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≪ 贖罪17 | | HOME | | 刹那の幻2 ≫ |
新連載です。
今回は、ちょっと暗めかなぁ…と思いつつ…UPUP★
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貴方に教えて貰った事全てが…私の生きる糧であり
私が伝えた全てが……貴方の中に息衝いているのであれば
もう思い残す事はないのかもしれない。
けれど…生きたいと願うのも…貴方の為で
オレは今を、超えていく………
【刹那の幻】
漆黒の闇が取り巻く木々。
肌に感じる寒さは、秋の終を告げている。
「はぁはぁ…っく…頑張れってばよ!」
肩に掛かった体重がズンと重みを増すと、ぐっと唇を噛み締めて
担いだ男を、ソっと横たえ首筋に手を当てると碧い瞳が揺れ動いた。
「クソッ!!!」
痛みに引き裂かれそうな顔を向けて、その後に体をソっと探り出した。
忍具と…彼女か奥さんか…倒れている彼と同年代の女性の写真。
ぐしゃりと、握り込んで指を立て影分身を数体出すと
その倒れた彼を、抱えるようにしてその場を後にした。
遺体を残してはいけない…
運んで行けない場合は…そこで処理をしなければならない。
先程まで、互いに頑張ろうと声をかけ合い、互いに背後を預けながら
やっとの思いでこの場所まで逃れたのに…
火遁を使えないナルトは、起爆札を泣きながら貼り付け
唇を強く強く噛み締めながら…遺体の処理を終えた。
「っぐ…」
こみ上げる切なさと、吐き気。
自分も死ねば同じように…消し去られる。
解っている…十分にそれは、理解している。
『ナルト…時に忍とは非情にならなければならない
それが里を守る事であり、己を守る事にもなる』
未だ…傍で教えをくれる銀髪の先生が言った言葉を思い出し
グッと手を握り締め、その場を後にした。
手に持った荷物は、2人分…4マンセルのチームでこの場所へ赴いたのは
5日前。
◇
「今回もナルトを貸してくれませんかね?」
上忍の申し出に、綱手はコクリと頭を上下させた。
かなりの成功率を誇る精鋭と言われる上忍の部隊で、戦闘力として
時折カカシもそのチームに参加する事があった。
前線を担う忍達はある程度の申し出をする事が許可されている。
例えば…このように、任務のために人間を借り出す事などは
己の実力も、相手の実力も解った上での申し出ができるため
空いている忍を、そのチームに入れる事は、その忍の成長の為にもある。
今回申し出た男を、サジと言う。
上忍になってから、既に1000を超える任務をこなしている。
それだけに信頼も厚く無論、周りの人間も尊敬の意を表すほどの人間。
そう言う強い人間から、嫌に好かれるのがナルトと言う訳だ。
勿論、サクラも既に上忍であり、出番は多いものの
ナルトの比ではないと言ってもおかしくはない。
今回は、隣国の戦争の補助。
大名自らの命令により決まった戦いで
かなりの規模だと言うのは解っていた。
無論、そう言う大きな仕事だからこそサジにその指令が行ったのだが
状況が不利にも関わらず、1チームだけ…と言う。
そんな危険な場所に、はいそうですか…とナルトを出す事はしたくはなかったのだが
大名からの指示でサジの言葉を優先にしてやれと達しが出ている以上
綱手の思いを押し通す事も出来なかった。
到着当初、戦況を報告された文によると、好ましくない…と言う言葉
不利と言う言葉が綴られ、それを目にするだけでも、苛立ちが増した。
2日目…報告された言葉は1名の殉職と、それがナルトではない事に
多少の安堵を生むが、決して死んでいい事など無いのだと綱手は机を強く殴り付けた。
3日目は…やはり不利な状況で押されて陣地の半分を明け渡して尚、抵抗していると言う
その状況に、深く溜息が落ちた。
陣地の半分を落とされれば、作戦を練り直すにしろ、一度体制を整えなければならない
兵糧も、前衛にあった兵糧庫を叩かれ、残り少ない状態であり、不利を通り越した状況だった。
中一名が、戻る時間に戻ってきていない状態の事を書かれていて、綱手は頭を抱えることとなった。
4日目の報告は無く
沸を切らした綱手が、声を荒げた。
「カカシを呼べ!」
「はっ」
このまま、任期の10日を待つ事は…恐らくチームの殉職を意味する。
そんな不安が綱手の中にあった。
「お呼でしょうか?」
カカシが部屋へと現れると、既にその場に居たサクラとサイが
青い顔をしていて、綱手の表情も緊迫しているように見えた。
確か、今回はナルトも任務に出ていて…そこまで頭を巡らせて
カカシの思考が止まった。
最悪の事を過ぎらせてから、切迫している動悸を抑え
綱手に視線を向けた。
「今は任務に出てるが夜に戻るヤマトを含めたカカシ班に任務を与える」
ビリっとした空気に、カカシがハイと答えると
詳細が語られていく…。
「今回ばかりは、生死の確認と死体処理…と言う名目上で動いて貰う
任務ランクはA…ないし、内容によってはSになりうる、心して掛かってくれ」
黙って聞く三人にフーっと一息付いて綱手が続きを語りだした。
「サジ小隊が、4日目で連絡を途絶えさせた…
班員は全部で4名…班長サジ、サク、アイジ…そしてナルトだ。」
カカシの頭で描いている最悪の事態が、鮮明に見えるようで
グッと手を握り締め、綱手の次の言葉を待った。
「サクは、2日目に殉職…3日目の最後の連絡では
アイジの行方が不明だった…。
ナルトとサジは無事だったがそれも、どうなったかは今は解らん…
ナルトの体には九尾がいる…相手国に渡してはならん!
