倉庫です。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
≪ 恋蝶白銀の願い3 | | HOME | | 恋蝶白銀の願い最終話 ≫ |
続き
【恋蝶】=白銀の願い=Vo10
帰りたい…
カカシ先生…貴方の元へ
帰りたい…
木の葉の里へ…
「カカシ先生!赤丸がナルトの居場所を教えてくれます!」
「解った!」
なぜ、こんな事になったのか…
自分が指示したせいか?
いや違う…最初から狙いはナルトだった。
どうにか、二人を抑えたカカシとネジが諜報部員に引渡し
ナルトを探しに出た。
既に上忍試験は流れた形となり、数人がナルトを探す部隊を組んでいるが
先に現場に出ていたカカシとネジがナルトとキバを探す形となり
キバと合流した時点でカカシは己で先へと進んだ。
甘い香りと体を痺れさすような、脳に直接降りかかるそれは
何の花の花粉だったか…
そんな事を一瞬考えて、これがどこの場所で作られているかを思いだし
深く溜息を落とした。
火の国の…奥の山岳地帯にその集落はある。
抜け忍が良く、逃げていく先でもあり、放浪者の溜まり場ともなっている
その場所は火影も頭を痛めているのだが
簡単に立ち退かせる事も出来ないのは、大御所の数人が
この場所を守っているから。
悪さを表立ってはしていないが
必ず何かをしているのは間違いなく、何度か隠密行動で調べさせていたが
どれもこれも太刀打ちが出来なかった。
そこから漏れ出た情報の一つ。
”恋蝶の花”と言う花の名前。
麻薬として使用することが多く、甘く体をしびれさせる花。
その痺れで、医療忍者とかがよく使う麻酔を作るのだが
それがこの、山岳地帯標高の高い場所でしか咲かない花なのだ。
その花が、感覚を鈍らせて居る事は確かだろうが
カカシにはその花の抗体がある。
上忍になると薬物に付いてもかなり高ランクのモノを与えられ
それを使って自分の体を改造していく。
それは誰しもやっていることで、カカシだけがそれをやっている訳ではないが
現在その抗体を持っているのも、カカシだけしか居ないという事になる。
だからと言って、全く効かないかといえば、それは嘘になるのだが
「久しぶりに、この香りを嗅いだな…」
はぁと、息を吐き出し
山岳地帯へと足を進めたとき、不意に目の前の景色がゆらぎ
写輪眼を開くと、一人の青年が立っていた。
「っ…」
「……。」
「ナル…ト?」
赤丸も、吠えるわけでもなくその場のナルトをただ黙って見ているだけ。
両方の肩に何かが刺さった跡が、痛々しげに血を滴らせていた。
「…ナルト!」
先に動いたのはカカシ。
写輪眼で見てもチャクラの量は極端に減っているが
ふわふわとした足取りと両肩の傷から、滲み出た血液。
それ以外に見た目の違和感もなく、自分を真っ直ぐ見る瞳に飛び出すと
カカシがナルトの体に手を回し連れて帰ろうとした時だった。
パシッ…と、手を拒絶されその一瞬の出来ごとに、驚いた顔を向ける。
「触らないでくれ」
そう、一言告げると、ナルトは黙って帰路を進んでいく。
「ちょっと、ナルト?敵はどうなったのよ?それに触るなったって
オマエ結構な怪我してるのよ?」
「オレなんか死んでも誰も悲しまないだろうし、アンタがそれを心配するのは
所詮九尾のためだろう?気にしなくていいよ…オレは自分で生きていく道を歩く」
「ちょ!何言っちゃってるの?お前大丈夫?オレとお前付き合ってるんだよね?
そんな事言われたら、オレだって傷ついちゃうよ?」
「は?…どうせ、その思いだって紛い物だろうが!…っ」
クラリと、頭が揺さぶられたような感覚に、膝を折って、そこから先
奪われるように意識を手放したナルトをカカシが倒れ込む前に支えた。
「どうしちゃったのよ?ナルト…」
そっと髪をかきあげても、香りも、温もりも、彼のままで
何があったのかと言う疑問だけが頭に残った。
ネジと合流して、ナルトを渡すと、カカシはもう一度その場を見てくると
その場を離れた。
本当は、そんな事をしたい訳ではなく、ナルトに付いていたいと言う思いもあったが
あのナルトの言動がどうにもおかしい。
思いを通じ合わせていたはずではなかったか?
