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続き
★番外編<総司と麻耶4>★
【 -優- 】
学校のチャイムがなり、今日も部活が始まる
いつも気重に向かう先は、部室なのだが
今日からは、先生が来る
「麻耶?これから部活でしょ?私が付いていこうか?」
いつも優しくしてくれる友達
その友達に大丈夫といつも言い続けている麻耶が、今日は違う返答で返した
「沖田先生が来てくれてるから!もう行くね!いつもありがとう~」
最後の言葉は、教室を飛び出してから発せられた事に彼女は気付いているのだろうか?
「先生…か、ま、あの子には嬉しい事みたいだから、いっか」
そう一人呟き鞄を持つと、教室を出た
男子部員も、ざわつく中、女子達は黄色い声を隠しもせず
総司の噂をしている
無論、我先にと話しかけて会話が成されている
(道理で部室に誰も居ないわけか…)
胴着を着込んだ麻耶が、体育館へと足先を伸ばす
体育館の床の冷たさが、足裏から伝わり身が引き締まるのを感じる
周りが騒ごうとも、何を言われようとも、この感覚が麻耶を支配すると
自分の世界が出来上がる
「さて、最後の部員さんも来たみたいなので、整列してもらいましょうかね?」
総司の声に、主将がハイと答え、整列!と声を上げる
「あれ…?」
総司の声に、主将が変な顔をする
「学年で整列してる…訳ではないんですか?」
「え?あっ…」
答えられなかったのは、麻耶の位置
二列に並んだ最後尾で、一年よりも後ろに並んでいるのだ
「あぁ、麻耶が一番後ろで良いって言うんで、そうしたんですよぉ~」
何ともダルそうに、三人の先輩のうちの一人が答えた
単純に、麻耶の入り込める場所を作らないだけ…だったのだが
「へぇ…割と自由が利くんですね、ではこのまま腰を下ろして下さい」
総司の言葉にそれぞれに座ると、総司が縦に並んだ二列を横目に歩き
その列の真ん中ほどで止まった
「では、皆さん正座で!此方を見てください」
座れと言われ、体育座りや、胡坐をかいた少女達が、足を折り曲げ座ると
「今日からはこの整列でお願いします。そのほうが覚えやすいですしね」
と、微笑んだ
総司が、自分の経験暦と大学在籍中とこれからの指導についての話を一時間ほど語らった
足が痺れ、正座しなれていない子が、次々ともぞもぞと動き出すのを横目に
フッと、麻耶に視線を移した
(これ位じゃ、揺るぎませんね)心の中で、クスリと笑った
結局一時間と少々で、先生足がもちません!と、主将が言い出したのを
練習を始めましょうか、と言い出すきっかけにした
防具を付けている間に、総司はホワイトボードに 一番隊 二番隊 と書き出した
「三年2、二年3、一年3 で、8人の隊を作ってもらいます」
一年生は経験者居ますか?
との問いに、二人が手を上げた
その二人を分けると、残りの一年は好きな方を選んでと伝えると
順番に、自分の名前を書きに前へと出た
「では、三年生は4人なんで、先に決めてしまいましょうか?」
主将は、一番隊に名前を自動的に書かれた
「じゃ~私二番にいくわぁ~」と、ダルそうに歩いてきた三人集の一人
残った二人が固まってしまう
「ちょ、私主将とは嫌よ?」
「え~三人一緒にいれないの~?」
「早く書いてもらえませんか?先に進めませんから」
総司の声に、渋々と二人が前に出てきた
そして…
同じ場所に二人の名前が連名された。
「…ふざけてますかね?」
総司が、一瞬声を太く発したが、友達に囲まれて気持ちが大きくなっているのだろう
彼女たちは何も悪い事はしていないと言う顔を向けてくる
(まぁ、ガキですね…)
ニッコリと微笑んで次に進む総司に、彼女たちは勝ち誇った
「では、一番隊:隊長吉本さん、で、一年坂本さん吉田さん松本さん、二年神谷さん長岡さん
金谷さん久住さんでいいですね?」
その他は二番隊ですと伝え、チームに分かれると
互いに、ペアを組ませると伝え、二人一組となった
麻耶は、一年の経験者坂本とになった
隊長曰く、麻耶は教える事に長けている…という理由らしいが
麻耶にしてみれば、指導していた所を見せても居ないのに
何故解るのか?ただの厄介払いではないか…と心で思った
練習が始まり、素振りを100回と言う言葉通り
麻耶は竹刀を振る
先輩達が30回ほど振ると、トイレに行きたいと言い出し
総司が深い溜息を落とした
「すいません、私は剣道を教えに来たんですけど?」
その言葉に、当たり前でしょう?剣道部なんだからと続けた女の子を
