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≪ 恋蝶2 | | HOME | | 恋蝶白銀の願い ≫ |
続きです
火影執務室。
そこに立ったカカシに、今回の原因とその追求を受ける事になる
査問会議と言うものに出席した綱手が、どうにかやりくめて来た事を教えてくれた。
今回は影の一人が勝手に行動した事であり、九尾を心から憎んでいたものの仕業だった
ナルトと九尾を一つにした考えはまだ、あの中には渦巻いていて
それを、違うと何度説明したところで頭の固いジジィどもは
それを認めようとはしないんだと綱手はゴチた。
「ははは…な~んか、気が抜けました」
カカシが相変わらず飄々と声を掛けると、とりあえず今回は
向こうも勝手に動いた事に悪いと思っているらしく
九尾を暴走させないためにも、ナルトが必要だと言うのを解って貰えたらしい。
ので、今回の詰問は終わりを告げたのだと綱手が言うと本当にホッとしたらしいカカシが目元を緩めた
と、暗部のカナチが火影執務室の中へ姿を現した。
「遅かったな…」
「すいません、任務が手間取って…」
「まぁいい、今回のお前の処分は、カカシに決めてもらえ」
「は?…えっと、なんの件でしょうか?」
何処までもとぼけた子供だと、カカシは深く息を吐いた
恐らく…この子は自分と同じだろう
匂いが、同じなのだ。
飄々と事をすすめ、言われた事を淡々とこなし
悪い事を、悪いと思っても口に出さずに、遂行してしまう…そんな昔の自分と。
一瞬の殺気立ったカカシの雰囲気に、綱手までもが息を飲んだ。
だがそれは本の一瞬だけの殺気、すぐにその雰囲気が消えると
暗部の少年の前にひょっこりと顔を覗かせた。
「カナチ…だっけ?」
「…はい」
「怖がらなくていいよ、怒ってるけど…殺す気はないからね」
「…は…い」
小さな子供に、徐に殺気を当てて怯えさせてるくせに何を言うんだその口は!と
綱手が苦笑いをする。
それほどに大事にしていた者に手を出された怒りがあるのだろうと言うのは
分かってはいるが…
「じゃぁね、質問…なぜあの殺し方を選んだの?」
「…あの…ナルトさんは、情に脆いから、俺じゃ戦って殺すのは無理だし」
「まっ、それはいい答えだね、お前の年齢位だったら、その戦い方が王道だろうね?
でもさ~それなら殺傷能力の高い毒を盛ればよかったじゃない」
「っ…毒は…」
「毒はなに?それが一番確実デショ?それを選ばず、苦しんで死ぬ方法を選んだお前の気持ちが知りたいんだけど?」
「ナルトさんが、母を壊したんです…だからっ!」
カカシの質問に耐え切れなくなって、ポロポロと涙を流しながら話したそれは…
やはりナルトにしてみれば理不尽で、カカシが手を握り締めた。
ナルトが、木の葉の里でやっと額あてを貰った…。
そんな時に起きた事件。
木の葉の大人たちに、蹴られ殴られ散々怪我を負わされたナルトが
ふらりふらりと、自宅へ向かう途中に
カナチの母が、ナルトと出会った。
怪我をした子供…を手当して、感謝の言葉と名を告げられて…
自分は憎むべきものを助けてしまったと、壊れた。
母の父、カナチからすればお爺さんに当たる人間が九尾の戦いで命尽きたのだ。
その時の恨み…ずっと抱いていた恨みを、助けてしまった不甲斐なさと
生まれて間もないカナチまで、汚してしまったと泣き叫び、母は命を絶った。
「ん、そんな事かと思った…」
カカシの言葉にハッと我に返ったカナチが唇を噛み締めた。
暗部といえど、子供の精神力はそこまで完成されるものではない。
自分だって当時危うい部分を持っていたと言うのに
こんな10年も生きていない子が、そんな境遇に有れるはずもないのだ。
カカシはそこまで読んで問いかけていたのだが、綱手にしてみれば
全く知らなかった事。
ハーッと深く息を吐いたのは言うまでもない。
「カナチ…中忍に戻りなさい…暗部に居たら、お前はダメになる」
「…それは、今回の処分って事ですか?」
「そう、それがお前への処分」
「…解りました」
「ゆっくり考えるんだ、今回お前は私情で動いてなかったか、そして自分で何を怠ったからこうなったか
今回の首謀者は、お前も知ってる人間だよね?その人が影を降りた…それが何を意味するか
それをゆっくり考えること…そして、アカデミーの先生にでも、もう一度習いなさい?
