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贖罪5

続き

【贖罪】13 真実の扉

晴天とまでは行かない…深夜のうちに雲がユルユルとこの地域に幕を張ったのだろう。
そろそろ朝だと言うのに、まだ周りは薄暗く
ナルトとサクラは岩陰で何やら話し込んでいた。

気付かれる可能性もあったが、カカシは出来るだけ注意を払い
気配を消した。

”そっか…カカシ先生の記憶が戻ったとかって訳じゃねぇんだな?”

”うん、でもアンタには昔の人を忘れられないでいるって…伝えちゃった”

”その通りなんだから、サクラちゃんが謝ることはないってばよ?”

”でも……”

”大丈夫!オレは、大丈夫だから…な?サクラちゃん”

ギュッと、肩を震わせるサクラをナルトが包み込むように抱きしめると
カカシは己の唇を深く噛み締めた。
胸がモヤモヤとして、霧が掛かったように、変な気持が渦巻いて来る。

この気持ちを言葉で表せば…

”嫉妬”

と言う言葉にあっさり落ち着いてしまう。
そして自分は彼を少なからずと、恋愛の対象にしてしまっていると言う事に
気が付いて、深い溜息を落とした。

(なぁにやってんだか…戻ろう…)

自分の寝ていた場所に戻ると、サスケが腕を組んでこちらを見ていた。

「っ…お、起きてたの?」

「あ?あぁ…」

「そ…」

居心地が悪い…
けれど、そんなのを知られたらマズイ事この上ない。

「トイレ…行ってたんだよ」

「へぇ…」

「まだ時間あるから…もう少し寝ていい?」

「好きにしろ」

紡がれる単語に居心地が悪くなっては居るが
トイレに行ったと言う既成事実だけは作れた。
モソリ…と、簡易毛布を上から掛けると、目を閉じ事の次第に
注意を払った。

10分も過ぎない頃、ナルトとサクラが戻ってきたが
そのままサクラは火を起こし、ナルトは何処かへと消えた。
サスケは起きてはいなかったのだろうか?
気配を読むより自分の失態がバレないかと言う不安から
気配を感じるのをすっかり失念していたカカシがフッと目を開くと
まだ毛布に包まったサスケが目に入った。

「あ、カカシ先生おはようございます」

「え?あ…うん、おはよ」

体を起こせば、ナルトが魚と木の実を葉に包んで持ち帰って来た。

「サスケェ~起きろってばよぉ~」

「うっせーな…起きてるよ、バカ」

「なっ!朝からバカ呼ばわりかよ!」

「バカにバカっつって何が悪いんだバカ!」

「むっき~!!!!シツレーな!」

「其れぐらい漢字で言えるようになれ!」

「うっ…」

二人の朝の挨拶らしい詰り合いに目を丸くするカカシ。
凄く仲がいいと思っていたのは…間違いか?
と、一瞬困惑するが、魚を取ってきたナルトに
焼けた物を渡して一番に食べさせようとしているサスケを見て
あれは、喧嘩ではないのか…と、複雑に思いを絡ませていた。

解らない…
同じ班で共に戦い、共に苦しみ、共に笑い合ってきた仲間
それを全て忘れる事が…どれだけの苦しみをカカシに植え付けているかなど
3人は知らないだろう。

記憶を戻したいと、任務書も読んだし、至る所で話も聞いた
それでも、解せないのがナルトとの関係…
他の者に対しては、あっさりと口を開くのだが、ナルトの事に関しては
機密事項かと思うほど口を開かない里の人間に苛立ちさえ覚えている。

九尾の人柱力で、腹の中に妖狐を飼っている。
アカデミーでイルカに教わり卒業後ドタバタ忍者と自分があだ名を付けるほど
彼とその仲間と深くなった。
Cランク任務が蓋を開ければAのランクになったそこで
共闘を初めてして、彼の内なる力に震えた。
中忍試験での成長に驚き、伝説の三忍の一人自来也の弟子となり
カカシの手元を離れ、螺旋丸を身に付けて戻り
そこで、カカシ班と言う名目で彼を同じ対等の忍として受け入れた。
暁の侵略で一度は命を落としたが…ナルトにより生き返るという
凄まじいまでの人生。

