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続き
【贖罪】16 揺れる気持ち
サスケは知る限りを話し、サクラがそれに足りない分を補足しながら
ナルトの過去が語られた。
ある程度は知っていたものの、四代目火影の息子であり、その両親が
ナルトの中の九尾によって殺された事
監禁状態で、生活をしていたこと、里の皆に迫害されていたこと
それらを全てカカシに伝え、カカシもナルトの壮絶な生との関わりに
ぐっと唇を噛み締めた。
「だから…アイツは親を無くすなんてさせたくねぇんだよ…
ましてや、カカシ…アンタの子なら尚更だろうよ」
痛々しい表情のまま、カカシがポツリと声を上げた。
「……そうだね、オレとナルトは…3年前に…終わったんだよね」
グッと、唇を噛み締めるカカシに、視線を向けていたサクラが…
「カカシ先生…ナルトは先生を大好きで、きっと今でも大好きです
だからこそ、幸せになって欲しいって思ってるんだと思う
自分の気持ちを殺してまでも、スイを大事に思ってる…
カカシ先生…だから、だから、ナルトへの恋情は…」
ギュッと手を握りしめたサクラが最期の言葉を吐き出せなくて口ごもる。
それを見たサスケも…言葉には出来なくて
ただ俯くだけだった。
その無言の雰囲気を壊したのはカカシ自らの言葉だった。
「ナルトへの思いは…捨てろってワケ?」
「っ…」
悲しい…って、こう言う顔を言うんだろうな…
サスケがそう、心の底で思った。
それ程に切なげな顔を見せたカカシが、小さく無理だよって
言ったのを二人共聞き逃さなかった。
「ナルトを苦しめる道しか残されてない?
オレが記憶を戻せば何か解るかもしれないよね?」
それでも、ナルトにしがみつくカカシの言葉に
サクラが耐え切れず涙を落とした。
「せんせ…記憶、戻った…ら、昔のナルトバカに戻っちゃいますよ?」
泣きながら笑顔を向けるサクラに、そんなにバカだった?って聞くと
年甲斐もなく、大好きオーラ出っぱなしでしたからと答えた。
「ナルトを苦しめないためにも、オレは記憶を戻す方法を探るし
妻の事も、色々と調べてみる…綱手様に色々と迷惑を掛けるけど
相談もしてみるよ…」
「そうするしか、ねぇだろうな」
サスケが、強ばっていた肩の力を抜いた。
カカシは、終ったと言ったナルトの言葉を飲み込まず
新しい道を探そうとしてくれている…
それだけナルトの事を深く思っているんだろうと理解出来るから
やれるだけの事は、やってやると決意を新たにする事が出来た。
「私も微力ながら協力します」
サクラが告げると、お願いね…と、カカシが伝えてくれて
その日は解散となった。
サクラはその足で、ナルトを追うと、自宅に帰っていたナルトと会う事が叶った。
ナルトの気持ちも考えないで、勝手に言ってごめんなさい…と告げると
今まで泣いていたのだろう、赤い目を擦りながら首を左右に振った
「ごめんな…オレ、勝手だよな…
先生に終わったなんて…言うつもり無かったのに…
なんでっ…言っちゃったんだろ…情けないにも程があるってばよ」
「…ナルト、アンタの気持ちは解るとは言えないけど…解ってあげたいとは思う。
それはサスケくんも、綱手様だって一緒だから。
先生は記憶を取り戻すために頑張るって…言ってたから
何かあったら手伝ってあげてね?」
「……うん、手伝うってばよ?オレは先生の為なら何でもするし
スイの為なら、何でもするつもりだから…オレの勝手な思いだけど
カカシ先生とスイはオレの家族みたいな物だからな…
好きだとか、愛してるだとか…もう、そんなものに縛られないで
オレは先生を見ていたい…ただ其れだけなんだってばよ…」
サクラがニッコリと笑うと、スッと手から小さなアメ玉が転がった。
それを受け取ると、ナルトがキョトンとした顔を向けて来る。
21にも成長したナルト…顔は既に引き締まって男を匂わせる風貌ではあるが
元来の童顔と華奢な体は、いくらガイと鍛錬を積んでも筋肉は太い線を描いてはくれなかった。
そんなナルトのキョトンとした表情はサクラには有り難かった。
まるで昔に戻ったような…そんな感覚がサクラの中に舞い降りたのだ。
「3年…3年もの間アンタはそう言う顔見せてくれてなかったから…何だか懐かしい」
「……へへ。オレってばそんなにドンヨリしてた?
