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向日葵<ひまわり>
カカナルのお話で、我愛羅との絡みもあります。
いつだっただろう…
あなたを、目で追うようになったのは
いつだったかな…?
恋したって自覚したのは
どうしてなの…?
抑えきれなくて、溢れ出てくるのは…。
【向日葵】HIMAWARI
空が嫌に機嫌の良い日を続けてて、それに見合った空の色は
鏡で見る自分の瞳と同じ色。
そして大好きなあの人を、今日もこの空が見つめる事は叶うのかな?
あなたは、同性で…そして、あなたは女性を愛する事が普通。
あなたは、先生で…そして、オレを生徒として見るのが普通。
あなたは、監視者…そして、オレは…監視される側の人間
「ナルト?」
「あぁサクラちゃん、どうしたってば?」
空を見上げてたナルトに、声を掛けたのは薄桃色の髪をなびかせたサクラ。
最近任務にカカシ先生が就く事が少ないのは、里の上忍として仕事をこなしているからで
それは、サクラもナルトも知っている事。
今日も、先生が就く事になるのだが…
「おはよう」
時間どうりに来る彼は、ヤマト隊長。
サクラは最近のナルトの調子がおかしいのを気にして声をかけたが
ヤマトが来たという事は今日もすぐに任務に出れる状態であり
話をする事は、間違いなく無理。
「ナルト体調は悪くない?」
「ん?全然平気だってばよ!?」
「そう、だったらいいの」
始まった任務はBランクのちょっと厄介な仕事。
山里に出る盗賊を懲らしめるという任務でナルトは大いにやる気を出していた。
それを見たサクラも安心をするのだが
任務中、サクラが狙われた…しかも、相手に忍の人間が2人も参加していた事から
ヤマトは一旦引く事を命じようと思っていたが
元気100倍のナルトが既に相手と対峙している状態で
それは叶わない。
だったら、一人はナルトが相手をしているし、もうひとりを自分に引き付ければと
思った時には、その忍の切っ先がサクラめがけて飛び出していた
「サクラ!」
「サクラちゃん!!!」
夕暮れになり、それぞれが姿を消すと、シンと辺りが静まり
ふぉん…と、小さな音と共にナルトの脇腹が光った。
「ごめん、ナルト」
「謝るなって、オレってば傷の回復早ぇ~し、
サクラちゃんが怪我しなくて良かったってば」
サクラを庇って切っ先を受けたのはナルトだった。
けれど…サクラも、ヤマトも…そのナルトの行動を見て
やっぱりおかしい…と言う結論に達していた。
普段であれば、確かに庇うだろう、怪我も承知で突っ込むのもありえる
けれど、今日の攻撃は…叩き落とす余裕すらあった
それなのに…まるで自分を戒めてくれと言うかのように
彼は、その剣へと向い、体を押し出した。
「ナルト?」
「…ん?」
「ねぇ、あんた…どうしちゃったの?」
「え?」
「避けられた…よね?この傷」
「……そ、そうだっけ?オレってば夢中で」
サクラとナルトの会話を聞いて、やっぱりそうだよなと
確信をしたのはヤマトだった。
違和感はあるものの、いつものナルトと言う所で絶対と言い切れるほど長い時間を
彼らと共有していなかった為、不審には思っても口には出せない程度なのだ。
だが、この二人の会話に口出すつもりも毛頭ないヤマトはその場で立ち上がり
屋根の上へと瞬身で消えていった。
「私でいいなら…聞くよ?」
「…大丈夫だって!、それにオレ自身の問題だから…ゴメンな?オレ心配ばっか掛けてるってばよ」
「そうよ!ホント…今度こんな変な行動したら、殴るからね!」
「…うん、ありがとう…サクラちゃん」
言える訳がない…カカシに思いを寄せているだなんて。
この関係を崩す事はしたくない。
だったら…どうしたらいい?