どこを取っても彼が必ず傍に居て…

何をしても、彼は常に自分と対をなしている気がした。

ズキリ…急に傷んだ頭に、ビクッと体が震えた。
ナルトの笑顔を見るたびに…米神あたりで痛みが強まっている気がして
任務中はナルトを極力意識しないように努める事にした。

「カカシ…」

合流した保護対象者を守りながら同じペースで歩いていたサスケが
急に声を掛けて来て、視線だけを向ける。

「聞きたいか…?」

「…なに…を?」

「真実」

サスケの視線が、木の上を左右を見渡しながら飛び回す
金の髪を捉えていた。

「教えて…くれるの?」

「あんた次第だよ…周りは口止めされてるから口は割らねぇ
まぁ、少なからず、今のアンタはナルトの事を真剣に考えてるみたいだから」

「…やっぱり、サスケにはバレちゃってたか」

「あんな分かりやすい行動…昔は取ってなかったけどな?」

「まだまだ未熟って事だね」

「…聞きたくなったらオレの家に来い」

「解った…」

聞いてどうする…
もし、本当にナルトと兄弟関係があったなら…
家を黙って出されてしまったナルトは大変な思いをしていたかもしれない

男同士の恋人としてなら…それが真実なら、
ナルトを酷く傷つけている。
それを謝罪した所で…

自分には妻と子がいて、その二人を今更捨てる事など出来ない…
けれど、この思いに封をするのは容易ではないのだけは解る。

どうしたらいい?

ナルト…お前はオレにとってのなんだったんだ?
真実を知るのが怖い…けれど、知りたい…

パックンから聞いたナルトは
一緒に生活をする時もあれば、しない時もあって
互いに譲り合いながら大事にしていたと聞かされた。
兄弟のような絆だと…
でも、自分の中に芽吹いた感情は…それではなかった。

”浮気は許さないから”

不意に、妻の言葉が頭を過ぎった。
彼女から離れる事は…自分がどう足掻いても…出来る訳がない。
拾われた命、生まれた命…それを…好きな人ができたからと
捨てる事など出来ない…

カカシは深く溜息を落とし、任務に集中するために
前方の護衛対象者を見据えた。


==========================================================

【贖罪】14 真実の痛み

任務を終え、今回は狙われていたという割に簡単に任務が終わり
サスケが任務報告書を書いて終了となる。
帰りがけ、時間が思いのほか空いたので、野営の時間でサスケが報告書を
書き終えて、ナルトと二人で夕食を調達しに河原へと出かけた。

到着して、サスケがジッと水面を覗いていると急に腕を捉えられた。

「ナルト…?」

「サスケ、先生に何を言うつもりだよ」

ナルトの真剣な眼差しに、サスケが溜息を落とした。

「…聞いてたのか」

「これ以上先生を乱すなってばよ!オレはこのままで満足だし
先生は優しいから…もしオレと昔付き合ってたと知ったら
先生だって穏やかに過ごせない。
サスケ…頼むってばよ…先生は絶対に知れば苦しむ…だから
頼むってばよ…」

掴まれていた腕を振りほどき、サスケは川面へ視線を向けた。

「オマエを見てるのが辛いんだよ…里に戻り、オマエとカカシの関係を
目の前で見てきた…まぁ、オレは暗部だったからずっと見ていた訳ではないけど
サクラからある程度は聞かされていた…
男同士って悩んで、それでも良いって決めて、火影になったら
別れなければ成らないとか、そんな事に悩んで…それを、解決しながら
お前らは共に生きると誓ったんだろ?
何でもかんでも背負い過ぎて、お前が壊れるのは見たくねぇんだよ」

互いに真剣に向き合っている。
カカシは、絶対にナルトを意識しているのは解っている
だったら、それを知った上でどうするかを
決めると言うのも一つではないだろうか?と、ナルトに伝えたが
首を左右に振り否定するだけだった。

「先生は、まっとうな道に戻ったんだ…
これ以上オレはその道を阻みたくねぇし、今はまだ辛いけど
カカシ先生は、いつでもオレの半身だから…オレが苦しみたくねぇんだってばよ」

「ったく…めんどくせぇ生き方しやがって…まぁでも
カカシにはお前らが付き合ってた事は言わないでおく
けどな…カカシだって知る権利はあるんだぞ?
お前はカカシの為に内緒にしているかもしれないが
それで本当にカカシが喜ぶのか?
お前の犠牲の上に成り立ってる自分を知った時…アイツは
オマエを恨むかもしれねぇぞ?」