もし、捕虜としてでも…だ」
綱手の言葉は…火影として当たり前の言葉
その言葉に胸を引き裂かれようが…それを遂行するのが忍たる者。
「出立は明日ですか?」
各々が、ナルトの九尾の事を考える中、カカシが声を掛けると
コクリと綱手が頭を上下に振った。
「今…行かせて貰えませんか?」
「カカシ先生…」
カカシが綱手の前にある机に両の手を付き、強く身を乗り出して告げた。
それにサクラも同感だと…カカシの横に立った。
無論それに逆らう事もなく、サイも同じ行動を起こし
サイが初めて声を上げた。
「早く行ける事に越したことはありません…
ヤマトさんは、すぐに追って来れる実力の持ち主ですし
ボクも…ナルトの無事を早く知りたい…」
感情を随分出せるようになった…なんて場違いなことを
綱手が思い、首を縦に振った。
「解った、お前らが勝手に出た事にするなら許そう。
体面を考えても明日出るのが通常だが…殉職者もいる戦地
お前らも、巻き込まれるかもしれないが
十分に注意していくように! 散! 」
ボンと、その言葉通りにカカシが姿を消し、サイとサクラも同じく執務室を出る。
空を見上げ、眉間にシワを寄せ…空に祈るしかできない自分を許してくれと
ナルトを思った。
大抵緊急の任務に出るのは集合次第。
サクラ、サイがその場で待っているとカカシが半刻程で現れた。
向かう場所は隣国の国境。
先にパックン達を走らせているので、ある程度の予測は出来ると告げ
カカシ班の出動となった。
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【刹那の幻】2
「キリがねぇってば…」
消えていく影分身の蓄積された精神疲労が重なり
ナルトも限界に近い状態での戦いだった。
最前線を守る…と言う指令でこの場所に赴いたのだが
守るではなく…最前線で戦うと言う状況に陥ったのは初日の合流後すぐだった。
後から来るという後方部隊を待って4人が各々で守り固めていたのだが
後方部隊が来る事もなく、気が付けば押し流れてきた敵の渦の中に居る状態。
下がると言う言葉で首を縦に振らない指揮者にサジが痺れを切らし
命令に反してでも戻ると決意すると、あっけなく指揮者はサジの言葉に従った。
盾を矛として使う…それは巧妙にできた罠だった。
最前線と言うものではなく…敵陣に切り込んでいた者の護衛。
なので、自然と戦う事になった…
本来ならもっと話をして状況判断をしてから向かうのだが
切迫し過ぎていて、それすらも叶わない状況になっていた
初日、ナルトはサジの指示で影分身を多用して倒れ、兵糧丸で
回復はしたものの、やはりチャクラが断然的に足りなかった。
二日目には、ナルトの体力回復のため護衛に周り、サクが攻撃に耐え切れず
死亡した。
その遺体処理は、サジが終わらせてナルトにサクの額当てを託した。
腕に結びつけた額あて。
仲間で…自分を優しく指導してくれる人だった。
だが、死と隣り合わせだと…カカシに教えられた…それを
波の国で目に焼き付け、自分はそれに涙し、自分の忍道を貫くと決めた。
あんな悲しい死は…未だどこにでもあるのだと解らない訳ではない。
三日…殆ど眠る事も許されない切迫状況に疲労の色は隠せなかった。
サジは隊長だからと飛び出し、守る人をナルトに預け…アイジと飛び出し
帰って来た時には、サジがボロボロになっていた。
忍服は破れ、右足にはクナイの刺し傷。
忍との戦いがあったのは安易に想像できた。
「ナルト…警護をしながら…一旦引くぞ」
「…おう」
「もし…俺が足で纏になったら、置いていくんだ」
「……でもっ!」
「ナルト!」
「…解ったってば」
解りたく等ない…良く自分を呼んでくれて、ちょっと高いランクの仕事に
時折参加させてくれた。
カカシとは全く違うタイプの忍者も学んでみるのも良いと
サジはナルトに優しく指導してくれていた。
置いて等…行けるものか
そう心に思っても、時としてそれは非情で…
シュン…―――
何かが空気を裂く音と共に、背後に何か生暖かいものが降ってきた。
「え?…サジ!サジさんっ!」
背中にもたれ掛かる様に…サジの体がナルトに寄りかかりトクトクと流れ出る
血液がナルトの忍服をどす黒く染めていた。
「しっかりしろってば!こんな所でヤられるなんて、オレが許さねぇぞ!
