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なつめっぐ 保管場所

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向日葵2

続きです


鳶が、空高く旋回するとナルトの部屋の窓目掛けて降下し
コツリ…と窓を叩くと、食パンにかじりついたナルトが、食卓から降りて
窓を開き巻物を取る。

取ったものを小脇に挟みそっと鳥の背に付いていたホルスターを締めると
バサリ…と、空を一掻きした両翼が今度は一層力を強め空気を巻き込むと
その場から浮遊して飛び去っていった。

「なんらってばひょ?」

パンを咥えながら巻物を開くと
招集の言葉が書かれており、来てしまったかと
頬を強く叩いて家を飛び出した。

火影の執務室へと足を進めるとそこには七班の人間は誰もいず
綱手とシズネが、ニッコリと笑って迎え入れてくれた。

「あっれ~?カカシ先生とサイとサクラちゃんは?」

名を呼ぶだけで…こんなに胸が苦しくなるのか?と
苦笑いが漏れるが、悟られないようにナルトは足を推し進め
綱手の前に立つと、綱手が手に持っていた巻物をスッとナルトへと差し出した。

「なんだってば?」

「砂の風影我愛羅からだ…お前宛になってるだろ?」

ぺらり…と巻物を開くと、そこには綺麗な文字で文章が綴られていた。

”うずまきナルト様。

元気だろうか?色々とあってから1年が過ぎお前もそろそろ火影と言う職に
強く意識を馳せる年にもなって来た。
今砂の特別任務で、補佐官が数人出払っている
火影見習いとして補佐官をしに来てみないか?
期間は半年程なのだが、お前と火影の気持ち次第だ。
交流を深めるためにも一度ハッキリと検討を願う。

                       風影 我愛羅”


「ばぁちゃん!これって?」

「あぁ、砂の国で今戦争が起こりそうなんだ…それを阻止するために数人が出払っている砂に
人を貸して欲しいと頼まれてな…まぁ、その中でも我愛羅の側近が出てるらしく
風影の側に居れる信頼された人間なんてお前かカカシか…まぁ、どうにかサクラ…辺りだろう?
カカシは、七班の先生をやっているし、サクラとお前で戦闘能力を考えれば
お前にこの話が振られるのは、解るよな?」

「…うん、解った行くってばよ!」

「そうか…だったらこの部隊の部隊長は、お前に任せる事になるが、
それはそれで少し不安でもあるんだが…って、言ってる先からお前、パンくず頬に付けてるし…」

と、溜息を吐き出す綱手にナルトはぐいっと袖で口元を拭いてから目を輝かせて近寄った。

「え?いいの?マジで!?オレってば部隊長になれんの?」

「…お前な…我愛羅の手紙を見るだけではダメだぞ?奥の奥を読め!
お前を火影候補として側に置くという事は、そういう事だと理解しろ…そうだな
出立は明後日、明日隊の人間を集めて会議を開くが、風影の意向により
隠密行動となる、無論暗部の人間も入れる為
編成は5人、それと…部隊長のお前と言う事になる」