それなりに笑う事だってあったってばよ?」
「ばーか…バカナルト!!目が、アンタの目が笑った事がなかったのよ
表面的に笑ってる姿じゃなく、本心から笑ってるアンタをずっと見てなかったの!」
「……うん、ごめんな?これからは、大丈夫だってばよ。
カカシ先生にも言ったし…かなりすっきりしたからな。
確かにさ、カカシ先生を苦しませるなら言わない方が良いと思ってたけど
言って良かったのかも知れねぇな?
オレも、スイの事ちゃんと言う事出来たし…」
「まずは、先生は記憶を戻すのと、奥さんの素性について調べるって言ってた
ぎこちなくて、会えないとかそう言う事は言わないでよ?
カカシ先生は、何よりもアンタに頼るはずなんだから…」
「へへっ…お、おう!」
にぱっと笑ったナルトの肩をパーンと叩くと、ナルトが目を丸くして”いてーってばよ”と
抗議するがそれも耳に入れず、サクラはナルトの部屋を後にした。
そんなサクラを見送って、口にほおり込んだアメが、やけに酸っぱかった。
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【贖罪】17 妻と子
カカシは、直ぐに綱手に話を持ちかけ、ひとつの決心を固めた。
どんな事があっても、記憶だけは取り戻す。
それがナルトのためであり、自分の為でもある。
そして、彼女のはっきりしない態度と、なぜウソを付いてまで
カカシの名を隠したのか。
なぜ子を産んだのか…
なぜ…自分を助けたのか…そんな沢山の疑問をゆっくりでも
解き明かせればと思いながら、帰宅して直ぐにスイをベットに寝かせた。
妻はまだ戻る気配が無かったが、ナルトが凄く可愛がってくれる
我が子の寝顔に頬がゆるりと緩むと、髪をひと撫で…
ふわりと香ってきた匂いに、カカシは目を伏せた。
普段香りのする物を彼は付けてはいない。
けれど、パックンの修行の御蔭で随分と鼻が良くなった御蔭で
ずっとスイに付いててくれたナルトの香りがする気がして
ベットに体を横たえ、スイの髪へと鼻先を押し込んだ。
自分の鼓動が早まる事に苦笑いをしながら目を伏せると
カチャリと鍵が開けられ、妻が帰宅した。
「お帰り…ウズリ」
「あ、ただいま…カワの好きなナス買ってきたよ?」
「そう…いつもすまないね」
「いいの…」
冷蔵庫を開けて食料を押し込み、ウズリは風呂へと消えていった。
その間に、申し訳ないと一言言葉を残して、カカシがバッグの中身を確認する。
財布、ハンカチ、ティッシュ、買い物のレシートと…一枚の紙。
(これ…何かの術が掛かってる…)
何も書かれていない紙は、微量だがチャクラを感じ、ジッと目を凝らしてみると
左目がそれに反応した。
”封呪”と書かれてる所まで読み取り、風呂場で水が止まる音を確認して
慌ててそれをしまうと、カカシは薬缶に綱手から渡された薬を入れ沸騰させた。
カチャリと開かれたドアに台所から視線を送ると、ウズリが辺りを見回す。
「スイは?」
「ん?あ~ベットに寝かせてるよ?」
「あら、あの子随分早くに寝たのね?」
「ん、ナルトに遊んでもらった御蔭かな?帰り際までサスケの家で
ずっと寝ててさ…帰って来てからも、ちょっと起きただけで
直ぐに眠ってしまったよ…」
「そ、そうなの…」
「はい、お茶でも飲みなさい?」
「え?あ…ありがとう」
コトンと差し出された茶を黙って見ていると
カカシは同じ薬缶から淹れた茶をグッと飲み込んだ。
それを見計らったように、ウズリも口へと運んでいく。
「にがっ…」
「あぁ、そんなに苦い?五代目がくれたんだよ…
貰い物だけど、お前と飲めって」