自分の思いを、悟られて…彼にそれを受け入れて貰ったはずではなかったか?
ガンガンと頭が痛みを訴えるのも無視してカカシが山岳の中腹まで足を進めると
人が一人入れるかどうか…と言う洞窟を見つけた。
そこへ足を進める頃には、頭痛と吐き気を伴っていたが、ナルトが戦った痕跡を一切残していない事が
不自然だったのだ。
それを知るために、探ってみるものの…その正体が掴めず
その場の磁場が悪いのか、チャクラ消費が凄まじく早くて
慌ててカカシはその場を去った。
一通り中も見たし、その当たりも探った。
無論忍犬達も使ってナルトの匂いを追わせたが、何も収穫がないまま
カカシも里へと戻った。
☆
【恋蝶】=白銀の願い=Vo11
目覚めたそこは、白い天井と白いベット…
まるでどこかの世界に置き去りになったような場所。
「ナルト!目覚めたか?」
声を掛けられてゆっくりと振り向くと、そこには髪の長い黒髪の男。
目が異質で、それでいて優しそうでもある。
「……。」
「おい?」
「……病院?」
「あぁ、あの時の様子を聞きたくて、ここで待機してたが…
あの時なにがあった?」
覗き込んできた相手をチラリと見てハーと息を吐いて答える。
「…わかんねぇ」
「は?」
「オレ、何がったかどうなったか…わかんねぇ」
「…記憶がないのか?」
「…お前はオレを知ってるのか?」
「は?当たり前だろう?…まぁ、とりあえず綱手様に連絡するから
お前は少しそこで寝てろ」
「……解った」
寝てろと言われなくても体が動かない。
ただ漠然と、ここに居るのはその男ではなく、最初にであったあの男だと思ったのだが
どうにも勘違いだったらしい。
なんて思ってる矢先に、綱手と言う女と、黒髪の男が戻ってきて診察を始めた。
「チャクラ量が随分減ってるし、回復が全然追い付いていない…どういう事だ?」
と、漏らした女。
「ネジ!すまんがシズネとサクラを呼んでくれ!調べなくちゃならない事がある」
医療忍者って事かと溜息を吐き出すと、ナルトが口を開いた
「あの場所で九尾が動けねぇ状態になって、まだ九尾も回復してねぇ
だから傷の治りが遅いんだ…それと、チャクラが回復しないのは
九尾にチャクラを吸われてるからでしばらくはこの状態が続く…
自分の体は自分が一番わかるんだ、調べなくてもいい」
「ダメだ!お前はそうやってすぐ無茶をするからな!お前は火影になるんだろ?
こんな所で、燻ってるくらいなら早く治して任務にでも出るんだな」
「あぁ…解ってる、チャクラ量は少ないけど…簡単な任務だったら今でも行ける」
「…お前ねぇ?そんなすぐに、任務に出すほど非情じゃないよ」
「火影なんて所詮そんなもんだよ」
「だったらその非情な火影にお前はなりたいのか?」
「……そうだな」
その回答に、苦虫を潰したような表情を作った綱手が、
カカシの報告時の言葉を思い出していた。
「あくまでも私の感覚でしかないのですが…あのナルトは、何かが違うんです。」
その時は何がだろうと思ったが、今ならなんとなく理解できる。
自分の事を顧みず飛び出して戦いに身を投じている子
その思いに、真っ直ぐな瞳に、惹かれ彼を次の火影にとまで思っていた
それが、なぜそんなに冷たい視線を向けてくるのか…。
深く息を吐き出すと、サクラとシズネが部屋へと到着して、ナルトへと歩み寄っていた。
「ナルト…大丈夫?」
サクラが指先をそっと伸ばし、脈を取ろうと思っただけなのだが
触るな!と、手を安易に払い除けられてしまった。
「な、何よ!?どうしたのよ?」
「は?知らねぇヤツに体触らせる忍者がどこにいんだよ!」
記憶すらないと言うのか?