綱手は一呼吸おいて、ナルトの目をしっかりと見据え
問う。

「さては、ナルト…この話受けるか?」

「受けるってば…あ、違う…受けます。」

二パッと笑って言葉を変えてきたナルトに綱手が目を見開いた。
いつもの癖で、彼は簡単に言葉を吐き出すと思っていたから。

けれど、正当な言葉の使い方を彼も心がけた…と言う所に
綱手が目を細めると、そっとシズネに手で人払いを命じた。

「半年…行ってくれるか?」

「行くってばよ」

「そうか…寂しくなるな」

「なぁに言ってるんだってばよ!死ぬ訳でもあるまいし
オレってばそんなに心配かけてっか?」

「あぁ…お前は何よりも、誰よりも私の気を病ませる男だからな」

と、そっと抱きしめた。
その温もりにナルトも目を伏せ、綱手を抱き返した。

綱手と出会って…里に戻り、自来也を亡くし
自分の大好きな人間を次々に失った綱手。
そして、その大好きな人間を受け継いだ自分。

「なぁ、ばーちゃん?オレが火影になって…早く楽させてやるからな?」

「なぁに生意気言ってるんだい…バカだね、男ってやつは」

腕に抱きしめる綱手は、成長した自分が抱きしめられる程
小さくなっている気がした。

「よし!明日はデートでもするか!」

「ぶっ!火影の仕事しろってば!オレは大丈夫だから…それと
先生達にはオレの事なんて言うんだ?」

「…お前ねぇ、カカシやヤマトは言わずと知れた任務で出ているってだけで
通じる、お前ぐらいだろうよどこに行った何しに行ったなんて聞くのは」

なんて笑われて、自分の幼さを噛み締めた。
それを飲み込むだけが大人とは言わないだろうが…でも
そう言う事も踏まえている事は確かなこと。

「んじゃ、今日は任務なし?」

「いや…七班には割り当てる…お前は休んでいい位の簡単作業だ」

「だったら、オレ出るってばよ!」

「出立の用意もあるだろう?」

「んなもん、一日ありゃ~十分に出来るってばよ!
それに、七班とカカシ先生にはオレから任務に出るって伝えるってば」

「…解った、集合は昼だ」

「おう!」

綱手の腕の中から、そっと出るとニシシっと笑ってナルトが出て行った。
やはり今日も、空が青く澄み渡っていて
綱手がそっと目を伏せた。

(自来也…あの子を頼むよ?)

と、今は亡き男に思いを馳せた。


********************************4


「さて…んじゃ~行きますか」

遅刻して来たカカシのおかげで、半刻は無駄にしたとサクラが嘆く中
今日の任務は、簡単な水汲み作業。
と言っても、下忍だけでは少々厄介な道故にCランクとなっていた。

今は毎日七班としての仕事をする事がめっきりと減った。
サクラも上忍、ナルトだけがまだ下忍の状態で
このカカシ班も、正直どこまで続くのかなどわからない。

しかも現状は、カカシ本体が抜けての仕事だったり
誰かがいない状況での仕事になったりする
この七班は…自分に本当に幸せを一杯くれたと心が温かくなった。

「ねぇ、ナルト」

「ん?なんだってばよサクラちゃん」

「今日は落ち着いてるね?問題解決したの?」

その言葉にチラリとカカシの後ろ姿を捉えはにかんだ。

「んまぁ、オレってば火影になる男だし?いつまでもウジウジしてらんないってば!」

と、ニカッと笑うと、そう…なんて薄く言葉を載せて笑ったサクラに
心の中でありがとうと付け足した。
今生の別れでもないし、たった半年の任務だから。
でも、今以上に大変になるのは目に見えている

「カカシ先生!」

名を呼ばれて、カカシの方が心脈を強めてしまう。
意識しだした途端これか…と苦笑いが溢れるが口布のおかげで
それは、相手に伝えることは無かった。

「…ん?あ、なんだナルト?」

「後で少し皆に話があんだけど…」

「皆?」

「そう!皆だってば!」

「ん……解った、解散前に時間をやるよ」

「エヘヘ、サンキューだってばよ!」

本の隙間から、カカシがナルトの行動言動を伺っても
今までと何ら変わりはなく、自分だけが意識しているのか?
なんて思うが、ナルトの手を見れば解る…彼も緊張というものをしているのだ。
苦しい恋心を打ち明けた人間に、自然に接すると言う事が
どれだけキツいか…それは、本人にしか解らない事だろうけど
それでも、多少なりと理解できるのも大人の人間だからだろうなと
本のページに目を戻した。

作業は一刻ほどで終了し、戻っている最中に
カカシがナルトの傍に来て、何の話をするのか…と言う質問を投げてきた。
後で言う…って言葉ですかされてしまい、何の事か知るのも皆と一緒に…と言うのも
なんとなく納得はいかないものの、カカシもこれ以上聞けないと諦め
いつもの集合場所へと集まった。