隊長っ!サジ隊長っ!」
ハッハッハと小刻みに吐き出される息は弱く、顔色は青くなっていくばかり
医療忍者もその場所にはいないし、戻るのでさえ一苦労している今…
”足で纏になったら…置いていくんだ――”
解っているのに、体が言う事を聞かない。
傍から離れる事が出来ない。
するり…とサジが額当てを外すと、ナルトの腕の額当てに触れた。
「隊長…命令だ…うずまきナルト…」
「っ…はい…っく…はいっ!」
「いい…返事だ…っはっは…俺を、起爆札で…それと、火影様に…
申し訳ない…と、頼む」
声さえ出なかった、ただただ…嘘のようで、ナルトは護衛者を待たせて
遺体処理を終えると腕に2つの額あて。
4マンセルは、いつの間にか一人だけとなってしまった。
当初の計画通り、ナルトは感情を押し殺し、唇を強く噛み締めると
目的地である後方部隊との合流のため護衛者を連れて影分身で応戦しながら
どうにか送り届けると、悔みの言葉どころか…
忍のくせに戦ってではなく守るために死ぬなんて…
と、死者を冒涜するような言葉に憤怒し、殴りかかろうとして
フッと思い出した。
はたけカカシの言葉。
”忍とは、如何なる時も平静で居なければならない。
特にお前は熱くなり易いんだから…心掛けなさいよ”
優しく諭してくれる先生の言葉が
こんな時に蘇って来なくても良いのに…なんて、行動を止められた苛立ちを向ける
けれど…今はそう言っている場合でもなければ内輪もめしている場合でもない。
皆で…この場所へ赴いたのだから。
皆で帰りたい。
ナルトは、この場所に来て初めて仙人モードを発動した。
(アイジさん…どこだってばよ!)
既にこの場所はかなり、離れた場所ではある。
最前線に近い場所で彼は姿を消した。
だが既に、敵の陣地に落ちているだろう場所。
そのギリギリ手前まで行って探ってみようと、地を蹴った。
彼を守る仕事は、ここまで引けば自分ではなくても大丈夫。
無論、男もそれを許可してくれた。
「4人で守れなかったものを、お前一人でなんて無理だ
俺達はもう一度忍を雇う」
そんな事を言われた。
たった1小隊…それを雇っただけ。
木の葉の精鋭を頼むと言ったのに、こんなガキが務まる訳もない
どんな事があっても、今は自分を諌める隊長も居ない…
怒りから震える手を…ぐっと握り締め
額当てを強く締めると、横目で男を見やった。
「一人…まだ合流できていない仲間がいる。
オレってば探しに出るつもりだ…もし、支援部隊や増援が来たら
そう伝えてくれってば…場所は、三日月渓谷だってば」
近くに居た門番に声を掛けたナルトに気を付けて下さいと
声を掛けて、彼は深く頭を下げた。
こんな戦…間違えている。
忍を護衛者にして、最前線で守りながら敵の数を減らすなんて…
盾矛…あまりに相違する二つが紙一重で裏にも表にもなってしまう。
それを利用して…敵を殺させ
自分たちは安全に逃げていくなど、あってはならないと
ナルトに彼は告げた。
「でも、それでも…オレたちは仕事を
遂行しなければならないんだってばよ。
だから、オレは忍らしく…仲間を探して戻ってくる!」
ニッコリと、仲間を失った痛みの濃い瞳が揺れながらも
笑顔を彼に向け…ナルトはその場所を蹴り上げた。
現地に到着してから6日目の事だった。
カカシ班がもう少しでこの荒れた土地へと辿り着く。
それを知らずにナルトは激戦地だったその場所へと足を進めた。
出来るだけ…戦いを避けながら
いつもうるさく騒いで任務をこなしていた…
良く、お前は忍なんだからもう少し落ち着け…なんて言われてた事を思い出し
走りながら苦笑いを零した。
こんな走り方をすること等、無かった…否
なければいけないのに、気にも止めなかった。
だって…カカシやヤマトが常に自分を守ってくれていたから。
そんな事も知らないで、煩く騒がしく…行動していたな…なんて思うと苦笑いが漏れる。
同じ班で甘やかされてるんだと…初めて違うチームに入った時に理解した。
そんな事を教えてくれたサジは既に側には居ないけど…
腕に光る額あてだけは最後まで自分を見守ってくれるだろうから。
「行くってばよ!」
大木の幹にチャクラを貯めた足裏を付き、一気に蹴り上げると
いつもの何倍もの速さでそこ場から離れる。
目の前にある、渓谷は待ち伏せされ、一度バラバラになった
その時にアイジが行方を消した。
もし、捕まっているのであれば…敵陣のど真ん中。
さすがのナルトも侵入には一人では無理だが
この渓谷にもし居るとしたら…かなりの手負いになっているかもしれない。
数日前に行われた戦いで、失われた命が見渡す限りに転がっていて
そこから放たれる香りに顔を顰めてナルトは
自分のポーチから白い布を取り出し口元を隠した。
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