケねぇのに
オレってば…そう言う信頼を、忘れてしまってたんだ…
だから、あの時不安とかそう言うのに支配されてしまって
アイツをどうしたら良いか…それを悩んだって事か。
例え…好きだとしても信じなくちゃならねぇんだ
好きだからこそ、信じ抜かなきゃならねぇ…
それを…一番大事な事を、すっぽり忘れちまったから
オレってば…あんなに動揺したんだ)
己の両手を黙って見つめて答えを出した。
人と深く付き合うなんて今までに無い事で…
その人を大事に思う事は出来ても、信じる事よりも
自分の不安の方が大きくなった結果…
と言う事を理解した。
無論サスケの時も同じように、そんな思いに苛まれたし
だけど…彼とは言葉を交わす事も殆ど出来なかったから
己は、深い闇に飲み込まれそうになった。
それでも、彼を信じ、長い間追う事で
彼の人となりを知れたとも思うし、大事な友達を
守る事もできた…なにせ
彼は今木の葉の暗部として、あの里を守ってくれているのだから。
5年間暗部で働く事…それがサスケの戻るための縛り。
それを、サスケが受け入れてくれた。
火影の綱手が出した、譲歩しすぎていいのか?と言うほどの優遇に
サスケも、それを受け入れる事にした。
だから、あれ以来…互いにちょくちょくと会うことは叶わなかったが
既に1年は何の問題もなく過ごしている。
半年前に一度会ったサスケは相変わらず自分をウスラトンカチと呼んだが
それでも、瞳の奥の闇は…随分と明るくなったと思えた。
人は変われる…
成長することもできる。
だから、この想いを捨てることをせずとも
絶対に折り合いを付けてやると、ナルトは思った。
◇
ザザっと鳥の国を抜けたカカシが、闇の中銀の髪を揺らしながら
木の幹を蹴り上げた。
予定より早く到着しそうだな…と、一度足を止めると
月を見上げる。
「さ、この辺で休憩と行きますか…アイツ…驚くだろうな?」
なんて声を掛ければ、横にいた黒い影が小さな声で返事を返した
「…あぁ」
少し開けた場所で、薪に火を起こし
野営の準備をして二人でその火を見つめた。
「それにしても…オマエ暗部が随分板に付いたな」
と言うカカシの声に、チラリと視線を向けて
すぐにその視線を逸らし、火を突く。
パチチッと、木の生乾きの樹液が音を立てると、静かに
腕を膝に置き、その手の上に顎を載せて、まだまだだ…と答える。
「サスケ…戻ってくれてありがとう」
「っ…フン!」
カカシの言葉に恥ずかしそうに鼻を鳴らすと、火に照らされただけではない
赤い頬に、カカシもニッコリと笑った。
「お前はいつもそうだ…そうやって受け入れてしまうから
ナルトもほだされたんだろうよ」
その言葉に目を見開いたカカシが、声を張った。
「…オマエ、知ってたの?」
「解る…だけだ」
「あはは…こんなのの、どこがイイんだかねぇ」
なんて、隻眼の目を細める姿に、サスケもポツリと声を掛ける。
「ずっと…諦めず傍に居てやってたからじゃねぇのか?
深く傷を負っても…アンタがナルトの傷を癒してきたんだろ?」
「…そこまで良い奴じゃぁ無い。」
「あんたも闇を抱えてるからな…でも、その闇を自分で理解して
抑えて来れてるんだ、だからナルトの傍に居られた…
アイツは周りの人間の闇を側に居るだけで見せつけるからな…
真っ直ぐ過ぎて…自分が醜く汚く感じてしまうんだ…」
その言葉にクスッとカカシが笑った。
「なんだ?」
「お前も随分饒舌になったもんだな?」
「……フン」
カカシの言葉が気に入らなかったのか、そこから言葉は繋がらず
互いに寝袋の中へと身を沈め眠った。
二人へ与えられた任務は、砂の里からの犯罪者移送。
サスケとのツーマンセルとなった。
その犯罪者を捕まえたのが、ナルトと綱手から聞かされてはいる。
どうやら、心理内にある人間の口調を真似ることで
相手の心を乱して逃走すると言う厄介な技の持ち主で
それに心揺れることなく任務を遂行できる人間として
選ばれたのが、サスケとカカシと言う事になる。
勿論、綱手の目論見もあるのだろう。
木の葉の里では、大手を振ってサスケと話をする事を禁じられているから
今回の任務が与えられた…と言うのが正式な理由ではないだろうか?
