倉庫です。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ 向日葵8 | | HOME | | 向日葵10 ≫ |
頑張ってーw
男に猿轡をした状態で、サスケとカカシが倒木に腰掛け
その後ろには、縄で手足を縛られたナルトがいた。
必死に手足をばたつかせ、縄で擦れて流血しても
お構いなしで、いささかカカシも苛立ちが募る。
だが、苛立つくらいなら分析を急ごうと
カカシは思考回路を急ピッチで回し始める。
あの男の言葉から…自分の気持ちは既に相手に伝わっている。
そして、ナルトの思いも…おそらくは知られているだろう。
互の潜在意識の中で求める相手だからこそ…術がかかった
そう考えれば、辻褄は合う。
自分の気持ちを、本人に伝える前に周りに浮き彫りにされたようで
カカシにしてみれば気持ちの良いものではなかった。
それに、ゾワリと…心の中を覗かれたような、入り込まれたような
そんな違和感が一度だけあった…。
既にナルトには術がかかり、発動条件が自分と言う事は
サスケは覗かれたのだろうか?
『サスケ』
『なんだ…』
『さっきの戦闘中…心の中を覗かれたような気持ち悪い感覚があったか?』
やや考えると、サスケは首を左右に振った。
『そうか…』
『何か分かったのか?』
『まだハッキリとはしないが、術の概要だけは分かりそうだよ』
『…そうか、アイツは戻せるのか?』
チラリと視線を向ける相手はナルト。
流石にそこまでは本人かもしくは言術の文献でも見なければ無理であろうと
首を左右に振った。
と…ざざっ!と木々が揺れ、全身を緑で覆った男と
数名がその場へと降り立った。
「カカシ!」
「…やぁ、ガイ」
「って…さすがは我がライバル!既に倒したか」
はっはっは…と笑うガイに、こっちも犠牲者がいると告げると
ナルトを指差した。
「ナルト君!」
慌てて傍に寄ったのは、リー。
ナルトはそれに反応することなくもがき続けていた。
「どー言う事ですか?」
遅れて到着したシカマルに睨まれ、ハーと息を吐き出し事の経緯を話した。
但し…心理的なもの…と言うのはあくまでもカカシの想定なだけなので
それを省き、出来事だけを伝えた。
ガイがナルトを背負い、カカシは残り少ないチャクラをどうにか回復させ
木の葉へ向かって出発した。
どの道一日は夜を明かさねばならない。
シカマルからの伝達で皆口を開かず
押し黙ったままの任務となったが、時折ナルトが苦しそうに
唸る声に、痛々しく視線を向ける。
ガイ班のテンテンが、前に、後ろからリーが敵を見張りながら左右にはガイと
サスケが付き、カカシはそのガイの横を歩く事で敵を囲み取り逃さないように
ひた歩く事となった。
黙々と進む中で各々が色々と”何か”を頭で考え、その答えを導き出そうとしていた。
その時、フッとカカシが空を見上げ、ナルトへ視線を向けた。
ただジッと見つめてから、カカシは徐にサスケの手を取り
一団から一歩退いた。
「カカシ!」
「サスケ…俺に考えがあるんだケド」
引かれたサスケがフーっと息を吐き出し、その考えとやらを聞こうと言った。
「お前ら…悪いけど一足先に木の葉へ向かってくれないか?