と、ナルトを見やったが、彼は飄々として何も言うつもりはないらしい。
「ナルト!私を忘れたって言うの?」
「忘れたね…オレの彼女だったのか?」
「は?何言ってるのよ!」
「あぁ、オレ男と付き合ってるんだっけ…」
その言葉に、一斉に周りが息を飲んだ。
そんな気配を誰も感じてなかったし、その想い人も見当が付かない。
そんなシズネとサクラを横目に、綱手だけは事の次第をある程度は知っている。
恐らくは…カカシの思いがナルトに通じたのだろう。
”感情が流れてしまって悟られたかも知れません…ははは…”なんて乾いた笑いをした
布越しの照れくさそうな男の顔がまだ記憶に新しい。
この男もそういう表情を見せるんだなと、驚いた事だったから尚かも知れないが。
サクラもシズネも同様に思考を繰り返すうちに誰がナルトの相手なのかと言う
結論に達したような顔をしていた。
男同士の恋など、不毛かもしれない。
だが、実際問題女性が少ない里で、男性同士の恋愛も普通にあったこと。
何もおかしな事ではないのは、里の人間の殆どが解ってはいる。
「シズネ…ナルトを私の専属の施設へ送る。」
「ちょ!オレは大丈夫だって言ってんだろ!?」
「あぁ、解ってる…だが九尾の力が弱まっている今お前を出す訳には行かないからな」
くつり…と、一度口角を上げるとそこから堰を切ったようにナルトが笑い出した。
「っは!はははは!やっぱり、お前もかよ!九尾九尾って!人柱力のオレが
暴走しないためにお前らは何をした?
オレが耐え忍んで腹に留めてるってのに、お前らはオレを冷たい目で見た!
どうせ腹の九尾が暴れでればまたオレは恨まれて、蔑まれて、里の生贄じゃねぇか!
ふざけんじゃねぇ!オレだって人間なんだよ!なのに口を揃えて九尾九尾九尾!!!!
終いには九尾が暴れた原因さえオレのせいで、この里はオレをなんだと思ってんだ!!!!」
息を切らせながら吐いた言葉に、痛々しい目をする4人をギロリと睨みつけた。
「早く連れていけ!実験でもなんでも受けてやるよっ!」
と、言い放ってベットにドカリと寝転んだ。
やりきれない気持ち…この思いがナルトの本心なのかもしれない…
けれど、それでも…今まで彼はそれを飲み込み乗り越え
輪を作りその中の中心に立って居たのだから。
「お前弱くなったな…」
と、ポツリと綱手が呟いた。
「は?何がだよ!本当の事を言ったまでじゃねぇか!どこが弱いんだよ!
こうやって本心を言えるって方が、つえぇに決まってんじゃんか!」
「そうやって、事を荒げる事で…自分を認めさせたいとしていたのは
お前がアカデミーの頃だろう?サスケとサクラと…そしてお前自身が培った
力や行動は、段々と大人になっていった…そう聞かされているがな?」
「いいから早く連れていけよ!」
と、不貞腐れたように叫んでナルトは布団を被ってしまった。
そして、また再びあの場所へと舞い戻ったナルトは結界により体を拘束された。
☆
【恋蝶】=白銀の願い=Vo12
ヒョォォ…と、山特有の上から吹き降ろす風に銀髪が棚引いた。
納得できない…漠然とそう感じたから、少しでもナルトの形跡を追おうと
カカシはナルトと遭遇した場所まで戻っていた。
ビッ…と、クナイが掌を裂くと、パタパタと血液が滴り巻物を開いた
「口寄せっ!」
ボンと数匹の犬が呼び込まれ、辺りを見回すと忍犬がポツっと漏らした
「カカシ…ココでの臭いの追跡は我々には難しいぞ?」
「あぁ…解ってるよ。
悪いけど、それでもやってもらう。」
静かに交わされる会話に、パックンが首を縦に振った。
「捜索範囲は、こっちとこっち、オレが真ん中を行く」
「…ナルトのチャクラ痕、匂い、戦闘の形跡…その何れかを見付ければ良いってことだな?」
「そうだね…あと、ナルト本人がもしかしたら居るかもしれない」
「…解った」
「よろしくね?では、散!」
一気に四方に散らばった犬達を見送って、ふぅと溜息を落とすとカカシも足を前へと推し進めた。
ピチャリ…音を立てて上から落ちてくる水滴が水の中に吸い込まれると
そこから発した波紋が水に広がり綺麗な円を描く。
ハァハァと小刻みに息を吐き出して、何かに耐えるように眉間にシワを寄せて
閉じられた瞳の目尻からは、涙が一筋、二筋と流れ落ちてはビクッと体を強ばらせる。