「綱手様も本当にナルトには甘い…」
「五代目も、ナルトに惚れてんのか?」
なんてサスケの言葉に吹き出したのは言うまでもない。
そうこうしているうちに、砂の領域へ差し掛かり、ネジと会う事となった。
サスケは面をしているが、日向にはそれは通用しない。
何の問題もなく、ネジは頭を下げ
カカシは”よっ!”と、手を上げサスケは黙ってそのカカシに付き従った。
「ナルトなら執務室ですよ」
「そ?元気にやってた?」
「ええ…元気というか、いつも通りです」
なんて言われればやっぱりね…なんて言葉がするりと落ちる。
久しぶりに会う彼は、少しは印象でも変わっただろうか?
なんて心に期待という言葉を抱き、カカシは大きく割れた土の壁を
サスケと二人で潜った。
《風影執務室》
そこへ案内された二人が、カンクロウと久しぶりだと挨拶を交わし
執務室をノックすると、ナルトがカチャリとドアを開いた。
「うお!カカシ先生と…サスケ?」
入ってと、二人の手を引き、そのまま長椅子へと連れて行くと
コトンと、茶を差し出して風影は今会議中だと言う旨を伝えた
「オマエ一人でココに居れるの?」
きょろ…とカカシが辺りを見回すと
カンクロウが、補助の椅子を引き出して言う
「ナルトは、信頼されてるからじゃん!」
その言葉に、そうだった…と、サスケも思う。
彼と対峙した時に…涙を自分のために流してくれた男でもある。
火影にも言われていたが…今までの非道を詫びてこい…と言う
命令もシッカリと受けてきていたサスケはあの頃の自分を思い起こしていた。
彼は自分に言った…
小さな光明ですら目に届くと…
目に届いたその光を…見て見ぬふりをした己を。
その光は今も輝き続け、目の前で嬉しそうにカカシに今までの出来事なんかを
つらつらと伝えている。
「サスケ!」
「なんだ?」
「面取れよ」
「ダメだ…」
「良いんだってばよ!ここは木の葉じゃねぇんだから…ホラ」
ナルトがピラっと開いた巻物には
サスケの面を取ることを許可した言葉が書かれていて
ナルトはそれを、直ぐにサスケに伝えたのだ。
「……。」
自分のやって来たことへの、枷として被った面を
ここで取っていいものかと押し黙ったサスケの肩を
ポンと叩いて、晒されている片目を弓なりに引き下げるカカシに
溜息を落としながら、面を外した。
「久しぶりだってば!」
と、ヘヘッと笑うナルトに、なぜか視線を合わせづらくて
そっぽを向いてしまうと
丁度、風影が会議を終わらせて執務室へと戻ってきた。
「来ていたのか…カカシ」
「ええ…お久しぶりです、風影様」
そして視線は…黒髪の、彼に向けられた。
「サスケ…?」
「我愛羅…その、会談の時はすまない木の葉に復帰したんだ…今後とも宜しく頼む」
スッと立ち上がり一礼をすると
ナルトもなんだか照れくさそうに笑った。
サスケは変わってくれた…自分の道を、自ら選び進んでくれているのだと
凄く嬉しくなってしまう。
そんな会話の中、一日だけ宿泊する事を許可されて
ナルトたちの部屋の横の部屋に一泊して明日の昼に出立する。
ほんのひと時…
丁度任務を上がった者たちがカカシとサスケの部屋へとやってきて
それとなく色々な話をしている中
ナルトは執務室から出れずにいた。
「もう、上がっていいぞ?カカシが来ているんだろう?」
と言う我愛羅の言葉に、ニカッと笑って答える。
「…先生はオレに会いに来た訳じゃねぇし…それに
オレは何時もお前が執務を終わらせるまで付いてるだろう?
