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なつめっぐ 保管場所

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贖罪4

続きです

【贖罪】10 想い

「飲みにでも行かねぇか?」

「…おう、明日休みだし、行ってみるかな」

サスケが酒を誘うなど、珍しい事この上ない。
したがって、誘われるがまま近場の居酒屋に足を伸ばした。

ゆっくり話を聞いてやると、相変わらず上からの口調に
ハイハイと軽く流しながら奥の部屋へと行くと
シカマルとチョウジが、酒を酌み交わしている部屋の前で
視線が絡んだ。

「あれ~?ナルト…珍しいね」

「おう、ちょっとな…それより、お前ら何でカウンターじゃねぇんだってばよ」

「シカマルが任務の報告書ここで書くって…」

チラリと視線を向けると、3枚ほどの紙を横に
スラスラと字を書き込んでいるのが目に入った。

「居酒屋で報告書って…」

「チョウジに言えよ!無理やり引っ張ってこられたんだ」

あぁ、どおりで…と、ナルトが苦笑いして
じゃーな…と、サスケが先に案内された場所へと足を進めた。

「で…カカシはどうなんだよ」

「サスケ……お前、いきなりすぎるだろ」

まずは、一杯飲ませろと頼んだ酒を煽ると
ナルトは深くため息を落とした

「カカシ先生はかなり昔の感覚を取り戻してるってば…
あまり任務が重ならないけど…」

「そうじゃねぇよ…お前の気持ちに区切りは付いたのかって聞いたつもりだ。」

向かい合わせに座ったサスケに見つめられると
胸がギュッと締め付けられる。
彼を助け出すために、必死になって居た自分。
まだあの時の方が目標を持ててよかったかもしれない

中途半端に成人してしまい
気持ちを抑える事を覚えた自分にはこれ以上
何も出来ない…。

「区切りとかわかんねぇけど…カカシ先生はオレの大事な人だ
例えカカシ先生がオレを一番に大事にしないと解ってても
それは生涯変えるつもりはねぇよ」

「ナルト…いいか?忘れると言う手が有るんだ…
何時までも想い続ける事なんて自分を苦しめるだけだろう?」

目の前に出されたお通しをツンツンと箸で突っつくと
フッと笑って、そうだな…なんて大人びた言葉を発した。

でも、忘れられる訳がない…
今でもこんなに自分の中を占めているのに。

と、考えた所でナルトが酒を追加する。
今日は潰れてもいいか?と…サスケに問うと勝手にしろと
回答を返され、カカシを想い酒を煽る。

こんな風に酒で気を紛らわせなくちゃいけないほど
彼を愛しているのだと…サスケに小さく伝えると
フンと鼻で一息返事を返しサスケも酒を煽った。

ヨロヨロと自宅へと戻ると、ナルトはシャワーを浴び
そこで涙を流した。
好きで好きで…今の彼の家庭に嫉妬して
それでも、手に入れたい…

だけど、それは叶わぬ事で

どれだけ大人になろうとも、思いは全く変わらない。

「好きなんだ…先生」

シャワーの音にかき消されるような小さな声でポツリと呟いては
また涙を流した。

酒のせいだろうか?

気持ちが、全く収まらなくて…
ナルトはカカシの家が見える場所まで濡れた髪のままでたどり着いた。
時折影が動くのを見てはホッとして
その影が増えると次第に悲しみを帯びる。

「情けねぇ…」

呟いて、カカシの家から背を向けた。

「ナルト?」

「…あ、紅先生か、久しぶりだな」

こんな時間にどうしたの?と、言われ散歩としか答えれなかった。
けれど、彼女は何かを感付いたようで
一緒に少し付き合ってと…久しぶりに墓地へと向かった

「こんな時間にくんの?」

「そうね、子供が寝てからこうやって
アスマのお墓に来るのが日課なの…」

「そっか…」

「ナルト…今苦しくない?」

「………」

アスマ先生の前で…そう問われて、胸が熱くなった。
たった少しの間だったけど、同じ班での任務もしたし、修行のために
アスマ先生に質問をした事もあった
アスマ先生なら…今のオレの思いを聞いてくれるかな?