「え?あ…そうなの?」
「うん」
コトンと、湯呑を置くと、ニッコリと笑うカカシにウズリも釣られるように微笑んだ。
「ね、ウズリ…オレを見つけた時の話…聞かせて?」
「え?…な、なんで?」
「オレさ…記憶を戻したいんだよ。
全てじゃなくても良いから…少しでも今の班の事とか
五代目のこととかさ、それに小さい時の事や父の事母の事
思い出が何一つ無いオレに、スイを育てて行く事が出来るのかって…不安なんだ」
「……記憶なんて戻らなくていいじゃない」
悲しげな視線を素直に受け取り、薄く微笑んでみてから言葉を続けた。
「うん、そうかもしれないね?でも…さ?戻らなければ、今のオレでは
里の足引きにしかならないでしょ?
1000の術をコピーして、木の葉最強と歌われたオレが
このまま、他の忍に狙われて…ナルトやサスケやサクラ、サイに守られて
そうやって生きて行くしか出来ないのはさ…やっぱり辛いんだよ」
「…久しぶりね」
「え?」
「この里に入ってから、貴方は私と向き合おうとはしなかったじゃない」
的確な言葉に、苦笑いをこぼして言葉を取り繕った。
「…向き合うと言うより、修行の毎日だったしねぇ。
今も修行はしているけど体は覚えているみたいで沢山の術を覚えたからね…
やっと、自分の時間が取れるようになったって感じだよ」
「そう…いいわ、話すわ」
「うん」
聞いている話と一つも違わない。
記憶に残る部分は別にいいとして、それ以外で聞き出せる事を
どうにか聞き出してみようと、話を進める。
茶が半分に減った頃、彼女の口は饒舌に回り始める。
「オレに子供が出来たって言わなかったのは何故?」
「ごめんなさい…言えなかったの。
貴方はいつか出ていく人だって…だから言えなかった。
あの場所に縛るつもりもなかった…
私の兄は、貴方に殺されたけど…それでも、貴方を見るたびに…あ」
なにか…言ってはいけない事を吐いたかも知れない。
そんな不安を顔に出すウズリにニッコリと笑って話を続けた。
「……オレ、そんな事したんだ?」
「…あのっ、違う、ごめ…何かおかしい…」
「何が?何もおかしくなんかないよ?」
「え?…あれ?知って…たの?」
カカシの左目が、ユルユルと回りだし辺りの空間が、ふわりふわりとした感覚に
ウズリはグッと唇を噛み締めた。
けれど、その抵抗もカカシの視線を外せない状態では、あっけなく無駄に終わり
ふわりふわりと、体が酔っていく感覚に身を委ねた。
「知ってたよ…ウズリ、ちゃんと話して?」
視線を外させないように顔を寄せて話掛けると、彼女はユルユルと口を開いた。
「うん、兄さんは写輪眼を狙ってた…だからあの日
兄が写輪眼を持った貴方を拾い上げてウチへと連れてきたの」
「あの日?オレが見つかった日か?」
「そう…兄は忍で私は、そんな兄と暮らしていたの」
「じゃー君は忍ではないの?」
「違うわ…」
チャクラが練られていなかったのは、彼女が忍ではないから…
そこを理解すると次の質問へと進む。
「オレは、いつ兄さんを殺したんだっけ?」
「貴方が…家に来て2日目の事だったじゃない」
「あぁ、そうだったね…」
ポロポロと、涙を流す彼女を黙って見ていると
泣き顔のまま微笑まれた。
「貴方の素顔を見て…一瞬で貴方を欲しくなったの。
兄にそれを言ったら殴られたわ」
「……そう」
顔は穏やかに微笑んでいるカカシの手がギリッと握られた。
けれども、今は事を荒げて術が解けるリスクは侵したくなかった。
「だったら街の人は、何故オレが来た時の事を言わなかったんだろう?」
「兄が…術を掛けていたから…」