先生やサスケが来たからってそれを変えるつもりはねぇってばよ」
そうか…と、言葉を発し、風影の印をペタと押し付け
筆を走らせて名前を書くのを続けた。
「それにしたって…ずっとココにいるけどさぁ…
影の仕事って思ってるより、カキモノが多いのな?」
「当たり前だろう…お前もそのうち…こうなるんだぞ?」
「え~?オレってば任務いきてぇ!」
「…それは」
無理だと思ったが、それを口に出すことを躊躇った。
ナルトなら…やりかねない。
火影を背負ったまま、任務に出てしまいそうなのは確かだった。
「お前が、火影になったら…補佐は誰にするんだ?」
「…ん、カカシ先生と、シカマルかな…二人共頭切れるかんな
オレってば、どーせなぁんも分かんねぇから…
二人に頼りっぱなしになりそうだなぁ」
クックックと、将来を思い描き微笑むナルトを見て
彼の周りに集まる人間を思い描けば、容易に彼の周りの人間を理解できてしまう
きっと、カカシ、シカマルを始め、サクラや他の木の葉の忍びたちは
彼を心から信頼し支えて行く事だろうと…我愛羅は思った。
執務が終わり、ある程度の戦略をナルトと討論し
部屋へと戻る頃には既に深夜を回っていた。
ん~っと、両手を高く掲げ体を伸ばしながら、部屋の前までたどり着くと
カカシが、部屋の外でボーッと窓から空を見上げている姿が目に入った。
「…先生?」
なんでそんなところに?と、続けようと思ってたのに
カカシの言葉が先に出た。
「よっ、遅かったな」
まるで、自分を待ってくれていたような…
そんな言葉になんだか嬉しさがこみ上げてくる。
けれど…今は任務中…。と、心を決めているのだからと
「あぁ…風影の仕事手伝ってたかんな…」
と、答えてみるもギシッと、体が固まるのがわかる。
何だか沢山のことが一気に起こってパニック状態なのかもしれない。
カカシへの思いを改めなければとか…諦めることができるのだろうかとか
もう、目の前に現れた銀を目にしてしまえば
一瞬でその考えは塵となって行ってしまうのだ。
「なぁに?また緊張?」
「…イヤ、そんなんじゃねぇってばよ」
「クスクス…少し話でもしない?」
「…うん」
スッと窓を開け、ナルトが目の前にある屋根の上に飛び移ると
カカシへ視線を向け、それに導かれるようにカカシもその横へと飛んだ。
久しぶりのカカシの存在。
その大きさに心がギュッと締め付けられて
触れてもいないのに熱が籠って行くのがわかった。
綺麗な月が、砂に時折隠されては姿を現す。
木の葉の里では決して見られない景色の中、彼と共にいる事が
すごく不思議な感覚だった。
と、そんな事をほんわかと考えているとカカシが口を開いた。
「3日前な…サクラがお前を心配してたよ」
「え?サクラちゃんが?」
「そ、オレにお前が変だって…言ってきた」
「あはは…そっか、心配かけちゃったってば」
「大丈夫だと、伝えておいたからね?お前はちゃんと
自分を解って、あの時…オレに言いに来たんだろう?」
その言葉に目を見開いて、心中を悟られたと言う今の状態に
面白くない…と、口を尖らせた。
「あーあ、先生はなんでもお見通しって事かよ!」
不貞腐れたような視線に苦笑いを向けて
バカだね…オマエって言うと、カカシはスッと自分の手のひらを見やった。
「どーせ、馬鹿だってばよ…」
と、尖らせた唇が乗せた言葉を遮るようにカカシが言葉を吐きだした。
両の手をそっと握りしめて…
「木の葉に…早く戻っておいで。」
「…うん、解ってるってば、あと少しだから
それに、先生に会えないと思ってたのにとんだサプライズだったってばよ!
しかもサスケも一緒って…すっげー嬉しい!
オレも頑張って任務終えて、戻るから」
「ん…待ってるよ」
なんて優しく微笑まれれば、胸がまた強く締め付けられる。
顔が一気に熱くなって、うわぁ!なんて頬を隠すが、もう
隠す必要もない…だってもう、思いは伝えたのだから。
「ニャハハ…先生すっげー今優しい目だった」
パタパタと自分の顔の熱を冷ますナルトを横目でみやって
そう言えばサクラも同じ事を…言ったななんて思い出した。
恋心なんてとうの昔に捨て去った。
そんな物を持っていても自分のせいで狙われ命を削がれていく。
昔サスケに言ったように…
自分と言う存在を消そうとする人々が、己を狙うために大切な人間を狙った…。
だから、誰もいなくなった。
大切と呼べる人間を作るつもりもなかった。
けれど、その力に贖えるナルトの存在は…確実に自分の中では大切な人として
育って来ている。
遊んだ女は数知れず…でも、その女たちを彼女として傍に置く事は
しなかったしさせなかった。
非道と呼ばれようが、タラシと罵られようが…それが自分の生き様だと思ってたのに
ここに来て、30を超えた自分が手に入れようとしているのは
そんな弱い存在ではなく、自分をも凌ぐ強さと、勇敢さ…
優しさと包容力を持つ男。
「それは…お前にしか見せない目なんだろうな…」
「え?」
「いや…なんでもないよ」
フッと笑った。
もう、認めたようなものだろう
この体温を感じたいと、今にも手を伸ばしてしまいそうになっているのだから。
けれど、自分に制御が出来ている今は、彼を抱き寄せることはしない。
なにせ、彼には本当に幸せを掴んで欲しいから…
そんな自制との葛藤の中、ナルトはそんな事とは露知らず…
やはり思いを真っ直ぐにぶつけてくる。
「センセ…オレってば、やっぱ好き」
本当に…普通の会話をするように押し出された言葉は
ナルトの思いが、溢れ出た為…。
「…オマエねぇ、こんな所で」
「しゃーねぇだろ!…自分の言葉は、曲げたくねぇんだ」
「…うん、そうだったな。
ありがとうな?ナルト…こんなオレを大事に思ってくれて。
帰ってきたらちゃんと話そう?
