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なつめっぐ 保管場所

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【優2】5

続き

★番外編<総司と麻耶5>★






【 -優- 】
           






車がライトを照らしながら対向車と擦れ違う
家までは直ぐに到着するのだからと、麻耶は気持ちを落ち着かせようとするが
心拍数が異常に高く跳ね上がり、じんわりと汗が広がるのを感覚で感じると
鞄から、ハンカチを取り出し其れを拭った

(あぁ、だめ…やっぱり、沖田先生を好きなんだ…)

先程乗せられた、唇の上の温もり
優しい微笑み
全てが、麻耶の身体に深く染み渡り、心をざわつかせていた

(だめ、男なんて…男なんて皆…同じなんだから)
自分で鍵を掛けてしまうのはいつものこと
だが、その鍵も随分と緩くなってしまったのだと
最近は気が付いていた


何度も頑丈にしてきた心の鍵が、総司の声で容易くまた開いた
「ドライブでも行きますか?今日はご両親いないんでしょ?」
「え?あ…何故知ってるんですか?」
「拓海が言ってましたよ~年頃の娘一人置いて、旅行だとか?」
「ぷっ、年頃の娘って…」
「え~?おじさんクサイですかねぇ?」

照れたように笑いかけてくる総司に、”ちょっとだけ…”と、伝えると
頬がぷくりと膨れ上がった
その表情がまた可愛く、心拍数を上げるのだ

「ドライブ…行きたいです」

一緒に居る時間が、心を優しくしてくれる
もっと一緒に居たい
願いがそのまま言葉と成った

少し走ると、さほど標高は無いが夜景が綺麗と言われる場所へと到着した
車を降りると、総司は自販機でジュースを二本買い、夜景をうっとりと見つめている
麻耶へと歩み寄ると
頬にペタリと冷たい缶ジュースを宛がった

「ひゃっ!?」

声を上げる麻耶に、総司がニッコリと微笑み、それを渡した
「あ…ありがとう…ございます」
先程の驚きと、恋心がドキドキと心脈を強めたお陰で、指先に力が入らず
カチカチッと、何度かプルタブを空けれずにもどかしそうにしていると
麻耶の手の上から大きな総司の手が重なり、プルタブを一瞬で引き上げた
その重なった掌が、また熱を加速させていく

「今日の練習…きつかったですかね?」
総司に問い掛けられ、フルフルと首を横に振るしか出来ない
「あっ、ちょっと顔が赤いし、調子とか…悪いんでしょうかね?」
その言葉で、やっと自分が耳まで真っ赤に染まっているのだと気が付いた


「ちっ、違うんです!」
麻耶が、ポロリと涙を零した

自分でも解らない
何故泣いているのか

何故この人に触れられた場所が熱を持つのか

ただ、心が嫌にざわついて
麻耶が、包んだ缶ジュースを胸元で握り締めた

「沖田先生…好きです」

その言葉は自然と出た
後先なんて考えられず、ただ、伝えたいと言う強い思念に突き動かされたように口にして
慌てて手で、口を覆った

小さな声で伝えたはず…
無かった事に出来ないだろうか?

そっと、麻耶が総司を見ると、真っ赤になった総司が、今まで凝視していた麻耶から視線を
そらしたのだ。

「っ・・・」

「ごっ、ごめんなさい!私っ…」
自分の言葉に驚いて、麻耶が慌ててその場から走り去った

「麻耶さんっ!待って」

車で登れば30分ほどで辿り着くだろうが、この場所は山なのだ
夜景を見るだけが目的と言う訳でもない輩だって沢山居る

総司は慌てて麻耶を追った

(なんだろう、言うつもり無かったのに…
そこまで沖田先生が好きだって事!?
どうしたの?私…なんで今言ったの?)

涙が溢れているのに、疑問だけが付き纏っていた

「待って!麻耶っ!」
腕が引き止められ、走っていた惰性で止まれずにグラリと身体を傾けてしまった
「きゃっ!」
転ぶかもしれない衝撃に堪える為に、身体を強張らせると
大きく温かい身体に包まれた

ハァハァと肩で息をしながら、お互いが抱き合う形となった

「真剣に…考えますから…時間、下さい」
「え?」
総司の言葉に、ビクッと身体が揺れた

「とりあえずは、家まで送らせて下さい…」
麻耶は、コクンと頷くと、総司に連れられて車まで戻り、無言のまま
自宅の前へと到着した

「迷惑…掛けてすいません…」

その言葉に総司は笑顔で返すと、麻耶の頭をポンポンと叩いた
「家真っ暗ですね?一人で大丈夫ですか?」
「え?あ…慣れていますので」

麻耶の両親が旅に出るのは初めてではないし、一人の時間が多いのは慣れている

「ん、解った。じゃ~おやすみ」
「ありがとうございます」

車が走り去ったのを見送ると、麻耶は急いで自分の部屋へと走りこみ
ベットの上へと身体を投げ出すと
再び顔が真っ赤に染め上がった

「沖田先生を好き…だけど、迷惑を掛けるつもりじゃなかったのに…」

麻耶は、深い溜息を落とし、そのままその場で瞼を閉じた
先程の総司の温もりが、麻耶を深く侵食していくのだ
ギュッと自分の身体を抱き締め。
沖田先生と呟き、その後言葉は朝まで呟かれなかった


キッ!

麻耶の自宅から数キロ離れた場所で、総司が車を停めた
深い溜息と共に、ハンドルに両手を掛け、身体を預ける
「ビックリしたぁ…」
ドキドキと心臓が忙しなく鳴り響き、総司が、視線をそのままに
窓を開けると火照った身体を、風が冷やしてくれる
「相手は中学生なんですよね…」
はぁ、と再び息を吐く

別に嫌いではない、ただ、何となく気掛かりになってしまうのは本当
けれど、其れが恋情かと問われると、ハイとは答える事が出来ない
う~ん…と唸ってみるも、答えが見付からず
一時間ほど悩んで徐に電話を掛けた

少し話を終えると、車をUターンさせ、目的地へと向かった

ピンポーン
カチャリと開いたドアから、拓海が罰の悪そうな表情で総司を迎えた

「すまんな」
拓海が、苦笑いで告げると、総司がニッコリと微笑み返した
「ただの憧れと恋愛を重ねてしまう年頃なんでしょうねぇ」
そう呟くと、はははと薄く笑った
「総司、お前本気だとは思わねぇのか?」
「え?」
「いや、確かに麻耶は迷惑掛けてるけど…あいつ、きっと本気だと思う
今まで男を毛嫌いして、近寄りもしなかったんだから…」

その言葉で一気に重い空気に包まれた

「んまぁ、お前さえ良ければ、飽きるまで付き合ってみるか?」
「え?」
「下手に手なんてださねぇだろうし、お試しだと思って見るとか?」
「…それって、麻耶さんに悪いでしょ」
「ってか、お前の憧れって言葉よりは、現実味が有るだろう?」
「…」

結局、二人の話し合いは終着点も見えずに、翌朝を迎えた

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2011.5.11

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