忍びとは何か、そしてどうやって生きていくのか…それを考えるんだ」
「はい」
「また…お前に会える日を楽しみにしてるよ…木の葉の有望株だからね、お前は」
と、頭をポンと撫でると、カナチは一度ペコリと頭を下げて消えていった。
カカシはしゃがんだ姿のまま、ハーと息を吐き切りダランと両手を放り出し頭を下げて
項垂れるしか出来なかったが、綱手がすまなかったと、声を掛けてきて
スクリと体を持ち上げた。
「サスケのようにならなければ良いんですけどね…」
「…里抜けって事か?」
「ええ、出来るだけそうならないように話したつもりですけど
サスケには通用しなかったからなぁ…」
なんて言葉を残し、カカシも部屋を後にした。
☆
執務室を出るとカカシはそのままナルトの収容されている場所へ向かい
静かに本のページを捲った。
帰ってきた時に、側に居てやりたいと思ったから…否
側に居たいと思ってるのは自分で、居てあげたいのではなく
一緒にいたい…
気持ちがバレてしまった今、彼になんて言葉を掛けようか…
どう言えばいいのか…それを考え込みながらページを捲る。
本の内容なんて全く入ってきていない。
ただ、ナルトに何を伝えるべきか…伝わった感情だけではなく
もっと…しっかり伝えるべきか?
そんな事がイヤって言うほどカカシの中を巡っていた。
告げるつもりはなかった恋心を、しっかりと彼に伝えたのは自分の意識の無い所
自分がなぜ、彼にそれを伝えないか…と言うのもきっと解ってるはず。
だったら何も言わず、この師弟関係を守ればいいのではないか?
そうすれば、互いに思い悩むことも苦しい思いを背負う事も無くなる。
「そろそろ起きなさいよ…ナルト」
パタンと本を閉じて、ナルトの顔を覗き込む。
気持ち良さそうに眠っている彼を起こすのは忍びないが
そろそろ起きて声を聞かせて欲しい。
「ん…カカシ…せんせ?」
「おはよ~」
「…あ、俺ってば」
「大丈夫、もうお前は術も抜けているし死ぬ事もない」
ニッコリと微笑むとカカシはそっと水をコップに半分位まで注いだ
そしてそのコップをナルトの目の前に出して左右に振り、チャポチャポと音を立てる水。
「飲む?」
「…うん、飲むってば」
「起きる?それとも…飲ませようか?」
「…お、起きるってば!…っ、体、うごかねぇ…」
クスッと笑ってカカシの手がそっと背中に滑り込んで来て
グッと起こされると、コップがナルトの乾いた唇に触れた
「飲めそうか?」
「…ん、傾けてくれってば」
「ハイハイ」
ゆっくりと傾いたコップから水が唇を濡らすと
コクリと喉がなった。
久しぶりの口からの摂取に、食道がキューっと動き出し
胃腸がぎゅうぎゅうと活動を再開するのがわかる。
「カカシ先生…」
「ん?」
「助けに来てくれて、ありがとう…俺、おかげで助かったってば」
「こちらこそ、頼ってくれてありがとう。パックンが知らせてくれなかったら
俺は帰ってくるの遅かっただろうからね…お前の思いに反する事はしてしまったけど」
ニッコリと微笑みながら、ナルトの体を支えていたカカシがそのままの体制で
会話が紡がれていく。
薄く頬を染めたナルトが、ニッと笑うと
「あぁ…本と、使えない上忍だってばよ!」
なんて言うもんだから、カカシも苦笑いを向けてその雰囲気に合わせることにした。
「なぁるぅとぉ~?」
「ウソウソ!すっげー助かったってばよ!ありがとうな?カカシ先生」
綺麗な瞳で笑顔とともに告げられた感謝の言葉にドキリと胸が高鳴る。
(好きだから…お前のこと、だから俺も必死だったワケよ…
なんて言わないけど、ナルト…)
「もう、油断するなよ?」
「…油断ってか、あのガキお仕置きしないと気がすまねぇ!」
「あはは…俺が代わりにお仕置きしておいたよ。
お前の命を狙ったんだからね?それ相応の罰は与えマシタ」
チラリと不安定な視線が向けられて、ナルトの表情が陰ると
自分の中を見られたのだと言うのが改めてわかる。
俺なら、殺している…から、そんな不安そうな目をするんだろうな?