サスケとオレは少し気に掛かることを調べてから戻る」
コクっと頭を上下に振ったのはシカマル。
カカシの気に掛かる事であれば、もしかしたら何かの解決の糸口を見付けるかもしれない
それ程に忍として信頼の置ける男なのだ。
「メンドクセーけど、連れて行きますんで気を付けて下さい」
と、シカマルが告げるとナルトは俺に任せておけ!とガイが相も変わらず
熱い口調で語って、カカシもそれに頼んだ…と答えて二人は踵を返し
今来た道の逆走を始めた。
「どういう事だ」
ジロリと、睨まれているような視線に、ハハっと薄く笑って頬を掻いた。
「…ナルトの様子がおかしかったんだよねぇ」
「は?術に掛かってやがるんだ、おかしくて当たり前だろ?」
眉間にシワを寄せたサスケが答えるとフッと笑ってカカシが答えた。
「…それにしてはチャクラ量が少ないんだよ、丁度…
半分のチャクラ量しかない。」
「…半分って」
「ん、かなって…だから少し捜索してみようと思ってね?」
なんて細く笑うカカシに、苦笑いをこぼしたサスケが仕方ねぇと
カカシの後を追った。
鬱蒼と茂った草木が、既に砂の里にいた事を忘れさせるように
木々を揺らしていた。
そんな中、歩いて移動していた先程とは打って変わって
あっさりとその場所に降りたてた。
「口寄せ!」
カカシが任犬を数匹呼び寄せると、”ナルトの気配を探してくれ”と
言うと、あっと言う間に犬たちが四方に散った。
術に掛かったその場所。
ナルトが追い付いてきた場所でもあるそこで
忍犬が補えない場所を、カカシとサスケで捜索を始めると
それはすぐに姿を現した。
「バレちゃったか…へへへ」
なんて、バツの悪そうな顔で出てきたナルトに
カカシもサスケも溜息を落とした。
「オマエねぇ…全く、バレちゃったじゃないでしょーよ…」
「やる事が極端なんだよ!ウスラトンカチがっ!」
我愛羅の言葉で、里を飛び出したまではいいが
その間に、自分は幻術に弱いこと、言葉に負かされ易い事
そんな事を思いながら駆けていた。
言葉巧みに騙され、カカシに口調が変わった時は
本気で彼を逃がしてしまうのではないかと
そう思うほど。
既に敵の術中に嵌ってしまっていたのだと、あの時は深く後悔をした。
カカシを信じる事さえ疑った結果
今回のこの作戦が思いついたのだと言う。
あのナルトも確かにナルトだが…早い話影分身と言う事だ。
但し…寝てしまえば術は解けてしまうし
影分身に与えたオリジナルに近いチャクラをゆっくり消費させるために
なるべく戦闘は控えなければならない。
衝撃を与えると消えてしまう影分身では今回は役に立たないのだ。
だからこそ、ナルトはその場から動けなかった。
影分身に結界を張ると言う、不器用なナルトが繊細な術を使っているのだから。
「それにしても…オマエ随分術の活用上手くなったじゃない…」
ポンと頭に手を置かれ、ぐりぐりと撫で上げられると
へへっ…なんて照れくさそうに笑うナルトを横目で見ていたサスケが
小さな声で、お前にしちゃ上出来だ…と、続けてくれたもんだから
ナルトは満面の笑顔で笑った。
「で、恐らくお前は鍵を言えば同じになる…よな?」
「…鍵?鍵ってなんだってばよ!?」
「言術だよ…発動の鍵はオレだったよ」
「カカシ先生が?発動の鍵なのか?」
「あぁ…アイツと何があったか教えてくれ」
と、言われれば固まるしかない。
いや、言わなければいけないのだが…
恥ずかしそうにそっぽを向いて話すナルトに、頭を抱えるサスケ
そして、聴き零すまいと、真剣に話を聞くカカシ…。
「って事は、テメェが自分の名を吐き出して
相手に術に使ってくださいとばかりに、自分を渡したようなもんだろうが!
ったく、アホか?ドべのままなのか?やってらんねぇ!」
米神に、青筋が立つほどの怒りを口に並べ、サスケがフンとそっぽを向くと
やはり、ナルトは何時ものように、突っかかる訳で…。
「ぬわぁ~サスケええええ!!!ドべとかアホとか言うなってば!
そんなん、オレだって知らなかったんだからしゃーないだろう!」
「お前は忍者をなんだと思ってるんだ!聞かれたら答えるってどこのガキだよ!」
「ムッキーーーー!!!!!ガキってなんだよ!くっそー!」
と…すったもんだやってる中で、カカシが色々と情報整理を始めていた。
なにせ、サスケとナルトは…もう、切っても切れない程の深い絆で結ばれている。
己がその口喧嘩を止めた所で互の気持ちが収まらなければ止まるはずもないし
逆を返せば…自分では止められない…。