「…声を上げても誰も来やしないよ」

そう言われて、自分が泣いているんだって…気が付いた

「さっき…まで、泣いてたのに…涙って枯れねぇのな?」

グスッと鼻を啜ると、紅先生が抱き締めてくれた。
女の人の柔らかさに心が解される気がする

「カカシはゆっくりだけど、自分を見つめてる…
もう、あの人には家庭が出来ちゃったけど
アンタを大事にしていたカカシはシッカリと生きてるんだよ」

「うん…」

「辛くても、聞こえる声、感じる暖かさ…全てを失った訳じゃない
失ってしまって、後悔する事もない…だからさ
カカシが生きてそこに居るだけで…アンタは前を見て生きていける。
ね?ナルト…」

カサカサと、花を包んでいた新聞が揺れる。
奥の林から運び込まれた草が、二人の間を優しく撫でるように通り過ぎた。

「最初…は、ソレだけでいいって…思えてたんだってば…
けどさ、時間が経ち先生が笑うから…生きてるから…オレってば
勘違いしちゃうんだ…あの時のカカシ先生と重ねて見ちまう」

「そっか…そうだよね、欲って生まれるものね。」

紅は、風に流された髪を手で抑えると、ナルトの言葉に耳を傾けた。

「だけど…忘れる事はしないけど…先生は
自分の先生じゃないって事はやっと自覚してきたんだ
でも、立場が近くなると、オレってば欲深くってさ…
ほんの少しでいい…抱きしめて欲しい、愛して欲しいって…
言えない思いがオレの中に一杯湧いてきてさ…
止まらなくなるんだってば…紅…せんせぇ…
ごめんな…こんなオレの話聞いてくれてアリガトウ」

「バカだね…いくらでも聞いてあげるよ
アンタはカカシを変えた子…あんな殺伐とした戦いの中に
見出したカカシの光だったんだから。

忠実に、冷徹に任務に徹して…逆らう事も理不尽にさえ
文句など付けずに任務を遂行する…
そんなカカシが、アンタの為に火影の言葉を蹴った事があってね…」

「え?カカシ先生が!?」

「そ…終末の谷だっけ?あの時カカシには違う任務が宛てがわれるはずだったんだ
けどねぇ…それを蹴って、いや…火影の命に背いたんだよ。
瀕死のうずまきを抱えて帰って来た時は、流石にカカシの判断が正しかったって
火影様も納得はしてくれたけどさ…
その後、うちらと飲んでてさ…カカシのセリフに皆驚いたんだよ。」

自分の知らないカカシ…しかも、終末の谷の事件は
サスケが抜けた時の話…。
そんな幼い頃の自分が少しでもカカシを変えられてたなら…
すごく胸が高鳴った。

「せ、セリフって?」

「あの、冷徹男がだよ?…”気が付いたら飛び出してたっ”…って
笑えないか?アイツは火影に逆らう事なく、今までどんな事にも冷静に判断してたんだよ
それが、お前とサスケを追うのに…気が付くまで自分が何をしているかを
理解出来てないって事。」

「……そっか、先生は優しいからな」

先生の背中を思い出して、あぁ…必ず大きな戦いの後には
カカシ先生に背負われてた気がする…と、思い至った。

さっきまで冷えてた心が急に熱を持って…なんだか、そうやって知らない先生を
教えて貰った事に胸がギュッと締め付けられた。

「紅先生、サンキューだってばよ!」

「うん、そろそろ寝ないと明日も疲れるよ…さ、帰ろう?」

「おう!オレってば、紅先生を送ってく!」

「一丁前に男になっちゃって」

人差し指で額を小突かれた。

「あでっ!いてーってばよ!それに、送らねぇと…シカマルに殴られそうだしな?」

と、笑うと…紅先生も確かにそうかもね…なんて笑ってくれた。

気持ちを消す事は出来ないけど…
大好きだから…
だから、気持ちを大事にする。

カカシ先生の為を思って生きていける気がした。


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【贖罪】11 スイ

はたけカカシ…その名には大きなモノが付き纏う。
写輪眼、業師、英雄…数多くの褒め言葉を纏った名前は
他里のビンゴブックにも記載されるほど。

狙われる事など、常に付き纏っていた

現在、上忍並みの力を取り戻したが、それ以上の力はマダマダ取り戻せてはいない
コピーの仕方を覚えたものの、印を結ぶ速さや、コピーした忍術も
未だ100ほどだろうか?
ナルトに影分身を教わる約束をしていたため