「オレ…外の空気吸ってくるってば」
「ん、解った…あまり遠くへ行っちゃダメよ?」
「分かってるってばよ!」
ニッコリと笑ってヤマトの作った野営用に小さく作った宿泊施設を飛び出すと
近くの川原にそっと腰を下ろした。
「…暗部」
ポツリと呟いたその名前。
そこへ行けば自分の素性も隠し、隠密行動を許される。
けれど、だからと言って…
「暗部?…入隊希望なの?」
「ヤ、ヤマト隊長!な、なんでここに?」
「お前が出て行くのが見えてね…追ってきた。
で…希望なの?暗部」
フルっと一度頭を振る事でそれを否定した。
人を殺める事が、普通にあるあの世界に自分は身を投じたいとは思わない。
心の不安定は、九尾の器としてはしてはいけない事。
今はどうにか釣り合いが取れてはいるものの…九尾がもし、その闇に染まったら…
「暗部は希望を出した所で…カカシ先輩が許可しなそうだけどね?」
「な…んで?」
「ん~まぁ、ナルトにはキツイ思いして欲しくないと思うんだよねぇ~
それに、暗部は暗い!お前みたいな明るいのが存在してるだけで
疎まれる可能性もあるしな?それに…人を殺さなければならない…
火影の命令は絶対だからね…お前はそれでなくても命令違反やらかして
始末書続けてるんだから…暗部は無理だろうねぇ」
「…そっか、オレは暗部には向かないか…」
逃げ道が断たれた気がした。
里抜けなんてするつもりは毛頭ないが、暗部が唯一の心の拠り所だったのに。
そこへ逃げれば告白して振られても…良いと思えてたのに。
「でも、お前の実力は暗部でも通用するほど成長していると思うよ?」
と言うヤマトの言葉に、彼を凝視した。
だって、今無くしかけた希望がまた…少しだけ輝いたのだから。
「暗部は感情をコントロールするには良い訓練になると思うが
ナルトの場合は、コントロールの前に自分の忍道を進む事が一番だって
カカシ先輩も言ってたしね」
「…うん、そうだってばよ!オレってば自分の忍道を貫くんだ!」
グッと拳を握りこんで…でも、いつものように力一杯のそれではなく
やっぱり揺れている心がそうさせているんだって、解ってしまうと胸がギュッと掴まれる。
周りに迷惑を掛けたと言う自覚が今頃になって湧き出てきた。
しなくて良いケガを負ったのは殆ど無意識に近かった。
あとで考えればなんであそこで自分は身を挺したのかと思うと
やっぱり行き着く先は…何でもいい…カカシ先生の言葉が欲しかった
と言う極論に達してしまい、自分だけでは手に負えない恋心を
どうにもする事が出来ずにいた。
「寒くなってきたね…戻らないかい?」
「…戻るってばよ!ヤマト隊長!ありがとうな」
ニシシと笑って一緒に小屋へと戻った。
苦しくて…切なくて…会いたくて、会えなくて
こんな事なら、いっそうの事言ってしまおうと、心で思いながら夜の闇に飲まれた。
******************************2
顔岩の上で吹き荒ぶ風に、ゆらゆらと揺れる額あての裾。
そっと、それを外して握り締めると、今でも貰った時の情景を思い出せる。
忍として…ではなく、一人の人間として
迷惑を掛けるかも知れないけど…伝えるつもりでカカシを呼び出した。
恐らく遅刻癖の強いあの人は、半刻ほど遅れて来るかもしれない
それでも、待ってるからって伝えて初めて人を待つ事をしている。
そろそろ約束の時間だな…なんて思って細く笑うと
ジャリ…と、土を踏みしめる音にドキリと胸が高鳴った。
「よ!」
「…おぅ!」
飄々と現れた彼に、どんな顔をして言えばいいのか解らなくて
振り返る事さえできない自分に、苛立つ。
「ん?なぁに?どうしたのよ?」
一歩進んで肩に手を掛けようとした時に
ナルトの肩がビクッと震えて、グッと頭を俯かせると掠れたような声で
カカシへと言葉を掛ける。
「…わりぃ、今そっち向けねぇから…そのままで聞いてくれるか?」
「…なにか…あったの?ヤマトから不調とは聞いてたけど」
「…うん」
カカシは、深く息を吐くと両手を胸の前で組み、視線を一度ナルトへと向けたあと
そこから見える里を見るように前を見やった。
「ま、いいよ…このまま聞こうじゃない」
「ごめんな?カカシ先生」
「ん、言ってごらん?」
風はヒョウヒョウと音を立てては二人を吹き抜け髪が服がその風に押されて
流れる感覚と、少しの肌寒さが、これから言う事への返事のような気がして
ナルトが口ごもる。
けれど、カカシは根気よく付き合ってくれて、何も言わないでただ
黙って居てくれてるのが嬉しくて、頬を染めてから深呼吸をして口を開いた。
「あ、あのさ…」
「うん」
「オレってば、やっぱ抱え込むっての苦手で…ほんと、迷惑だって解ってんだ
だからさ、この話聞いたら…聞き流して欲しいんだ」
やはり何やら神妙な面持ちのナルトの言葉が引っかかり、ついその言葉に
疑問を持った事を聞いてみる。
「聞き流すような話なの?」
「…多分、先生気にする」
「へ?オレが気にするの?」
「うん…だから言わないのが良いって思ってたんだけど
自分で収拾付かなくってさ…先生に吐き出せば、先生が嫌な思いすると思うし
けど!オレ…それでも言いたいんだってばよ」
だったら、普通に今までどおりで話せばいいのに?
なぜ、そこで頭をこんがらかせているのだろう?
そう思ったらなんだか、ナルトが可愛く思えて…ついついからかいの言葉がついてしまう。
「…なぁに?なんでそんなナイ頭で考えてんのよ?