オレとオマエ…これからの事」
その言葉に、ナルトも同感だった。
この想いを伝え知られたからといって、距離を置く事だけはして欲しくなかったし
自分もそうするつもりは毛頭ない。
「おう!」
頬を染めてにっこり笑うナルトの頭を自分の肩に引き寄せ
グッと片手で金色を掻き抱いた。
「!? センセ?」
「ははは…ナルトだなって…思ったら止まらなかった」
スッと、カカシはナルトの頭を離し、じゃ…なんて言葉を残してサスケの待つ部屋へと
戻っていった。
ただ、傍にいれれば良いと思ってたのに…不意に与えられた温もりが
すごく心をかき乱す。
「カカシ先生、性悪だな…」
なんて苦く笑った。
*******************************12
それは、例えば…大好きで
その人のために命を投げ打てるとしたら、それをしても守りたいと願うわけで
例えば、大きな花が開けばその美しさを自分だけに閉じ込めず
好きな人と共有したいと思ったり…
そんな些細なこととか、そんな思いが逡巡する中、朝を迎えた砂の里
カカシと、サスケはそれぞれに色々な人と話をしながら
昼の出立までの時間を過ごしていたが
ナルトに、サスケと話す時間をあげたいと…申し出たカカシに承諾を出した風影が
それなら自分と話をしようとカカシを風影室へと導いた。
「カカシ…」
「はい?」
「ナルトをどう思う?」
「は?」
突拍子もない言葉に目を丸める。
けれど、彼の瞳の奥には、やはり…と思える焔を見てしまった。
「俺は…ナルトに振られた。お前が好きだと、既に告白したことも聞いた…
それが、オレを振った代償なんだろう…
情けない自分を散々曝け出して最後は笑って友でいる事を誓ってくれた」
「…そうですか、そんな事が」
「お前はどうなんだ?」
チラリと向けられた視線をうざったそうにカカシは逸した。
ナルトを思う人間に、自分はどうなのかと聞かれても…
答えられるわけもない…。
答えは見えているとは言え…まだ、本人にも伝えていないことを
あえてここで伝えるのはどうも腑に落ちなかった。
「…言わなければならないんですか?」
「いや…言わずともお前の目にはナルトしか写ってないことは
すぐに解った…だから無理に聞くつもりはないが…
お前には一つ言っておこうと思ってな…
ナルトは女と契る事はこの先一生死ぬまで無い…例え
火影になってもだ」
その言葉に目を見開いたカカシが続きの言葉を促すように口を開いた。
「は?…どう言う…」
「家族を持つという事は、己の死を覚悟する時だからだ」
「…死ですか?」
「人柱力と言う、宿命だろう?
恐らくナルトの子が生まれれば、早くに奴の尾獣は抜かれ、子に託す事になる
それを恐れてるんだ…子に自分と同じ運命を歩ませる事はしたくないと言っていた。
そして、子は死を覚悟する…また、その子が同じように子をなせばそれを繰り返す
だから、アイツは言った…
自分の代でこの、尾獣の循環を止めると…だからアイツは…」
悲しげな目を、向けられてカカシはフッと風影の前だという心の緊張が揺れた。
「……」
考えた事がなかった。
確かに尾獣は、幼い内に移さなければならない…
そうなれば勿論ナルト自身が死ぬという事で、それを望むと言う事は
ナルトの死を望むようなものなのだと…
そんな簡単なことを、なぜ想像できなかった?