スイとの散歩も兼ねてカカシは家を出た。

「あ~…あっ…」

「ん~?」

抱き上げたスイが指を指す先は公園
約束の時間にはまだ早いため、カカシはその公園へと足を向けた。

砂場で下ろすと、砂をぐしゃぐしゃとかき混ぜて
キャッキャと笑うスイを見て自然に目が細くなる。

「あ…はたけ上忍だぞコレ」

その声に振り返ると額あてに首から長く伸びるマフラーが目に入った。
横には二人の男女。

「砂場でなに…あ、子供か」

「君は?」

「あ~ナルト兄ちゃんの弟子の木の葉丸…
本当に記憶なくしてるんだなコレ」

「…うん、ごめんね」

「そっか…記憶は戻らなさそうなのかコレ?」

「…そうだね、もう3年も戻ってないからね」

「そっか、うん、戻らないならもう、戻らないままのほうが
ナルト兄ちゃんも幸せかもしれな…むぐっ!」

「木の葉丸っ!」

皆が一斉に木の葉丸の口を塞ぎにかかって
カカシは、その雰囲気に眉間にシワを寄せた。

いつもそうだ…

大事な何かを忘れ、自分はその犠牲の上に成り立ってると
そう思わずにはいられない。
里の人間…ましてや自分の近くの人間には特にそれを感じる。

「あっ!子供が砂食ってるぞコレ!」

その声に慌てて振り返れば
泥棒のように口の周りを黒くしたスイ

「あーらら…ホラ、スイ…おいで」

ギュッと抱きしめてやると、嬉しそうにキャッキャと笑う我が子の
口を拭って、そろそろ約束だからと木の葉丸に別れを告げて
ナルトの元へ向かった。

「……子連れって」

呆気に取られているナルトに苦笑いを向けると
修行にならないと怒られるのを覚悟で聞いてみる…

「あ~ごめんね?うちのが買い物行くからって置いて行ったんだ…」

「あ?あぁ、全然いいってばよ!どうせ影分身の練習だから
さほど時間もかからねぇだろうし」

ポンと一人を生み出すと影分身のナルトが
カカシからスイを受け取った。

「うわぁ、軽いなぁ…スイ」

「う?…キャッキャ」

一瞬強ばった表情を見せたが、どうやらナルトの目の色が気に入ったらしく
一生懸命青い目に手を伸ばす。
届かなくて、ペチペチとナルトの頬を叩く…

「いてーってば…」

嬉しそうにナルトの顔を叩くスイにカカシが目を見開いた。

「…ナルト」

「ん?なんだってばよ」

「スイに気に入られたみたいだね?」

「は?」

「スイはね…人見知りが激しくってさ
オレか妻じゃないとすぐに泣くんだよ…」

そう言うとナルトがスイを見てニッコリと笑った。
きっと、スイはいい子に育つな!なんて嬉しそうに笑うナルトに
ドキリと胸を昂らせたのはカカシだった。

「さーて、先生の相手はこっちだぞ?」

スイを抱いていない方の本体がカカシに声を掛けると
コクリと頭を上下させ、額当てをグッと上にあげて写輪眼を顕にした。

「印はこうだってばよ…」

二本の指を立てその場で左右の指先を絡めると
カカシは黙ってじっと見ている。

「影分身の術!」

ポポポンと5人ほど作り上げると、カカシが焼き付けた記憶をシッカリと
頭に叩き込み、指先をナルトと同じように組む。

「影分身の術っ!」

ポン…と、現れた一人は、間違いなくはたけカカシ。

「やっぱ、はえーっ…教えがいがないってばよ!」

「…しゃーないでしょうよ、写輪眼でコピーしたらすぐ出来ちゃうんだし」

「へーへー…そうやって直ぐにオレを追い抜いちまうんだ!」

と、不貞腐れるナルトにオマエを超えるなんて、記憶が戻らない限り無理でしょう?と
悲しげに答えられ言葉に詰まったのは、ナルトだった。

オリジナルのナルトが、影分身の抱いているスイを受け取ると
影分身が消えぷにゅぷにゅと頬を突っつくとその指先をギュッと握り締められて
なんだか心に暖かい物が湧き出るのを感じたナルトがカカシをみやった。