あの街の人間は、総勢でも50人ほど…
一人一人に掛けていれば必ずチャクラは切れる…では、どう言う事なのか…
頭を働かせて思考をフルに回転させだした時だった。
「にゃっとー?」
目を擦るスイの声によって、幻術が解かれてしまった。
「あ…あれ?」
目をパチクリとさせたウズリを見て一瞬ヒヤッとしたが
カカシは何事も無かったように声を発した。
「ん?どうした?」
「あ…え?いえ…私何か言ってた?」
「ん~?オレの発見当時の話をして貰ってたら急に黙るからさ…今まで聞いた話と
なんら変わりはなかったけど…何か言い残してた事あるの?」
「…え?、な、ないわよ?」
「そ…教えてくれてありがとね?ウズリ…風邪引かないように、ベットに行きなさいね?」
「はい…」
頭に掛かっていたバスタオルで、いささか冷えた髪の水分を吸い取り
寝る支度を始めたウズリを目で追ってから
「スイ?にゃっとってなに?」
グッと体を反らし、スイの姿を視界に入れると
その言葉にスイがニッと笑った。
「にゃっと!」
「うーん?」
「ちち!」
とてとてと、おぼつかない足でカカシの膝までたどり着くと
カカシがスイを抱き上げて膝の上に座らせた。
「ん?おいで…」
その言葉にニヘーっと笑ったかと思うと
ぎゅっと小さい手をイッパイにしてカカシに抱きついた。
「にゃっと!」
「だから~その、にゃっとってなによ?」
「きゃはは!にゃっと~」
意味不明な覚えたての言葉を話すスイは既に目が煌びやかに輝いていた。
しばらく寝ないなこりゃ…と、溜息を吐くと
カカシがスイに上着を着せた。
「カワ?出かけるの?」
「コイツ…寝なそうじゃない?ちょーっと、散歩でもしてこようかなって」
「そう…もう遅いからあまり遠くへ行かないでね?」
「ん、解ってるよ…行ってくるから寝てていいよ?」
「うん…気を付けて」
違和感なく、家から出られたはずだ。
少し遠くから様子を伺ったが普段の生活と変わりなく
化粧水を叩くと布団に入ったようだった。
深夜の木の葉の里は人も殆ど歩かず
シンと静まり返っていた。
肩車をしたり、おんぶをしたりして
寝かせようと、体を揺すってみるも、スイはどうやら
覚醒してしまったらしく、眠る気配すらない。
「あーあ、お前が声を掛けなければもう少し聞けたのにな?」
「う?」
言葉の意味などわからないスイはキャハキャハと笑うだけで
全く…と言いながらも、カカシもその笑顔に釣られて微笑んだ。
1時間ほど歩くと、やっと眠気が襲ってきたのか
体温が熱くなるのを感じて、チラリと視線を向けると
目がユラユラと頑張って起きようとしているのが目に入った。
(大人しく寝てちょうだいよ…)
なんて思いながら、トントンと一定のリズムで尻を叩くと
スウスウと寝息に近い音を耳が捉え、家へと戻ろうと踵を返した所で
今度は愚図りだしてしまった。
「うわ、勘弁して頂戴…」
「あうあぁ~にゃっとぉ~うえぇ~ん」
ハイハイ…と、ポンポンと迎合わせに抱いたスイの背中を叩いて居ると
急に泣き止んだ。
それどころか、胸から這い上がって、背中の方へと行きたがるように
力を足に込めるではないか
「ちょ、落ちるでしょうよ…ほら、静かにっ…っえ?」
「……なにやってるんだってばよ?」
スイに手を握られたナルトがジト目で自分を見ていて動揺してしまった。
「ナルト?」
「きゃーにゃっと~」
「…にゃっとって、お前のこと?」
「は?」
繋がらない会話に、ぶっと吹き出して二人で笑うと
スイもキャッキャと笑い出した。
ゲシゲシとカカシを蹴ってナルトに抱き着こうとするスイに