「……かも知れねぇな」

「兄の犠牲の上に成り立ったオレが言ってるんだ…」

「サスケ…」

「オレに言われるのが嫌なら…ナルト、てめぇが蹴り付けろ!
カカシは間違いなくお前を意識しだしてるのは
お前だって感じてるんだろ?」

「……解った」

めんどくせぇと、奈良家の専売特許の言葉を奪って
サスケは地を蹴りクナイで魚を捕ると
8匹ほど捕まえて、野営に戻った。

少ない会話の中、食事を終え仮眠を取ると朝になる前に木の葉に向かった。
夜が明け、木の葉の人々が活動を始めた頃に里に戻り
ナルトはカカシに時間を貰えないかと聞いた。

「…いいけど」

「ちょっと、付き合ってくれってば」

「解った…」

火影岩の上、風が強く吹き荒れるその場所で
二人が並んでその場で立った。

「先生…なにが知りたいんだ?」

「え?」

「オレとの昔からの関係?」

「……そうだね、それも知りたいけど
全て、失った記憶を全て…苦しいんだよ
皆の表情とか、オマエに気を使ってるってあからさまに分かる
里の人間の言動だったりさ…
オレの中にある、オマエの位置がおかしいのは自分でも気づいてて
ソレがどの位置だったのか…とか」

「オレってば…嘘は付けない、だから言えない事が多いけど
先生はオレにとってすごく大事な師だった。
昔から、孤立したオレを見放さないでずっと傍で共に戦ってくれた…
里から嫌われてた時だって、先生はオレを守ってくれて
大事にしてくれてたんだってばよ…だからオレは先生を絶対に裏切らねぇし
先生を嫌う事は絶対にしない…オレの唯一の家族だって
今は思ってる…サスケもサクラちゃんも…そして先生もカカシ班の
人間はオレの家族だって思って付き合ってるんだってばよ!」

「じゃぁ…さ、これはどう言う事?」

ギュッと、カカシの体に抱きしめられて
体を強ばらせたのはナルトだった。

「……なに…が?」

「解らない?」

「……ど、どうしたんだってばよ」

抱き締めたナルトに直接解って貰えない歯がゆさに
カカシの手がナルトの手を取りカカシの心臓の上にその手を持っていかれると
早まった心臓の脈が伝わってきた。

「どうしてオレこんなになってるの?」

「……っ、わ…わかんねぇ」

ぎゅっと、抱きしめる力を強くすると
ナルトの体が、それに甘えるように身を委ねてくる
それこそ、こうやって抱き合って今まで来た…と言う証拠ではないだろうか?。

ソっと、ナルトの体に少し距離を開き
顎先をツッと持ち上げると、視線を逸したナルトが
やけに色っぽく感じて唇を親指でなぞった。

「っ…な、何するんだってばよ!」

「オマエの唇とか…肌とか…オレの中に焼きついてて
離れてくれないんだ…触れたい、抱きしめたい…
そんな感情に囚われる度にオレは変なのかと何度も疑問に思った
この一年ずーっとだ…オマエに感じる感情がただの家族だったなら
こんなに気持ちを持て余す事など無かったはずだ」

再び力を込めて抱きしめられれば
ナルトの体は素直に反応してしまう。
温かいぬくもり、自分の半身の思い…
けど…

「先生…だ、ダメだぞ!先生にはスイがいる!」

「ん…解ってる、だから…オマエに手を出してないんだよ
お前を苦しめるだけだったら…こんな事暴こうと思わなかった
けど、オレもそろそろ限界なんだよ…
お前との関係もはっきりしない、家族に近い関係と言われて
納得した時もあったけど…それだけじゃぁ納得できない感情を
自分で悟った…。
妻を抱いても…オマエを抱きしめてる今のように
至福の喜びは手に入らない。
道を誤ったのはオレだ…記憶がこの先戻らないかもしれないし
戻るかもしれない…けれど
お前を失うくらいなら、オレは命を掛けてでも記憶を取り戻したい」

暖かい腕の中、ナルトはただ…涙を流した。
嬉しいと言う思いと家族を壊してしまうのではないかという不安と
入り乱れた気持ちは、どうして良いか分からず
ただ、黙ってカカシの腕に身を委ねた。

