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続きでございます!
【刹那の幻】5
張り詰めた空気は、カカシが出している
殺気にも似た怒りのオーラなのかもしれない。
いつも飄々として考えている事が掴みにくい男の代名詞と言っても良い程
人に感情を読ませないカカシが、ジッと護衛者を睨み付けていた。
その気迫に圧力を感じながら男が額から汗を垂らし堪らず声をあげた。
「な、なんだ…」
「ですから、サジ小隊をここまで壊滅的にさせたのは
貴方の采配ミスと言ってるんですが」
カカシの言葉に、眉間にシワを作り上げた男がチラリとナルトを見やった。
「フン、これみよがしに包帯なんぞ巻いて…
オマエは人柱力だろ?怪我なんかした内に入らないだろうが」
その言葉にナルトの肩がビクッと揺れ、それを見逃さなかったカカシがナルトの体を
隠すように前に滑り込み、言葉を吐いた。
「だから、ナルトに最前線を守らせたんですか?」
「守らせた?守りきってはいないだろう?何人死者を出したと思ってるんだ!」
カカシの挑発的な言葉に苛立ち、男が床を叩くと
カカシはその言葉にニッと微笑んだ。
「貴方は何か勘違いをなさってますね、ナルト達は貴方を守る為に
木の葉より命を受けて来ている。
それなのに貴方は最前線を守らせ他の人間の生死まで彼らに預けた…
三日月渓谷を見てきましたが…あの人数を守らせたいなら
木の葉の忍総動員で掛からなければ全員の命の安全は守られませんよ?」
その言葉に、遇の値も出ない男が舌打ちをする。
「貴方を守りきったんですから、今回の任務は成功です。
貴方がなんと言おうと、それは間違いない事ですから…
ですので、同じ金額で忍を雇おうと思うのであれば
貴方一人を護衛する…と、確りと頭に叩き付けて置いて下さるようお願いします。」
カカシはそれだけ言うとナルトを立つように促し、部屋を出た。
「なぁ…カカシ先生」
「ん~?」
言いづらそうに、口ごもってからどうにか言葉を吐き出した。
「あんな事言ったら後で何されっかわかんねぇんじゃねぇの?」
「…お前は心配しなさんな、正当な事を言ったまでだからね
それに、オマエを兵器扱いしているのは師として許せるものじゃないでしょ?」
と、クスッと笑われると、ナルトはなんだか嬉しくなって頬を掻いた。
「お前の任務は成功って事で、木の葉には伝令を送ってある
後は他の小隊が到着後オレらは帰還する」
その言葉にナルトが目を見開いた
「待てって!アイジさんは?アイジさんはどーなんの?」
「オマエが、そう…言うと思ってたから伝令に書いておいたよ
後は、その回答を持って小隊が到着するのを待てばいい…
その間にナルト、お前は少しでも回復しておきなさいよ?」
「オレってば、もう回復して…」
ジッと見る黒目に何も言えなくなった…
自分でも解る程、チャクラの消費をして回復はもう少し時間がかかるのだ
回復し切る前に、ナルトは戦場へと出て、それを繰り返していた為
溜まり切ることはなく、すり減らしている状態…
「ったく、良くそんなんで今まで乗り切れてたと感心するよ」
「…う」
「今日はゆっくり寝ること、それがお前への任務だ」
「…解ったってば」
戦場とは思えないほどの暖かい風がふわりと吹き抜ける。
カカシに付いて一緒に歩けば、大きな木の陰でカカシが腰を下ろし
ナルトの手をそっと引いた。
「え?」
「お前は少し寝なさい」
「…でも!」
「お前の出来ることはないから、今は寝て体力を温存するんだ」
グッと座り込んだカカシにそのまま腕を引かれ
重心を崩したナルトがカカシの腕の中へと引き込まれた
「わぁあ!」
「ホラ」
グッと、頭を押され、カカシの膝の上に頭を乗せられると
ナルトが目をパチクリとさせた。
予想外も良い所だ…なぜ今自分の頭がここにあるのか…
もう一度パチパチと瞬きを繰り返し、カカシの顔を見上げた。
「硬いか?悪いね、こんな膝で…ま、枕がわりにはなれるから寝ろ」
「ね、寝れねぇって!」
「ハイハイじゃー目を瞑ってるだけでいいから」
「ってか、男に膝枕されても嬉しくねぇってばよ!」
真っ赤になってジタバタと蠢くナルトの頭をカカシが片手で制したまま
「ハイハイ」
と返事を返す。
「カカシ先生ってば!」
「ハーイハイ」
どうやらナルトの抗議は聞かないと決め込んだらしいカカシが
曖昧な返事を返しながらイチャイチャシリーズをペラリと捲った。