見兼ねたナルトが両手を差し伸べると、にゃっと~と嬉しそうに
ナルトの腕へと飛び込んでいった。
「父親としての立場とか威厳とか…ないのかね?…どうなのよ?オレ…」
「…先生嫌われてんのか?」
三白眼でカカシがナルトを睨むと拗ねたように口を開いた。
「オマエも大概だな…」
「シッ…スイ寝るっぽいってば」
「えええ?」
さっきまで、あんなに眠いのに寝れない風だったスイが、ナルトに抱かれた途端
寝に入ろうとしている事に驚きを隠せなかった。
「だからうっせーって!」
父親の威厳は?とブツブツ自分の殻に閉じこもるカカシを放ったらかして
ナルトはスイを抱きしめてユラユラと揺れ動くと、あっと言う間にスウスウと寝息を立てだした。
「で…お前はなんでこんな所に居るんだ?」
既に深夜を回る時間。
任務は明けて朝帰ったばかりで、多重任務はないだろうと思って問う。
「あー…任務に出たチームが連絡途絶えてよぉ…
叩き起こされて、探すのに出動して来たんだってばよ」
「へぇ…意外だなぁ…ナルトは感知タイプって事?」
「あ~…まぁ、そうだな。
感知タイプと言うより、仙人タイプ?」
「は?何よそれ」
「オレの戦闘スタイルだってば!」
えっへん!と言わんばかりの胸の張り用に、カカシもフッと微笑んだ。
それから思い出したように言葉を繋げる。
「あ~オレまだ見れないSランク任務の報告書に書かれてるんだろうなぁ…
その、仙人タイプっての?どんな技なの?」
「技っつーか…ん~仙術って奴で忍術とは少し違うんだってばよ」
「仙術…って…なんか、オマエ凄いんだね?」
「…そ、そっか~?でも、仙人モードでも瞬身の先生追っかけるの一苦労だったんだぞ?
前に先生と激眉先生がいきなり、因縁の決着を付けるとか何とかで、弟子も強制参加だとか言いやがって
カカシ先生が追いかけっこ持ちかけてきてよ…」
「は?オレが?」
「そ、先生が…だってばよ?」
「……うーん、わからんけど、そんなガキ臭い事オレから誘うかなぁ?」
「うわっ!何それ!オレが誘ったみたいに思ってるんだろ!?」
「え~?違うの?じゃー…その激眉って人じゃ?」
「ち・が・う!はたけカカシが、言いだしっぺ!」
息巻いて言うナルトにハイハイと返し、苦笑いを零すと
まだ信じてないだろう!と突っかかるナルト…
公園のベンチに腰掛けて二人で他愛もない会話を綴りながら
穏やかな空気に包まれる。
「ナルトさん!」
「あ?」
道の真ん中から呼ばれて視線を向けると
救出したチームの中忍がそこに立っていた。
「子供が起きるから静かにしろって…」
と、言いながらカカシにスイを渡して手を振った
「またな!カカシ先生」
「突然来て突然去って行くって……やっぱりドタバタ忍者だな…おやすみ、ナルト」
「ドタバタは余計だってばよ!おやすみー」
中忍と報告にでも行くのだろう、火影邸へと向かう二人を見送って
スイの頬を突っついた。
「オマエもナルトが好きか?」
眠りながらぶーっ…と、口を動かすスイにクスッと微笑んで
恋敵が出来たねなんて言いながら、自宅へと戻った。
【贖罪】18 謎
翌朝から、カカシは記憶をたぐり寄せるために
いのいちに色々と聞いていた。
記憶を司る海馬と言う場所にダイレクトに術をかける…。
そんな事を聞いても意味が分からず、カカシは医学書などにまで目を通していた。
無論、昨夜の出来ごとは全て綱手に報告済みで
確実に彼女が記憶操作に関わっている可能性が高いことを話し
いのいちと調査をする事を許可してくれたのだ。
ただ、思い出せそうで思い出せないもどかしさは
近頃随分激しくなってきて、ナルトと話している時は特にだが