「ナルト…オレとオマエは…家族ってだけの繋がりではないよな?」

「うっ…ううっ…言えねぇよ」

ズビッと鼻を啜るナルトの頭をグッと自分の肩口に当てて
体同士がギュッと深く抱きしめ合った。

「オマエはもう十分苦しんだと思う…オレがお前を苦しめてたんだろ?」

「違う!確かに苦しかったけど…オレが自分で!」

「…うん、ありがとう…ナルトその答えが、オレのさっきの問の答えだよ」

「え?」

「ん~…オレとオマエは付き合ってた…
ほぼ間違いなく、恋人関係だったって解っちゃった…」

そっと、カカシの手が優しく…昔のように金の髪を梳いた。

「な…んで…?」

「話の流れを考えてごらん?お前が苦しかったけどって言った時点で
オマエはオレとの関係を認めたようなもんでしょ?」

一気に頬を赤く染めたナルトが、声を荒げた。

「なんで…なんで気付くんだよ!知らないフリしててくれってば!
オレ、今まで何のためにっ…先生のバカ野郎!」

言葉とは裏腹にナルトの手が、自然にカカシの背に回され
ギュッと抱き返されるだけで、今までにない程の
思いが胸に溢れ返ってくる。

「ゴメン…悪かった、言葉でオマエの気持ち引き出した事は謝るよ
けどな…お前一人の問題じゃないだろ?
記憶を無くして、恋人をほったらかしにして他に女作って子まで作ったオレにだって
お前と同じくらい苦しまなければならない罰がある。
知らなかったで済まされてた今までは
そのオレの分までお前が苦しみを背負ってきたんだろう?」

「カカシ…せんせ…ぇ…っく…」

「苦しかったな?」

「………」

もう一度深く抱きしめて、互の温もりを4年ぶりに感じた。
それから、二人は口を開く事をせず
黙って指を絡ませその場で腰を下ろして里を見渡していた。

「一度…オレは家に帰って、もう一度出てくる
サスケの家で…もう一度話し合わないか?」

「…ダメだって、折角帰るのにスイが悲しむだろ」

「ん、スイも連れてくるよ…お前が良いならね」

「いいの…か?」

「サスケもサクラも心配してくれてたみたいだし
こうやって自分の思いが解った今、これからしなければならない事を
考えなくちゃならないでしょ?
サクラも呼んで…皆でオレの忘れている事とかこれから先のこととか
少しでも考えておかないといけないだろ?」

「…解った」

「じゃ、ちょっと行ってくるね?」

スッと、その場から瞬身で消えたカカシを見送り
ナルトも自宅へと向かった。

嬉しい思いが溢れて涙はまだすぐには止まりそうもないと思いながらも
これから先の不安で胸を焦がす。


==========================================================

【贖罪】15 仲間と想い

「で…なんでオレの家なんだよ」

と、場所を提供するサスケがごちた。
サクラとナルトが既にサスケの家である程度の説明を終わらせ
知られた事もひっくるめて、皆で話がしたいと言い出したカカシを
待つ事となった。

「カカシ先生がサスケの家って…」

「ちっ、オレの家に来いって言ったアレをカカシの奴そのまま使いやがったな」

「イイじゃない…カカシ先生がナルトへの思いを思い出して
知ったんだから…もう全て話しましょう?
それに、ナルトも知らない話が少しあるし…」

「え?そうなのか!?」

ナルトがサクラの言葉に身を乗り出すと
サスケがその事は言うのを止めておけと…口止めしていた事を
知って、ギッとサスケを睨むと
サスケがその視線を受けて両肩をフッと上げた

「全部カカシが来てからだ」

「…解った」

サスケとナルトが台所で夕飯らしきものを制作し、サクラが
机を片付け、茶を用意してスイの為に、布団をひと組用意した。
そして、カラカラと開かれたドアにサクラが出迎えると
スイを抱いたカカシが遅くなってごめんね…と入ってきた。

全員が揃い、夕飯を取り敢えず食べる事にして
ナルトの影分身がスイに夕飯を運びながら
サクラが封切りで話がポツポツとされる

「奥さんは?」

「ん?あぁ、今頃買い物とか出かけるとかしてると思うよ?
スイの面倒をずっと見ててくれたからオレが今日は見るって言って
自由にして良いからって伝えたら、出かける用意してたし」