「ま、お疲れさん…んで、解散前にナルトから皆に何か話があるらしい」

「え?」

声を上げたのはサクラだった
ニシシシと笑って、ナルトがスッとカカシの横に立つと
フーっと息を吐き出し、次に言葉を続けた。

「オレ、半年ほど特別任務に就く事になって
七班で仕事出来んのも、今日がとりあえず最後ってワケ。
んで、里も離れっから…とりあえずカカシ班には伝えるって事で
時間もらった。
戻ってきたら、また頼むってばよ!」

と、あっさりと吐き出した言葉にカカシもそして七班のメンバーも目を丸くした。
そんな特別任務に付く下忍がいるのだろうか?
想定外もいいところだ。

一応七班の頭をやっているカカシにまで伝わっていない極秘任務。
それに不安が押し寄せて来た。
普通下忍の任務は必ずカカシを通してやらせるか聞かれ、カカシがそれに答えて
任務をこなすと言うのが筋道なのだ。
それをすっ飛ばして、直々に言い渡された任務と言う事なのだろうか?

「ちょ、ナルト?それって、オレ聞いてないケド?」

「ん、カカシ先生には自分から言うって綱手の…火影様に
頼んだからなっ!それに特別任務って名前だけで、そんな危険な仕事でもないし
ちゃんと帰ってくっから!
みんな土産持ってくっから大人しく待ってろってば!ニッシッシ」

と、事の転末は全くわからないが、火影とは既に話が通っていて
行く事を了解したと言う事だけが伝えられると
サクラとカカシが眉間にシワを寄せてくる。

「ねぇ、ナルト?それってどんな任務なの?」

「…あ~、ごめんってば、特別任務なんだ」

その言葉に、偽りがなければ超S級の任務である事に違いはない
そして、それは例え仲間にも言ってはいけない任務であり
聞かれても答えること自体が罪になると言うのは誰でもわかること。

「…そう」

「ん、ごめんな?」

「うん…出発は?」

「朝呼び出されて明後日って言われた。でも、明日はオレ
荷造りとかあるし、出れねぇと思うから…さ」

「そっか…」

サクラとの会話で大体の筋書きは理解できたカカシも
これ以上は何かを言っても仕方がない事だと、ため息を落とした。

カカシの、解散の言葉に皆が遠のく中、カカシとナルトだけがそこに残された。
言葉に出来ない思いが逡巡する中ナルトがニッコリと笑うと、カカシの元へと
歩みを向け、真正面に立つと強い視線をカカシへと投げた。

「せんせ…オレさ、逃げたわけじゃねぇから…
今日たまたま任務言い渡されて、受けたけど先生と離れたいから受けたとか
そういう勘違いだけはして欲しくねぇってばよ!」

真剣な眼差しを受け、カカシも勿論それに返そうとしっかりと目を見やった。

「……ん、解ってるよナルト」

「でもさ?いい機会だし…オレ頑張ってくっから!」

「あぁ…解った。どこに行くか…だけは聞いていいか?」

「…ごめん」

「場所も、言えない…か」

「ん…」

「そうか…ま、頑張りなさいよ?」

「おぅ、オレもっともっと頑張って強くな…え?」

ふわりと…先日岩の上で抱きしめられたのと同じ暖かさが
ナルトの体を包んだ。

「クス…綱手様にも抱きしめられたか?匂いが残ってる…」

「…うん、気を付けて行ってこいって」

「そう…お前暖かいね?」

「…ははは、子供体温とか言うんだろ?」

「イヤ…オレが基本体温低いからね…ナルト?気を付けるんだよ?」

「先生…何言ってんだよ?どうしたんだってば?
半年任務なんて誰でも行くだろ?それに、そんな心配しなくたって
オレってば、そんな危ない場所に行くわけじゃねぇし」

「うん解ってるよ…解ってる。」

(ただ…ナルトの温もりを忘れたくなくて…なんて本人に言えば
きっと、軽蔑されるだろうな。)

すぐに離れた二人が、ニッコリと笑ってその場を切り上げた。

ナルトの胸の中が、必要以上に心臓をはやし立てるが
それを忘れないように…カカシの温もりを体に閉じ込めたくて
ギュッと自分の体を抱きしめた。

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