吹き抜ける風が心地よくて、目を伏せれば鼻に届くカカシの香りと
草木の青い香り。
気が付けば…頭に感じるカカシの体温や
体に掛けられたカカシのベストが温もりをくれてて
眠っていた。
張り詰めた神経を…この時やっと開放できたのだ。
すぅすぅ…薄く聞こえるナルトの寝息にホッと胸を撫で下ろして
カカシはパタリと読んでいた本を閉じた。
「寝てくれないと思ってたけど…案外こんな膝でも寝れるんだねぇ」
サラリと、ナルトの髪を撫でると、擽ったそうに身を攀じる。
「子供みたいだな…」
16と言えばまだまだ子供ではあるが、忍者の世界では
子供だからとは言ってられない。
カカシだって大人と対等に扱われた年齢は、今のナルトよりも
もっともっと若い時代だった。
こんな理不尽な扱いを受けて、心身共に疲れ果てていたんだろうなと
カカシが眠るナルトに微笑みを向け
カカシも木の幹に体を預け瞳を伏せる。
眠る訳ではないが、足に直に感じるナルトの体温が心地良かったのだ。
「カカシ先生?」
「ん~?どうしたの?サクラ」
ゆるりと目を開けばサイとサクラが握り飯を持って
カカシの元へと訪れていた。
「ナルト寝ちゃったんですね?」
「寝かせたの…ずっと寝てないみたいだったしね」
サクラから受け取ったおにぎりの包を開きながら言うと
サイがクスッと笑いながら、ナルトを見ながらの昼食だね…なんて言い出す。
「それにしても…カカシ先生が膝枕なんて意外ですね」
と、サクラがクスクス笑うもんだから、カカシもポリッと一つ頬を掻いた。
「子供は人の体温がそばにある方が寝れるって…聞いたからね」
なんて言えばサクラが目を丸くして吹き出した。
「それ、ナルトに言ったら螺旋丸飛んできますよ」
「知ってるよ」
なんて笑い合う。
そんな笑い声を、夢の中で聞いていたナルトも知らぬ内に口角を上げていた。
穏やかな時間はすぐに終わるだろう…
けれど、今一時の安らぎを、ナルトに与えたかった事が叶って
カカシもサクラもサイも、安堵の息を漏らした。
「カカシ先輩…」
「あら、お前も来たの?」
少し離れた所からおにぎりを持ってやってきたテンゾウ、否
ヤマトに声を掛けてナルトを囲みながら握り飯をほおばった。
「一通り、事は順調に終わってました…ナルトのやつ随分必死だったんでしょうね」
「サジ隊長は?」
「起爆札での遺体消滅ですね…ナルトの痕跡と、他数枚の起爆札が
落ちてましたよ…」
「そう」
チラリと視線を向けたカカシがサラリともう一度ナルトの頭を慈愛の意味を込めて撫でる
「…大事な人の遺体処理なんて、本当に胸が壊れそうよね
人との繋がりを大事にするナルトだから、余計…」
サクラが食べかけのおにぎりを見つめながら言うと
カカシが目を細めて続けた。
「ん、ナルトも気が付いていないと思うけど…こっちで会ってから一度も
笑ってないんだよ…コイツそれに、嫌に聞き分けがいい…」
曲がった事が嫌いで、自分の意見を押し通す事が多いナルトとはなんとなく
違うな…と、サクラもサイも思った。
「それだけ、キツかったんだろうねぇ…ナルトは」
カカシの言葉にヤマトが言葉を乗せると、サクラも首を縦に降った。
食事もそこそこ終え、サイは偵察のためにその場を離れ
サクラはカカシの横で眠りに付いているナルトにソっと治療を施す。
ヤマトが、護衛の仕事をこなしている間の、7班の3人。
サクラがポツリと呟いた。
「私がもし死んだら…ナルトはこうやって処理してくれるのかしら?」
「サークーラー?ダメだよ…今はその言葉は禁止、ナルトが
追い詰められるでしょ?」
「ハイ…」
「大丈夫だよ、オレの目が黒い内はちゃぁんとオレが処理してやるから」
クスクスと笑うカカシに言葉が掛けられない。
いつ…サジと同じ目に合うかわからない。
それは忍として…心して置かなければならないこと…
そんな死線をカカシは何度もくぐり抜けているのだろうから…
「大丈夫よ…オレとナルトが…サクラや皆を死なせやしないよ…」
「はい!」
サクラがニッコリと笑って答えると、カカシの膝に頭を乗せるナルトの
背中にサクラがそっと寄りかかった。
「ナルトって暖かい…」
「なによ、サクラも寝る気?」
「お昼寝です!」
クスクスと笑ってナルトの体にそっと背中同士で体重を掛けるとサクラも
目を閉じた。
カカシがそんな姿にフッと微笑んで、何時ものように本を開いた。
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【刹那の幻】6
