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続き
★番外編<総司と麻耶7>★
【 -優- 】≪補完2011.6.11≫
キッと、車が止まる
既に暗くなった、車内で総司が口を開いた
「私は、恐らく貴女より、剣道を優先すると思います」
「…はい」
「将来、まだ先の話ですけど警官になりたいと思ってるんですよ
それには、剣道や柔道等必要となることが解っているんで
それを止めるつもりは在りません…それを理解して頂けるなら
私は、貴女と居る時間をもう少し多く持っても良いカナと
漠然でスイマセンが、そう思うんですよね…」
シンと、静まり返った車内に、麻耶がふーっと深く息を吐いた
「よ…よろしくお願いします。」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いしますね、麻耶」
「え?」
「あ、呼び捨ては早かったですか?」
「あっ、いえ…なんか、凄く嬉しいです。」
顔が真っ赤になってるだろうと思えるほど、頬が暑く
麻耶は両の手で頬を覆い、ハタと思った
「あっ、私は学校の指導もありますから…沖田先生とそのままで良いですか?」
「ええ、構いませんよ」
ニッコリと微笑む総司の表情にドキリと胸が高鳴る
ドキドキと高鳴る胸を押さえきれず、ぎゅっと胸元を握り締めた
「さて、では…」
総司がそう告げると、身体をグッと麻耶に寄せる
顔が、目の前に来た時に、総司がフッと微笑むと
今まで未体験の、唇を重ねる行為がやって来るのではないだろうか?
そう思わずには居れなかった
ぎゅっと、瞳を閉じると、不意にガチャリと、ドアの開く音
風が、車の中で留まっていたはずなのに、ふわりと、麻耶の髪を揺らした
「え?」
「大丈夫ですか?ほら、もう自宅の前に停まっていたんですよ?」
扉が開かれ、降りろと促しているかのような行動に
麻耶は慌ててシートベルトを外した
「あまり遅くなっては、親御さんが心配しますからね?お休み…麻耶」
「あ、はい、送って頂きありがとう御座います」
麻耶は車を降りると、総司の車のライトが見えなくなるまで手を振った
「…へ…変な期待しちゃった…びっくりした~」
火照る頬を押さえながら、麻耶は自宅の階段を駆け上がった
時は、何事もなく過ぎていく
付き合っていると言っても、時折会ってデートをし
時折デートが剣道に化けてしまい、練習する事も多々あった
そんな中でも、二人で居るのが当たり前で
それで居て互いに心地よかった
だが、拓海の一言がこの関係を、発展させる事となった
「総司!」
車に乗り込み、帰宅しようと考えていた総司が呼び止められ
拓海を助手席に乗せて、ファミレスへと向かった
「なぁ、総司…」
夕飯のハンバーグを口に押し込みながら、拓海が言葉を投げ掛けると
しょうが焼きを口に入れようとしていた箸が寸手で止まった
「お前、麻耶と長い事一緒に居るけど、性欲とかわかねぇの?」
箸で掴んだ肉が、口に入る事もなく、ぴちゃりと皿へ戻った
「い、いきなり何を言うんですか!びっくりするじゃないですか」
今では、言葉使いも気を付け、総司は全ての人へ、敬語を発するようになっていた
だが、そんな事はどうでも良い
今は拓海の言葉に動揺している総司の方が大事だ
「あの、いや…その…」
「もう、麻耶は高3だぜ?出るトコも出てるし、色気も付いてきただろう?」
「拓海、それは…私にどうすれと言いたいんですか?」
「ったく、警察学校に行くのが決まったからって、ダチにまで敬語使うなよ」
「あぁ、いざと言う時の為ですから、気にしないで下さい。それより!その…」
「あ~麻耶が、キスもまだしてねぇとか言うもんだからよ」
その言葉に今度は咽(むせ)た
「…まだ、あの子は学生ですから…」
落ち着きを取り戻し、そう呟くと総司は落ちた肉を口へとほおり込んだ
「……。」
拓海は何かを考え込んでるような仕草をした後に
ポツリと呟いた
「取られるぞ」
たった一言
その言葉に総司は反応を示さなかった
彼女が年々綺麗に成っていくのは解る
美しいと言う言葉が似合って来ている
洗礼された長く漆黒の髪
総司とて男、邪な気持ちが生まれないはずはなかった
日々、一緒に過ごせる時間など些細なほどしかなかった
そんな中で、総司に芽生えた心…
拓海に促された事が封切になった事は確かだろう
高校3年の夏、総司の提案で行った温泉旅館で初めて唇を重ねた…
触れ合う体温が気持ち良く、お互いにその思いを深め
二人は肌を重ね合わせる悦びを知った
けれども…
「…すいません」
総司の謝る声が、発せられると
麻耶は、総司の身体をギュッと抱き締め
「良いんです、次がありますから…」
と、答えた
抱こうとは思っていた
まだ、未知の領域だった全てを、ぎこちなくも順調に進んできたのに
最後の最後で、自分を穿(うが)つ事が出来なかった
情けないですね…と、呟き、生まれたままの姿で抱き合い朝を待った
それから何度か、身体を重ねるも
やはり同じ結果に陥ってしまっていた
彼女が高校生だから?