いや…止められるかもしれないが、それは二人のコミュニケーションなのだから
止める気もなかった。
二人が言い合いを一段落させると、ナルトがそっとカカシの横に腰掛けた。
それを見たサスケもその場に腰を下ろし、フーっとスッキリしたような顔で
カカシをみやった。
「二人共落ち着いたか?」
子供のようなやりとりを十分堪能したであろう二人に聞くと
面白くなさそうに二人揃って顔を背ける
(オマエら兄弟か…)
とまぁ、ツッコミを入れる程の二人は、七班の頃とは何の変わりもない。
「んじゃ、とりあえずオレの中で分析した事は…
オレが名前を呼べば術は発動する…それがどんな形で無効化するかはマダ解らないから
オレはそれまでお前の名前は呼べないって事だ。
それと…術に掛かった影分身は出来れば木の葉まで持たせろ…
っても、ま…お前は其のつもりだったんだろうから影分身に結界を張ったんだろうけど?」
その言葉にコクリと頭を上下させた。
だが、凄く集中力が必要なことも確か。
ただ、影分身とは言え、あまりに離れてしまえば結界が届かなくなる恐れがあるので
ナルトはこれから、木の葉に向かうつもりだった。
と、その時に現れた二人に捕まったと言う訳だが…。
結局、サスケとカカシに支えられながら、チャクラを極端に使わないように
ナルトは木の葉に向かう事となった。
「それにしても良く思い付いたな…」
「…んまぁ、我愛羅んとこでさ、センリャク?やってたからさ
何か考えて動かねぇとなって…思ったら自然にやってた」
「そうか…」
成長しているんだな…なんて思うと胸がほっこりと暖かくなる。
まぁ、それでも…彼の戦いセンスは抜き出ている
それに頭が加われば本当に怖いものなしだろうなと、カカシは思った。
**********************************************************18
眠れないナルトの為もあり、カカシとサスケは眠れない夜をひた歩く。
無論本人のナルトも同じように眠れない夜を歩いて過ごす。
本来体力は人一倍あるナルトもさすがに術の発動をしたままの
長時間の徒歩はチャクラも使えず疲労の色が見え隠れする。
兵糧丸をとりあえず口にしながら、どうにか乗り切り
明日には里に付くであろう場所まで来ると休憩を取った。
一刻歩き、四半刻程の休憩…忍のチャクラを使えない状態ではそれが一番
体力の回復には大事だった。
ガイ達も歩いているから、恐らくたどり着いたとしても
深夜もしくは明日の朝一番。
それまではナルトのチャクラを途切れさせる訳には行かない…
術が失敗していると知れば
恐らく何が何でも逃げ出すか、他に言霊を使うかもしれない
さほど知られていない術を発動されれば、木の葉の里でも、どうなるか分かったものではない。
それを考慮すればこのままの状態で木の葉で彼らを拘束し
精神状態を壊さなければならない。
人としての思考を持たせると、言葉だけでこの国を揺るがすかもしれないほどの
厄介な相手でもある。
もしくは、チャクラを練れないようにしてしまうか…
どちらにしろ、良い結果は望めない相手。
「ナルト…お前大丈夫か?」
サスケに支えられてよろけた時に掛けられた言葉。
体が言うことを聞かないほどではないが、かなりの疲労を蓄えた彼を
支える手がもう一本伸びてきた。
「オレも支えてやるから、確り起きてろよ?」
「へっへっへ…カカシ先生に支えられて帰還なんて、いつもの逆だってばよ!」
「…オマエねぇ、チャクラ切れがどれだけ辛いか分かったでしょ?」
「まぁ…そこそこに?」
「生意気だな…」
なんて会話をしながら、木の葉の敷地に入った。
一歩、また一歩と進むと、急にナルトが
「あ…」
と声を上げた。
「「どうした?」」
サスケと二人でナルトを見るとニッシッシと笑って
影分身が帰ってきた事を告げた。
恐らくは到着してある程度の話が終わったのだろう。
実際あと半日も歩けば木の葉の里に到着する所までは来ていたのだ。
どうやら、敵は無事綱手に引き渡され、ナルトの影分身の説明を終えて
この場所に戻ったと言う事になる。
「ふへー疲れたってばよ」
へにゃり…と、脱力するナルトをカカシが支え、グッと腕を引くと
背中に乗せた。
「カカシ…先生?」
「頑張ったからな…このまま木の葉まで戻るぞ」
「ありが…と」
頬を赤らめながら言うナルトを横目にやってらんねぇとサスケが
その場所を飛び出し先に行くとだけ告げた。
既にあと少しで到着する木の葉の領域、敵に遭遇する事は
まず、殆どない。