「そうですか…」

その会話が途切れると、影分身のナルトがスイから目を離し
カカシに問いかけた。

「スイの食っちゃダメなものとかあんの?」

「今出てるものの中では何もないから大丈夫だよ」

「おう」

影分身がセッセとスイに食事を運び、食べ終わると今度はじゃれるように二人で
遊び出す風景にカカシが目を細めた。

「さて…今日は泊りがけでも大丈夫だから話をしようか…」

一つのテーブルに4人が座り、他の場所ではナルトの影分身とスイが戯れ合っていた。
そんな中、ポツっと話しだしたのはサクラだった。

「先生は奥さんのこと…どこまで知っていますか?」

「…うーん、それなんだけど、きっとあの人忍じゃないかな?」

「え?」

と、その言葉に驚いたのはナルトだった。

「いや、正直ハッキリとは解らないんだよ…でも、オレが木の葉に戻るのを
反対していたし、挙句こっちに戻れば今度は忍を辞めろって毎日言われ続けてた
昔の写真を隠したり、家を物色した形跡もあった。
忍具とか、巻物とかが無かった御蔭でオレと言うものを知られる迄には
行かなかったようだったけど…」

「……オレが片付けたからな、先生の家。
先生の巻物とかはオレが今も持ってるってばよ」

と、ナルトの言葉にそっか…ありがとう。と返して
カカシは話を続けた。

「後ね…オレの記憶なんだけど、操作されてるかもしれないって
一度いのいちさんがポロっと言った事があったんだ…
だからそれも頭に入れていたし、急に先日までの出来事を
忘れる事とかもあったからねぇ…もしかしてってのはずっとあったんだよね」

「…そうですか、じゃ…奥さんを疑ってるんですか?」

「…疑うと言うか、正直分からないんだよね。
もし忍で任務としてオレと居るなら、スイの存在は必要ないでしょ?
オレの命を助ける必要だって殆ど無い訳だし…
遺体さえ手に入れば、オレの情報は全て解るでしょ?」

「なぁ、奥さんは純粋に先生を愛してるんだと思うけど…」

ナルトの言葉に、皆が一斉に胸を痛める顔を向け
カカシが溜息を落とした。

「そうかもしれないけど…なにか隠してるのは事実だよ。
子供が生まれるのもかなり隠してて…オレが気が付くまで一切言わなかったからねぇ
木の葉に依頼したオレの身元調査任務も、断ってって凄く強く言ってたし…」

サクラが何かを考える素振りを見せてから、ポツリと声にした。

「…先生の、着替えなんですけど、あの家にありましたよ」

「え?着替えって?」

「木の葉の装束一式…屋根裏に隠してあるのを、サスケくんが見つけました」

「…そう、隠されてたって事か」

悲しげな目をしたカカシを横目に見やって
ナルトが声を上げた。

「ちょ、サクラちゃん!」

「ナルトは黙ってて!アンタに任せると話がこじれる。
先生は全てを知る為にココに来てるのよ?
アンタが必死に隠してきた事を先生が聞きたがってるの!解った!?」

目の前に握りこぶしを作られチャクラが集まるのを見ると
ゾッと寒気が襲い、小さくなって声を出した。

「…ハイ、スミマセンってばよ…」

シュンとなったナルトの肩にカカシがぽんぽんと手を載せて大丈夫だから…とにっこり笑うと
サクラ話を続けてと、先を急かした。

「先生の忍装束から、恐らくは身元を辿れたはずなのに
それをしなかったのは、先生を縛り付けたかったんだとは思いますけど
子供が生まれてまでも先生の身元を知らないままで良いと言うのは
ちょっと、解らない所ですよね…
それと、綱手様は奥様の身元を調べさせています…」

「え?綱手のバーちゃんがなんで?」

突然湧いて出たナルトの言葉に、サスケの口からハーッと深い息が吐き出された。

「オマエとカカシのためだろうが、ウスラトンカチが!」

「オレと先生のため?」

きょとん…と、した表情で首をかしげるナルトに
カカシが苦笑いを向け、言葉を続けた。

「オレの血統とかそういう関係かねぇ?」

カカシが茶を啜りながら聞くと、サクラが首を上下に振った。
スイの血に間違いなくはたけの血が流れるなら、将来は忍の潜在能力を
強く持ってるかもしれない。
だからこそ、調べて相手も忍であるならば
どこの里のものか…将来奪い合いなどは起きないか…と言うことだろう。