「ん…」
ブルリと体が寒さを感じて目をうっすらと開くと
目の前には先ほどと同じ態勢で自分の枕になっているカカシ
あたりは既に、カラスが巣に帰ったかのように赤く焼けていて
夕方だという事がまざまざと解った。
「起きた?」
「…あ、先生!?ずっと枕だったのか?」
ムクリと体を起こして、ナルトがカカシの足から頭を外し、チラリとカカシを見上げる。
「あ~…うん、そうね、御蔭で本の進み具合が良かったよ」
なんて笑うカカシに、ナルトが申し訳なさそうな顔を見せた。
「さっきまでサクラもナルトに寄り掛かって寝てたんだけどね~
乙女に紫外線は強敵だ!とかなんとか言って、どっか行っちゃった。
握り飯…食うか?サクラが持って来てくれたんだ」
受け取ったおにぎりをじっと見つめてから口の中へとほおりこんだ
なんだか、じんわりと仲間の居る今に喜びが湧き上がってきてしまう。
でも、アイジを見つけなければ…そう思うと
ナルトの心は沈んでいくだけだった。
今回の過酷さは、自分のチームを全て失っただけではない
これからも同じ事があるかもしれない…
今回自分が生き残ったが、もしかしたら逆もありうること
自分が遺体を処理したように…
「なぁ、カカシ先生」
「なによ?」
「オレ…サジさんの遺体処理任されて初めて怖いと思った」
「…怖いって、遺体が怖かった?」
その問い掛けにフルフルと首を左右に振り、手をギュッと握り締めた。
「カカシ先生やサクラちゃんが…オレの遺体を処理するのを怖いと思った」
ポツリと言ったナルトに、カカシが薄く微笑んだ。
「お前はそう簡単に死なないし、オレ達が死なせやしないよ」
「…おう、オレも簡単にくたばる気は、ねぇってばよ!
でもな?万が一でもオレが命尽きれば…クラマを狙う奴が現れるだろう?
里もそれを守ろうとオレの体からクラマを抜こうとすんじゃねぇの?」
考えられない事ではない…
ナルトの体の中にある強大な力は、皆が欲しがる力であり
望む力でもある。
生まれて今まで…自分で努力しこの位置を確立した。
けれども、その力を自慢する訳でもなく、ただただ
里のためだと必死に戦ったからこその信頼関係でもある。
「優しいね…ナルトは」
「はっ?な、なんでそーなんだよ?優しいとかじゃなくってさぁ!」
「ハイハイ…オマエの言いたい事は解ったよ…
オマエの遺体を処理するのは、オレがする。
だからオレの前以外で死ぬな」
「なっ!」
「解った?」
「ちょ、カカシ先生何一人で決めてるんだってばよ!」
「解った?」
「…う、なんで…そんな事言うんだってばよ」
「オマエねぇ…流石にこれだけお前と付き合って来てるんだから
言いたい事は解るよ?お前、九尾が抜かれるのが嫌なんじゃなくて
死んで処理する人間が九尾までなぜ殺したと、断罪されるのが嫌なんだろう?
九尾を抜いて、他の器に入れるのも嫌、それを処理した人間が里から攻撃受けるのも嫌
だったら、一番里から攻撃を受けないオレが始末するのが当然でしょ?」
カカシの言葉に目を見開いた。
そうなのだ…
カカシの言うとおり、ナルトは九尾までなぜ死に追いやったのかと
九尾を守るくらい出来るだろうと責められるのが嫌だった。
九尾もとい、クラマの扱いが難しい事は自分が身をもって知っている
しかも、クラマは己を認めてはくれたものの…元々人柱力と共に生きてきて
今までそれを認める事が出来ず、独り孤独に生きてきている。
六道仙人の時代まで遡らなければ、彼は心から信頼をおける人間を
持って来なかった事となるのだ。
そうなればチャクラは黒く淀む。
感情に左右されるクラマチャクラに飲まれれば器だってどうなるか解ったもんではない。
カカシに言葉を返す余裕もなくなるほど
頭の中で渦巻く思いを整理していると、忍鳥が背を預けた巨木の枝に止った。
「はい、んじゃ話はここまでね…」
カカシがスッと木の上に身を翻すと鳥から巻物を受け取り
書かれている返事を読む。
「やっぱり、ナルトには甘いねぇ」
と、細く微笑んでカカシはナルトの横に降り立った。
「さぁて、深夜からアイジ搜索に出る許可を貰ったから
お前は仙人モード使えるようにしておいてね?
出立は牛の刻だから」
「お、おう!」
ナルトはヘヘヘ…と照れ笑いながらその言葉に心を暖かくし、気を引き締めた。
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