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続き
★番外編<総司と麻耶6>★
【 -優- 】
ちゅんちゅんと、雀が早朝を知らせる中、麻耶は、未だベットの上で
放心状態が続いていた
男が欲しいなどと思った事はない
この人でなければダメだと、自分の中の誰かがそう、伝えて来た
その感覚に今頃になって怯え出したのだ
沖田総司と言う名前をフッと思い起こし、年末に遣っていたドラマを思い出した
「確か沖田総司って…」手元にあった古いテレビ雑誌を取り、指でそのドラマの紹介を追った
幕末を生きた剣豪
嫁も取らずに彼は、結核に命を奪われた
「同じ名前…なんだ」
ぎゅっと心臓を強く掴み上げられた感覚に、眉間に皺を寄せた
その事を考えるだけで、胸が痛いほどに締め上げられ
心臓が停止するのではないだろうかと言う錯覚に突き上げられていた
「ッ…クッ…ハッ…ハ…」
心臓がゆっくりと動いてくれずに、苦しさから呼吸が困難になり
胸を押さえながら意識が混沌としていく
さん…
神谷さん…
「?な…に?」
目の前に立つ青年
着物に袴。そして…新撰組の隊服
現代にも伝わる浅葱色の隊服を着て腰に二本刺さった刀
麻耶は、凝視するしか出来なかった
神谷さん?なに呆けているんですか?
ほらほら、行きますよ。土方さんが角出して怒ってますから
紡がれる言葉に疑問が浮かぶ
「ひじかた…?」
早く、私の所へ戻って下さいね?
私の所と言うのは?と麻耶が疑問に思った所で
部屋のドアが開かれ、麻耶は飛び起きた
「よ~。」
その声に意識が覚醒した
「拓兄ぃ」
「なんだ、寝てたのかよ」
汗で張り付いた髪の毛を、手で分けると
麻耶はベットの上に腰をかけたまま、床へと足をつける
「ねぇ、拓兄ぃ…」
「ん?」
「沖田先生に告白しちゃったの…ごめんね?」
「…あぁ、別に謝る事はないさ、俺が炊き付けたって所も有るしな」
「うん…」
「なんだよ?後悔してんのかよ」
その言葉に首をフルフルと横に振った
けれど、縋るような視線を向け、拓海の袖を握った
「私じゃないみたいなの…」
「は?」
「告白した時も、そこまで…言うまで気持ちが育ってたって訳じゃないと思うの」
「気持ちが?」
コクンと上下に頭を振ると、深く溜息を吐いた
「私、誰かに操られてるような、支配されているような…変な気持ちになるの」
「はぁ?」
「沖田先生は尊敬できるし、素敵な人だと思うし、好きな気持ちも有るけど…」
自分の気持ちが、告白するまで育っていない気がするのが
麻耶の引っかかりだった
「沖田先生怒ってなかった?」
「あぁ、困ってはいたみたいだけどな」
「だよね。困らせたかった訳じゃないのに…」
「まぁでも、言ってしまったんだから、総司がなんらかの答えを出すのを待てば良いだろう?」
「うん、そうだね」
麻耶は再び深く溜息を吐いた
何処かふわふわとしている
その感覚のまま、告白後初めて総司と出会う、剣道の日
変な緊張感は無かった
総司が胴着で出てくると、先日見た夢の総司と重なり、瞼を擦った
「おや?麻耶さん、眠いんですか?」
「え!?あ、い…いえ!!」
その言葉をクスッと微笑んで聞いた総司が、練習開始の声を発する
夢中で練習を終えると、麻耶は後片付けを終え、校舎を出ようと
下駄箱に向かった時
目の前に腕を組んだ総司と目が合った
「あ、お…お疲れ様です!」
「うん、お疲れさま。この後、時間貰って良いかな?」
「えあ…う…は、はい。」
言葉に詰まったけれど、きっと総司が一生懸命考えた答えを
告げるのに待っていたのだろうと思い、麻耶はコクンと首を縦に振った
車で待っているねと言い残し、総司が背を向けるとき
ふっと、先日の夢の中の総司が重なり、麻耶が目を擦った
(やっぱり、沖田総司と、沖田先生は同一人物なのかなぁ?)
心で思うと、靴を履き、総司の車の助手席のドアを開けた
走り出す車
心臓がパンクするのではないだろうかと思うほど五月蝿い
(うわぁ、緊張する~…)
手にじんわりと汗が噴出し、心拍数も何時もの数段は早い
「ごめんなさい、緊張させてますね」
公園の前で車を停めて、そう告げてきた
「え?あ、いえ…」
「考えたんですけど、貴女の気持ちは本当に私を好きなんでしょうか?」
「え?」
「あ、いや、ごめんなさい、疑ってるとかではないんです。」
自分の中の、良く解らない感情があるのは確か
けれど其れは恋なのだろうか?と考えると、素直にそうだとも思えず
けれど、手放したくはない…気もする
そんなあやふやな気持ちに総司は手を焼いていたのだ
「実は…」と、麻耶も総司を素直に好きだとは思うが、けれど
解らない何かに突き動かされている感覚があり
その感覚がなんなのか…其れすらはっきりと解らないままに
言葉を紡いでしまったと伝えた
本来だったら、互いにわからない状態なんて
お互いに良くないであろう
だが、互いにそう言う気持ちが大きくて
持て余しているのだ
「麻耶さん、試しに付き合いましょうか…」
その言葉に、麻耶は目を見開いた
================================================================= 2011.5.30
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