「先生…スイと少し遊んでもいい?」

「うん、遊んでやってくれる?」

静かに草で遊ぶ二人を見ていたカカシが
ポロリと口を開いた。

「なんか、ナルトとこうやってると凄く幸せだな」

深い意味なんかなく、ただ感じたままを口にしたのだが
それを聞いたナルトが真っ赤になって自分を凝視して来ていたのに気がつき
ハッとした…

「あ…あの…ナルト…?」

「せ、先生何かそれって…口説き文句みたいに聞こえるってばよ」

「あ、そ…そうだよな…ごめん、なんか無意識で言ってた…」

「お、男口説くってどうなんだってば!」

「いや、そんなつもりは一切ないし、そんな思考じゃなくだな…」

いや、そんなつもりだったのか?
口ごもったカカシにスイを返すと、ナルトは悲しそうな瞳で

「そんな殺し文句、気を付けねぇと勘違いするからやめろってば」

「悪い…すまなかった」

何だかぎこちない雰囲気になってしまった御蔭でナルトも居心地が悪くなって
その場を立ち去ることにした。

「じゃ、オレ行くってばよ、じゃーな!次会う時は10人くらい出してみせろってば!」

と、言い残してスイをカカシに返し彼は消えていった。
自分が齎した言葉ではあったが、ナルトのあの態度を見れば
もしかして…自分に気があるのだろうか?
なんて事まで浮かんできて
そんな事あるかと首を左右に振った。

認める事は出来ない。

こんな気持ちを…

カカシは、思いを振り切るように首を振ってから、そっとスイを抱きしめた。

==========================================================

【贖罪】12 記憶の欠片

あんな表情のナルトを見るのは初めてで
それで心に焼き付いたのかもしれない。

朝、小鳥がさえずる中目覚めたカカシが
夢の中で彼を抱きしめていた事に何となくの罪悪感を感じた。

横の温もりは、まだすうすうと寝息を立てていて
ギシッとベットを軋ませてカカシがテーブルへと足を向けた。
コーヒーを注ぎ、窓の外を見やると
既に起きているらしい周りから、数人の忍が走り回っているのが見て取れた。

自分が忘れている事は、皆が口を揃えて教えてくれない。
自分は…何を大事にしていたかは判らないが、すごく大事な何か…を
思い出せそうで、引っかかっている

それを思い出せれば自分は戻れるかもしれない…
ナルトの先生に…。

「ねぇ、寒いんだけど…」

「ん?あ、あぁ…窓開けてた、今締めるよ」

布団の中からかかった声にカカシが窓を締めて
任務のために、着替えを終わらせると、不意に窓際にあった棚の
奥に置かれていたモノに視線が止まった。

2枚の写真立て…
一枚は、おそらく自分の幼い頃の写真で
まだ顔に傷が無い時の写真、もう一枚は…

「ナルト?サクラと…これはサスケか?」

隠されるように棚の奥に写真立てのまま置かれていたそれを見て
自分は口布をしていたんだと…今更ながらに知った。

指でなぞると、胸がギュッと締め付けられる。
きっと、忍など見たくもないと彼女が隠したのだろう…
けれど自分には大事な記憶の一部。

(何も隠さなくてもいいじゃないの…)

と、ため息を落としてその写真を元の場所に戻し
今日の任務のために、集合場所へと向かうと
予定メンバーじゃない人がその場所で立っているのが目に入った。

「…サスケ?」

「あっ!カカシ先生!サスケくんが
やっと暗部から通常任務に戻れたんです!」

嬉しそうに言うサクラになんて返せばいいか解らず
首をかしげると、サスケがサクラに小声で何かを伝えサクラが
申し訳なさそうに自分を見て、ごめんなさいと…言った。

「あ、うん…忘れてるオレが悪いんだし、気にしないで」

としか言えなかった。

ナルトは夕方から合流して2泊の護衛任務を受けた。
ランクはAで、サスケ、サクラ、ナルト、カカシの4マンセルでの仕事となった。

二人の会話には殆どがナルトの事ばかり…ドジだのバカだの…酷い言われようだなとは
思うけど、彼らは本人を目の前にしても同じように言う。
と言う事は、本当に裏表のない付き合いができていると言う事だ。

「ホント…お前らって仲いいよね」

「え~?私とサスケくんは仲良いですけどね~ナルトは…
仲が良いと言うより…」

「あいつは…家族みたいなもんだろ?」

「…うん、そうだね」

悲しげな目をして話す彼らに言葉は掛けれず、野営を早めにとって
夜明けと共に出発すると、日が暮れだした頃に、場所を確保して火を起こした。

「ナルト、夜には着くかな?」

火に拾った木を押し入れるサクラがポツリと呟くと
サスケがそろそろだと思うと言葉を続け、そうよね…とサクラが安堵する表情を見せる。

「…ナルトって今付き合ってる人いないの?」

突然切り出してしまって、皆が一斉にカカシを見る。
サスケに至っては、苛立ったような表情でカカシに何かを言おうとしているのを
サクラがサスケの肩に手を置いて制した。