オレが聞いたら、オマエ楽になれんの?」
「…うん ってか!ナイ頭って!!!」
クスッと笑って、ややあってからカカシが優しい口調で口を開いた。
「やっと、いつものナルトだね?」
「っ…」
そう…いつも、こんなやりとりをカカシやサクラやヤマトと出来ていた。
溢れ出す前までなら…でも今は…
「先生…オレ…さ、先生の事…好き…みたいで」
「は?」
もはや、そんな言葉が降って来るなど、
梅雨にも思わなかったカカシが素っ頓狂な声を上げた。
「カ、カカシ先生が…好きなんだってばよ!」
「え?ちょ…ナルト?」
声を掛けようと手を伸ばした先、振り向いたナルトの顔は
あまりに苦しく切なそうで、カカシの手が宙に浮く形となって止まってしまった。
「ごめん…先生、こんな個人的な感情打ち明けられても迷惑なのは解ってる
でも、伝えないまま終わるのも、このまま抱えて死ぬのも、嫌だったんだ…
明日からは普通に笑うから!普通に先生と接するようにするから
今だけ…少しだけ…抱きしめて欲しいんだ」
切実な願いだと言うのは、付き合いの長いカカシには理解できる。
嘘を吐くような人間ではないという事も。
だから…そっと、カカシはナルトの体を抱きしめた。
「ありがとう、先生…」
「オマエ、長い間ここに居たんだな?体が冷たい」
「ん…どう切り出そうか悩んでたから」
「先生は、ナルトの気持ち嬉しかったよ…でも、ごめんね?少し…」
言葉を続ける前にナルトに切られてしまった。
「ん…解ってっからオレこそ、ごめん…そう簡単に出来る訳ねぇけど…
カカシ先生…聞き流してくれってば」
「ん…解ってるよ。心配しないで?オレは大丈夫だから」
グッとその言葉を吐き終わったと共にナルトがカカシの腕の中から両手で突っ張って押し出て
目尻に涙を貯めてニッコリと笑った。
「んじゃ!またな!お休み!先生っ」
「………ん、おやすみ、ナルト」
その短い会話が途切れる前に、ナルトは姿を消した。
顔岩の上、両手が前に出たままの状態で固まってた自分に苦笑いをして
ポリッと髪を掻いてからポケットに両手を押し込んだ。
「まるで断られる前提の告白…って感じだな ごめん…ゴメンな?ナルト」
ポツリと落とされた言葉は本人には届かないけど
カカシの気持ちがその言葉を言わざる負えなかった…
「忘れる事は…出来ないと思う。受け入れる事も出来なくて…
忘れる事も出来ないって…先生としてはあるまじき…だな」
ぐっと、ポケットの中で握り締められた指先が白く血色を失っても
誰も…本人すらも気付けずにいた。
自宅へと帰らずに、そのまま居酒屋と向かった。
酒でも煽らなければ、この思いの乱れに狂ってしまいそうだった
恋をしないと…自分に言い聞かせて今まで生きてきた。
その場限りの女は居たが、付き合った女性は殆ど居なかった。
無論男性も…けれど、今一番身近な子からの告白に正直戸惑うし
正当な道へ進ませてやりたいとも思う。
自分の気持ちが、師弟愛なのか、本物の愛なのかなんて区別は
今までもした事がないし、そう言う区切りを持つ事も避けて通ってきた。
「カカシ先輩?」
「あら、テンゾウじゃない」
「…ヤマトですって!」
最近のナルトはおかしい…そうヤマトに聞かされたのは最後に七班の任務が終わった後。
七班で受けた仕事は簡単なものだった為、互いに離れて行動を起こしていた
ナルトの不調は…その時には始まっていたと言うのだが…
「ハイハイ…あ~丁度良かった、ナルトに今会ってきたんだけどね?
最近のナルトに付いて聞きたいんだよ」
「…あぁ、暗部の話でも持ち出しました?」
「え?暗部…って、何の話よ?」
飲みかけていたグラスを傾ける時に言われたもんだから、カカシは
予想外の言葉に固まってしまった。
「あれ?暗部に推してって言ったのかと思いました。」
何故そんな…闇へと身を投じようとしているのよ…と心の中で思うも
己とて、忘れられないほどの激しい恋情を過去に経験していないかと言われれば
それは、かなり古い昔に経験はしている…。
「そんな…話しナルトとしたの?」
「あ~でも、お前は向かないってちゃんと伝えたんで…
それにナルトもそれを了解してた感じだから大丈夫かと思ったんですけど…」
なんて、ヤマトは軽く吐く。
けれど…まるで昔の自分と同じ行動を取ろうとしているナルトが
手に取るように解ってしまって…
だからと言って、自分が行って話した所で、ナルトの心を乱すだけだと十分に
解る状況の今、二人っきりになるのは避けなければならない。
忘れてくれと…ナルトは言った。
忘れてやれないと…自分の心が思ったのは、彼に少しでも心が動かされたから
じゃなきゃ、とっくに言われなくてもなかった事にしているはずだった。
だからと言って、彼を好きかと問われれば
人としては好きだけど、抱くと言う基本的恋人の行動を
取ろうとまでは思わない…。
「はぁ…」
と、一度吐きだした息を吐ききると酒を煽った。
酔いたいのに酔えない夜、胸が締め付けられる感覚に眉間にシワを寄せた。
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