「殺してない…だからそんな不安そうな顔をするんじゃないのっ」
扱いにくい…と、カカシは溜息を零した。
そういう時どうするか…なんて経験値は自分だけのものだと言うのに
それも全てこの子に知られてしまった。
「あー…カカシ先生?俺…さ?」
「なぁると~とりあえず今は難しいこと考えるな。
お前は、体を治して、動けるようになってから
話はそれからでもできるだろう?」
逃げたいわけじゃない…でも今は回復を優先させるのが第一だと言うのは解る。
それなら、ナルトにとって第一の事をしてやりたい。
「解ったってばよ!俺ってば、すぐに回復するからな!」
ナルトの背からするりと体を引き抜き横たえると
カカシはスッと体を翻し、部屋の扉に手を掛けた。
「んじゃ~俺は帰るよ?ナルト、早く退院してきなさいね?」
「あぁ、解ってるってば!そうだ!先生…」
カラリ…と扉を空けて一人が通れる程開かれた戸を支えながら
そっと振り向くと、頬を赤くしたなるとがニッと笑った。
「本当にありがとうってば!」
「ん、早く治してネ」
カカシは戸をすり抜けると、自動で閉まっていく扉を背に頭を抱えてしゃがみこんだ
「はぁ…心臓…痛いじゃない」
はぁ、ともう一度吐き出し、詰まった胸に空気を引き込み
気の乱れを正すとサクラの元へ行きナルトが目覚めたことを告げて
自宅へと戻った。
ナルトが退院したと聞かされたのは、それから一ヶ月後となる。
☆
鬱蒼と茂った木々が時折音をなす。
木の葉の里の外れにある湖で、カカシは静かに佇んでいた。
カカシほどの手練になると、里の内部で修行なんてものは出来ない。
暗部がすぐにでも駆けつけてくるから、申請書を書く必要があるのだ。
だから、里から少し離れた場所で修練をするのだが
今日はそれを終えて、上半身裸になり湖でまとわりついた汗を流して
月を見上げていた。
周りにはクナイの残骸と、所々開けられた穴、倒れた木
それらを赤い瞳が一度這うように見て閉じられた。
「さぁて、帰りますか…」
フルっと一度濡れた頭を左右に揺らし、湖の辺に置かれた忍び装束を着込んだ。
不意に結界が緩んだ先に見えた姿に苦笑いして言葉を放った。
「あら…結界張ってたよね?俺…」
「…仙人モードだかんな…すぐ見つけた」
「…そう」
カカシは薄く微笑むとまた、着替えの続きを始めた。
会話もなく、ただ静かに時が流れ
カカシの着替える布擦れの音だけが響いた
「せんせ…」
「ん~?」
「こんな所で修行してたんだな?」
「まぁ…ね、里でやると書類とか面倒なのよ」
「そっち…行って良いってば?」
「ぷっ…いつものお前らしくないんじゃない?」
「…そ、そりゃー…キンチョーするってば」
「あぁ、そうだね…いいよ、おいで?」
カカシはその場に腰を下ろして、ポンポンと横の草原を叩くと
スッとナルトが来て腰を下ろした。
「ナルト?」
穏やかにかけられた声に、ナルトの方が心をギュッと締め付けられた
「な、なんだってばよ?」
「…”緊張”位漢字で言いなさいね?」
「ぶっ!なんでその話題なんだってばよ!」
「…うん…緊張してるから…俺も」
シン…静まった空気は心地いい程肌に安堵感をもたらすのは
互いに信じて思ってきた相手だからこそ。
だが、その静けさに言葉を選ぶ必死な顔を見てしまうと
まずは自分が心を解さなければと…カカシが言葉を発した。
それは本当に…優しく穏やかな口調で
「俺の気持ちは…不本意ながら伝わったけどさ?