パンツ一枚のナルトの体を包み込むように、ハルキが抱きかかえ
何度も何度も言葉をすり込んでいく。
”お前は忌み嫌われた、誰も愛してなどくれない、お前に残るのは九尾の力と
里の人間の不快な視線、不快な心、不快な憎悪でしかない”
幼い頃に受けた暴力、痛い視線、苦しい孤独
それが今のナルトへ入り込み、何度も繰り返す。
それに幻術で現在の信頼している人間が自分を蔑む姿まで見せられては
精神がすり減るどころの騒ぎではない。
カカシに突き放され、綱手に火影にはしないと言い張られ、クラマには早く出せと急かされる。
「体が…動かねぇってば」
好きな大好きだと思えたカカシの思考に触れて、愛を知った
それなのに…目の前のカカシは自分を蔑んだ目で見て言い放つ
オマエなど九尾の器でしかない
と…
信じている、カカシの思考を思いを…けれど目の前の見えるモノに言われれば心が悲痛に叫ぶ
「オレを見て?オレを好きだって言って?側にいてよ!愛して…よ」
流れる涙は、綺麗に流れて頬を伝い、重力に従うように落とされていく
パタタっと音を立てて落ちるそれは真珠のように光を発して砕け散っていく。
「そろそろ、九尾も弱ったようだし…さて…うずまきナルト、九尾を引き離すよ?」
キュポンと音を立てて抜かれた栓の先からふわりと、糸が這い出て
細い糸がナルトの体に巻きついて行く。
腹の封印術の上をふよふよと動き回ってから、その文字の上から糸がナルトの体の中へと
入り込んでいくとビクッと体を弾ませた。
「うわぁあああああああああっ!」
チャクラごと吸い上げられる嫌悪感に叫び声を上げると、虚ろな瞳が開かれた。
「お目覚めかい?」
「……かえり…たい」
「もうすぐ帰れるよ」
「…カシ…せん…あい…たい」
「もう一人のナルトが会ってくれてるよ?君はもう誰にも会えず消えるんだ
そして、誰にも解られる事なくあのナルトが九尾を入れて里に残るんだよ?
なんでか解る?…お前のせいで職を離れた老人が、君を自由にしたいみたい
自分の願望のために、お前という人間を消して、傀儡で九尾を支配しようとしているんだよ?
出来るのかねぇ…そんな無謀な事。
まぁ、報酬はかなり良いから、この仕事受けたけどさ?お前も災難だよね
同じ里の人間に狙われて欲されて…最後くらい、幸せにしてあげたいけど
生憎僕はその手の幸せを知らないから、残念だけどそのまま死にな」
指が、印を結び、ナルトの額へと指先が当たると、体がビクリと跳ねて
糸から抜かれるチャクラの量が増え、その急激なチャクラの減少にビクビクと体を震わせて
涙を流した。
”クラマ…ごめ…ん…”
遠のいていく意識を必死に繋ぎとめ、クラマに必死に語り掛けるナルトの声に
反応したのは赤いチャクラ。
ブワッと一気にナルトの体を包み、赤い光がぽうぽうとナルトの体を包んだ。
はぁはぁ…中へと入り込むと、木々が茂りすぎて真っすぐには進めずそれだけで体力が削がれる
木々がカカシの頬を傷つけても、かまってられなかった
嫌な予感が胸にどんどん膨らんで、早く探さなければいけないという
居るかどうかも解らないナルトを探していた。
チャクラを吸う性質が強いこの場所では、地に足を置いている事は避けなければならないと
足にチャクラを流し、地から軽く浮いたように立つと
瞬身で、移動していても埒があかないと、目星をつけた洞窟の側に降り立った時
かすかに右目が反応を示す。
”カカシ…”
そう、聞こえた気がした。
それは、もう何ヶ月も前に聞いた声。
低く押し潰したような声が自分を呼んでいるとピタリと足を止めたのが
その洞窟の中…。
先日探ったが、結局なにも分からずに出てきたそこは
やはり何も見えず、写輪眼を開き中の様子を探っても
結局は、何も変わらなかった…が
チリっと、カカシの首筋に九尾のチャクラを感じ
出ようとした洞窟内をもう一度見やり、バッと外に出ると洞窟の上当たりに
目を凝らさなきゃ見えないような札を見つけそこへと足を進めると
その場所に貼られていたのは結界札。
カカシの写輪眼でも、札の結界は読み取りにくい。
だから気付けなかったのだとその札を雷切で焼き払い
もう一度洞窟の中へと足を踏み入れると
異様な光景が目に入った。
≪ 恋蝶白銀の願い3 | | HOME | | 恋蝶白銀の願い最終話 ≫ |