背中に背負ったナルトがスースーと寝息を立ててるのを見て
フッと薄く笑った。
「…お帰り」
その言葉をナルトに伝え、地を蹴った。
◇
「ん…?」
天井を見上げて出た声。
真っ白の天井に、白い布団…消毒の香りとざわつく廊下。
あぁ…病院?と、あまり思考を働かせないで理解した場所。
「起きたか?」
その声に慌てて振り返れば、猫背で丸椅子に腰掛けいつもの18禁本を片手に視線だけを
こちらに向けているカカシと目があった。
「っ…先生!?」
「オマエ3日も眠ってるもんだから…先生待ち疲れちゃったぞ」
「うへぇ…そんなに寝てたんだ?」
ゲンナリした表情で言うナルトに、薄く笑ったカカシが言葉を続けた。
「ま、チャクラ切れ…だから3日で回復するお前の体力もどうかと思うけど?」
「ははは…そか、で!あいつらは?」
「今、イビキが色々と聞き出してるよ」
そっか…と、納得しグッと体をベットから抜け出させると
うーんと体を低いっぱい伸ばした所で、クラリ…と視界が急に反転する
「うわっ!」
「ったく」
パサ…と、本がベットに落ちるのと同時に、ナルトの体がすっぽりと
カカシの腕の中へ収まった。
「急に動けば目眩もするでしょーよ…大丈夫か?」
ドキドキと大好きな人の腕の中で脈を早めるナルトが
頬を染めてカカシの胸をグッと弱々しく押すと
今度は被さるように、頭まで抱きかかえられてすっぽりと
カカシの温もりを感じた。
「せん…せ?」
「ん?…あ~抱きしめちゃったねぇ」
「いや、抱きしめちゃったねぇって!離せって」
「んーなぁんか…離したくないんだよねぇ、もう少しこのままで…」
バタバタと抵抗していたのに、その言葉で途端にピタリと暴れるのを
止めたナルトにクスッと微笑んでサラリ…と金髪を撫でる。
「あー案外お前の髪って柔らかいんだな?」
「…し、知らねぇよ」
「お前に早く返事したいんだけど…ここでするのもなんだし…
ま、お前の任務を早く終わらせないとね?」
「う…もう、答え出てんの?」
「…出たよ」
スッと、ナルトの体を覆い被せていた体を離すと
目の前に額あてで目を隠し、口布で殆どの顔を隠すカカシと
視線が絡んだ。
「……答えくれねぇの?」
「…ん、まだダメかな」
「っ…意地悪ぃ…」
「そう不貞腐れなさんな帰って来たら、ちゃぁんと答えてやるから」
「…うん」
カカシの手が、ソっとナルトの頬に添えられ、スッと
成端な顔を見せ付けるように口布が下ろされると
ちゅっと…音を立ててナルトの頬に唇が降ってきて
こぼれ落ちるのではないだろうか?と言うほど目を見開いたナルト。
「名前…呼びたいね」
「へ?」
「…なぁんか、止められるとシタクなるって奴?
お前の名前…呼びたいよ」
苦笑いに近い笑顔は、凄く綺麗で…
きっと何をしても綺麗に見えるんだろうな~なんて
ナルトの思考がカカシの顔だけに集中している中
自分の名前を呼びたいって言ってくれたカカシの言葉に
胸が熱くなってくる。
「先生…」
目を…伏せれば…彼はキスをくれるだろうか?
頬にすると口にするでは全然意味合いも違うけど…
してくれる気がして、そっと目を伏せた。
カカシが体をずらすのが分かり、ドキドキと期待でいっぱいに膨らみ
早くなる鼓動を隠しもしなかったのに
カチャッと開かれたドアに慌てて視線を向ければ
既に気配に気付いていたのだろうカカシが
額あても、口布も元に戻していて
残念な気持ちで溜息を吐き出した。
「期待しちゃった?」
クスッと意地悪く笑うカカシに頬を染めて羞恥に逃げ出したくなったナルトが
ドンと胸を押してベットへ向かった。
「ナルト…大丈夫なの?」
部屋に入ってきたのはサクラ。
心配して駆け付けてくれたのだろうと、赤い頬を諌めて
ニカッと笑った。
「だいじょーぶっ!オレってばツエー男!」
「何がツエー男!よ…もぉ。」
なんて言ってくれるサクラは本当に自分の事を沢山思ってくれてると
そう思える。
ずっと同じ班で共にサスケを追った仲間…
そして今は色々と離れる事も多いけど、カカシ班として
一緒に任務だってこなせる。
心強い仲間。
「あ、カカシ先生師匠が呼んでいましたよ?」
窓際にヌボッと立っていたカカシに声を掛けると
「あ~ハイハイ…」
と言葉を残し、ドロンと煙に身を包んだ。
「ぬあっ!カカシ先生ってば、挨拶もなしかよ!」
と、文句を言うナルトに退院の説明をしだしたサクラ。
素直に聞かなければ、体が粉々になって入院が長引くと
ナルトは大人しくその説明を聴く事にした。
≪ 向日葵8 | | HOME | | 向日葵10 ≫ |