自分が警官になるから?
理由は何処にも見付からず、総司は項垂れるしかなかった
それでも、麻耶は総司を想い、愛し、側に居続けてくれた
試験で、土地を一ヶ月空ける時だって
笑って行ってらっしゃいと告げてくれる
総司の剣道が調子悪い時は、黙って練習をしている所を
見ていてくれる
そんな麻耶に心は前よりも随分と捕らえられていた
良く考えれば、拓海の言葉などに踊らされず
卒業を待ってから行動を起こせば良かった…
そんな事すら思えてくる
段々と愛しいと言う想いが募っているのだと
そう思えて、苦笑いを零した
警察学校に入る前の見学で訪れた校舎
総司は、同期となる数名と一緒に昼を食べていた
無論、その時に出た話題は、この仕事の厳しさや
これから先の、願い、想い
そして…彼女との事
一人が結婚を決めていると言っていたのを聞いて
そう言う答えに成るのが一番良いのだろうなと、心では思っていた
だが、数名が、家にはまともに帰れず、単身赴任が多く
苦しい思いをするのは彼女だと
そして何より、家に待つ人が居れば…
「待っている人が居れば…恐怖が芽生えるんだよ…彼女の元へ帰りたいと…」
その言葉がイヤに引っかかった…
彼女を構う時間が今よりも減る
想う時間より、勉強の時間が増える…
そんな事を考えながら、ひとまずは解散と言う形で自宅へと戻った
帰ってすぐにでも逢いたい…どこかでそう考えながらも
数日は自宅で色々と荷物を詰め込み作業をした
そのほかの時間は空を見上げ、何時間も色々と考え込んでいた
結局、時間だけが過ぎ、卒業の翌日にやっと二人で逢い
初めて出会った公園へと来ていた
お互い好きな事をしている時間が多い
総司は読書
麻耶は、その総司の横に座って、周りをただ眺めているだけ
空気のように側に居て邪魔にならない…
この空間が、二人とも本当に好きだった。
だが…
パタンと読みかけの本を閉じ、総司が麻耶を見やった
青い空をただ眺めていた彼女に
総司がポツリと呟いた
「お試しは、そろそろ終わりにしませんか?」
一瞬麻耶の表情が歪んだように見えたが、空を見上げたまま総司の言葉に振り向かなかった
「麻耶?」
「…はい」
「別れましょう…」
「……」
突然だった
その言葉に身体が固まってしまった麻耶の思考は一瞬で硬直する
そして、ぎゅっと胸が締め付けられて、涙がはらはらと落ちた
「私に…飽き…まし…た…か?」
「いいえ、違いますよ。私は…」
苦しそうに呟く麻耶に総司が胸の内を語り出した…
警察学校は、そう簡単には外出できず、最初は点々と色々な交番に配属される
その中で、総司が思ったことは、何があっても側に居ると言える自信が無いのだ
何かあってからでは遅い
嫌いになったとか、側に居たくないとか
そんな思いは一切無い、それどころか心が安らぐ人でもあった
けれど、此処で別れるのが麻耶の新しい恋への手助けでも有ると思った
だから、別れを決意したのだ
「沖田先生…好きですっ」
「…はい」
「別れたくありません!」
「…すいません」
涙を溜めた麻耶の顔が総司の胸に飛び込み、両の手で服をぎゅっと掴み
声を上げて泣いた
「ごめんなさい」
何度も、そればかり呟いた総司
「沖田先生っ」
必死にとめようと、麻耶が顔を上げると
切なそうに微笑んでいる総司がそこには居た
「麻耶、沢山愛してくれてありがとう。沢山思ってくれてありがとう
でも、この先は貴女の道があります…さぁ、帰って下さい。」
総司の言葉に肩を震わせ
麻耶は公園を後にした
行く宛てもなく、麻耶は総司と過ごした場所を歩いた
剣道を教えてもらった、学校
卒業してしまい、もう来る事も殆ど無いだろう
初めて、キスを交わしたのは、総司の誘いで行った温泉
誘われた時は、凄く緊張した
そして、愛してくれたあの瞬間
最後までは出来なかった事を、あの人は今も悔やんでいるのだろうか?
中学から付き合って、結局
総司で埋まった想い出は
どんな事をしても振り切ることが出来ず
気が付いた時には、初めて総司に告白した山へと来ていた
泣き明かし、日の出が麻耶を照らす
その光を眩しそうに見つめ、又涙を流した…
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≪補完2011.6.11≫
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2011.6.9
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