頭痛がする事をいのいちに話すと、奈良家のシカの角が良く効くからと
紹介状を持たされて、カカシは奈良家へと向かった。
家の前に到着すると、大きな庭と、門。
アパート暮らしのカカシにしてみれば、随分と贅沢な豪邸に見えた。
「あれ?カカシ先生じゃん」
「あ~…んっと、待ってね、今思い出す…
奈良シカマル君…だったっけ?」
「…まだ記憶戻ってねーんっすか?」
「あぁ、申し訳ないね」
「カカシ先生とはもう、4年近く会ってなかったからなぁ
で、ウチに用事っすか?」
「あ、うん…これ」
カカシのベストから出てきた文をシカマルに渡すと
さらりと目を通して、それから縁側に直接案内された。
「オヤジ…カカシ先生だ」
「ん?…あぁ、どうしたんだ?」
「コレ、五代目からだとよ」
シカマルに渡した手紙が、シカクの手へと渡り、用意してやれと
そう告げると、へーい…なんてノンビリと返事を返したシカマルが
部屋の中へと消えていった。
「で、記憶が戻ってないようだが…将棋は覚えてるか?」
「…ん~?やった事ないですから」
「俺とは何度か手合わせしてるんだが?」
「へぇ、だったら出来るかもしれないですね」
シカマルがもどるまで時間がかかるからと、将棋盤を出してきて
ニッコリとカカシを誘う。
まぁ、時間もあるしとカカシも駒を並べると
なんとなく昔にやった記憶が何処かにあると思いながらも
シカクの駒説明を大人しく聞いた。
ぱちり…
ぱりち…
「あ、それはお前…ちょっと…待てカカシ!」
「え~?待ったなしで行きましょうよ」
「……そう言う所は変わらないのかよ」
追い詰められたシカクがグチグチと文句を言うと
カカシは、それを聴いてるのか聞いていないのか
掴み所の無いまま、シカクの陣地へと殴り込んでいく。
「へぇ、やっぱり記憶がないっていうのは本当らしいな」
「え?」
「ここに来てお前の駒の動きが、真っすぐになりやがった」
「まっすぐ…?」
「おおかたナルトにでも影響されてるんだろうな。
お前は、こう言う局面では必ず捨て駒を入れるか、確実に落とせるように
駒を張るんだ…だが、今のお前の一手は…真っ直ぐ突き進んできた。
まるでどこかの班のドタバタな奴辺りが張って来そうな手だ…」
ジッとカカシは板状を見る。
と
「ハイハイ、負けたくねぇからって、そこでグダグダ言っても
次の手は出さなきゃいけねぇ…オヤジ、負けを認めろって」
「ぬあっ!煩いぞシカマル!」
「だって、その手…いくらカカシ先生がミスしたって
3ターン後にはオヤジの王様に食らいつくぜ?」
「くっ…わ、解ってる!」
その後は、シカマルに言いくるめられたシカクが
もう一回と言って来たが、キリがないからやめておけと言うシカマルの言葉に従い
薬を貰うと、その足で自宅へと向かった。
「はぁ、ただいま…」
きぃ…ど、ドアが金属を軋ませる音が響いて
中に人の気配を感じない。
「買い物でもいったか?」
カカシは、家に人が居ないのを知りスッと巻物を開き結界を張った。
妻の所持品を写輪眼で丁寧に見ながら、何かしらの術がかかっているモノを
3個見つけた。
一つは手帳のようなもの…
一つは、小さな石コロのようなもの…
一つは…巻物。
この3個、優先順位で行けば
巻物>手帳>石コロ
だなと、自分で思い、指をフッと立てると
チャクラを練り”解!”と唱えると、巻物がシュルリと開かれた。
巻物の中身は、真っ白で何も書かれていないので
写輪眼でもう一度しっかりと見るが、何も書かれてはいない。
なにか特殊な条件で、文字が浮き上がったりするものではないだろうか?