一睨みし、持っていた竹刀の先を、床に打ち付ける
ビクン!と、トイレを切り出した女子が固まると
総司は、深く溜息を吐き出した
「私は臨時ですから、本来の先生が居ればこんな事はしないでしょうけど
貴女方の遣っている事が幼稚すぎで私には理解出来ません
真剣に剣道を学びたいと思う人だけで良いですよ…
それ以外の人は、どうぞ違う場所で見学でもトイレでも好きにしたら良い
とりあえず、5分あげます。自分がどうするのか
決めてもらいます
ただし、友達に相談するのは許可しませんので
各々自分の意思を固めてください。
決まった人は私に其れを伝えて一度体育館を出て下さい
残る人は、真っ直ぐに部室へ、残らない人は、そのまま帰ってくださって結構です」
ギロリと睨みつけ、体育館の入り口へと腰を降ろした総司に
女子達が、目を見合わせる
だが、シンと静まり返った体育館で、小さな声でも出そうものなら
直ぐに総司に拾われてしまう。
麻耶は、スッと立ち上がると、総司の前に行き、小さくスイマセンと呟いた
ニッコリと微笑み、総司は残るでいいんですか?と聞いて来たので
素直に頭を上下させ、体育館を後にした
「さて、他の人はどうしますか?もう5分は過ぎましたよ?」
一人、また一人と決意を固めた者が出て行き、最後は三人残った形となった
「沖田先生!質問いいですか?」
一人が堪りかねた様にその場で声を上げる
「ええ、此方に来て聞く分には問題ありませんよ。」
あくまでも、三人一緒に聞ける状況を作る事を避けるのが目的なのだから
結局、発言した手前、行かなくてはどうしようも出来ない
行くわ…と、言い残して、総司の元へと歩み寄った
残った二人が手に汗を滲ませ握りこみ、唇を噛み締めた
一人去った後、直ぐにもう一人も立ち上がると、総司と言葉を二つほど交わし
体育館を去った
「さて、貴女だけですよ?貴女はどうしたいですか?」
「皆は同じ答えなんですか?」
「それは、答えられません」
「…私は」
その後言葉は続かない
「ねぇ?貴女は剣道好きですか?
なぜ、皆と一緒じゃなくちゃダメなんですか?
自分で決める事が、迫られている今、他の人の意見はどうでも良くないですかねぇ?」
「一緒に…剣道するって三人で決めたから、一緒じゃないと…」
総司は、座ったまま言葉を発する少女の前まで行くと
溜息を落とし、目線を合わせる為に、腰を落とした
「確かに切欠はそうだったかもしれないですけど、何年剣道やっていますか?
真面目に練習をして、自分で勝ち取った勝利は、自分だけのものでしょう?
ほかの人が応援してくれても、貶しても、結局は自分の力量が全てではないですか?
人に合わせるだけの人生なんて面白くも何とも無いですよ?
貴女も、自分なりの答えを私に下さい。其れが答えとして
貴女の意思として受け取りますから。」
「やります…」
こうして、全員が残る結果を出し、総司の厳しい練習が始まった
何度か互いに衝突はあったものの、基本的な所で優しさを見せる総司に
剣道部は、真っ直ぐな道を歩き始めたのだ
「沖田先生」
その声に、総司は車の窓を下げた
日はとっぷりと落ち、バラバラと部員達の親が迎えに来ている
そんな中、自分も帰宅しようと車に乗り込んだ時に声が掛かったのだ
「おや、麻耶さん?どうしましたか?」
部の中で、取り分け仲が良くなったわけでもないが
些細な虐めや差別がなくなった…
其れは自然に、いつの間にか…
互いが謝る事も無く、ただ、自然に落ち着いた
だが、麻耶にしてみれば其れはこの上なく嬉しい事
今まで蔑まれ、大会に出れば嫌味ばかりの上級生
それが、今では殆ど無い。
極力側に居ないように勤める事はあれども
それ以上に、居心地が悪くなる事がなくなったのだ
「ありがとう…」
「おや?何がですか?」
「私に居場所をくれました」
「ぷっ、私は何もしていませんよ?」
「それでも、私はっ!」
その続きの言葉は、総司の指によって遮られた
シーっと、一本立てた指が、麻耶の唇の上へと乗せられたから…
「送りますから、乗ってくださいね」
「そ、そんな!大丈夫です!」
「どうせ、拓海は迎えに来ないでしょうし、親御さんも仕事で居ないでしょ?」
ニッコリと笑い、「送ります」と告げ、総司が逆側の扉を開けると
麻耶は渋々と、お邪魔しますと乗り込んだ
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2011.4.24
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