「カカシ先生…」

「…ん?」

「ナルトにはそう言う人はいません…大分前に
彼は大事な人を亡くしましたから…未だにその人を思っているんです」

「亡くした…?」

「ええ、同じ忍びだったんですけど、遺体も上がってないんです
ですから、ナルトにその手の話は絶対にしないでくれますか?」

「……あ、あぁ…ごめんね、無神経だったね。
解ったよ、もうこの話はしないから」

嫌な予感だけが胸に膨らんで…この話を振る事で皆の態度を見ようと思ったけど
その、付き合っていた人って…もしかしてオレじゃないの?
そんな事を浮かべるには条件が揃いすぎていた。

なによりも、サスケのあの痛々しい表情と、初めて自分と出会った時の表情が重なった。
もしかしたら…前から自分の中に居た碧い眼…金髪…それに見合うのはナルトか
もしくは自分の師だった四代目火影。

写真を見てその二人を連想したが
一番最初に火影の執務室で出会ったナルトに衝撃を受けたのは今でも
記憶に新しい…。

「カカシ…なんで今頃そんな話を振ってきた?」

サクラに止められながらも、制して声をあげたサスケ。
それに答えることが出来なくて、言葉を選んでいるとザザッと風が舞った

「遅れたってばよ!悪ぃな!」

「…もういいっ!」

「は?何怒ってんだよ…サスケ」

「おめーじゃねぇよ、ウスラトンカチ!カカシにだ…てめぇの気に病むことじゃねぇ」

と、言い切って背を向けたサスケにキョトンとした表情を向け
サクラと視線を合わせると目を逸らされ
ドクリと心脈を強めた。

カカシとの恋を…知られたのか?

恐る恐る振り返ると、カカシは何事もなかったように
ニッコリと笑って遅かったねと…話しかけてきて
気の病み過ぎかとホッとした。

野営に加わり、今後の作戦を立てていると
カカシがナルトの横から顔を出した。

「ねぇ、オレにもちゃんとした事させてね?
もう、結構お前達に追い付いてきたし…黙って後ろで見てるのは
そろそろ、同じ給料を貰う上でも情けないからさ…」

その言葉に視線だけで聞いていたサスケがコクっと頭を上下させて
計画を話しだした。

「…カカシはオレと張り付いての護衛だ…ナルトとサクラは辺りの巡回警護
明日の護衛対象者との合流後、こう言う形で行くからな」

「「「おう!うん、解ったよ…」」」

三人の答えに満足して、リーダーを勤めていたサスケが
ごろりと寝転がり、サクラとナルトは少し話を終えた後に
火を消して横になった。

見上げる空に満天の星。

カカシは自分の手を頭の後ろで組んで枕がわりに置くと
そっと、視線をナルトの方へと向けた。
頭の中で彼を何度も抱きしめたり、触れたりしている…
最近はやけにリアルで、抱きしめた温もりや香りまでもが
鼻に残ったり、あの無邪気な瞳が夜にしか見せない…淫靡な表情を
自分に向ける事などありえないと思っているのに…
その表情を夢の中で何度か見た。

(最近、出してなかったな…溜まってるか…)

はぁ、と深い息を吐き
任務が明ければ、欲を吐き出すことも出来ると
そこまで考えて目を閉じた。

――…ト――

 ―― ナル…ト…――

声が聞こえ、薄く目を開くと、ナルトの傍にサクラがいて
揺り動かしてナルトを起こそうとしていた。

「ん?なんだってば…」

「ごめんね、こんなに早くに」

「あぁ、大丈夫だってばよ?」

「少し、離れた所で話がしたいの…」

「…え?」

視線が徐にカカシに向かってくるのを感じ
カカシは目を閉じると、二人が歩き出す音が聞こえ
目をパチリと開いた。

ジッとサスケが寝ている方を見やったが、動く気配もないので
カカシはそっと、ナルト達の後を追った。

(カカシ…どう言うつもりなんだ…)

寝たふりを決め込んでいたサスケが、それをふと考えたが
目を伏せた。
カカシは何かを感じ取っていて昨日の質問に至った可能性が高い。
もし何も感じていなければ、今だってサクラとナルトの後を追う事はしないだろう。

仮に、二人が気が付かないで話してしまえば
カカシにナルトとの昔の関係が露見するだろうが
それはそれで良いのではないだろうか?
ナルトだけがその思いや気持ちを抱え込み苦しんでいるなんて
もう、正直見ていられない。

追ってカカシを止める事も出来たが、あえてサスケはそれを放棄した。

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