彼は家族を持たず、この先を生きる…そう既に決められているかのような運命は
未来さえ、与えてくれないのか…
なぜ、ナルトだけがそんな想いをしなければならないんだ…
火影を最終目標にしているナルト。
その後は余生を楽しんで、一緒に縁側で茶でも啜ろうとか
そんなことまで思い浮かんでいた自分が、腹立たしくなった。
いや、彼の目標の火影にするまでしか、思考が回っていなかった。
家族を持てば、その家族が苦しむ…
ナルトの命か子の命…
火影になってしまえば、ナルトは子に継がなければ成らくなる…
それは恐らく、大名の命令になって、ナルトを苦しめるだろう。
それを…彼はまだ10代でそんな事を考えているのだろうか?
頭を鈍器で強く殴られた気分だった。
「カカシ…だから、お前がどう思っているかはわからないが
本気の思いはお前に向けているんだ…それだけは汲み取ってやって欲しい」
切なげに言う我愛羅に視線を向けて
カカシはソっと頷いた。
自分だって本気で考えている。
ナルトの事、先の事…けれど、男同士という障害は
あくまでも家庭を持つ上での義弁でもある。
(もう、気持ちを塞き止める要素がなくなっちゃったじゃない…)
グッと、手に力を込めてカカシがなにか吹っ切れた表情を向けて
我愛羅に頭を深く下げた。
「そろそろ時間だってばよ!」
と、強く扉を開くナルトに二人の視線が向かうと
本当に太陽を思わせる笑顔に吊られて二人共目尻を下げる。
「ま、じゃ~そろそろ行きますか…」
と、いつもの飄々とした言葉使いでカカシはナルトの横を通り過ぎた。
「あと少し…頑張りなさいね?」
「おう!」
背中合わせで交わされる言葉に、我愛羅も薄く微笑んで
サスケとカカシが、拘束された忍びを連れて里を後にした。
◇
時同じくして、鳥の国で不穏な動きがあったと火影へ報告があった。
どうも、どこかの国の抜け忍が捕まってしまい
それを助けるために数人の忍びが動いているという情報と
今回カカシとサスケに出した任務が重なり嫌な予感を胸にした。
どうにも静まらない、不安定な気持ちを持て余して、グッと執務室の扉を睨んだ。
「シズネ!宝くじの新聞を!」
当たらないでくれ…そう願うが
番号を照らし合わせ、深く息を吐き出した。
「ガイ班をカカシ班と合流させろ!あと、シカマルもだ!風影に文を!」
そう、危険は目の前にある。
囚われた男が、恐らくは今回のキーマン。
サスケとカカシと言う写輪眼最強タッグではあるが
宝くじが当たった以上、楽観は出来ないと綱手が告げる。
そんな状況を知りもしないサスケとカカシはただ、静かにその男を
木の葉に連れ帰る任務を遂行していた。
最初のうちは大人しく付いてきた男も、暫くの時間を一緒に過ごすと
突然口調が変わった。
「なぁ!なぁなぁってば!」
一番…自分たちの近くで過ごした人間。
そして、今見送られた相手…
その口調を真似て来る男に、二人は多少なりと苛立ちを覚えていた。
「カカシ先生ってば!」
突然の大きな声に、それまでは黙ってやらせていたが
気分がどうしても悪くなるため、男の首根っこを捕まえて
近くの大木へと体をそのまま押し付け、足が浮くほどの
力を加えると男が”グッ”と喉を鳴らして自分を見下ろしていた。
「なんのつもりか解らないけど、お前のその口調は気分が悪くなるから
止めてちょーだい。」
穏やかな口調ではあるが、灰色の瞳の奥の黒い眼球がギロリと怒気を孕むと
恐怖心が優先したのか苦しそうにもがく男がフイッと視線を逸した。
それに構わず、カカシの腕は男の体重を感じてもいないかのように
上げていた腕をするりと緩めると、ドサリと音を立てて男が土へと落とされ
ゲホゲホと何度か喉から空気を取り入れては、咳き込んでいた。
「珍しいな…カカシ」
「…そう?だって、苛立つでしょ?」
「あぁ…同感だ、お前がやって無ければ俺がやっていた」
サスケにしてみれば、ここまで怒りを前面に出すカカシは
自分が逃亡時代に受けたのみで、それ以外の彼の行動にそう言う
”匂い”を出さない男だと思っていた。
その為、その行動に移すと言う事が、どれほど彼を不快にしているのかが伝わってくる。
本来正体不明の人間にこんなに激情をさらけ出すことはかえって不確定要素に組み込まれる
その為、何時もであれば至って平然を装うのだが…
今回はそれが叶わなかった。
そして、それが全て敵の作戦だった事に気が付くのはもう少しあとになってしまう。
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