無理に返事して欲しいとかそう言うのじゃないのも解っただろう?」
「…うん」
頬を染めて頷くナルトの頭にポンと手を載せてぐしゃぐしゃとかき混ぜた。
「ごめんな…勝手にお前の中に入って醜態晒して…
こんな汚い感情ややりきれない思いまで流れただろ?」
「そんなもん、誰だってあるんじゃねぇの?」
「…そうだね」
そっと、ナルトの頭から手をおろし、カカシは徐に自分の手を見やった。
「俺の事…気持ち悪いと思った?」
確信を付いた言葉にナルトがビクッと肩を揺らした。
「怯えないでよ…悪い事はしないから、それにこれはあくまでも俺の感情だから
お前は無視してくれて良い物なんだよ。
無駄にお前は人の気持ちに敏感だからこの苦しさを和らげたいと思って気持ちと
全く違う言葉を俺に投げるかもしれない…でも、その言葉がどんな刃より鋭いものになるって
ナルトなら解るでしょ?」
「解ってるってば…けど、俺ってば先生の苦しんでる思いがわからなくもねぇ
サスケが居なくなって追ってた最初の頃…俺もそれに近い思いだったかも知んねぇ」
「ん、そっか…サスケにはお前は執着するもんな?」
「兄弟…みたいなもんだから」
「そうか…」
ゴロリ…と、カカシが寝転んで満点の空を見上げて目を細めた。
優しく風が吹き抜けた時、ナルトの隈取がスーっと消えていった。
「仙人モードおしまい?」
「うん」
「ナルト?気に止むな…俺が言うのもなんだが
お前はお前で有り続ければいい」
ドサリと体を横たえたナルトがグッと体を反転させ、カカシの方へと体を向けると
苦笑いしてカカシは空を見上げた。
空の星よりも、横のナルトの方が輝いていて…今は星に目を逸らすしか方法が浮かばなかったのだ。
「俺が俺であり続けるために…カカシ先生の想いに答えたい…」
「は?」
「せんせーと、キスしてみたいんだけど…」
流石にその言葉が降ってくるとは思わず、目を見開いてナルトの顔を見やった。
☆
キョトン…という言葉がまさに似合う表情で、その後にカカシは言葉を吐き出した。
「なに…言ってんの?」
「腹の中で、キスしたろ?」
「…お前ねぇ…あれは、キスって言わないの!人工呼吸って言って、相手の呼吸をっ…」
一瞬にして頭が真っ白になった。
口布越しの押し当てるだけのキス。
逃げ出したくても、体も頭も草原に阻まれ…いや、逃げる事は可能なのに
逃げなかった…青い瞳が、赤の自分と対を成すように…縛り付けてくる。
「ちぇ、口布邪魔」
「…お前…さ、なんか、おかしなことになってないか?」
「もう一回するっ!」
「盛の付いた犬か…」
「うっせー!するって言ったらするんだってば!」
「…いいのか?俺知らないよ?肌で触れ合えば、どうなるか」
「…自分の気持ち、確かめねぇと、こればっかりはどうにもならねぇんだってば!」
真剣な眼差しが自分の上から降ってくる。
今まで逸らしていた視線の先の星たちが輝いている中
口布を震える指で押し下げたナルトの目が大きく見開いた。
「もっと…ヒゲモジャだと思ってた」
「あ~…まぁ、ヒゲはちゃんと処理してるよ…」
場にそぐわない言葉に、苦笑いを向けながら目の前に迫ったナルトを
もう一度見ると、潤んだ瞳に、憂いの含まれた視線。
カカシの心臓が、あられもなく暴れだしている
「…するんだろ?」
「する!」
「だったら早くしろ」
「いい…の?」
「…ダメって言ったらやめるの?」
「やめ…ない」
ふっと、唇が触れ合うと、カカシの体がピクっと動く。
乗せられるだけのキスに心が温かくなる。
それに伴い、やはり好きな人からの行為に気持ちがグラグラと揺れ動くのは当たり前で…
気が付いたらクルリと体を入れ替えナルトを下に組み敷いていた。
「どうだった?」
「…先生ってば、空背負って綺麗だってばよ」
「…いや、感想を聞きたい訳じゃないんだけど…あ、いや、感想ではあるんだけど」
はーっと、今までの乙女心、モトイ…男心を返せとまで思う。
「サスケの時みたいに…吐き気しないし、嫌じゃない…」
「サスケ?…したんだ?サスケとキス」
「…ぶつかってぶちゅーっと…サクラちゃんにぶん殴られたってばよ」
「そう…んまぁ、嫌じゃないなら、俺からお返し…しても文句言わないよね?」
「え?」
「本当のキスを教えてあげるよ…ナルト」
グッと、ナルトが目を伏せると、金色のまつ毛がフルフルと震えていた。
「怖い?」
「ん、解んねぇけど…怖いともちょっと違う」
「するよ?」
「…わかった!」
そっと頬に手を寄せて、ペロリとナルトの唇を舐めると
ナルトが片目を薄く開けてカカシを見た。
トクン…トクン…と、鼓動が自分に帰ってきて、これからされる事への
甘い期待が湧き出てくる。
「な、めた?」
「そ、舐めた…ナルトの中も…これから舐めるよ」
「え?っちょ!マテって…んんっ!!」
重なった唇から、這い出てきたカカシの舌先が、ゆるゆると唇を這い回り
呼吸を止めていたせいで、肺が苦しくなった。
空気を求め口を薄く開くと、空気の代わりにカカシの舌が中へと滑り込んできた。
「んむぐ!」
急に入り込んできたそれに驚いて、体がビクリと跳ねる。
口内の上あごを舌先が掠める度にヒクッと体が血流を良くするのがわかった。
(なななな!なんだってばよこれ!これが本当のキスって奴?)