じゃなければ術など掛けて置いておく意味がない。
同じような巻物を探して、カカシはそれを置くと
妻の所有していた巻物を綱手に送るためにパックンを呼び出した。
「パックン、悪いね…これを綱手様に」
「…解った」
巻物を咥えてパックンが出ると、カカシは似た巻物に
結界を張り、元の場所へと戻すと
手帳と石の位置を確認して、忍服を脱いだ。
一気に全てを入手するのは多少なりとリスクがある。
彼女が忍ではないと言ったが、実際に兄の所有物かも知れない
その品を、全て代用品に変えてしまったら
いくらなんでも気付かれるだろう。
だから解らないように少しづつ調整をしながらの方が良いと踏んだのだ。
明日の任務に備え、忍具の手入れをしていると
玄関が開き、キャーと甲高い子供の声が響いた。
カカシは開いていた巻物を閉じ、忍具をそこに収めると
飛び込んできたスイを受け止める。
「ちち!」
「ハイハイ、お帰り」
「帰ってたんだ?」
がさり…とテーブルの上に買い物袋を置くと
冷蔵庫に食材を詰め込む妻を見て
さっきね…とだけ答えると、今夜の食事は何がいい?と
質問され困る。
食事も気を付けなければ何が入っているかわからない。
スイも食べるものだから、小細工はしていないだろうが
カカシ自身は、毒の抗体はある程度出来ているのを、先日の健康診断で知った。
と言うより、忍の健康診断とはそう言うのも全て含まれており
何種類かの毒を飲んだり摂取して、どれくらいの効き目があるのか等も
健康診断の一つなのだ。
「カワ?」
「なぁに?」
「今夜はラーメンでも食べに行かない?
近所の奥さんが、一楽のラーメンが美味しいって言ってたんで
食べてみたいんだけど…」
「あ~一楽か…」
ナルトが良く行くラーメン屋だって言うのは知っている
野菜を持っていくほど彼はラーメン漬けの人生を送っている
だからと言って、毎日通っているわけでもあるまいし
偶然に居合わせるには時間帯などもある。
「解ったよ…んじゃま、用意するか」
と、立ち上がったカカシにスイがペタリと張り付いた。
夕日が沈むと、カカシ一家が一楽へと向かった。
数人の忍にすれ違いざま挨拶をされるがいつもの事。
数人と会釈だけの挨拶を済ませ、一楽の暖簾を潜った。
「お、カカシ先生じゃねーか?今日はナルトも…って家族でか?」
「ええ、今日は休みなんで」
「へぇ、可愛い子供ですねぇ?」
「ありがとう。ホラ、スイご挨拶してごらん?」
「ん!」
と、頭を上下させると、テウチがニッコリと笑った。
一家でラーメンを食べ終わると、代金を支払い
カカシは、スイを抱き上げるとスイがきゃーと奇声を発した。
「にゃっと~」
と、彼の名を呼べばソコに居るのだろうとカカシの視線が
ナルトけと向けられると、任務帰りだろうか?
サスケとサイと3人で歩いていたナルトと目があった。
が…
先程通過した忍たちと同じように
三人が自分に向けて会釈したっきり、話もせずに通り過ぎていく。
そんなそっけない態度に、カカシの心がしくりと泣いた。
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