「カカシ先生はサラブレッドですからね…」

「…まぁ、はたけの家系は忍一家らしいけどねぇ…それも含め
オレとナルトの関係も、一気にどうにか出来るってことだよね…
敵なら、捕まえる事が出来る…けれど一般人だったら、いや、それはないか
彼女は隠蔽術(インペイジュツ)に長けているからね…
ただ、チャクラを練っている感じは今の所感じた事はないんだよねぇ…」

悔しそうにガリッと髪を掻き毟るカカシに
ナルトがソっと手を差し出し、その手を自分の手に引き込んだ。

「この手に…触れる事も叶わないと思ったんだってばよ…
先生が生きて戻るだけで、オレは良かったのに…」

そっと、触れた手が温かくて…生きていると解る。
それだけで十分だった…そう思っていたはずなのに
会えば、やっぱり気持ちが欲を生み出してしまって
この状況に陥った…それがナルトの心を強く揺さぶっていた。

「ナルトはカカシが死んだと聞かされたからな…
オレが見付けるまでの2年はカカシのチャクラを探して
常に休みの日は里から出てカカシの追跡をしていた…
見てられなくて、五代目もそんなナルトを見てるのが辛かったって言ってたしな
コイツは馬鹿だから、カカシ…アンタの死んだ遺体だけでも見付けたいって
必死だったんだよ…
最初の頃なんかチャクラの使いすぎで倒れたり、飯は食わねぇわで手に負えなかった。」

「ちょ、サスケ!何言ってるんだってばよ!」

「本当の事だろうが!この、バカがっ!」

カカシが目を見開いてナルトを見ると
頬を薄く赤らめながら唇を突き出して”だってよ~”なんて言いながら
不貞腐れている姿に、愛しさがこみ上げてくる。

そして、それを思い出せない自分にも凄まじい罪悪感と、苦しさが襲いかかってくる。

「みんなに気を使わせて、ナルトを苦しめて…
ホント何やってるんだって…自分でも思うよ」

失った記憶の分だけ、大事なものを手から零したカカシ。
そして、大事なものを手にしたカカシ…。

ナルトがフルフルと肩を震わせて…
立ち上がると、皆の顔を一度見回して、声を発した…
最初は緩やかに…そして段々と荒々しくなっていく言葉に
サスケとサクラが唇を噛み締めた。

「オレは…先生に、幸せになって貰いたいんだ…
だから、先生が生きてここに居てくれれば辛くなんかない!
もし…もしも、先生が奥さんと別れたら、スイはどうなるんだってばよ?
オレ、そんな事させたくない…
確かに、奥さんは…正体が掴めねぇけど…でも先生に現在の状態で
害を成すことなんか何一つしてねぇだろう!
憶測だけで奥さんへの思いを変えたりしたらそれこそ…

カカシ先生じゃないってばよ…。

だから…もうやめよ?

もう…いいから、オレはちゃんとこれから、進んでいくからさ…な?先生…」

今にも泣き出しそうな顔をして何が辛くないんだと…
本来なら怒鳴る事もできるが…
今の状況は確かにナルトにとっては、この会話を続ける事が
どれだけナルトを苦しめるか…を
サスケとサクラは理解してしまった。

一人で、生きてきた自分…
里に嫌われ、認められたい一心でずっと張り詰めて生きてきた。
父がいたらどうだっただろう?
母がいたら…どうだっただろう…
一人でも欠ければ、それは悲しみの一つでしかなく
スイと言う子供の存在が、ナルトには大きく伸し掛っていたのだ。

「ごめん…アンタの気持ちも考えず、言いすぎた」

サクラが、ポロっと言葉を吐き出すと
次いでサスケも、悪かった…と謝罪の言葉を告げ
ナルトは二人に、泣きそうな表情のまま告げた。

「オレと先生はもう、3年前に終わってるんだ…」

ギュッと手を握りしめて、ナルトはその場から立ち去ってしまった。
それを黙って見送る二人…そしてカカシがそんなナルトを追うように
立ち上がると、サスケの手に止められた。

「ナルトを追わないと…」

「話すから…聞け、カカシ…」

今にも飛びだしそうなカカシを捕まえる腕を強めて
座るように促した。

「なに…を?」

「ナルトの過去だ」

シン…と、静まった室内に、いつの間に寝かし付けられていたのか
スイの深い眠りの呼吸音だけが響いていた。

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