頭が段々と酸欠を起こしてボーッとしてしまう。
体が、嫌に熱を放って、腰の辺りがヒクヒクと何かを訴える
カカシの舌が自分の中で蠢く度に、その繰り返し。
しかも孕んだ熱は放つ先を見失い体に留まって、その度に深くなって行くカカシのキスは
身も心もトロトロに溶かしてしまうかとさえ思えた。
「んっ…っは…カカヒヘンヘェー」
「…お前ねぇ…、色気のないこと言わないでちょーだいよ…ったく」
「だって!だって、話ししたいのにいつまでも離れないしっ!」
真っ赤になったナルトが袖口を自分の口に当てて言葉を紡ぐ。
「クス…なぁると?…ごちそーさま」
「っ…うっせぇ!」
クスクスと二人で笑ってごろりとそこに寝転がった。
まだ、互の熱は自分の中にあるけれど、それを求めるほど無粋な事はしたくない。
今のこの雰囲気だけで、十分だとカカシは思った。
触れる事を許され、あまつさえ一生できないと思っていたキスまで
与えられたのだから、これ以上を求めるのは自制を効かせる事で落ち着いたのだ。
「ん、カカシ先生の事、嫌じゃなかったってばよ!」
「…そう、そりゃ良かった」
フッと笑って答えると、ナルトがそっと手を握ってきた。
「…ナルト?」
「先生…多分俺先生が好きだ」
「…多分、ね…ハイハイ」
頬を薄く赤らめながら笑って答えたカカシに苛立ったのはナルトだった。
「っ!好きだってんだから喜べよ!」
「ナルト…いいんだ、落ち着きなさいよ。
お前ちゃんと考えてくれたんだろう?それで、多分俺のことを好きになれると
そう思ってくれたって事だよな?」
「…ん」
「だったら、ナルトが俺を欲しいって思うまで、その感情は抑えなさい」
「は?ふ、普通思いが通じたって喜ぶんじゃねぇの?」
「嬉しいよ?嬉しい…凄く。
でもね?男同士って言う不毛な恋なんて、あっと言う間に崩れるのも解ってる?
好きかもしれない、側に居たいのかも…そう言う想いだけで乗り越えれるほど
同性の恋愛は簡単じゃぁないって事。
しかも俺達は忍びであって、ナルトに至っては火影の座を目標にしている。
俺が、こんなにお前に思いを伝えなかった理由は恐らく解ってると思うけど
その感情だけじゃダメなんだよ。
何があっても、互を想い信じ、溺れずに生きていかなければならない…
今は抑えろ、その思いは今この時にお互いに通じた思い…
それだけで俺は十分過ぎるんだ」
「…ずるいってば」
「…そうだね」
「カカシ先生が好きで好きで、欲しくなったら…
そうしたら、先生受け入れてくれるのか?」
「ん、そう思えるなら自滅の道でも互いに支えあえるし、俺はこの先年を取るだけで
お前たちに残せる事はもう無くなっていくだろうからな…
そう思ってもらえたら、俺はお前を支えて生きていくよ…」
「プロポーズみたいだってば…」
「んまぁ、そうだね…プロポーズって一生を決める事だしね
それに見合う覚悟は必要だよ?ナルト…」
「解った!待ってろってば!俺絶対カカシ先生欲しくなる自信あるってばよ!」
どんな自信だよ…ソレ
意外性あり過ぎて、もう先生は言葉にならないよ…
「ハイハイ、俺もまだまだナルトに教えること、たぁーっくさんあるからね?
まだ、先生の座は降りる気はないし…気長に待ってるよ」
クスッと笑ったカカシに、真っ赤になったナルトがウーっとうなった
「何よ?」
「…カッコイイんだよ!」
「は?」
「おっさんのくせに!」
「オッサンって…お前ェね…って、うわっ!」
ギュッと、カカシに抱きついたナルトの体が
確りとした骨格を型どっているのを受け止めたカカシに伝わっていく
その温もり…思いが、嬉しくて
「ナルト…ちゃんとお前を、好きだから」
と、優しく言葉を乗せた。
たった一歩の前進かもしれない…それでも今は、彼の気持ちを待とうと
カカシは思った。
2年後…木の葉の里で噂が流れることとなる。
一緒に住んでいるカカシとナルトの関係を噂する人々と
深く内情を知る者たちの
やっとかよ…と言う言葉が…
秋風に吹かれて、優しく二人を包んだ。
FIN
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